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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

4 各国との防衛協力・交流の推進

安全保障分野での協力・交流を推進するに際しては、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせて強化していく必要性があり、多国間の枠組みでの包括的な取組のみならず、二国間での防衛協力・交流が重要となる。

1 日豪防衛協力・交流
(1)オーストラリアとの防衛協力・交流の意義など

オーストラリアは、ともに米国の同盟国として、普遍的価値11のみならず戦略的利益や関心を共有するわが国にとって、アジア太平洋地域の「特別な戦略的パートナー」である。特に近年、両国はアジア太平洋地域において責任ある国として、災害救援や人道支援活動などの分野を中心とした相互協力や、能力構築支援に関する協力を強化している。

日豪間の防衛協力は、カンボジアPKO(UNTAC:United Nations Transitional Authority in Cambodia)での協力に始まり、国連東ティモール統合ミッション(UNMIT:United Nations integrated Mission In Timor-Leste)「イラク復興支援」や各種国際緊急援助活動などで協力実績を積み重ねてきた。11(平成23)年3月の東日本大震災の際には、豪軍は当時保有していた全4機の輸送機のうち3機をわが国に派遣して、支援任務に従事した。また、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)においては、17(平成29)年1月から5月までの間、UNMISSの業務を行うために派遣された豪軍要員2名を日本隊宿営地に受け入れるなど、その協力の度合いは、より実践的なものに深まってきている。

日豪防衛協力の深化を背景に、日豪両国は、07(平成19)年3月、わが国にとっては米国以外で初の安全保障に特化した共同宣言である「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表したほか、これまでに日豪物品役務相互提供協定(ACSA:Acquisition and Cross-Servicing Agreement)や日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定といった協力の基盤を整備してきている。

日豪ACSA12については、両国の防衛協力・交流のさらなる進展などにより自衛隊が豪軍と共に活動するケースが拡大していることやわが国における平和安全法制の整備を踏まえ、17(平成29)年1月、物品又は役務の提供が可能な場面などを拡大する新たな協定の署名が行われ、同年4月の国会承認を経て同年9月に発効した。これに併せて関連する国内法令も整備された。

地域における平和と安定の維持に共に貢献する意思と能力を兼ね備えた「特別な戦略的パートナー」であるオーストラリアとは今後とも引き続き協力関係を深めていく。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

17(平成29)年10月、小野寺防衛大臣は第4回ADMMプラスにおいて、ペイン国防大臣との間で日豪防衛相会談を実施した。同会談において両大臣は、北朝鮮による挑発行動を抑止するため、両国が緊密に連携していくこと、そして、南シナ海情勢に関して日米豪でこの地域におけるプレゼンスを確保しつつ、能力構築支援や共同訓練をはじめとする各種防衛協力を通じて各国との連携を強化していくことで一致した。また、今後とも日豪防衛協力をさらに強固に進展させていくことで一致するとともに、両国間の共同活動を円滑化すべく各種手続きを相互に改善する協定について、引き続き調整していくことで一致した。さらに、18(平成30)年1月の日豪首脳会談において、両国の防衛大臣に対し、演習、運用、能力構築、海・陸・空の部隊訪問並びに防衛装備、科学及び技術に関する一層の協力を含むより深く、幅広い防衛協力を同年に追求するよう指示された。

軍種間の主な協力・交流実績については、17(平成29)年9月、オーストラリア主催によるPSI阻止訓練「パシフィック・プロテクター17」への参加のため、海自のP-3C哨戒機をタウンズビル基地へ派遣した。同月、ギャビン・デイヴィース空軍本部長が訪日し、空幕長との間で空中給油・輸送機部隊間の姉妹飛行隊の関係締結について合意した。同年10月には、海自が豪海空軍との間で日豪共同訓練「日豪トライデント」を実施した。また、同月、豪空軍輸送機部隊(C-130J)が訪日し、空自関係部隊との間で部隊間交流を実施したほか、同年11月には、空自C-2輸送機がリッチモンド豪空軍基地に寄航し、部隊間交流を実施するなど相互理解や信頼関係のさらなる増進を図っている。

参照4節2項(大量破壊兵器の不拡散などのための国際的な取組)
資料47(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(3)日米豪の協力関係

わが国とオーストラリアは、ともに米国の同盟国であると同時に、普遍的価値を共有しており、アジア太平洋地域及び国際社会が直面する様々な課題の解決のため、緊密に協力している。このような協力を効果的・効率的なものとするためには、地域の平和と安定のために不可欠な存在である米国を含めた日米豪三か国による協力を積極的に推進することが重要である。

07(平成19)年4月以降、計9回にわたって、三か国局長級会合である日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF:Security and Defense Cooperation Forum)が行われている。

16(平成28)年10月に実施されたSDCFにおいて、日米豪三か国の防衛当局間は、共同訓練及び運用に係る協力活動を実施するに際し、秘密情報の三か国間における共有を迅速に行うことを可能とする日米豪防衛当局間情報共有取決めに署名した。今後は、この取決めを活用し、三か国間の連携をさらに緊密なものにしていく考えである。

また、18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合において、マティス米国防長官及びペイン豪国防大臣との間で日米豪三か国防衛相会談を実施し、自由で開かれた海洋秩序の維持が重要との認識で一致するとともに、防衛協力の機会を最大化すべく、インド太平洋地域における三か国協力の長期的なヴィジョンを示す戦略アクション・アジェンダを作成することで一致した。また、地域情勢について、まず北朝鮮問題については、完全で、検証可能な、かつ不可逆的な方法による、核、生物、化学兵器及び弾道ミサイルプログラムの廃棄のための外交努力を引き続き支援することで一致し、違法な「瀬取り」といった不法な活動を抑止し、中断させ、根本的に排除するための継続した国際的な協力を歓迎した。また、南シナ海の現状については、引き続きの懸念を共有し、南シナ海を含む海洋の合法的な使用の擁護への共通のコミットメント等について強調した。

日米豪三か国は各軍種間での共同訓練も実施しており、例えば、陸自は18(平成30)年5月、オーストラリアにおける米豪軍との実動訓練「サザンジャッカルー」に参加した。

また、海自は、17(平成29)年9月、本州南方海域において、米豪潜水艦各1隻とともに日米豪共同訓練(対潜戦訓練)を実施した。また、同年6月、南シナ海において日米豪にカナダを加えた4か国による共同巡航訓練を実施している。

空自は、17(平成29)年12月、ミクロネシア連邦などにおける日米豪人道支援・災害救援(HA/DR)共同訓練「クリスマスドロップ」に参加し、18(平成30)年2月にはグアムにて日米豪共同訓練及び日米豪人道支援・災害救援(HA/DR)共同訓練「コープ・ノース・グアム18」を共催するなど、日米豪三か国間での様々な訓練・演習の機会を通じて、相互理解及び相互運用性を高める努力を続けている。

2 日韓防衛協力・交流
(1)韓国との防衛協力・交流の意義など

日韓間には困難な問題があるが、様々な分野で協力を進め、日韓関係を未来志向で前に進めていくことが重要である。

日韓両国が直面している安全保障上の課題は、北朝鮮の核・ミサイル問題のみならず、テロ対策やPKO、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、広範にわたる複雑なものとなってきている。こうした安全保障上の課題に両国が効果的に対応していくためには、相互理解・信頼醸成の増進のための交流にとどまらず、より広範かつ具体的な防衛協力を行っていくことが必要である。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

ア 全般

韓国との防衛協力・交流は、15(平成27)年以降、防衛大臣などのハイレベル交流から部隊間交流まで含めた様々なレベルで実施されている。

特に、北朝鮮の核・ミサイル問題に対処していく上では、韓国との安全保障・防衛分野での協力強化が必要であるところ、17(平成29)年7月及び9月、北朝鮮による弾道ミサイルの発射を受け、同年7月6日及び9月6日に日韓防衛相電話会談が行われ、北朝鮮の核・ミサイル問題に一致して取り組むことが重要であり、これまでの日韓・日米韓での連携を評価するとともに、今後も緊密に協力していくことで一致した。

また、同年10月、小野寺防衛大臣は第4回ADMMプラスにおいて宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官と会談を行い、北朝鮮の核・ミサイル問題に対し、引き続き、緊密に連携していくことを改めて確認するとともに、防衛協力・交流について、人的交流、艦艇・航空機の相互訪問などの具体的な協力・交流案件を着実に実施し、協力を進展させていくことで一致した。こうした両大臣間での意見の一致も踏まえ、同年10月に海自練習艦隊の平沢(ピョンテク)寄港、同年12月に韓国海軍巡航練習戦団が横須賀に寄港する形で艦艇の相互訪問が行われるなど、日韓防衛協力・交流はその実績を着実に積み重ねてきている。また、18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合において宋永武(ソン・ヨンム)国防部長官と日韓防衛相会談を行い、北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動きがみられることを歓迎するとともに、北朝鮮から更なる具体的な行動を引き出すべく、国連安保理決議に従って、日米韓をはじめとした国際社会と連携していくことを確認した。また、両大臣は両国の防衛協力・交流が着実に行われていることを歓迎するとともに、今後、幅広い分野での協力を進め、両国防衛協力・交流の基盤を確立していくことで一致した。

イ 日韓秘密軍事情報保護協定について

日韓の防衛当局間において、14(平成26)年12月に署名した日米韓情報共有に関する防衛当局間取決めに基づき、米国を経由する形で北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有を行ってきた。一方、北朝鮮により頻繁に繰り返される弾道ミサイルの発射や核実験など、北朝鮮を巡る情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、日韓間の協力をさらに進めるべく、16(平成28)年11月、日韓秘密軍事情報保護協定を締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密情報が適切に保護される枠組みが整い、両国政府間でさらに円滑かつ迅速な情報交換が行われることが期待される。

参照資料48(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(3)日米韓の協力関係

日米韓三か国は、この地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会を捉えて緊密に連携を図っていくことが、北朝鮮問題を含めた様々な安全保障上の課題に対処する上で重要である。

日米韓三か国では、例年、シャングリラ会合に際して日米韓防衛相会談を実施しているが、17(平成29)年10月、北朝鮮の脅威の高まりを踏まえ、第4回ADMMプラスにおいてマティス米国防長官及び宋永武(ソン・ヨンム)韓国国防部長官と日米韓防衛相会談を行い、認識の共有を図った。また、18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合においてマティス米国防長官及び宋永武(ソン・ヨンム)韓国国防部長官と日米韓三か国防衛相会談を実施し、完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法による朝鮮半島における非核化のために行われている外交努力を引き続き支援するとともに関連するすべての国連安保理決議の履行を継続することで一致した。また、違法な「瀬取り」といった不法な活動を抑止し、中断させ、そして根本的に排除するための継続した国際的な協力を歓迎した。

実務レベルでは、日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)の枠組みにおける局長級・課長級の協議及びテレビ会議の実施、日米韓参謀総長級会談などを通じて、様々なレベルで緊密に情報共有を図りつつ連携してきている。例えば、17(平成29)年7月以降の北朝鮮による核実験や弾道ミサイル発射に際してDTTのテレビ会議(局長級)を実施し、北朝鮮による脅威を抑止し、これに対応するため、三か国の安全保障協力及び調整を引き続き強化することを確認するとともに、北朝鮮に対し、核・弾道ミサイル計画を終了する具体的な行動をとらせるべく、他国と協力して圧力をかけ続けることで一致した。

参謀総長級のレベルにおいては、統幕長が、17(平成29)年10月及び18(平成30)年5月、日米韓参謀総長級会談に参加し、地域の平和と安定を強化するため、共通の安全保障問題に対し、さらなる協力を継続していくことで一致した。

また、日米韓三か国は、17(平成29)年10月及び12月にわが国周辺海域において日米韓弾道ミサイル情報共有訓練を実施するなど、日米韓の協力関係はより実質的な関係へと深化しており、今後も様々な機会を活用して、あらゆる分野において日米韓三か国の安全保障協力を強化していくことが求められている。

3 日印防衛協力・交流
(1)インドとの防衛協力・交流の意義など

インドは、世界第2位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、地政学的に極めて重要な国である。また、インドとわが国は、普遍的価値を共有するとともに、アジア及び世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別な戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、近年、日印両国は安全保障分野での関係も強化している。

日印間の防衛協力・交流は、08(平成20)年10月に「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」が署名されて以来着実に深化し、防衛大臣などの各レベルでの協議や、二国間及び多国間の訓練を含む軍種間交流などが定期的に行われている。また、14(平成26)年9月には、日印防衛協力及び交流の覚書が、15(平成27)年12月には、日印防衛協力・交流の制度上の基礎をさらに整備する日印防衛装備品・技術移転協定及び日印秘密軍事情報保護協定がそれぞれ署名され、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。

(2)最近の主要な防衛協力・交流実績など

17(平成29)年9月の日印防衛相会談において、両大臣は日印防衛協力が一層進化し拡大していることを確認するとともに、日米印共同訓練「マラバール」における取組の深化・高度化や、人道支援・災害救援(HA/DR)分野における訓練へのオブザーバー参加をはじめ幅広い分野で交流を積み重ね、両国間で協力・交流推進の機会を追求していくことで一致した。また、陸軍種では、双方が高い関心を共有するPKO、対テロ及び人道支援・災害救援(HA/DR)分野における交流を積極的に実施していくことで一致し、空軍種では、航空機による相手国の基地への寄航によって、さらなる協力・交流の機会を追求する意図を確認した。

軍種間の主な交流実績については、18(平成30)年1月、インドで開催された多国間フォーラム「ライシナ・ダイアローグ」に防衛省・自衛隊から統幕長が初めて参加した。また、18(平成30)年3月には訪印した統幕長がランバ参謀長委員会委員長と会談し、日印防衛交流の深化の必要性について合意した。

また、演習・訓練などを通じた軍種間の交流も活発に行っており、例えば、17(平成29)年7月以降、海自と印海軍は、哨戒機によるものを含め、7回の二国間共同訓練などを実施している。空自も同年12月に、空自ヘリコプター搭乗員による印空軍部隊訪問などを実施した。

日米印三か国による訓練機会も拡大しており、例えば、海自は、米印両海軍とともに、17(平成29)年7月にインド東方海域で行われた日米印共同訓練「マラバール2017」を初めて主催国として実施するとともに、同年11月には、日本海において日米印共同訓練を実施した。

参照資料49(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間)

4 日中防衛交流・協力
(1)中国との防衛交流・協力の意義など

わが国と中国との安定的な関係は、アジア太平洋地域の平和と安定に不可欠の要素であり、大局的かつ中長期的見地から、安全保障を含むあらゆる分野において、日中で「戦略的互恵関係」を構築し、それを強化できるよう取り組んでいく必要がある。

APEC首脳会談において実施された日中首脳会談における安倍内閣総理大臣と習近平国家主席(17(平成29)年11月)【内閣広報室提供】

APEC首脳会談において実施された日中首脳会談における
安倍内閣総理大臣と習近平国家主席(17(平成29)年11月)
【内閣広報室提供】

安全保障分野においては、中国が、地域の平和と安定及び繁栄のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、急速に拡大する国防費を背景とした軍事力の強化に関して、透明性を向上させるよう引き続き促していく。その一環として、防衛交流の継続・促進により、中国の軍事・安全保障政策の透明性の向上を図るとともに、不測の事態の発生の回避・防止のための枠組みの構築を含めた取組を推進していく。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

日中防衛交流は、12(平成24)年9月のわが国政府による尖閣三島(魚釣島、南小島及び北小島)の取得・保有以降、停滞していたが、14(平成26)年後半以降、交流が徐々に再開している。

近年の閣僚級の交流実績については、15(平成27)年11月のADMMプラスに際して、中谷防衛大臣と常万全(じょう・ばんぜん)国防部長(いずれも当時)との間で、4年5か月ぶりとなる日中防衛相会談が実施され、日中間の諸問題について率直な意見交換を行うとともに、日中防衛交流を発展させていくことが重要であるとの認識で一致した。また、17(平成29)年10月のADMMプラスでは、小野寺防衛大臣と常万全(じょう・ばんぜん)国防部長(当時)が意見交換を行った。

また、15(平成27)年3月には、両国の外交・防衛当局が参加する日中安保対話(第13回)が東京において4年ぶりに開かれ、16(平成28)年11月には第14回対話が北京にて、17(平成29)年10月には第15回対話が東京にてそれぞれ実施された。

また、日中防衛当局は日中高級事務レベル海洋協議にも参加しており、直近では、17(平成29)年6月には第7回協議が福岡にて、同年12月には第8回協議が上海にて、18(平成30)年4月には第9回協議が仙台にて実施された。

18(平成30)年2月には、笹川平和財団と中国国防部の間で「日中佐官級交流」の6年ぶりの再開について合意され、同年4月には、慈国巍(じ・こくぎ)中国国防部国際軍事協力弁公室副主任を団長とする訪日団が小野寺防衛大臣を表敬するなどした。

今後も、「戦略的互恵関係」構築の一環として、様々なレベル・分野における対話を通じて、日中間の信頼関係・相互理解の増進に努めるとともに、海賊対処など非伝統的安全保障分野における具体的な協力を積極的に推進することが必要である。

(3)日中防衛当局間の海空連絡メカニズム

07(平成19)年1月及び4月の日中首脳会談において、安倍内閣総理大臣と温家宝(おん・かほう)中国国務院総理(いずれも当時)との間で両国の防衛当局間の連絡体制の強化、特に海上における連絡体制の整備で一致したことを踏まえ、日中防衛当局は、08(平成20)年4月に第1回共同作業グループ協議を開催し、以降、防衛当局間で協議を重ねてきた。12(平成24)年6月に行われた第3回共同作業グループ協議では、本メカニズムの基本的な目的や構成などについて一致した。15(平成27)年1月の第4回共同作業グループ協議以降は両国の外交当局も交えた形で交渉を進めてきた。

その後、17(平成29)年12月の第8回日中高級事務レベル海洋協議、18(平成30)年4月の第7回共同作業グループ協議などでの交渉を経て、同年5月に東京で開かれた日中首脳会談に際し、安倍内閣総理大臣と李克強(り・こくきょう)中国国務院総理の立ち合いのもと、日中防衛当局間で本メカニズムに関する覚書13の署名が行われ、同年6月8日、本メカニズムの運用が開始された。

本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解及び相互信頼を増進し、防衛協力を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突又は政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。

今般、10年間に及ぶ交渉を経て本覚書に署名できたことは、日中両国の相互理解と相互信頼を増進する上で重要な一歩であるのみならず、不測の衝突を回避する上でも大きな意義があり、今後、本メカニズムが日中防衛当局間の信頼関係の構築に資する形で運用されることが重要である。

参照資料50(最近の日中防衛交流・協力の主要な実績(過去3年間))

5 日露防衛交流・協力
(1)ロシアとの防衛交流・協力の意義など

ロシアは、アジア太平洋地域における安全保障上の重要なプレーヤーであり、かつ、わが国の重要な隣国でもあることから、日露の防衛交流を通じて信頼関係を増進させることが極めて重要である。防衛省・自衛隊は、様々な分野で日露関係が進展する中、1999(平成11)年に署名された日露防衛交流に関する覚書(06(平成18)年改定)に沿って、防衛当局間の各種対話をはじめ、日露海上事故防止協定14に基づく年次会合や日露捜索・救難共同訓練などを継続的に行っている。

ロシアとの関係については、ウクライナ情勢などを踏まえ、政府としてG7(Group of Seven)の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも実務的コンタクトは絶やさないようにすることが重要であり、これらの点を総合的に勘案してロシアとの交流を進めている。

(2)最近の主要な防衛交流実績など

13(平成25)年4月に行われた日露首脳会談では、日露両国間の安全保障・防衛分野における協力を拡大することの重要性を確認し、日露「2+2」を立ち上げることで合意した。同年11月に実施された初の日露「2+2」において、陸軍種間の部隊間交流及び演習オブザーバー相互派遣の定例化、アデン湾における海自とロシア海軍の海賊対処部隊間の共同訓練の実施、日露サイバー安全保障協議の定例開催などで合意した。

さらに、16(平成28)年12月に行われた日露首脳会談で、両首脳は、両国の安全保障会議間の対話や防衛交流が行われていることを歓迎し、今後もこれらの対話や交流を継続することで一致した。

17(平成29)年3月に実施された第2回目の日露「2+2」においては、地域情勢などについて意見交換を行うとともに、実務レベル協議、部隊間交流、日露捜索・救難共同訓練などを引き続き継続していくことで一致した。北方領土への地対艦ミサイルの配備や、北方四島を含み得る諸島への師団配備といった北方四島におけるロシア軍の軍備強化にかかる動きについては、北方領土はわが国固有の領土であるとのわが国の立場と相容れないものであり、遺憾である旨を日本側から抗議した。

軍種間の主な交流実績については、17(平成29)年12月、訪日したゲラシモフ参謀総長が統幕長と会談し、両国の安全保障上の関心事項などについて意見交換を実施するとともに、日露防衛交流の必要性について一致した。また、17(平成29)年11月には、訪日したサリュコフ地上軍総司令官が陸幕長と会談し、双方の信頼関係の醸成を図った。

演習・訓練などでは、17(平成29)年11月、海自とロシア海軍が、ウラジオストク沖において、17回目となる日露捜索・救難共同訓練を実施した。

参照資料51(最近の日露防衛交流・協力の主要な実績(過去3年間))

6 ASEAN諸国との防衛協力・交流

高い経済成長を続け、「世界の開かれた成長センター」としての潜在力を世界各国から注目されているASEAN諸国とわが国は、50年近くに及ぶ交流の歴史と密接な経済関係を有する伝統的パートナーである。

わが国のシーレーンの要衝を占める地政学的に重要な地域に位置するASEAN諸国は、わが国及び地域全体の平和と繁栄の確保においても重要な役割を果たしており、ASEAN諸国との間で安全保障・防衛分野における協力を強化し、信頼関係を増進することは重要である。

このような考えに基づき、ASEAN諸国との間では、ハイレベル・実務レベル交流を通じた信頼醸成及び相互理解の促進を行うとともに、能力構築支援、共同訓練、防衛装備・技術協力などの実質的な協力を推進している。また、ASEAN諸国との二国間協力に加え、ADMMプラスやARFといった多国間の枠組みでの協力も強化しており、16(平成28)年11月の第2回日ASEAN防衛担当大臣会合で稲田防衛大臣(当時)が今後の日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであり、ASEANの全ての国々から歓迎された。

こうした二国間・多国間の協力を積極的に促進し、アジア太平洋地域の安全保障環境を安定化させる観点から、ASEAN諸国との防衛協力・交流の強化を図っている。

参照1節2項3(防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話)図表III-2-1-4(能力構築支援の最近の取組状況)図表III-2-1-5(能力構築支援の活動実績)資料52(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)インドネシア

インドネシアとの間では、防衛分野においてもわが国と活発な協力・交流が行われており、15(平成27)年3月の日インドネシア首脳会談において、安倍内閣総理大臣とジョコ大統領は、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化に合意し、日インドネシア「2+2」を開催することについて再確認した。同年12月に東京で初めて開催された同会合では、防衛装備品・技術移転協定の交渉の開始、多国間共同訓練「コモド2016」への積極的な参加、能力構築支援を進展させることなどで合意した。17(平成29)年1月の日インドネシア首脳会議の際に発出された共同声明では、安全保障・防衛分野の緊密な協力をさらに推進することを目的として、日インドネシア「2+2」の定期開催や外務・防衛当局間協議の開催を含め、外務・防衛当局間の様々なレベルで対話を継続することの重要性が確認された。また、実務レベルでも、外務・防衛当局間協議、防衛当局間協議、各種教育・研究交流などの各種交流が行われている。

さらに、海洋学や海洋に関する国際法、国際航空法に関する能力構築支援を通じた協力にも取り組んでおり、18(平成30)年3月にはインドネシア国防省及び海軍などに対し、第2回目となる海洋に関する国際法のセミナーを実施した。

(2)ベトナム

約9千万の人口を擁する南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。14(平成26)年3月の日ベトナム首脳会談においては、両国関係を「広範な戦略的パートナーシップ」へと発展させることが合意され、また、18(平成30)年5月の日ベトナム首脳会談においては、安全保障及び防衛分野における協力を強化することが確認された。

18(同30年)4月の日ベトナム防衛相会談では、小野寺防衛大臣とリック国防大臣が両国の今後の防衛協力を更に推進すべく、防衛交流・協力の将来の方向性を示し、今後の日ベトナム防衛協力の指針となる「防衛関係に関する日ベトナム共同ビジョン」に署名した。また、地域情勢について意見交換を行うとともに、南シナ海情勢に関して、軍事化を含む、現状変更の一方的行動の自制を求めるとともに、国際法に基づいた紛争の平和的解決、実効的な南シナ海における行動規範の早期妥結の重要性について一致した。また、同年6月、シャングリラ会合の際にも日ベトナム防衛相会談を行い、PKOや能力構築支援など具体的な分野で防衛協力・交流を進めていくことで一致するとともに、南シナ海情勢について認識を共有した。

軍種間の主な交流については、18(平成30)年1月、ベトナムを訪問した陸幕長がザン総参謀長らと会談し、ベトナム軍のPKO派遣に向けて協力していくことで合意した。また、海自は、16(平成28)年4月のカムラン湾国際港への寄港を初めとして、17(平成29)年4月には「パシフィック・パートナーシップ2017」に参加した護衛艦「いずも」及び「さざなみ」がカムラン湾国際港に寄港し、医療活動、施設補修活動を実施するなど双方の交流を深めた。また、17(平成29)年12月には、空自U-4多用途支援機がダナン国際空港を訪問し、部隊間交流を実施した。18(平成30)年4月には、レー・フイ・ヴィン防空・空軍司令官が訪日し、空幕長と会談を行い、日ベトナム空軍種間の関係を強化していくことについて認識を共有した。

能力構築支援においては、空自が17(平成29)年6月に航空救難分野、同年11月に航空医学分野、同年12月にはサイバーセキュリティ分野における能力構築支援を実施した。

今後も、防衛協力・交流の覚書などを基礎として、より具体的・実務的な協力を実現すべく、関係を強化することが重要である。

(3)シンガポール

シンガポールは09(平成21)年12月、東南アジア諸国の中で、わが国との間で最初に防衛協力・交流の覚書に署名した国であり、事後、この覚書に基づき協力関係が着実に進展している。シンガポールとの間では、定期的に防衛当局間協議を行っており、これまで15回の開催実績があるほか、英国国際戦略研究所(IISS:the International Institute for Strategic Studies)が主催するシャングリラ会合には、ほぼ毎年防衛大臣が参加し、わが国の安全保障政策について説明するなど、ハイレベル交流も活発に行われている。18(平成30)年5月には、ウン・エンヘン国防大臣が訪日し、日シンガポール防衛相会談が行われた。同会談では、北朝鮮問題、「自由で開かれたインド太平洋戦略」、二国間・日ASEAN間の防衛協力や南シナ海を含む地域情勢について意見交換を行った。また、同年6月、シャングリラ会合に出席するためシンガポールを訪問した小野寺防衛大臣は、テオ・チーヒン副首相を表敬し、北朝鮮問題や二国間及び多国間の防衛協力・交流について意見交換を行った。

軍種間の主な交流実績については、17(平成29)年10月に訪日したオン陸軍司令官が陸幕長と会談し、双方が関係強化を図っていくことを確認した。17(平成29)年11月には空自C-2輸送機がパヤレバ空軍基地を訪問し、部隊間交流を実施した。また、18(平成30)年2月には空幕長が「シンガポール・エアショー」に参加し、各国空軍司令官らと意見交換を実施した。

その他、国連PKOや海賊対処活動などの国際協力業務遂行に際した寄港や軍種間交流も積極的に行われている。

(4)フィリピン

フィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。15(平成27)年1月の日比防衛相会談では、日比防衛協力・交流に関する覚書の署名が行われ、防衛相会談・次官級協議の定期的な実施、統幕長をはじめとする各幕僚長とフィリピン国軍司令官及び各軍司令官の間の相互訪問、訓練・演習への参加のほか、海洋安全保障をはじめとする非伝統的安全保障分野における協力を実施することとした。

また、同年11月の日比首脳会談では、防衛装備品・技術移転協定について大筋合意に達し、16(平成28)年2月に同協定が署名された。

さらに、16(平成28)年9月の日比首脳会談において、安倍内閣総理大臣とドゥテルテ大統領は人道支援・災害救援(HA/DR)、輸送及び海洋状況把握にかかるフィリピンの能力向上を図るため、海自TC-90練習機の移転などについて合意した。17(平成29)年1月の日比首脳会談では、能力構築支援、防衛装備協力や訓練・演習など、様々な分野で防衛協力を推進することで一致した。

同年3月には2機のTC-90をフィリピン海軍に引き渡した後、同年10月の日比防衛相会談において、小野寺防衛大臣はロレンザーナ国防大臣に対しTC-90の移転を有償貸付から無償譲渡に変更することとした旨を伝達した。18(平成30)年3月には、ヘラクレオ・アラノ・サングレーポイント海軍基地において、わが国から福田防衛大臣政務官、フィリピンからロレンザーナ国防大臣出席のもと、フィリピン海軍へ残り3機のTC-90の引き渡しが行われ、先に引き渡された2機を含むTC-90計5機の無償譲渡が完了した。この移転は、単に機体の移転だけではなく、フィリピン海軍パイロットに対する教育や同海軍などの整備要員に対する維持整備の支援を含めた協力となっている。

18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合においてロレンザーナ国防大臣と日比防衛相会談を行った。同会談では、小野寺防衛大臣から、フィリピンからの申出を踏まえ、陸自で不用となった多用途ヘリコプターUH-1Hの部品等を無償譲渡することを決定した旨を伝達するとともに、共同訓練や装備技術協力等、幅広い分野で両国の防衛協力を推進することで一致した。また、北朝鮮問題について意見交換を行うとともに、南シナ海については、ロレンザーナ国防大臣から、わが国がフィリピンの立場を支持していることに感謝する旨言及があった。

そのほか、軍種間の主な協力・交流実績については、17(平成29)年9月から同年10月の間、フィリピン・ルソン島で実施された米比共同訓練「カマンダグ2017」に陸自部隊が参加した。また、17(平成29)年11月には、海幕長がフィリピンを訪問し、メルカド海軍司令官などとハイレベル交流を行った。同年6月、9月及び11月並びに18(平成30)年2月には、海自航空機及び艦艇による親善訓練が行われ、捜索救難訓練などを通じ、フィリピン海軍との相互理解を深め、友好関係の促進を図った。17(平成29)年6月には護衛艦「いずも」がスービック港に寄港した際にドゥテルテ大統領が外国元首としては初めて乗艦するなど、フィリピンとの防衛協力は着実に深化している。

参照4章4節3項(新たな防衛装備・技術協力の構築)

(5)タイ

タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、防衛協力・交流の長い歴史を有している。また、防衛大学校への留学生の受入れについては、1958(昭和33)年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多である。

17(平成29)年11月には、山本防衛副大臣がタイを訪問し、国際防衛装備品展示会(Defense and Security2017)の視察を行ったほかタイ側との間で、防衛装備品・技術移転協定の早期締結を含め今後の二国間の防衛装備・技術協力を促進していくことで一致した。

また、防衛省・自衛隊は、05(平成17)年から米・タイ共催の多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」に継続的に参加している。18(平成30)年1月から2月の間に実施された「コブラ・ゴールド18」では、指揮所訓練などに加え、在外邦人等保護措置訓練も行われ、福田防衛大臣政務官が同訓練を視察した。

軍種間の主な交流実績については、17(平成29)年11月に護衛艦「おおなみ」がタイ海軍の主催する「ASEAN50周年記念観艦式」に参加し、その機会を通じ、海幕長はオーストラリア、インド、マレーシア、ペルー、韓国、シンガポール及びベトナムの代表とそれぞれ会談し、相互理解や友好親善を図った。また、17(平成29)年11月には空自C-2輸送機がウタパオ海軍基地を、18(平成30)年1月には空自KC-767空中給油・輸送機がドンムアン空軍基地をそれぞれ訪問し、部隊間交流を実施した。同年5月にはスリスワン国軍司令官が訪日し、山本防衛副大臣及び統幕長と会談を行った。また、同月、防衛大学校及び空自幹部学校の卒業生であるジョム空軍司令官が訪日し、空幕長との会談を行ったほか、小野寺防衛大臣を表敬し、日タイ空軍種間の関係を強化していくことについて認識を共有した。

能力構築支援事業としては、16(平成28)年以降、飛行安全及び国際航空法分野におけるセミナー等を実施しており、18(平成30)年には国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)派遣予定であるタイ陸軍に対し、UNMISS司令部の特性、施設任務及び治安に係る留意事項等についてセミナーを実施し、自衛隊による5年間のUNMISSでの経験及び教訓を共有した。

(6)カンボジア

カンボジアは、1992(平成4)年にわが国として初めて国連PKOに自衛隊を派遣した国である。また、13(平成25)年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。同年12月の日カンボジア首脳会談において、両国関係は戦略的パートナーシップへと格上げされ、会談後、小野寺防衛大臣(当時)は日カンボジア防衛協力・交流の覚書に署名を行った。17(平成29)年9月、小野寺防衛大臣はティア・バニュ国防大臣と会談し、地域情勢について意見交換を行うとともに、日カンボジア防衛協力が能力構築支援や軍種間交流など幅広い分野で進展していることを高く評価した。

能力構築支援では、これまで道路構築実習などを通じた協力強化に取り組んできたほか、17(平成29)年7月には、陸自がカンボジア軍工兵部隊に対して、施設活動(測量教官の育成)に関する教育を実施した。

(7)ミャンマー

ミャンマーとの間では、11(平成23)年3月の民政移管後、防衛事務次官がミャンマーを初訪問したほか、わが国側主催の多国間会議にミャンマーからの参加を得る形で交流を発展させてきた。13(平成25)年11月には、第1回防衛当局間の協議をネーピードーで開催し、今後の防衛交流の進め方について意見交換し、交流を強化していくことで一致した。14(平成26)年11月には、江渡防衛大臣(当時)が第1回日ASEAN防衛担当大臣会合に出席するため、議長国であったミャンマーを訪問し、その際にウェイ・ルイン国防大臣(当時)と会談し、防衛交流を促進することを確認した。

17(平成29)年8月には、日本財団の招へいにより訪日した、ミン・アウン・フライン国軍司令官が安倍内閣総理大臣を表敬したほか、統幕長とも会談を行い、防衛協力の推進などについて意見交換を行った。また、日本財団の主催により、14(平成26)年から始まった「日ミャンマー将官級プログラム」では、同国軍の将官級軍人を招へいし、自衛隊施設の視察が実施されている。17(平成29)年9月には、このプログラムのもと、同国から10名の将官が訪日し、小野寺防衛大臣への表敬などを行った。

軍種間の主な交流については、18(平成30)年1月、ミャンマーを初訪問した陸幕長がミン・アウン・フライン国軍司令官らと会談し、地域情勢や防衛協力・交流について意見交換を行うとともに、引き続き関係強化を図っていくことを確認した。

能力構築支援では、空自が17(平成29)年7月及び10月、航空気象分野における能力構築支援を、陸自が18(平成30)年2月、人道支援・災害救援(HA/DR)に関するセミナーを実施した。

(8)ラオス

ラオスとの間では、在ベトナム防衛駐在官が、11(平成23)年に在ラオス防衛駐在官併任となって以来、防衛協力・交流が徐々に進展している。13(平成25)年4月には、ラオスから初となる防衛大学校への留学生が派遣されたほか、同年8月、初の日ラオス防衛相会談が行われた。わが国は、14(平成26)年から、ラオスと共にADMMプラスにおける人道支援・災害救援(HA/DR)EWGの共同議長を務め、マルチの枠組みにおける協力を通じ、日ラオス防衛当局間の関係は大きく進展した。また、16(平成28)年11月、稲田防衛大臣(当時)がわが国の防衛大臣として初めてラオスを訪問し、チャンサモーン国防大臣との間でハイレベル交流や能力構築支援など、さらなる防衛協力の方策について意見交換を実施し、防衛協力・交流を推進することで一致した。なお18(平成30)年3月、ラオスから初めて派遣された留学生が防衛大学校を卒業した。

能力構築支援では、17(平成29)年11月に陸自がラオス陸軍工兵部隊及び衛生部隊に対して人道支援・災害救援(HA/DR)分野に関する実技教育を実施した。

(9)マレーシア

マレーシアとの間では、18(平成30)年4月、防衛装備品・技術移転協定に署名した。

能力構築支援では、17(平成29)年11月、マレーシアに陸自要員を派遣、HA/DRセミナーに参加した。

(10)ブルネイ

ブルネイとの間では、13(平成25)年8月、同国で開催された第2回ADMMプラスの際、小野寺防衛大臣(当時)がヤスミン首相府エネルギー大臣と会談を行い、ADMMプラスの取組について意見交換を行った。実務レベルでは、18(平成30)年2月、防衛審議官がブルネイを訪問し、ラーマン国防次官と防衛協力・交流に関する協議を実施した。また、同年2月には、人道支援・災害救援(HA/DR)及び捜索救難に関する能力構築支援も行われるなど、関係強化が図られている。

7 その他のアジア太平洋諸国との防衛交流・協力

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(17(平成29)年6月~18(平成30)年6月)図表III-2-1-4(能力構築支援の最近の取組状況)図表III-2-1-5(能力構築支援の活動実績)資料53(最近のその他アジア太平洋諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)ニュージーランド

ニュージーランドとの間では、13(平成25)年8月、防衛協力・交流に関する覚書の署名が行われたほか、14(平成26)年7月の日ニュージーランド首脳会談では、ACSAに関する研究を行うことで一致した。

軍種間では、17(平成29)年7月、訪日したキーティング軍司令官が統幕長と会談し、国際情勢や地域情勢などについて意見交換を行うとともに、引き続き緊密に協力していくことを確認した。同年6月には、ニュージーランド海軍フリゲート「テ・カハ」が訪日し、多国間共同訓練「パシフィック・ガーディアン」に日加艦艇とともに参加した。また、17(平成29)年11月には、空自C-2輸送機がクライストチャーチ国際空港を訪問し、部隊間交流を実施した。18(平成30)年5月には、トニー・デイビーズ空軍司令官が訪日し、空幕長と会談を行い、日ニュージーランド空軍種間の関係を強化していくことについて認識を共有した。

(2)モンゴル

モンゴルとの間では、12(平成24)年1月の防衛協力・交流に関する覚書の署名後、ハイレベル交流が進むとともに、能力構築支援を通じた協力の強化にも取り組んでいる。15(平成27)年5月の第14回シャングリラ会合に際して、日モンゴル防衛相会談を行い、両国の防衛協力・交流について意見交換を行い、同年10月の統幕長とモンゴル国軍参謀総長との会談では、PKO分野での安全保障協力の推進について合意した。

軍種間の主な交流実績については、06(平成18)年から米国及びモンゴルの共催による多国間共同訓練「カーン・クエスト」に陸自がオブザーバーを派遣しており、15(平成27)年からは、同訓練に部隊を派遣し、国連PKOに係る各種能力の維持・向上を図るとともに、参加国との相互理解の促進や信頼関係の強化を図っている。

(3)東ティモール

02(平成14)年から、国連PKOとして独立支援のために自衛隊を派遣した東ティモールとの間では、16(平成28)年6月に中谷防衛大臣(当時)が14年ぶりに東ティモールを訪問し、クリストバウン国防大臣(当時)との間で、能力構築支援、留学生の防衛大学校などへの派遣、海自艦艇の寄港などを通じて防衛当局間の交流を継続・深化させていくことで一致した。

能力構築支援では、12(平成24)年から東ティモール国防軍に対する車両整備に係る教育支援を継続している。また、陸自は15(平成27)年から東ティモールに対する豪軍主催の訓練「ハリィ・ハムトゥック」に参加し、施設分野での支援を継続している。

(4)スリランカ

17(平成29)年7月にウィジェワルダナ国防担当国務大臣が宮澤防衛大臣政務官(当時)と今後の防衛交流などについて意見交換を行うとともに、同国コロンボ港に寄港中の護衛艦「いずも」に乗艦した。また、同年11月には、訪日した同大臣が小野寺防衛大臣を表敬し、海洋監視能力の向上や捜索救難分野の訓練における協力などについて意見交換を行った。

護衛艦「いずも」艦内において説明を受けるスリランカ国防担当国務大臣一行

護衛艦「いずも」艦内において説明を受けるスリランカ国防担当国務大臣一行

軍種間の主な交流については、18(平成30)年3月、スリランカを初訪問した統幕長がシセリーナ大統領と会談し、安全保障環境に係る認識を共有するとともに、日スリランカ防衛交流の深化の必要性について意見交換した。また、海自は17(平成29)年7月、8月及び12月にスリランカ周辺海域などにおいて親善訓練を実施し、相互理解と友好親善の深化を図った。

さらに、18(平成30)年4月に第30次海賊対処部隊として進出中の護衛艦「あけぼの」がハンバントタ港に寄港した際、能力構築支援として同艦内においてスリランカ海軍等に対して捜索救難に関するセミナーを実施した。

8 欧州諸国との防衛協力・交流

欧州は、わが国と普遍的価値を共有し、また、テロ対策や海賊対処などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、欧州諸国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州の双方にとって重要である。

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(17(平成29)年6月~18(平成30)年6月)
資料54(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

(1)英国

英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処などのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。

英国との間では、12(平成24)年6月に防衛協力のための覚書が取り交わされたのに続き、13(平成25)年7月に防衛装備品・技術移転協定が発効したほか、14(平成26)年1月には日英情報保護協定が発効し、二国間の防衛装備・技術協力及び情報共有の基盤が整備されている。

14(平成26)年5月の日英首脳会談において、両首脳は、安全保障分野の協力強化のため、日英「2+2」の開催、ACSAの交渉開始などについて一致した。これを受け、15(平成27)年1月に第1回日英「2+2」が開催され、安全保障及び防衛分野の協力を強化していくことで一致するとともに、戦略的情勢認識の共有を図った。また、16(平成28)年1月の第2回日英「2+2」では、共同訓練の推進、防衛装備・技術協力や東南アジア諸国に対する能力構築支援での連携などについて一致したほか、ACSAの可能な限り早期の締結を目指すことについて確認した。17(平成29)年1月には、日英ACSA15への署名が行われ、同年4月の国会承認を経て同年8月に発効した。これに併せて関連する国内法令も整備された。

日英ACSAの発効により、共同訓練や大規模災害対処などにおいて、自衛隊と英軍との間で、水・食糧・燃料・輸送などの物品や役務を統一的な手続により相互に融通することが可能となり、日英間の戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなった。また、17(平成29)年8月の日英首脳会談の際に発表された「日英安全保障共同宣言」においては、二国間の安全保障協力に関する関係当局間の具体的措置を伴う行動計画を策定することで一致した。17(平成29)年12月の第3回日英「2+2」においては陸自と英陸軍の共同訓練の実施、英海軍艦艇のアジア太平洋地域への展開及び共同訓練の実施や新型空対空ミサイルの共同研究としての試作などが共同声明に盛り込まるなど、両国の安全保障協力は着実に深化している。

護衛艦「いずも」に乗艦したメイ首相と小野寺防衛大臣(17(平成29)年8月)

護衛艦「いずも」に乗艦したメイ首相と小野寺防衛大臣
(17(平成29)年8月)

18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合においてウィリアムソン国防大臣と日英防衛相会談を行った。同会談では17(平成29)年12月の日英「2+2」での共同声明を踏まえ、英国軍艦の展開や、18(平成30)年秋にわが国で実施予定の陸軍種間の共同訓練を含め、軍種間交流や共同訓練などの分野で日英防衛協力を引き続き進展させていくことで一致した。また、防衛装備・技術分野についても意見交換を行い、「将来戦闘機における協力の可能性に係る日英共同スタディ」をはじめ、引き続き防衛装備・技術協力を進めていくことで一致した。

さらに北朝鮮問題については、小野寺防衛大臣から、今般、英海軍と海自の間で北朝鮮による「瀬取り」対策のための警戒監視活動において協力できたことは、国連安保理決議の実効性を確保する上で有意義であり、このような活動の結果、北朝鮮が政策を変更しつつある旨述べた。また、制裁継続の必要性についても言及し、これに対しウィリアムソン国防大臣から、英国としてもわが国の立場を支持する旨応答があった。

実務レベルの交流としては、18(平成30)年2月、訪英した防衛事務次官が、カーゾン英国国防担当閣外大臣兼貴族院副理事を表敬した。

軍種間の主な交流実績については、18(平成30)年3月、訪英した統幕長が、ピーチ国防参謀総長と会談し、情勢認識や日英防衛協力・交流などについて意見交換を実施した。17(平成29)年11月、訪英した陸幕長がカーター陸軍参謀総長と会談し、水陸両用分野における日英協力などについて意見交換した。また、海自は、18(平成30)年4月、英海軍フリゲート「サザーランド」と関東南方海域において日英共同訓練を実施した。空自については、17(平成29)年7月に空自KC-767空中給油・輸送機が英国で開催されたエアショー「Royal International Air Tatoo(RIAT)」に参加するとともに、タイフーン戦闘機及びボイジャー空中給油・輸送機との親善訓練を含む部隊間交流を実施した。また、同年12月には、姉妹飛行隊交流として、空自の戦闘機操縦者3名がコニングスビー空軍基地を訪問し、部隊間交流を実施した。

(2)フランス

フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。

14(平成26)年1月には、パリで第1回日仏「2+2」が開催され、同年7月にはル・ドリアン国防大臣が訪日し、防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。15(平成27)年3月に東京で開催された第2回日仏「2+2」では、テロの脅威を強調のうえ、情報交換やアフリカ・中東での協力を強化し、国際社会と協力してテロとの闘いに取り組んでいくこと、防衛装備・技術協力、海洋安全保障などの分野での協力を強化していくことなどを確認するとともに、日仏防衛装備品・技術移転協定の署名が行われた。17(平成29)年1月には、パリで第3回日仏「2+2」が開催され、①日仏ACSAの交渉開始、②防衛装備・技術分野での初の具体的協力案件として、機雷対処用水中無人航走体に関する協力を具体化していくこと、③共同訓練を推進することを確認したほか、宇宙状況監視(SSA)をはじめとする宇宙分野での協力を具体化することへの期待を表明した。これを受けて、17(平成29)年3月には、第2回日仏包括的宇宙対話が開催され、日仏間のSSA協力を強化するため、「日本国の権限のある当局とフランス共和国国防大臣との間の宇宙状況把握に係る情報共有に関する技術取決め」に署名し、具体的な協力を促進することで一致した。

18(平成30)年1月に東京で開催された第4回日仏「2+2」では、日仏ACSA交渉において大枠合意に至ったことを歓迎するとともに、初の協力案件となる次世代機雷探知技術に関する共同研究を早期に開始することで一致した。また、遠洋航海演習「ジャンヌ・ダルク2017」の一環での仏海軍艦隊の訪日やわが国周辺及びグアム・テニアン島での初の日仏英米共同訓練(ARC17)の実施を歓迎するとともに、途上国の能力構築支援に係る連携を強化していくことで一致した。また、同年1月に実施された日仏防衛相会談においては、これらについて改めて確認するとともに日仏ACSAの早期締結に向け引き続き協力していくことで一致した。

日仏「2+2」(18(平成30)年1月)

日仏「2+2」(18(平成30)年1月)

18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合においてパルリ軍事大臣と日仏防衛相会談を行った。同会談では朝鮮半島や南シナ海を含む地域情勢について意見交換を行うとともに、18(平成30)年1月に実施された日仏「2+2」の合意に従い、今後も様々な機会をとらえて共同訓練などの防衛交流・協力を実施していくことで一致した。また、初の共同研究となる次世代機雷探知技術に関する協力の早期開始を確認するとともに、さらなる防衛装備・技術協力について議論して行くことを含め、引き続き、防衛装備・技術協力を含む様々な面で協力を深化させていくことで一致した。

軍種間における主な交流実績については、自衛隊は、14(平成26)年から、ニューカレドニア駐留仏軍主催人道支援・災害救援(HA/DR)訓練(「赤道」)に参加しており、17(平成29)年9月には「赤道17」に参加した。また、17(平成29)年11月には、訪仏した陸幕長がボッセー陸軍参謀総長と会談し、日仏英米四か国共同訓練などの成果を踏まえ、今後の日仏防衛協力・交流の強化について意見交換した。18(平成30)年2月には、仏海軍フリゲート「ヴァンデミエール」と関東南方海域において、日仏共同訓練を実施した。

(3)NATO

14(平成26)年5月に安倍内閣総理大臣が欧州を訪問した際、NATO本部においてラスムセン事務総長(当時)と会談を行い、「日NATO国別パートナーシップ協力計画」に署名した。

この計画に基づき、同年12月、女性・平和・安全保障分野における日NATO協力として、初めてNATO本部に自衛官を派遣するとともに、15(平成27)年以降、「ジェンダー視点のNATO委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合」に防衛省・自衛隊から参加している。

17(平成29)年1月、稲田防衛大臣(当時)が10年ぶりにブリュッセルのNATO本部を訪問し、ストルテンベルグ事務総長と会談を行った。同会談では、今日の安全保障上の諸課題に対処していく上での日NATO協力の重要性を確認し、海賊対処を含む海洋安全保障、サイバー、人道支援・災害救援(HA/DR)、女性・平和・安全保障をはじめとする様々な分野における協力を推進していくことで一致した。また、同会談において、以前よりNATO側から提案のあった欧州連合軍への連絡官派遣について、稲田防衛大臣(当時)から連絡官派遣の意向を伝え、同年2月から、欧州連合軍最高司令部に新規に連絡官が配置された。

17(平成29)年10月、訪日したストルテンベルグ事務総長は小野寺防衛大臣と会談し、日NATO防衛協力・交流や地域情勢について意見交換を行うとともに、護衛艦「てるづき」を視察し、海洋安全保障分野におけるわが国の取組についてNATO側の理解の促進を図った。また、17(平成29)年6月、メルシエNATO変革連合軍最高司令官が初訪日したほか、18(平成30)年3月、統幕長がベルギーのNATO本部を訪問し、パベル軍事委員長との会談において、情勢認識や日NATO防衛協力・交流について意見交換を行った。

(4)その他の欧州諸国

ドイツとの間では、17(平成29)年7月、日独防衛装備品・技術移転協定の署名が行われたほか、17(平成29)年7月、防衛審議官が第1回日独次官級戦略的対話出席のために、訪独するなど、ハイレベルを含む交流が進展している。

18(平成30)年6月、小野寺防衛大臣はシャングリラ会合においてライエン国防大臣と日独防衛相会談を行い、様々な分野で二国間防衛協力が進展していることを高く評価し、今後もNATOを通じた協力を含め、特にサイバー分野において、協力関係を強化していくことで一致した。

イタリアとの間では、16(平成28)年6月に日伊情報保護協定が発効したほか、17(平成29)年5月には、日伊防衛装備品・技術移転協定への署名が行われるなど、防衛協力を行っていく上での制度面の整備が進んでいる。17(平成29)年5月には、ピノッティ国防大臣が訪日し、日伊防衛相会談を実施するとともに、今後、装備・技術協力などを含め、様々な分野での協力を通じ、二国間協力を深化させる方向で一致した。

スペインとの間では、18(平成30)年1月、デ・コスペダル国防大臣が訪日し、日スペイン防衛相会談を実施した。同会談では14(平成26)年11月に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致した。

オランダとの間では、16(平成28)年12月にヘニス国防大臣が訪日し、日オランダ防衛相会談に際して防衛協力・交流の覚書の署名が行われた。

北欧諸国やバルト3国などとの間では、17(平成29)年9月にフィンランド、10月にはスウェーデンと局長級の防衛当局間協議を実施した。また、18(平成30)年1月には、山本防衛副大臣がスウェーデンを訪問し、フルトクヴィスト国防大臣と意見交換を実施し、防衛装備・技術分野を含む防衛交流・協力のさらなる前進に努めることで一致するなど、ハイレベルの交流などを通じて関係の強化が図られている。

18(平成30)年1月の安倍内閣総理大臣による欧州各国歴訪16の中で、エストニアにおいては同国とのサイバー協議などの機会を活用し、引き続き両国の協力を進めていくことで一致し、同国に所在するNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)へのわが国の参加が承認されたことを歓迎した。また、ラトビアにおいてはクチンスキス首相と会談し、ベルグマニス国防大臣の訪日の機会などを通じ、日ラトビア間で安全保障面での議論を一層深めていくことで一致した。

18(平成30)年5月、小野寺防衛大臣はフィンランド及びエストニア両国を訪問した。フィンランドにおいて、小野寺防衛大臣は、ニーニスト国防大臣と会談し、同年8月に海自練習艦隊のヘルシンキ寄航が予定されていることに触れつつ、今後幅広い分野で、防衛協力を深化させていきたい旨述べ、防衛当局間協議や部隊間交流などを通して、両国間の協力をより一層強化していくことで一致した。また、エストニアにおいては、ルイク国防大臣と会談し、今後、防衛省からNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)への職員派遣を通じて、サイバー分野での協力関係をさらに発展させたい旨述べ、サイバーの分野での協力を含め、両国間の協力をより一層強化していくことで一致した。

9 その他諸国

参照図表III-2-1-1(ハイレベルの交流実績(17(平成29)年6月~18(平成30)年6月)
資料55(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(過去3年間))

カナダとの間では、18(平成30)年4月に日加ACSAの署名が行われたほか、これまで、ハイレベル交流や防衛当局間協議などが行われてきた。直近では、17(平成29)年11月に山本防衛副大臣がサージャン国防大臣と会談し、同年7月に実施した日加共同訓練「KAEDEX」や同年11月のカナダ海軍潜水艦「シクーティミ」の横須賀訪問をはじめとする両国の防衛協力が進展していることを歓迎するとともに、防衛協力を一層推進していくことで一致した。また、18(平成30)年2月、訪日したヴァンス参謀総長が統幕長と会談し、安全保障環境に係る認識を共有するとともに、日加防衛交流を今後も推進していくことで合意した。

軍種間の主な交流実績については、17(平成29)年7月にカナダ海軍艦艇「ウィニペグ」及び「オタワ」が、17(平成29)年10月から12月の間には同海軍潜水艦「シクーティミ」が訪日した。これらの艦艇は、海自との間で日加ニュージーランド共同訓練「パシフィック・ガーディアン」、同年11月には日米加共同訓練、同年7月及び12月には日加共同訓練「KAEDEX」などを実施した。空自については、まず、17(平成29)年7月、カナダの救難輸送機部隊が小牧基地を訪問し、部隊間交流を実施したほか、同月には、空自のKC-767空中給油・輸送機がコモックス空軍基地に寄航し、部隊間交流を実施した。また、同年9月には空幕長がカナダを訪問し、フッド空軍司令官とハイレベル交流を実施した。

コロンビアとの間では、15(平成27)年3月、訪日したピンソン国防大臣と初の防衛相会談を行った。また、16(平成28)年12月には、同国との間で防衛交流に関する覚書に署名し、今後具体的な交流を進めていくこととしている。

ブラジルとの間では、18(平成30)年4月から5月にかけて、山本防衛副大臣が同国を訪問し、シルヴァ・イ・ルーナ国防大臣と会談を行った。山本防衛副大臣とシルヴァ・イ・ルーナ国防大臣は、両国間の防衛協力・交流や地域情勢について意見交換を行い、両国の防衛協力・交流覚書の署名を早期に行うことで一致した。また、ハイレベルにおける交流、HA/DR分野での協力を含め、両国の防衛協力・交流を更に発展させることで一致した。また、ブラジル軍で活躍する日系軍人を激励した。

カザフスタンとの間では、17(平成29)年7月、小林防衛大臣政務官(当時)がスカコフ国防次官と会談し、政務レベルでは初めてとなるハイレベル交流を実現し、「日本国防衛省とカザフスタン共和国国防省との間の防衛協力・交流に関する覚書」に署名した。

ウズベキスタンとの間では、17年(平成29)年9月、同国に対する初の能力構築支援事業として、軍医療関係者3名を招へいし、防衛省及び防衛医大において研修を実施し、医官の育成、防衛医大の概要、防衛医学研究センターの研究成果等についてブリーフィングを実施したほか教育現場の視察を行った。

中東諸国との間でも協力・交流が進められている。防衛省・自衛隊は、現在、海外で唯一自衛隊の拠点が存在するジブチとの間では、海賊対処のための協力を進めている。17(平成29)年9月には、同国を訪問した山本防衛副大臣がバードン国防大臣を表敬し、自衛隊の活動拠点の運用に関するジブチ政府の支援に対する感謝を述べるとともに、わが国がジブチに対して実施している災害対処能力強化支援事業などに関する意見交換を行った。

ジブチを訪問し、バードン国防大臣を表敬した山本防衛副大臣(17(平成29)年9月)

ジブチを訪問し、バードン国防大臣を表敬した山本防衛副大臣
(17(平成29)年9月)

また、トルコとの間では、12(平成24)年7月に、防衛事務次官がドゥンダル国防次官(当時)との会談において防衛交流・協力の意図表明文書に署名した。13(平成25)年3月には、ユルマズ国防大臣(当時)が訪日して日トルコ防衛相会談を行い、防衛当局間協議を早期に開催することや各種の防衛交流を進めていくことについて合意した。

ヨルダンとの間では、16(平成28)年10月、アブドッラー国王が訪日した際に、日ヨルダン防衛交流に関する覚書に署名した。また、17(平成29)年7月には、稲田防衛大臣(当時)とムルキー首相兼国防大臣が会談し、防衛協力及び交流に関する覚書に署名し、日ヨルダン間の防衛交流・協力の基礎が整ったことを評価するとともに、今後具体的な防衛協力を進めていくことについて合意した。

エジプトとの間では、17(平成29)年9月、山本防衛副大臣が防衛省の政務レベルとして初めてエジプトを訪問し、ヘガージ参謀長と会談を実施した。双方は、会談において、両国間の防衛交流の進展を歓迎するとともに今後も交流・協力を継続していくことで一致した。

エジプトを訪問し、ヘガージ参謀長と握手する山本防衛副大臣(17(平成29)年9月)

エジプトを訪問し、ヘガージ参謀長と握手する山本防衛副大臣
(17(平成29)年9月)

軍種間の主な交流実績については、17(平成29)年8月、訪日したヘガージ参謀長が統幕長と会談を行い、両国間の防衛交流を今後も進展させていくことで合意した。

サウジアラビアとの間では、16(平成28)年9月にはムハンマド・ビン・サルマン副皇太子兼国防大臣が訪日し、日サウジアラビア防衛相会談を行うとともに、防衛交流に関する覚書に署名した。

アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート及びカタールとの間の交流などについては、安倍内閣総理大臣が13(平成25)年5月にUAEを、同年8月にバーレーン、クウェート及びカタールを訪問し、これらの国との間で安全保障・防衛分野での協力の促進の必要性について認識を共有した。また、12(平成24)年4月にはバーレーンとの、15(平成27)年2月にはカタールとの間で防衛交流に関する覚書が署名された。17(平成29)年11月には、大野防衛大臣政務官がUAEを訪問し、ダーヒリ国防次官らと会談を行うとともに、「ドバイ・エアショー2017」を視察した。「ドバイ・エアショー2017」には、国外運航訓練に従事中の空自C-2輸送機が参加するとともに、防衛装備庁が初めてC-2輸送機関連のブースを出展した。18(平成30)年5月には、訪日したボワルディ国防担当国務大臣が山本防衛副大臣と会談し、同日署名された日UAE防衛協力・交流覚書に基づき、今後具体的な防衛協力をより一層推進していくことで一致した。

UAEを訪問し、ダーヒリ国防次官と会談する大野防衛大臣政務官(17(平成29)年11月)

UAEを訪問し、ダーヒリ国防次官と会談する大野防衛大臣政務官
(17(平成29)年11月)

軍種間では、17(平成29)年7月、空自KC-767空中給油・輸送機がアルダフラ空軍基地を訪問し、部隊間交流を実施した。

オマーンとの間では、14(平成26)年1月、安倍内閣総理大臣がカブース国王と会談を実施し、海上航路の安全確保のための海賊対策などを含む海洋安全保障分野での協力強化や防衛交流の促進について合意した。

11 普遍的価値:国家安全保障戦略においては、「自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配など」を普遍的価値としている。

12 正式名称:日本国の自衛隊とオーストラリア国防軍との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とオーストラリア政府との間の協定従来の適用対象となる活動に加え、①国際連携平和安全活動、②国際平和共同対処事態、③重要影響事態、④武力攻撃事態等及び⑤存立危機事態における活動のほか、⑥在外邦人等の保護措置、⑦海賊対処行動、⑧機雷等の除去及び⑨情報収集活動についても新たにその適用対象となった。

13 正式名称:日本国防衛省と中華人民共和国国防部との間の海空連絡メカニズムに関する覚書

14 正式名称:領海の外側に位置する水域及び上空における事故の予防に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定

15 対象となる活動として、①共同訓練、②国際連合平和維持活動、③国際連携平和安全活動、④人道的な国際救援活動、⑤大規模災害への対処、⑥在外邦人等の保護措置及び輸送、⑦連絡調整その他の日常的な活動、⑧それぞれの国内法令により物品又は役務の提供が認められるその他の活動が挙げられている。

16 安倍内閣総理大臣は、18(平成30)年1月、わが国の内閣総理大臣として初めてエストニア、ラトビア、リトアニア、ブルガリア、セルビア及びルーマニアのバルト三国及び南東欧三か国を訪問した。