第52回自衛隊高級幹部会同における小野寺防衛大臣訓示

 本日、最高指揮官である安倍晋三内閣総理大臣の御臨席の下、自衛隊高級幹部会同を開催できますことを誠に喜ばしく思います。

 昨年の防衛大臣就任以来、私と共に日夜任務に精励し、支えてくれている諸君に対し、改めて敬意と感謝を表するとともに、防衛大臣として一言申し上げたいと思います。

 現在、我が国を取り巻く安全保障環境は、一層厳しさを増しています。本年6月には初の米朝首脳会談が開催されたものの、北朝鮮の核・ミサイルの廃棄に向けた具体的な動きは進展しておらず、北朝鮮の核・ミサイルが、我が国にとってこれまでになく重大かつ差し迫った脅威となっているとの認識に変わりはありません。

 また、中国は、軍事力を急速に強化し、軍事行動を活発化させており、昨年8月には、中国軍爆撃機が紀伊半島沖の太平洋まで進出、昨年12月には中国軍戦闘機が初めて対馬海峡を通過し日本海に進出しました。さらに、本年1月には、我が国尖閣諸島の接続水域に中国軍原子力潜水艦が潜没したまま入域するなど、我が国周辺の海空域での軍事行動を一方的にエスカレートさせており、我が国の安全保障上の大きな懸念となっています。

 ロシアも、北方領土への地対艦ミサイルや戦闘機の配備、極東での冷戦後最大規模となる軍事演習の実施が伝えられており、極東地域での軍事活動を再び活発化させる傾向が見られます。

 このほか、世界全体を見渡せば、テロリズムの脅威や大量破壊兵器の拡散、サイバーや宇宙空間などの新たな領域における脅威の拡大も看過することはできません。

 さらに、我が国国内では、近年、地震や記録的な豪雨といった大規模な自然災害が頻発しています。

 今、我々は、これまでにない厳しい安全保障環境に置かれているとの現実を直視しなければなりません。そして、こうした厳しい現実に対処するため、我が国の防衛政策をさらに力強く前に進め、必要な防衛体制を整えなければなりません。

 本日は、政策遂行の重責を担う幹部諸君を前に、今後取り組むべき課題について申し上げたいと思います。

 まず、防衛政策の根幹となる、自らの防衛努力について、申し上げます。

 5年前、私は防衛大臣として、統合機動防衛力の構築をめざした現在の防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画の策定に携わり、安全保障環境に即応できる防衛力の整備を進めてまいりました。

 しかし、我が国を取り巻く安全保障環境は、現在の防衛大綱を策定した際に想定したよりも格段に速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。いまや、従来の延長線上ではなく、国民の生命と財産、領土・領海・領空を守り抜くために真に必要な防衛力のあるべき姿を考え直す必要があります。

 特に、現在検討中の防衛計画の大綱の見直しにあたっては、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の活用が死活的に重要になっていることを踏まえ、新たな領域を含め、領域を横断した、クロス・ドメインでの作戦を実現できる体制を構築することが必要です。

 先週より、私を長とする「将来の防衛力検討委員会」を省内に設置し、将来の防衛体制にかかる検討を深化し、加速させることといたしました。幹部諸君におかれては、諸君が長年培ってきた知識や経験をすべて活用し、真に必要な防衛力の確保に向け、省内・政府部内の検討に貢献していただきたいと思います。

 次に、日米同盟の強化について申し上げます。

 現在、日米間では、安倍総理大臣とトランプ大統領の間で高い頻度で会談が行われるなど、様々なレベルで緊密な連携が図られております。私自身、昨年8月の日米「2+2」以来、米国のマティス国防長官との会談を計12回重ねており、北朝鮮問題をはじめとする諸課題について、常に緊密に認識と方針をすり合わせてまいりました。

 さらに、平和安全法制の整備により可能となった米艦艇や航空機の警護を実施するとともに、3隻の米空母と日本海で共同訓練を実施するなど、具体的に目に見える協力を実施いたしました。今後とも引き続き、こうした取り組みを進め、ガイドラインの実効性を確保し、日米同盟の抑止力・対処力の強化に努めてほしいと思います。

 同時に、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の基地負担軽減のための取組を着実に進めていくことも重要であり、一層の努力をしてまいりたいと思います。

 次に、安全保障協力の推進について申し上げます。

 近年、防衛省・自衛隊は、オーストラリア、インド、アセアン諸国、英国やフランスなど、基本的価値や安全保障上の利益を共有する多くの国々との防衛協力・交流を着実に拡大してまいりました。

 特に、北朝鮮船舶によるいわゆる「瀬取り」行為に対し、自衛隊が我が国周辺海域での監視を行う中、オーストラリアとカナダも監視のため哨戒機を我が国に派遣してくれました。また、英国の艦艇も「瀬取り」が疑われる船舶に対する情報収集を行っており、我が国とこうした関係国との間で、緊密な情報共有を行いました。

 また、ジブチを拠点とした海賊対処行動は、我が国の生命線であるシーレーンの安全確保のための重要な取組です。「自由で開かれたインド太平洋戦略」の下、友好国と連携し、シーレーンの安全確保のための取組に引き続き貢献してほしいと思います。

 規律の維持と安全の確保についても申し上げます。

 昨年のこの場で、私は、自衛隊が任務を遂行するためには、国民の支持と信頼を勝ち得ることが必要不可欠であり、そのために常に規律正しい存在であること、また、安全な運用を心掛け、事故ゼロを目指していくことが、何よりも求められていると伝えました。

 これを受けて諸君は努力を積み上げてきてくれたと思いますが、まだ道半ばであり、さらなる改善を図るべき課題が見えた一年であったと思います。

 規律維持の観点では、文書管理や情報公開といったいわば基本動作というべき業務をないがしろにすることなく、幹部諸君自ら率先垂範して取り組むとともに、あわせて服務規律や情報保全の面においても引き続き日々の指導に意を用いてほしいと思います。

 また、航空運用をはじめとする運用時の安全確保は、依然として最重要の課題であります。厳しい任務や訓練にあっても、決して安全を軽視することなく、事故をなくすための不断の努力を続けてほしいと思います。

 最後になりますが、多大な犠牲者を出した7月の豪雨災害において、自衛隊は3万人を超える態勢で災害派遣を実施し、多くの人命を救い、厳しい環境に置かれた被災者の方々の生活を支えました。

 連日40度近い猛暑の中、40日にわたり、陸海空の多くの隊員が勇気と真心を持って、そして自己犠牲の精神でこの困難で厳しい任務に取り組んでくれました。

 過酷な野営を続けながら任務を全うした多くの隊員、自ら被災しながらも近隣住民を助けた学生隊員、招集に迅速に応じてくれた即応予備自衛官、派遣部隊の留守を預かった隊員や経由地で補給に当たった多くの仲間の隊員、これらすべての隊員たちに対し、防衛大臣としてあらためて感謝を伝えたいと思います。

 先ほど安倍総理が訓示されたように、困難な時にこそ、その真価が問われます。そして、どのような困難な任務に面しても、決して落胆せず、勇気ある隊員たちを任務遂行のために一つにまとめ上げること、これこそが指揮官に求められる資質であり、将たるものの責務であります。

 部隊・機関を率いる幹部諸君におかれては、困難にあって、自らの一挙手一投足が、隷下の隊員の運命を文字通り決するものになるというその責任の重さを、今一度深く認識し、緊張感をもって日々の職務に当たって頂きたいと思います。

 私自身、本日、安倍総理の訓示を頂き、全身全霊をもって困難に立ち向かう決意をあらためて強くいたしました。自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣の指揮の下、我が国と世界の平和と安定のため、そして国民を守るという崇高な任務の遂行のため、諸君の一層の奮励努力を期待し、私の訓示といたします。

平成30年9月3日
防衛大臣 小野寺 五典