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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

12 その他の対応

1 軍事情報の収集

情勢の推移に応じて的確に防衛政策を立案し、また、各種事態への対処において防衛力を効果的に運用するためには、わが国周辺などにおける中長期的な軍事動向を把握するとともに、各種事態の兆候を早期に察知することが必要である。このため、防衛省・自衛隊は、平素から、各種の手段による情報の迅速・的確な収集に努めている。

防衛省・自衛隊による具体的な情報収集の手段としては、①わが国上空に飛来する軍事通信電波や電子兵器の発する電波などの収集・処理・分析、②各種画像衛星(情報収集衛星42を含む)からのデータの収集・判読・分析、③艦艇・航空機などによる警戒監視、④各種公刊情報の収集・整理、⑤各国国防機関などとの情報交換、⑥防衛駐在官などによる情報収集などがあげられる。

わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している中で、情報能力の強化が一層重要な課題となっていることから、防衛省は、現在、収集・分析・共有・保全などの全ての段階における情報能力の総合的強化を図っている。具体的には、各種情報を融合して情勢を視覚化するなどによる地理空間情報の高度な活用、教育課程の統合・強化などによる能力の高い分析官の確保、防衛駐在官の派遣体制の強化などを進めることとしている。

こうした中、18(平成30)年2月には、昨今の欧州を巡る情勢の変化を受けて、平成26(2014)年度以降派遣をとりやめていたフィンランドに防衛駐在官を再派遣するとともに、18(平成30)年3月には、わが国にとって重要なシーレーンに位置するフィリピンやベトナムに追加派遣した。また、平成30(2018)年度中に、太平洋岸諸国における戦略的な情報収集などの重要性から、チリへの新規派遣を計画するとともに、シーレーンの沿岸国であり、部隊間交流、能力構築支援、防衛装備・技術協力の様々な分野が進展しているマレーシアや、欧州との連携・協力、相互の安全保障基盤を堅固なものにする必要性から、NATO及びEUの本部が所在するベルギーへの追加派遣を計画している。

参照図表III-1-2-19(防衛駐在官派遣状況)

図表III-1-2-19 防衛駐在官派遣状況

2 電磁パルス攻撃(EMP:Electro Magnetic Pulse)に対する取組

電磁パルス攻撃とは、核爆発などにより、瞬時に強力な電磁波を発生させ、電子機器に過負荷をかけ、誤作動させたり破壊したりするものである。

このような攻撃は、防衛分野のみならず国民生活全体に影響がある可能性があり、内閣官房を中心として、防衛省のほか、経済産業省、国土交通省など政府全体で必要な対策を検討していくこととしている。

防衛省・自衛隊においては、各自衛隊の情報を全国で共有するために必要となる通信網の多重化を推進するほか、電磁パルス攻撃に対する装備品の防護に関する研究を行うとともに、平成30年度予算において、電磁パルス弾に関する要素技術及び防護技術に関する検討を行うこととしている。

42 政府の情報収集衛星は、内閣衛星情報センターにおいて運用されているものであり、防衛省は他省庁とともに、情報収集衛星から得られる画像情報を利用している。