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トップページ報道発表・広報・募集など報道発表>2005.2.17:沖縄における米軍ヘリ墜落事故に関する報告書

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報道発表

沖縄における米軍ヘリ墜落事故に関する報告書

 本報告書の構成は次のとおりである。

1.事故分科委員会の実施

  1. 1. 1963年の委任事項に基づき、事故分科委員会の目的は、調査担当官の調査結果及び勧告を検討し、合同委員会へさらなる勧告を行うことであった。事故分科委員会は、問題を協議し、質問を行い、事故報告書を検討するため、6回の正式な会合を行った。
  2. 2. 米側は、第775回合同委員会の合意に従い、事故調査報告書(別名JAGMAN)の写しを日本側へ提供した。
  3. 3. 別個に、米海兵隊は、防衛庁及び国土交通省の日本側技術専門家に、残骸視察の機会を5回提供した。これらの視察には、技術的分析のためノースカロライナ州チェリー・ポイントにある海軍航空補給廠の施設に送られ、日本側の要請により普天間飛行場に戻された部品も含まれていた。視察の目的は、事故原因についての米側調査担当官の調査結果を明確にし、日本側専門家の理解を深めることにあった。

2.米側調査により報告された事実、結果及び再発防止策

1. 航空機の型式等
 第265海兵中型ヘリコプター中隊に所属していた事故機のCH−53Dは、主に海陸間の輸送に使用される、重量物輸送ヘリコプターである。事故機は、米国シコルスキー社製で、1970年12月30日に就役し、事故以前の総飛行時間は7,295.2時間であった。本報告では、事故機を「事故機」又はそのコールサインにより「ドラゴン25」と称する。
型式のデータは、次のとおりである。
全長 : 26.9メートル(88フィート3インチ)
全高 : 7.6メートル(24フィート11インチ)
ローター直径 : 22.02メートル(72フィート3インチ)
自重 : 10,653キログラム(23,485ポンド)
エンジン : T64−GE−413(2基)
2. 搭乗員の適格性
  • 事故機の機長は、第265海兵中型ヘリコプター中隊の海兵隊大尉(当時30歳)で、飛行時間は事故の飛行前の時点で916.9時間であった。事故機の機長が有している飛行に関する資格は、ヘリコプター機長、セクション・リーダー、地形飛行教官、ディビジョン・リーダー、夜間システム教官及び機能点検飛行パイロットであった。
  • 副操縦士は、第265海兵中型ヘリコプター中隊の海兵隊予備役中尉(当時26歳)で、その総飛行時間は、事故の飛行前の時点で480.4時間であった。
  • クルー・チーフは、第265海兵中型ヘリコプター中隊の海兵隊伍長(当時22歳)で、総飛行時間は事故の飛行前の時点で539.3時間であった。
これらの搭乗員は、適切な訓練を受け、当時の同機の任務に係る資格を有していた。
3. 任務
 この特定の飛行の目的は、平成16年8月13日の第265海兵中型ヘリコプター中隊の飛行計画として計画・承認された、フライト・コントロール(飛行操縦系統)の整備に続く整備後の機能点検飛行を行うことであった。
4. 離陸の準備
 事故当日、同機の機長及び副操縦士は、海軍航空訓練・運用手順標準化マニュアルに従い、飛行前点検を実施した。13時48分17秒に普天間管制塔(以下「タワー」という。)は、同機に運用を許可した。13時53分過ぎから約5分間、同機は、普天間飛行場の滑走路上空においてホバリングによる機能点検を行った。この点検中、搭乗員は何の異常も感知しなかった。
5. 気象
ホバーチェック開始時タワーから同機へ通報した気象
風向及び風速 : 080度、8ノット
普天間飛行場当直予報士による14時18分の気象観測
地表の風向及び風速 : 080度、9ノット
視程 : 約11キロメートル(6マイル)
総雲量 :
気温 : 31℃
30分前の間に著しい気象現象はなかった。
6. 離陸及び飛行
 13時56分50秒に、タワーは事故機に対し、同飛行場東方のKILO通報点を経由する離陸・出発を許可した。その後、事故機は、太平洋上空のローカルエリアにおいてブレード・トラッキングのための機能点検飛行を約18分間実施した。
 14時14分27秒に、同機はタワーに、ホワイト・ビーチから帰還予定と通報した。この飛行中、機長及び副操縦士は何の異常も感知しなかった。飛行高度は、1,000フィート程度であったと推定された。
 14時16分52秒に、タワーは事故機が滑走路06へ着陸することを許可した。
 14時17分頃、第265海兵中型ヘリコプター中隊所属のCH−46E(ドラゴン31)の機長は、タワーがドラゴン25に着陸許可を与えたのを聞いた後、ドラゴン25の尾部が左右に振れ始めるのを視認した。
 右方向に機首偏向し始めたとき、同機は120〜130ノットの速度で240°の機首方位で風下に向かって飛行中であった。徐々に右側へ90°まで機首が偏向したとき、操縦していた副操縦士は、即座に左ペダルを踏み込んだが、効果はごくわずかあるいは全くなく、コレクティブを下げた。機長も操縦を行い、ペダルを踏み込もうとしたが、効かなくなっていた。
 機体は右に機首偏向したのと同じ率で左側に機首偏向し始めたので、副操縦士はコレクティブを上げると同時に、右ペダルを踏み込んだ。機体は、突然機首を30°〜40°下げたまま、右へ180°バンクした。
 14時17分45秒に、機長は普天間管制塔に緊急事態を宣言した。
 機長は、同機をオート・ローテーションに入れ、適切な降下速度を維持するために機首を下げた。そして、副操縦士に油圧の確認を指示した。
 副操縦士は、油圧スイッチを全てオフにするとともに、14時18分02秒に遭難救助信号を送信した。
 ドラゴン31の機長は、事故機から水平尾翼の付いたL字形のパイロンが落下するのを目撃し、ドラゴン25の遭難救助信号を聞いた。
 事故機の機長と副操縦士は、機体の高度を維持しようと試みたが、同機の姿勢変化は激しかった。
 副操縦士は、降下中に人口密集地帯及び障害物を避けようと試みた。
 機長は、オートローテーション降下レンジ内にサッカー場を見たが、子供達がいたため、これを緊急着陸地点としては選択しなかった。
7. 衝突
 14時18分ごろ、メイン・ローター・ブレードの1枚が、沖縄国際大学のコンクリート造3階建の1号館の屋上に衝突し、機体から南東方向に外れ、大学の南側境界線に沿っている道路を横切って落下した。更に、残りの5つのローター・ブレードが、1号館に次々に接触した。機体は、北緯26度15分700、東経127度45分233にある、メイン・ローター・ブレードが衝突した同建物に隣接した場所で静止した。これは、普天間飛行場の外柵ラインから南西に265メートルの場所であった。墜落後に火災が発生し、同建物及び機体の一部が炎上した。いくつかの樹木は衝突により押し潰され、他の樹木が火災で損害を受けた。さらに、飛び散った破片により、大学敷地内及びその南側にある建物、自動車などの他の私有財産が損害を受けた。
8. 残骸の状況
 衝突後に火災が発生したため、相当の部分が原形を留めないまでに損傷・燃焼したが、機体の尾部は、1号館の側でロックが外れ、部分的に折れ曲がった状態となっていた。中間ギヤボックスは、衝突時に機体から外れ、1号館1階で発見された。尾部の折り畳み部分のテール・ローター・ドライブシャフトのディスコネクト・カップリング、パイロン−フォールド・ヒンジ・ピン、パイロン・ロック・ピン及びパイロン・ロック・ピン・リセプタクルには損傷がなかった。テール・ローター及びパイロンの一部は、墜落現場から南南西に約300メートルの地点で発見された。テール・ローター・サーボ・リンケージ及びフォローオン・アームには、それらを連結しているボルトがなく、そのボルトとナットは、パイロン上部のテール・ローター・カウリングの内部から別々に回収された。ボルトとナットを固定するコッター・ピンは回収されなかった。
9. 技術的分析及び調査
  • 事故原因に関する米軍の調査の初期段階において、回収された機体部品の状況及び飛行の経過から、同機は、飛行中にパイロンが破損し、テール・ローターが機体から外れたことによりヨー・コントロールの機能を喪失したために墜落したものと認められた。合衆国ノースカロライナ州チェリーポイントにある海軍航空補給廠の2名の航空宇宙工学エンジニアが残骸を検証した。彼らは、自らの分析において、次のとおり結論付けた。
    1. パイロットによるラダー入力に基づき作動するロータリー・ラダー・タンデム・サーボ・シリンダーのパワー・ピストンと、2つのフォローオン・リンケージを固定しているキャストレイテッド・ナットとボルトに、「コッター・ピン」が適切に装着されていなかった。
    2. ボルトがサーボ・リンケージから脱落した場合、テール・ローターのピッチを中立位置に戻すセンタリング・スプリング(ロータリー・ラダー・タンデム・サーボシリンダー側)は機能しないので、テール・ローターは、フルピッチあるいはフラットピッチを超えてサーボの作動範囲の限界までのいずれか両極端の位置に動いてしまう可能性が高い。その結果、サーボは極端な位置まで動き、それによって少なくとも1枚、おそらく2枚のテール・ローター・ブレードがパイロンに衝突し、そこでパイロンが破損し、テール・ローターが機体から脱落した。
    3. 機体、建物及び地面に残された痕跡は、テール・ドライブシャフトのディスコネクト・カップリングやパイロン・ロッキング・ピンが損傷を受けなかったことと併せ、飛行中にテールが折り曲がらなかったことを示している。テールが折れ曲がった状態で発見されたのは、回路のショートが重なったため又は衝突後の火災及び衝撃で、折り畳みの連鎖が作動したものと考えられる。
  • これらの一連の出来事は、残骸から回収された個々の部品及び構成部分に関する技術調査によって確認された。
10. 整備の手順
  • 事故原因に関する調査の初期段階において、ロータリー・ラダー・タンデム・サーボ・シリンダーのパワー・ピストンをフォローオン・リンケージに接続するボルトを固定するために必要とするコッター・ピンが正しく装着されなかったとの分析が示された。これを受け、米側の調査担当官は、同機の最後の飛行前に機体後部に施された整備作業についての詳細を把握するため、同機の整備記録簿を集めるとともに、第265海兵中型ヘリコプター中隊に所属する複数の整備要員から聴取を行った。
  • 事故機は、2004年8月10日から、メイン・ギア・ボックスの交換のための整備を受けていた。この交換のため、通常は、フライト・コントロールのリグ、すなわち、サイクリック・スティックの作動率及びラダー・ペダルの踏みしろに応ずるメイン・ローターやテール・ローターのピッチ角等の調整については、「フル・リグ」が必要となる。これに対し、メイン・ギア・ボックスとローター・ヘッドを一個のユニット(クイック・チェンジ・ユニット)として機体から取り外し、そのユニットを同じ機体に再装着する場合、各連結部でのボルト、ナット及びコッター・ピンを外さない「クイック・リグ」が行われる。なお、クイック・リグが上手くいかない場合には、整備指導マニュアルでは、フル・リグを実施することとされている。
  • 分遣隊の作業記録によれば、整備員がクイック・リグに必要な整備手順を超えて同整備を実施した際でも、同機には「クイック・リグ」が実施されたと記録されていた。
  • 8月12日の夕方から8月13日の朝まで勤務していた夜勤の整備員は、クイック・リグ」のために必要とする作業に加えて、「フル・リグ」のために必要とする作業のいくつかが行われたことにより、「修正」クイック・リグの手順を行った。具体的には、彼らは、同機のテール・ローター・サーボの接続部分のずれを調節するため、ロータリー・ラダー・タンデム・サーボ・シリンダーのパワー・ピストンとフォローオン・リンクを接続しているボルトからコッター・ピン及びナットを取り外した。このサーボ・シリンダーの調整は、整備指導マニュアルのフル・リグ手順の1つであり、整備指導マニュアルのクイック・リグ手順にはないものである。
  • 夜勤組の整備員は、フライト・コントロールの調整を行った場合、品質管理部門が調整が正しいことを確認する前にコッター・ピンを再装着するのは手順に反するので、引継ぎの際、当該コッター・ピンはナットに装着されていなかったと述べた。整備指導マニュアルは、ロータリー・ラダー・タンデム・サーボ・シリンダーの調整を完了するため、品質管理部門の立会いを命じている。しかしながら、夜勤組と日勤組との引き継ぎの間、修正クイック・リグの全範囲を完了するための要件は適切に伝達されなかった。そのため、日勤組は、クイック・リグのための整備及び品質管理の手順を行い、その結果、コッター・ピンの存在を検査しなかった。
  • 事故機の機長は、フライト・コントロール整備に伴う機能点検飛行前に、クイック・リグが実施されたと説明を受けた。機長及び副操縦士は、海軍航空訓練・運用手順標準化マニュアルに従って飛行前検査を実施したが、そのチェックリストには、テール・ローター・サーボ・リンケージの確保については具体的に記載されていなかったため、彼らはコッター・ピンが装着されているかどうか視認しなかった。
  • また、調査担当官は、部隊の展開準備における通常でない長時間勤務により、整備員が作業実施中に十分な注意を払えなかったことが整備ミスの一因となったと結論づけた。「我々は3日続けて17時間勤務していた」、「夜勤組は1日16時間、日勤組は1日14時間勤務し、我々は、時間どおりにヘリを艦船に搭載しようと長時間勤務していた」との整備員の証言は、問題を例証している。ある要員は、引き継ぎの間、夜勤組の整備員が睡眠不足のため手が震えているので、テール・ローター・ブレードの調整の手助けをしたとの証言をした。飛行支援要員の休息及び睡眠について、海軍運用部指導書によれば、「司令官は、24時間毎に睡眠のため8時間を確保すべきである」とされているが、当時の勤務状態は、この指導書に合致しないものであった。
11. 措置
 本件事故の原因となった整備上の問題の更なる発生を防止するため、米側において調査担当官が勧告を行った。当該勧告を踏まえ、次のような措置が執られた。
  • 方針事項として、勤務時間のガイドラインが、第1海兵航空団のすべての整備員に対し実施された。本方針は、整備員が勤務する必要のある時間数を慎重に計画し、綿密に監視することを確実にするものであり、海軍運用部指導書に従っている。
  • CH−53Dの海軍航空訓練・運用手順標準化マニュアル及びポケット・チェックリストにおけるパイロットの飛行前検査チェックリストは、フォローオン・アームの接続ボルト、ナット及びコッター・ピンまでのテール・ローター・サーボの目視検査を含むよう変更された。当該変更は、第1海兵航空団のすべてのCH−53D中隊において実施された。
  • また、第1海兵航空団は、クイック・チェンジ・ユニットが取り外された航空機以外の航空機に当該ユニットが装着される際には、必ずフライト・コントロールのフル・リグが整備員により行われるよう、整備指導マニュアルの変更を要請した。フライト・コントロール・システムのフル・リグが行われなければならない場合を明記した整備指導マニュアルへの変更点は、第1海兵航空団のすべてのCH−53D中隊において実施された。
  • 責任のある者に対し、懲戒及び行政処分がとられた。

3.事故分科委員会による結果の検討

 前記2.で説明した米側の事故調査報告書を踏まえ、本事故分科委員会は、その内容の合理性の確認という観点から、技術的側面を含め調査結果を検討したところ、その結果は次のとおりである。

1. 技術調査
  • 上記2.の9bに述べた事故原因の技術的分析に関しては、事故現場から回収された残骸及び機体部品のうち、テール・ローター及びパイロンを構成するブレード、ヘッド、ドライブシャフト、カウリング及びその周辺部品、並びにサーボ・リンケージ、フォローオン・アーム及びこれらを接続するボルトとナットが、合衆国ノースカロライナ州チェリーポイントの海軍航空補給廠に移送され、米国の技術者による詳細な調査が実施された。同補給廠で行われた技術調査に基づき、米側は、テール・ローターがパイロンに衝突したためにパイロンが破損し、テール・ローターとパイロンが機体から外れたことについて説明した。
    1. 中間ギアボックスに接続していたドライブシャフトの破断部は、テール・ローターのブレードの先端に当たる位置に、高エネルギー打撃による衝撃を受けて破断した証拠を示していた。さらに、テール・ローター・ヘッドの全てのアンチ・フラップ・レストレーナーが破損していた。これらの出来事から得られた連鎖は、次のとおりである。
    2. コッター・ピンでボルトとナットを固定しなかったことにより、テール・ローター・ブレードのピッチ角を制御する機構部分からナットが緩んで脱落した。ボルトとナットによる接続部分の固定が無いと、テール・ローター・サーボには、フォローアップ・アームを通じた制御力が伝わらない。また、テール・ローター・サーボは、最後にラダー入力があった方向に完全移動してしまう。
    3. サーボ・シリンダー・ピストンとフォローオン・リンケージの接続がなくなった場合、サーボが通常の移動限界を超えることが起こり得る。通常、ブレードのピッチ角は、右に一杯ラダー入力したときのレンジと、左に一杯ラダー入力したときのレンジの範囲内で変化する。右旋回のラダー入力に対しては、テール・ローター・ブレードの回転軌跡は、テール・パイロンから離れて円錐形となり、左旋回のラダー入力に対しては、テール・パイロンに向かって円錐形となる。
    4. 正常な状態では、テール・ローター・ブレードの先端とパイロンとの間には十分なクリアランスがあるが、ピッチ角が過多になり、フラッピング抑制機構が機能しない場合、テール・ローター・ブレードはパイロン側に大きく入り込むことが明らかになった。同機のブレードがさらに動的に湾曲したことが、パイロンへの衝突及びテール・ローター・ドライブシャフトの破損を引き起こした。
  • 米側による詳細な技術調査は、事故に至る一連の因果関係、すなわちロータリー・ラダー・タンデム・サーボ・シリンダーのパワー・ピストンを2つのフォローオン・リンケージに接続しているボルトを固定するためのコッター・ピンが、キャステレイテッド・ナットに適切に装着されていなかったことにより、サーボが極端な位置に動き、テール・ローター・ブレードがパイロンに衝突したために、パイロンが破損し、テール・ローターが機体から外れたとの流れを明らかにするものであった。
  • また、調査結果に関して、機械の損傷の連鎖をより客観的な視点から理解するため、日本側に助言を与える日本側の技術専門家が、米国に送り戻された部品を含む残骸の個々の部品を視察した。
    1. テール・ローター・ブレードが、その直径位置に当たるドライブシャフトの切断部分に衝突したことが、破断面の形状及び関連部位によって確認された。
    2. ボルトとナットが固定されていないと、テール・ローター・サーボは、ラダーが引かれた方向に完全移動することが、テール・ギヤボックス・リンケージの機構及び動作により証明された。
    3. 上記で述べた完全移動による異常なピッチ角に加え、テール・ローターがパイロンに衝突した要因として、フラッピングを抑制するためのハブ(レストレーナー)が破損したことが確認された。
     上記に基づき、事故分科委員会は、事故原因に関する調査の初期段階における技術的分析が正確なものであったことを認める。
2. 整備手順
 整備の過誤についての調査結果に関しては、関係者への詳細な聴き取りが行われたところ、その証言の間に特段の齟齬は見当たらず、事故分科委員会は、調査結果には合理性があるものと認める。整備要員は、修正クイック・リグによりメイン・ギア・ボックスの取り外し及び交換を実施した。同機から取り外されなかったフライト・コントロール・システムを調整することが必要であったことから、本来はフル・リグを実施すべきであった。決められた整備手順が守られなかったことが、外されたコッター・ピンを装着しなかったという結果につながった。かかる過誤は、夜間及び昼間の整備員のシフト交替が不完全であったこと、必要とされた品質管理部門に関し混乱があったこと、及びパイロットの飛行前検査のチェックリストにコッター・ピンの検査が含まれていなかったという事実により増幅した。整備員が連日の長時間勤務で疲労していたことが、不完全な整備作業の実施につながったと考えられる。
3. 事実の認定
 本件事故の客観的事実については、次のとおりである。
  • 搭乗員は、2004年8月13日の機能点検飛行を行うため、適切に訓練され、その資格があった。搭乗員は、規則に定められた飛行前検査を行った。なお、海軍航空訓練・運用手順標準化マニュアルの飛行前チェックリストには、事故の原因に係るコッター・ピンの確認は明記されていなかったため、コッター・ピンの無いことにつき、搭乗員の過失は無かった。
  • コッター・ピンが接続ボルトに正しく装着されなかったのは、整備員が、同機のフライト・コントロールを接続するための決められた手順に従わなかったためであった。整備実施書式によれば、整備員は、事故機のフライト・コントロール・システムについてクイック・リグを実施したことになっているが、実際には、追加的な処置を記録することなく実施していた。さらに、メイン・ギア・ボックスが交換された際にクイック・リグ又はフル・リグのいずれが実施されるかどうかについて、マニュアルは曖昧であった。別の機体からのクイック・チェンジ・ユニットが同機に装着されたにもかかわらず、修正クイック・リグが行われた。
  • クイック・リグが実施されていたのであれば、コッター・ピンがボルトとナットから決して取り外されることはなかったはずであった。また、フル・リグが適切に実施されていたのであれば、コッター・ピンは作業終了時に品質管理部門により点検されていたはずであった。分遣隊において同機の整備に関与した要員は、修正クイック・リグを実施してきており、このことと最初の整備指示が、結果的に実際に行われた整備に関し混乱を招いた。
  • 夜勤組から日勤組への作業の申し送りが明確に行われたならば、コッター・ピンの検査が行われていたはずであった。
  • 搭乗員は、事故発生時に自らの職務の範囲内で行動しており、テール・ローターの脱落に適切に対応したが、テール・ローターの故障は大惨事という性質のものであり、その不調が生じた位置は、普天間飛行場のために設定されている通常の着陸経路上であることから、結果としての損害を完全に回避することは極めて困難であった。

4.合同委員会への勧告

 上記2.の11項に述べるようなこれまでに執られた措置に加え、本件事故の重大性及び再発防止の重要性に鑑み、本分科委員会は、上記3.において整理した検討結果を踏まえ、飛行及び住民の安全を更に確実にするため、次のとおり勧告を行う。

  1. 1. 今後の航空機事故の再発を防止するため、米側は、飛行要員・整備要員の教育及び訓練、決められた整備手順の遵守、機体の徹底的な整備及び検査、飛行運用についてのマニュアル及び措置の評価のような種々の措置を通じて、航空機の安全を向上させるため引き続き努力する。
    特に米側は、
    1. a. 該当する整備マニュアルに列挙されている整備及び検査手順に従うことを徹底し、規定されていない手順の実施を除去する。
    2. b. シフト交替が完全かつ正確に行われることを確実にするため、所要の措置を講ずる。
    3. c. これらの取組みの状況を適時適切に合同委員会へ報告する。
  2. 2. 米側は、飛行の安全を最大限確保し、普天間飛行場周辺の住民及び財産に危険が及ぶ可能性を最小限にするため、飛行の運用について引き続き評価を行う。現地の米軍及び日本国政府機関、並びに必要に応じ中央レベルの機関は、場周経路を再検討し、更なる可能な安全対策について検討を行う。その結果は、適時適切に合同委員会へ報告される。
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