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ダイジェスト 第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

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実効的な抑止及び対処

各種事態に適時・適切に対応し、国民の生命・財産と領土・領海・領空を確実に守り抜くためには、総合的な防衛体制を構築して各種事態の抑止に努めるとともに、事態の発生に際しては、その推移に応じてシームレスに対応することが必要。防衛省・自衛隊は、次のような取組を実施

周辺海空域における安全確保

  1. ●自衛隊は、各種事態に迅速かつシームレスに対応するため、平素から常時継続的にわが国周辺海空域の警戒監視を実施。警戒監視により得られた情報については、関係省庁にも共有

警戒監視を行う陸自隊員

警戒監視を行う陸自隊員

東シナ海海洋プラットフォーム周辺における警戒監視(海自P-3C哨戒機内から撮影)

東シナ海海洋プラットフォーム周辺における
警戒監視(海自P-3C哨戒機内から撮影)

空自E-767早期警戒管制機内における警戒監視

空自E-767早期警戒管制機内における
警戒監視

北朝鮮関連船舶による違法な洋上での物資の積替え(「瀬取り」)の疑い
  1. ➊自衛隊はわが国周辺海域において、警戒監視活動の一環として、国連安保理決議違反が疑われる船舶についての情報収集も実施
  2. ➋18(平成30)年には、6月末までに計9回の北朝鮮船籍船舶による違法な洋上での物資の積替え(いわゆる「瀬取り」)と強く疑われる行為を確認し公表
  3. ➌「瀬取り」を含む違法な洋上での活動に対し、米国に加え、関係国が航空機などによる警戒監視を行うため、18(平成30)年4月下旬から約1か月間、オーストラリア及びカナダが哨戒機をわが国に派遣。18(平成30)年5月上旬には、英国海軍フリゲート艦「サザーランド」がわが国周辺の公海上で情報収集活動を実施

東シナ海公海上において警戒監視中の海自哨戒機が確認した「瀬取り」に従事していると強く疑われる北朝鮮関連船舶(右)(18(平成30)年2月)

東シナ海公海上において警戒監視中の海自哨戒機が確認した「瀬取り」に従事していると強く疑われる北朝鮮関連船舶(右)(18(平成30)年2月)

領空侵犯に備えた警戒と緊急発進
  1. ➊空自は、わが国周辺を飛行する航空機を警戒管制レーダーや早期警戒管制機などにより探知・識別し、領空侵犯のおそれのある航空機を発見した場合には、戦闘機などを緊急発進(スクランブル)させ、その航空機の状況を確認し、必要に応じてその行動を監視
  2. ➋平成29(2017)年度の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は904回(このうち中国機に対するものは500回、ロシア機に対するものは390回)

冷戦期以降の緊急発進実施回数とその内訳

島嶼部に対する攻撃への対応

  1. ●島嶼部に対する攻撃に対応するためには、安全保障環境に即した部隊などの配置とともに、情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、海上優勢・航空優勢を獲得・維持することが重要。防衛省・自衛隊は、主として以下の取組を推進
南西地域の防衛態勢強化
  1. ➊陸自:18(平成30)年 3月、水陸機動団を新編(今後、奄美大島、宮古島、石垣島に警備部隊などを配置)
  2. ➋海自:P-1固定翼哨戒機やSH-60K回転翼哨戒機などを取得
  3. ➌空自:17(平成29)年7月、南西航空方面隊を新編
迅速かつ大規模な輸送・展開能力の確保

輸送艦の改修、V-22オスプレイ及びC-2輸送機の導入により、機動展開能力を向上

「アイアンフィスト18」において水陸両用車から下車・展開する陸自隊員(18(平成30)年1月)

「アイアンフィスト18」において水陸両用車から下車・展開する陸自隊員(18(平成30)年1月)

弾道ミサイル攻撃などへの対応

  1. ➊わが国の弾道ミサイル防衛(BMD: Ballistic Missile Defense)は、現在、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本
  2. ➋平素からわが国を常時・持続的に防護できるよう弾道ミサイル防衛能力の抜本的な向上を図る必要があることから、17(平成29)年12月の国家安全保障会議及び閣議において、陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)2基を導入し、これを陸自において保持することを決定
  3. ➌今後、イージス・アショアの導入により、イージス艦に加え、イージス・アショアも含めた上層での迎撃が可能

BMD整備構想・運用構想(イメージ図)

宇宙空間における対応

  1. ➊宇宙ゴミ(デブリ)の急激な増加など、宇宙空間の安定的利用に対する脅威が増大
  2. ➋防衛省・自衛隊は、部隊運用で極めて重要な指揮統制などの情報通信に使用するため、17(平成29)年1月にXバンド防衛通信衛星「きらめき2号」を、18(平成30)年4月には「きらめき1号」を打ち上げ

サイバー空間における対応

  1. ➊サイバーセキュリティに関し、平成28(2016)年度に政府機関への脅威と認知された件数は約711万件に上り、その脅威は年々深刻化
  2. ➋防衛省においては、サイバー攻撃への対応のため、平成30(2018)年度において、自衛隊のサイバー攻撃対処を行う部隊の規模を約350名から約430名に拡充

大規模災害などへの対応

  1. ●自衛隊は、災害の発生時には、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、医療、防疫などの様々な活動を行っており、平成29(2017)年度は、501件の災害派遣を実施

大阪府北部を震源とする地震における陸自による入浴所開設の様子(18(平成30)年6月)

大阪府北部を震源とする地震における陸自による入浴所開設の様子(18(平成30)年6月)

平成30年7月豪雨における陸自による捜索救助活動の様子(18(平成30)年7月)

平成30年7月豪雨における陸自による捜索救助活動の様子(18(平成30)年7月)

在外邦人等の保護措置及び輸送への対応

  1. ●自衛隊は、部隊を速やかに派遣する態勢をとっており、陸自ではヘリコプター部隊などを、海自では輸送艦などの艦艇を、空自では輸送機部隊などをそれぞれ指定するなどの待機態勢を維持するとともに、国内外における訓練により統合運用能力を向上

「コブラ・ゴールド」における在外邦人等の保護措置訓練において確認業務中の空自隊員(タイ)(18(平成30)年2月)

「コブラ・ゴールド」における在外邦人等の保護措置訓練において確認業務中の空自隊員(タイ)(18(平成30)年2月)

国民保護に関する取組

  1. ●防衛省・自衛隊は、関係省庁の協力のもと、地方公共団体などの参加も得て、訓練を主催しているほか、地方公共団体などが実施する国民保護訓練に積極的に参加・協力

安全保障協力の積極的な推進

防衛省・自衛隊としては、二国間・多国間の防衛協力・交流を強化するとともに、グローバルな安全保障上の課題などへの取組として、国連PKOや海賊対処行動をはじめ、国際平和協力活動その他の各種活動をより積極的に推進

多国間安全保障枠組み・対話における取組

  1. ➊拡大ASEAN国防相会議(ADMM(ASEAN Defense Ministers' Meeting)プラス)や、アジア太平洋地域における安全保障協力枠組みであるASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)をはじめとした多国間枠組みの取組が進展。これらは安全保障・防衛分野における協力・交流の重要な基盤
  2. ➋わが国としても、日ASEAN防衛当局次官級会合や東京ディフェンス・フォーラムを毎年開催するなど、地域における多国間の協力強化に寄与

能力構築支援(キャパシティ・ビルディング)

  1. ➊防衛省・自衛隊による能力構築支援は、12(平成24)年の開始以降、アジア太平洋地域を中心に、14か国・1機関に対し、人道支援・災害救援、PKO、海洋安全保障、国際法などの分野で支援を実施
  2. ➋17(平成29)年1月から3月及び同年10月から12月の間には、ジブチ軍に対し、施設機材の操作教育をはじめとする災害対処能力強化支援事業を実施

ベトナムにおける能力構築支援(サイバーセキュリティ分野)を実施する空自隊員(17(平成29)年12月)

ベトナムにおける能力構築支援(サイバーセキュリティ分野)を実施する空自隊員(17(平成29)年12月)

多国間共同訓練

  1. ●防衛省・自衛隊は、アジア太平洋地域において、従来から行われていた戦闘を想定した訓練に加え、人道支援・災害救援、非戦闘員退避活動(NEO:Non-combatant Evacuation Operation)などの非伝統的安全保障分野を取り入れた多国間共同訓練に積極的に参加

「マラバール2017」に参加した護衛艦「いずも」に乗艦した米印連絡官

「マラバール2017」に参加した護衛艦「いずも」に乗艦した米印連絡官

各国との防衛協力・交流の推進

  1. ➊防衛協力・交流については、従来より、二国間の対話や交流を通じて、対立感や警戒感を緩和し、協調的・協力的な雰囲気を醸成する努力を継続
  2. ➋これに加え、近年では、国際協力の必要性の高まりに応じて、共同訓練や能力構築支援、防衛装備・技術協力、さらには物品役務相互提供協定(ACSA)といった制度的な枠組みの整備など、多様な手段を適切に組み合わせ、二国間の防衛分野の関係を従来の交流から協力へと段階的に向上

「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」に関する覚書の署名の様子(18(平成30)年5月)

「日中防衛当局間の海空連絡メカニズム」に関する
覚書の署名の様子(18(平成30)年5月)

海洋安全保障の確保

  1. ➊海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由などの基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは、平和と繁栄の基礎であり、極めて重要
  2. ➋防衛省・自衛隊は、関係国と協力して海賊に対処するとともに、この分野におけるシーレーン沿岸国自身の能力向上の支援、わが国周辺以外の海域における様々な機会を利用した共同訓練・演習の充実など、各種取組を推進
  3. ➌海賊対処において、自衛隊は、第151連合任務部隊(CTF(Combined Task Force)151)への水上部隊及び航空部隊派遣を継続しているほか、18(平成30)年3月から6月には、CTF151司令官を派遣

海賊対処に従事しているわが国、米国、ドイツ及びスペインの部隊(17(平成29)年12月)

海賊対処に従事しているわが国、米国、ドイツ及び
スペインの部隊(17(平成29)年12月)

国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動への取組を積極的に実施

国連平和維持活動に係る国際会議など

  1. ➊防衛省・自衛隊は、17(平成29)年8月、国連PKOに関する国防大臣会合の準備会合を東京で開催
  2. ➋17(平成29)年11月、カナダで開催された国連PKOに関する国防大臣会合において、山本防衛副大臣から「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」へのさらなる貢献や女性PKO要員増加のための取組を進めていく旨を表明

エチオピア歩兵大隊宿営地において生活環境調査を実施するUNMISS司令部要員(兵站幕僚)

エチオピア歩兵大隊宿営地において生活環境調査を
実施するUNMISS司令部要員(兵站幕僚)

国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)

  1. ➊17(平成29)年5月末の施設部隊撤収後もUNMISS司令部などへの要員派遣は継続
  2. ➋わが国としては、引き続きUNMISSの活動に貢献していく考え

国連事務局への防衛省職員の派遣など

  1. ➊各国のPKOセンターなどへの講師としての自衛官の派遣、国連平和維持活動局や国連フィールド支援局への事務官や自衛官の派遣などを実施
  2. ➋国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトに対し、陸上自衛官などを教官として派遣、これまで、計6回の施設機材操作訓練をアフリカの8か国約170名の要員に対し実施

エチオピア平和支援訓練センターへジェンダー担当講師として派遣された陸自隊員

エチオピア平和支援訓練センターへ
ジェンダー担当講師として派遣された陸自隊員

防衛力を支える人的基盤と女性隊員の活躍

防衛力を支える人的基盤

予備自衛官等の職務に対する理解と協力の確保に資するための給付金の新設
  1. ●予備自衛官又は即応予備自衛官が、①防衛出動、国民保護等派遣、災害派遣などにおいて招集に応じた場合、②招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合、その職務に対する理解と協力の確保に資するための給付金を雇用主に支給する制度を平成30(2018)年度に新設
事故防止への取組など
  1. ●国民の生命や財産に被害を与え、また、隊員の生命を失うことなどにつながる各種の事故は、絶対に避けなければならず、防衛省・自衛隊としては、事故について徹底的な原因究明を行った上で、今一度、隊員一人一人が安全管理に係る認識を新たにし、防衛省・自衛隊全体として再発防止に全力を注いでいく考え

平成30年7月豪雨において招集に応じ、任務に従事中の即応予備自衛官

平成30年7月豪雨において招集に応じ、任務に従事中の即応予備自衛官

ワークライフバランス・女性隊員の更なる活躍の推進

働き方改革
  1. ●防衛省・自衛隊では、ワークライフバランスを推進するため、働き方改革を進めており、17(平成29)年には「防衛省における働き方改革推進のための取組コンテスト」の実施や、本省内部部局においてテレワークを本格運用するなど取り組みを推進
育児・介護などと両立して活躍できるための改革
  1. ➊庁内託児施設について、17(平成29)年4月に、防衛省の所在する市ヶ谷地区、同年10月に防衛医科大学校において新たに開設
  2. ➋中途退職した自衛官の再採用について、17(平成29)年1月、育児・介護により中途退職した者も採用できるよう見直しを行い、18(平成30)年1月から採用を開始

育児のため中途退職した自衛官を再度採用できる制度により採用された隊員

育児のため中途退職した自衛官を再度採用できる制度により
採用された隊員

衛生機能の強化

質の高い医療体制の確立
  1. ●自衛隊病院の拠点化・高機能化などを進めるとともに、防衛医科大学校病院などの運営改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立
人材の確保・育成、能力の向上
  1. ●医官・看護師などの確保・育成を一層重視。さらに、第一線の救護能力の向上や感染症への対処能力を強化

防衛装備・技術に関する諸施策

技術的優越の確保のための研究開発の推進

  1. ➊16(平成28)年8月、わが国の技術的優越を確保し、先進的な装備品の創製を効果的・効率的に行い、防衛技術や民生技術に関する各種の政策課題に対応するため、戦略的に取り組むべき各種施策の具体的な方向性を示した「防衛技術戦略」を策定
  2. ➋さらに、今後おおむね20年の間に確立される技術を見通した「中長期技術見積り」や、将来を見据えた装備品のコンセプトとそれに向けた研究開発のロードマップを提示した「研究開発ビジョン」を策定。これら文書に基づき、各種施策を推進
  3. ➌研究機関や企業などにおける独創的な研究を発掘し、将来有望な芽出し研究を育成するための「安全保障技術研究推進制度」(ファンディング制度)については、平成29(2017)年度までに33件の研究課題を採択

防衛装備・技術協力

  1. ●わが国は、自国の安全保障及び平和貢献・国際協力並びに防衛生産・技術基盤の維持・強化の推進に資するよう、防衛装備移転三原則に基づき、諸外国との防衛装備・技術協力を推進。直近の主な取組は以下のとおり。
    • 海自TC-90練習機(5機)のフィリピンへの無償譲渡完了
    • UH-1Hの部品等のフィリピンへの無償譲渡について決定
    • ベルリン国際航空宇宙ショーにおいて、海自P-1哨戒機の地上展示及び初飛行展示を実施
    • 官民防衛産業フォーラムを開始(平成29(2017)年度にはインドネシア、インド、ベトナム、オーストラリアと開催)
    • 日英共同研究等4件を実施中、初の日仏共同研究1件を新たに開始

ベルリンエアショーに出展したP-1哨戒機

ベルリンエアショーに出展したP-1哨戒機

地域社会・国民との関わり

地域コミュニティーとの連携

  1. ●防衛省・自衛隊は、不発弾や機雷の処理など、民生支援として様々な協力活動を行い、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めるとともに、地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献

様々な広報活動

  1. ●防衛省・自衛隊は、ソーシャル・ネットワーキング・システム(SNS)を含む各種の情報発信や「自衛隊音楽まつり」や観閲式・観艦式・航空観閲式といったイベントを通じ、自衛隊の現状を広く国内外に紹介

情報公開・文書管理などへの取組

  1. ●南スーダンPKO日報問題やイラク日報問題などを踏まえ、防衛省・自衛隊としては、情報公開や公文書管理に関する再発防止策を徹底して実施し、国民の信頼回復に全力を注いでいく考え