平成二十七年 中谷防衛大臣 年頭の辞

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平成二十七年 中谷防衛大臣 年頭の辞

新年、あけましておめでとうございます。毎日、寒い日が続いていますが、年明け早々から、全国各地で、そして世界各地で、防衛省・自衛隊の各組織が、力強い使命感を持って任務に取り組んでいただいており、心から感謝申し上げます。

昨年は、災害が多い一年でした。

2月には、埼玉県、群馬県、山梨県などの大雪に伴う災害派遣を実施し、多くの孤立集落を救援しました。

8月には大雨が各県を襲い、広島県では、土砂災害で死者が74人となりました。暗闇の中で木がなぎ倒され、大きな石が土砂と共に落下してくる状況は、想像するだに恐ろしく、警察も消防も、状況の把握すらできていない状態での災害派遣となりましたが、降りしきる雨の中、第13旅団の隊員は、懸命に最後まで行方不明の方を探してくれました。

9月には、御嶽山の噴火により、紅葉を楽しもうと登った人々が、一瞬にして、悲惨な事故に遭い、死者、行方不明者が63人となりました。標高3,067 mの御嶽山山頂において、噴火の続く危険な中、台風による強風にさらされ、また、雪が吹き荒れるギリギリの時期まで実施した人命救助と捜索のオペレーションは、自衛隊が高い使命感と能力、そして統率をされている組織を持っていることの証(あかし)であり、関係者より心からの感謝をいただくとともに、国民の皆様からは信頼と高い評価をいただいています。この人命救助、捜索には、第12旅団を中心として、ヘリや航空機の各部隊も参加しましたが、台風の影響による活動の中断や有毒な火山ガスの発生など、非常に厳しい状況の下、膝まで灰に埋まりながら、まさに自らの危険を顧(かえり)みず、献身的なものでありました。防衛省・自衛隊は、災害派遣活動を通じても、国民、地域の方々、特に災害に遭われた人達にとって、大変心強い存在になっているはずです。

11月には、長野県北部でも震度6弱の地震が発生し、住宅142棟が全半壊しました。この際も第12旅団の皆さんは、給水支援などの民生支援を実施し、多くの感謝の声をいただいております。

そして、12月には、四国での風雪災害派遣。剣山(つるぎさん)のふもとで何日も、孤立している山間部の集落への道路啓開、人員物資輸送、停電復旧など、降りしきる雪の中、スキーもカンジキもない四国の第14旅団の皆さんには、寒さをこらえ不眠不休の作業をしていただきました。

大変だったのは、災害派遣だけではありません。
我が国周辺の安全保障環境は、ますます厳しくなっており、中国やロシアなどの航空機に対する自衛隊機によるスクランブルの回数は、今年度上半期で既に533回に達しており、これらの活動に対し、常に危険を顧みず常に緊張感を持って即応態勢を維持していただいています。夜も寝ずに、情報警戒監視活動についている人、暑い日も寒い日も、汗と油にまみれて自衛隊機を整備し、その安全確保のために、日々努力を重ねている隊員、自衛隊には、全国各地で、黙々と地道な監視活動を続けていただいている隊員がいることに深く敬意を表します。

中国は、昨年12月も海軍艦艇が我が国周辺海域を航行させており、海軍艦艇の太平洋への進出を常態化をさせておりますが、東シナ海では領海侵入のほか、火器管制レーダーの照射、「東シナ海防空識別区」の設定、戦闘機による自衛隊機への異常な接近といった、不測の事態を招きかねない危険な行為を繰り返しており、極めて危険な状態です。

さらに、北朝鮮は、弾道ミサイルの発射や核実験実施の示唆など挑発的な言動を続けており、サイバー攻撃の可能性など、新しい危機や国家の防衛にも対処しなければならない時代にあります。しかし、我が国には、「何が起こっても、国の領土と国民の安心と命を守る」という確固たる信念のもと、昼夜を問わず、我慢の限界に耐え、緊張感を持って、警戒監視などの任務についている隊員の皆さんがいます。このような運用を可能とするため、後方の支援部隊や機関の皆さんがいます。そして、まさに「縁の下の力持ち」となって後方支援をしてくれている業務隊の皆さんがいます。自衛隊は、みんなが力を合わせて、心を合わせて、この国を守っているのです。

海外に目を向けますと、昼間の気温が50℃に及ぶ灼熱のジブチを拠点として、各国と協力して海賊対処に取り組む隊員がいます。標準的な護衛要領に囚われず、護衛船団から落後する外国船を守り、礼儀を持って日本人のきめ細かな「おもてなしの心」を示してくれています。

また、アフリカの南スーダンでは、電気も水道もない灼熱の地でPKOの任務に付いている隊員さんがいます。極寒の地、南極地域で行われる科学的調査への協力のため、昭和基地接岸に向けて航行を続けている砕氷艦(さいひようかん)「しらせ」の乗組員の皆さん、そして、世界各地の在外公館や国際機関などでミリタリーアタッシェやシビルアタッシェなどとして活躍している隊員の皆さんもいます。

さらには、自衛隊や米軍の施設に対して、自衛隊の適切な運用や米軍の安定的な駐留を確保すべく、これらが所在する自治体などの御理解・御協力を得るため、地元の方々に寄り添いながら、誠心誠意、説明・対応をしてくれている隊員の皆さん。また、募集・広報、援護に当たっている地方協力本部の皆さん、演習場、基地の運営で住民の方々に御理解・御協力を得るため、日頃から説明などをしてくれている事務官の皆さん、そして、医官や教育関係に携わる方々、また、技術研究にいそしむ隊員の皆さんなど、防衛省・自衛隊にはたくさんの任務を持って頑張っている隊員が存在します。

約25万人の防衛省職員・自衛隊の皆さんの職務と日頃の頑張りを、全てここで取り上げることはできませんが、皆さんが心を合わせて、いついかなる事態が発生するか分からない状況の中、それぞれが与えられた任務・職務を常に緊張感を持ってきちんと遂行していることで、我が国の防衛は成り立っていること、ここで、心から感謝し、御礼を申し上げます。

果たして、今年1年は、どんな年になるでしょうか。それは、誰にもわかりません。隊員の皆さんにおかれては、いかなることがあろうとも、国民の負託に応え、我が国と世界の平和や安定に貢献すべく、一人一人が、自らの任務の重要性に思いを致し、規律を維持しつつ、一層職務に精励することを期待をいたします。

さて、本日は、新しい年を迎えるに当たりまして、防衛大臣として、皆さんと共に一丸となって取り組むべき防衛省の目標について、1つだけお話しをいたします。それは、切れ目なく国を守るための安全保障法制の整備についてです。

我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しくなってきており、もはや、どの国も一国のみで平和を守ることはできず、国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待しております。

昨年の7月に、政府は現在の安全保障環境を踏まえ、より万全の備えをとるため、法整備を行うことへの閣議決定を行いました。この中で、「憲法上許容される「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と明示をされました。すなわち、他国に対する武力攻撃が発生した場合、その目的や規模などによっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得るため、その際に必要最小限度の実力を行使することは、憲法上の下でも許されるというものです。もちろん、こうした武力の行使は、他国の防衛それ自体を目的とするものではありません。あくまでも我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものです。
我が国の平和と独立を守るという自衛隊の使命にこれからも変わりはありません。また、自衛隊員に与えられる任務は、これまでと同様に危険を伴うものですが、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守り抜くためのものであることにも変わりはありません。その目的は、戦争をすることでも、他国を侵略することでもありません。しっかりと我が国を守るためのものであります。

今後、グレーゾーンから国際平和協力、集団的自衛権に関するものまで、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とするための関連法案を、次期通常国会において提出できるよう、精力的に作業を進めてまいりますが、その際、自衛隊が国民の負託に今後ともしっかりと応えることができ、現場の部隊や隊員が判断に迷うことなく任務を遂行できるような法制度とすることができるよう全力で取り組んでまいります。

昨年は、防衛省・自衛隊は、発足から60年を迎えました。これも、隊員の皆さん及び先達(せんだつ)の方々による積年の弛(たゆ)まぬ努力と、国民の皆様の御理解・御協力があったからこそであり、その結果、国内外から高く評価され、信頼される組織となったわけであります。日本は、先の大戦で300万人を超す多くの人々が亡くなりましたが、その人々の死を無にすることがないよう、国の安全を確保するために自衛隊が作られ、平和を守ってまいりました。常により良い日本をつくる努力を続けることが、残された私どもに課された義務であり、後に来る時代への責任であると思います。そして、これからの日本のつつがない発展を求めていくときに、日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとより、できるだけ多くの国々と共に支え合って歩んでいけれるよう、努力をしてまいります。

最後に、私の基本方針は、「原点回帰」であります。実際に行動する隊員が、より高い能力を発揮するためにどうあるべきなのか。その答えは現場にあります。基本事項が確実にできるよう、あらゆる事態に対応できるよう、防衛省・自衛隊の隊員が心を一つにして、様々な取組に邁進していただくことを期待をいたします。

本年が、隊員の皆さん並びに御家族の皆様にとっても実り多き素晴らしい年になることをお祈りするとともに、隊員の皆さんの健康と、部隊の健全なる御発展と、そして、地域の安定と我が国の安寧を祈念をいたしまして、年頭の御挨拶といたします。

平成27年1月5日
防衛大臣 中谷 元

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