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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 島嶼(とうしょ)部に対する攻撃への対応

1 基本的考え方

わが国は多くの島嶼を有するが、これに対する攻撃に対応するためには、安全保障環境に即した部隊などの配置とともに、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、海上優勢・航空優勢を獲得・維持することが重要である。

事前に兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、敵に先んじて部隊を展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。島嶼への侵攻があった場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回のための作戦を行う。また、弾道ミサイル、巡航ミサイルなどによる攻撃にも的確に対応する。

参照図表III-1-2-6(島嶼防衛のイメージ図)

図表III-1-2-6 島嶼防衛のイメージ図

2 防衛省・自衛隊の取組

南西地域の防衛態勢強化のため、空自は、16(平成28)年1月の第9航空団の新編に加え、17(平成29)年7月、南西航空方面隊を新編した。陸自は、16(平成28)年3月の与那国沿岸監視隊などの新編に加え、18(平成30)年3月、本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団を新編するとともに、今後、奄美大島、宮古島、石垣島に初動を担任する警備部隊などを配置する。海自は、P-1固定翼哨戒機やSH-60K回転翼哨戒機などを取得する。これらにより、常時継続的な情報収集・警戒監視態勢や事態発生時に迅速な対処が可能な体制を整備することとしている。

また、部隊の迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、おおすみ型輸送艦の改修、多機能艦艇のあり方を検討するとともに、V-22オスプレイ及びC-2輸送機を導入することにより、機動展開能力の向上を図っていく。

特にV-22オスプレイの運用については、防衛省はその配備先として、統合運用における関連部隊の位置関係や滑走路長、地元への負担を軽減できる地理的環境などから、佐賀空港を最適の飛行場と判断したところであり、丁寧な地元説明を行い、理解を得たいと考えている13

さらに、平成30年度予算において、島嶼部に対する攻撃に対応するため、戦闘機(F-35A)6機、新空中給油・輸送機(KC-46A)1機、ティルト・ローター機(V-22)4機の取得などに加え、島嶼防衛用高速滑空弾や島嶼防衛用新対艦誘導弾の要素技術の研究に関する経費を計上した。

このほか、水陸両用作戦に関する能力向上のため、各種訓練にも取り組んでいる。17(平成29)年10月から11月には、米国における米海兵隊との実動訓練「ドーンブリッツ17」、同年11月には自衛隊統合演習14(実動演習)、18(平成30)年1月から2月には、米国における米海兵隊との実動訓練「アイアンフィスト18」、同年5月には、水陸機動団新編後に海自と連携した初の訓練であり、自衛隊施設外での実戦的な訓練でもある水陸機動団演習を、九州西方海域及び種子島などにおいて実施した。

参照図表III-1-2-7(南西諸島における主要部隊配備状況)

図表III-1-2-7 南西諸島における主要部隊配備状況

「アイアンフィスト18」において水陸両用車から下車・展開する陸自隊員(18(平成30)年1月)

「アイアンフィスト18」において水陸両用車から
下車・展開する陸自隊員(18(平成30)年1月)

13 佐賀空港の西側に駐機場や格納庫などを整備し、目達原駐屯地から移駐する約50機のヘリコプターと新規に取得する17機のオスプレイと合わせて約70機の航空機を配備することを想定している。

14 17(平成29)年11月6日から同月24日の間、沼津海浜訓練場、種子島・対馬周辺区域及び自衛隊施設・関連海空域において実施された。この演習には、陸・海・空自衛隊の人員約1万5,000人、車両約1,500両、艦艇6隻、航空機約170機が参加し、わが国の防衛にかかる自衛隊の統合運用能力の維持・向上を図ることを目的として様々な訓練を実施した。