普天間飛行場の代替の施設に係る二国間専門家検討会合の報告

平成22年8月31日

【仮訳】

マンデート及び作業の範囲

 普天間飛行場のできる限り速やかな移設を実現するために,日米安全保障協議委員会(SCC)は専門家のグループに対して,普天間飛行場の代替の施設の位置,配置及び工法について検討するように指示した。2010年5月28日のSCCの共同発表において決定された基準に従って,専門家検討会合(ExSG)は,安全性,運用上の所要,騒音による影響,環境面の考慮及び地元への影響等の要素について検討した。加えて,ExSGは,費用及び工期についても検討した。ExSGは,2010年5月28日のSCCの共同発表が,オーバーランを含み,護岸を除いて1800mの長さの滑走路を持つ代替の施設がキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置されると確認したこと,さらに,同共同発表が代替の施設の環境影響評価手続及び建設が著しい遅延がなく完了できることを確保するような方法で,代替の施設を設置し,配置し,建設するとの意図を述べていることに留意した。事柄の性質及び検討の時間的な制約から,実施に伴ういくつかの課題については,更なる検討が必要とされ得る。ExSGの成果は,決定を発表する次回のSCCまでの検証及び確認の対象となる。このExSGのマンデート外である2010年5月28日の共同発表にある検討項目については,適切な枠組みで取り扱われる。

参加者

 ExSGの米国側の主要な参加者は,国防長官府,国務省及び米軍の課長級の代表者を含み,日本側の主要な参加者は,防衛省,外務省及び内閣官房の課長級の代表者を含む。

評価された案

 ExSGは,代替の施設の位置,配置及び工法について,複数の可能性を評価した。工期及び費用を含む上述の要素に関する技術的な議論を経て,ExSGは,代替の施設に関する二つの案に焦点を当てた。検討された案の一つは,2006年5月1日の「再編の実施のための日米ロードマップ」に記載された,V字型の二つの滑走路を配置する「V」案である。検討されたもう一つの案は,I字型の単一の滑走路を配置する「I」案で,これも日本政府によって作成されたものである。両施設は,主たる工法として海面の埋立を採用するものであり,キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置されることとなるものである。

 ExSGは,杭式桟橋方式について検討した。しかしながら,ExSGは,主に,部隊防護,残存性,維持管理可能性,並びに米軍及び自衛隊の飛行場の工法としての実績がないことに対する懸念から,この方式が代替の施設の工法として適切であるとの判断に至らなかった。したがって,ExSGは海面の埋立が代替の施設の工法として最も適切であると結論づけた。

 2010年5月28日のSCCの共同発表にのっとって,ExSGはこの二つの案を以下の基準に照らして評価した。

● 地元コミュニティ及び米軍の要員の双方の安全性
● 風向と処理能力を含む米軍の運用上の所要,及び計器進入能力に与える現地の地形の影響
● 騒音による影響
● 海洋生物への影響を含む環境面の考慮
● 地元コミュニティへの影響

 ExSGは,費用及び工期についても検討した。

 ExSGは,いかなる普天間飛行場の代替の施設の案も,長期的に運用可能であり,政治的に持続可能でなければならないことに留意した。

 ExSGは,この二つの案を,上述の要素に基づいて評価した。この点に関し,ExSGはまた,いずれの案も,すべての滑走路の方向からの精密及び非精密の計器進入の能力を確保するように方向が向けられかつ設計された,計器飛行方式が完全に運用可能な飛行場のための,すべての関連する運用及び飛行場支援のためのインフラ,維持管理施設並びに駐留要員を備えていなければならないことを指摘した。

 ExSGは,有視界飛行の経路は標準的な航空慣行,運用上の所要,安全性に基づき,また,上空飛行や騒音を含む地元コミュニティへの影響に配慮して設定されることを指摘した。米国政府と日本政府は確立された手続を通じて有視界飛行の運用に関し協議を続ける。

 ExSGはまた,著しい遅延なく環境影響評価手続及び建設が完了でき,かつ米国の運用上の所要が引き続き満たされる限り,検証及び確認の過程での案に対する修正の可能性が排除されないことに留意した。

「V」案

 ロードマップに記載されている案は,V字型に配置される2本の滑走路から構成されることとなる(図1)。 既存の設計上,一本の滑走路は07/25の向きに,もう一本の滑走路は05/23の向きに配置されることとなる。このV字型の配置は,離陸時と着陸時の航空機の飛行経路を海の上に設定できることとなる(図2)。南西方向からの着陸に際し,陸地の上空飛行を避けるため,滑走路05が主たる着陸滑走路に指定されることとなる。一方,北東方向への離陸に際し,コミュニティの上空飛行を避けるため,滑走路07が主たる離陸滑走路に指定されることとなる(図3)。主たる風により着陸が北東方向からとなる際には,滑走路25が主たる着陸滑走路に指定されることとなり,滑走路23が南西方向への主たる離陸滑走路となる(図4)。この配置はまた,追加の滑走路と計器進入方式の能力を提供することとなる。

 ExSGは,このV字型配置を上述の基準に照らし評価し,以下の結論に達した。

安全性

 ExSGは,V字案は安全性に関する水準を満たし得ると評価した。

● 主たる飛行経路が地元コミュニティ及び人口密集地を可能な限り回避することにより,コミュニティから見えるリスクは最小限に抑えられることとなる。
● 生じ得る都市化やコミュニティの発展に伴う北東への航行上の安全性の懸念に関し,主たる経路の方向が海上にあることによって,滑走路05/23と比べて,これらの懸念により良く対処できることとなる。
● 主たる経路の方向が海上であることから,緊急事態は,海上で発生する可能性が最も高くなる。
● V字型配置は,緊急時に使用できる二本目の滑走路を提供することとなり,他の場所へダイバート(目的地変更)する必要性は減少する。

運用上の所要

 ExSGは,V字型配置は風向と処理能力に関する米軍の運用上の所要を満たすこととなると評価した。

● 二本の滑走路の向きは風向に係る設計の所要を満たすこととなる。
● V字型配置は平時及び緊急時における運用能力上の所要を担保することとなる。

 ExSGは,V字型配置については,主たる滑走路の使用により緩和することができるが運用上のリスクが高まる部分が一つあるものの,計器飛行方式の能力の所要を満たすこととなると評価した。

● 滑走路05及び07(南西進入)及び25(北東進入)は,精密及び非精密の計器進入の能力を満たすこととなる。
● 滑走路23(北東進入)は,精密進入能力を満たすが,北東の山地と近接していることから,すべての非精密進入能力を提供するわけではないこととなる。戦術航法(TACAN)による進入は運用上の能力の所要を満たすこととなる。空港監視レーダー(ASR)による進入は運用上の所要を満たさないこととなる。これにより,運用上のリスクは高まることになるが,安全上の状況により滑走路23に着陸することができない場合に,滑走路25に着陸するという選択肢により,このリスクは緩和することができる。

騒音による影響及び地元コミュニティへの影響

 ExSGは,有視界及び計器飛行の状況における航空機の飛行に関し,騒音及び地元コミュニティへの影響について分析を行った。ExSGは,V字型配置は,主たる滑走路を使用することによって,地元コミュニティの上空飛行の騒音及び視覚的な影響を減少させるように設計されたことを指摘した。

 この分析に基づいて,ExSGは、騒音及び上空飛行に関して,V字型配置は以下のような地元コミュニティへの影響を有することとなることを確認した。

● 有視界進入及び離陸においては,二本の滑走路により,航空機が北東及び南西方向のコミュニティの真上を飛行することなく,航空機の離着陸を行うことが一般的に可能となる。運用は,海上で人口密集地から離れているところに一般的に集中することとなる。
● 計器による進入及び離陸において,主たる滑走路を使用することにより,南西方向から及び同方向への経路は,海岸沿いのコミュニティの上空飛行を回避し得る。北東方向から及び同方向への進入及び離陸は,同様に,海岸沿いのコミュニティの上空飛行を回避し得る。
● 運用が海上に集中することとなるため,それぞれの方向における主たる滑走路の使用は地元コミュニティの上空飛行を回避し,騒音による影響を減少させ,生じ得る都市化とコミュニティの発展の潜在的な影響を緩和することとなる。

環境面の考慮

 日本政府による環境影響評価準備書によれば,V字型施設は約205ヘクタールの大きさとなり,また,以下のとおりとなる。

● 約160ヘクタールの海域が埋め立てられ,2100万立方メートルの土砂が必要となる
● 約78.1ヘクタールの海草類が影響を受ける。
● 約6.9ヘクタールのサンゴ類が影響を受ける。

キャンプ・シュワブの東側の現存の海岸は埋立により消滅し,それに伴い,いくつかの動植物の生息環境が失われる。

「I」案

 この代替の施設の案は,I字型に配置される一本の滑走路から構成されることとなる(図5)。この単一の滑走路は05/23の向きに配置されることとなるが,V字型配置の滑走路05/23よりも半島に沿って約200m南下した場所に位置する(図6)。北東の風の場合には,滑走路05が離着陸の滑走路となる(図7)。南西の風の場合には,滑走路23が離着陸の滑走路となる(図8)。ExSGは,数回にわたる一連のExSGの会合を通じて,上述の基準に照らして詳細な分析が可能となるようこの計画を精緻化し,発展させ,以下の結論に達した。

安全性

 ExSGは,I字案は安全性に関する水準を満たし得ると評価した。

● 有視界飛行経路が海上にあり,地元コミュニティ及び人口密集地を可能な限り回避することにより,コミュニティから見えるリスクは最小限に抑えられることとなる。
● 計器飛行経路が海上にあり,地元コミュニティを可能な限り回避することにより,南西のコミュニティから見えるリスクは最小限に抑えられる。
● 北東方向からの計器飛行経路は陸地の上空飛行を避けられないが,現在人口が密集している地区は可能な限り回避することとなる。
● 生じ得る都市化やコミュニティの発展に伴う航行上の安全性の懸念に関し,北東方向からの計器飛行経路は陸上となる。
● 南西方向から及び同方向への飛行の際の緊急事態は,海上で発生する可能性が最も高くなる。北東方向から及び同方向への計器飛行の際の緊急事態については,陸上又は海上で発生する可能性がある。

運用上の所要

 ExSGは,I字型配置は風向と処理能力に関する米軍の運用上の所要を満たすこととなると評価した。

● 滑走路の向きは風向に係る設計の所要を満たすこととなる。
● I字型配置は平時及び緊急時における運用能力上の所要を担保することとなる。

 ExSGは,I字型配置については,運用上のリスクが高まる部分が一つあるものの,一般的に計器飛行方式の能力の所要を満たすこととなると評価した。

● 滑走路05(南西進入)は,精密及び非精密の計器進入の能力を満たすこととなる。
● 滑走路23(北東進入)は,精密進入能力を満たすが,北東の山地と近接していることから,すべての非精密進入能力を満たすわけではないこととなる。戦術航法(TACAN)による進入は運用上の能力の所要を満たすこととなる。空港監視レーダー(ASR)による進入は運用上の所要を満たさないこととなる。これにより運用上のリスクが高まることとなり,他の飛行場へのダイバート(目的地変更)につながる可能性がある。

騒音による影響及び地元コミュニティへの影響

 ExSGは,有視界及び計器飛行の状況の下での航空機の飛行に関し,騒音及び地元コミュニティへの影響について分析を行った。ExSGは,I字型配置は,滑走路の配置によって,南西の地元コミュニティの上空飛行の騒音及び視覚的な影響を減少させるように設計されたことを指摘した。

 この分析に基づいて,ExSGは騒音及び上空飛行に関して,I字型配置は以下のような地元コミュニティへの影響を有することとなると評価した。

● 有視界進入及び離陸においては,この滑走路により,航空機が北東及び南西方向のコミュニティの真上を飛行することなく,航空機の離着陸を行うことが一般的に可能となる。運用は,海上及び人口密集地から離れているところに一般的に集中する。
● 計器による進入及び離陸では,南西方向から及び同方向への経路は,海岸沿いのコミュニティの上空飛行を回避し得る。北東方向から及び同方向への進入及び離陸は,陸地の上空飛行となる。

環境面の考慮

 日本政府による環境影響評価準備書における手法を用いれば,I字型施設は約150ヘクタールの大きさであり,また,以下のとおりとなる。

● 約120ヘクタールの海域が埋め立てられ,1890万立法メートルの土砂が必要となる。
● 約67.0ヘクタールの海草類が影響を受ける。
● 約5.5ヘクタールのサンゴ類が影響を受ける。

キャンプ・シュワブの東側の現存の海岸は残るが,動植物の生息環境への影響は今後評価する必要がある。

要 約

 数回にわたる一連の会合を通じて,ExSGは,これら2つの案の長所及び短所につき慎重な評価を行った。ExSGは,どちらの案も,土地利用の適合性に関する基準を満たすこととなると評価した。どちらの案も,土地利用の適合性に関する分析,最新の計器進入能力分析,空域分析及びその他の技術的分析を要することとなる。

 ExSGは,安全性,運用上の能力,騒音による影響及び地元コミュニティへの影響,環境面の考慮,工期並びに費用について,2つの案の間に相違があると評価した。ExSGは,これらの相違は,代替の施設の案に関する最終的な決定を行うに当たり,慎重に考慮されなければならないということで一致した。

安全性

● 両案とも安全性に関する水準を満たし得る。
● 有視界飛行の状況の下では,両案の飛行経路は,主として海上である。
● 北東方向への及び同方向からの計器飛行経路は,V字案においては,海の上空飛行を含むのに対して,I字案においては,海及び陸地の上空飛行を含む。
● 生じ得る都市化やコミュニティの発展に伴う航行上の安全性の懸念に関し,北東方向への及び同方向からの計器飛行経路は,I字案においては陸地の上空飛行を含み,V字案においては海の上空飛行を含む。
● 北東方向への及び同方向からの計器飛行の際の緊急事態は,V字案においては,通常の場合,海上で発生することとなるのに対し,I字案においては,陸上又は海上で発生することとなる。

運用上の所要

● V字型配置はウインド・カバレッジの幅が僅かに広いものの,どちらの案も,運用上の処理能力及び風向に係る米軍の所要を満たすこととなる。
● V字型配置は,主たる滑走路の使用により緩和することができるが運用上のリスクが高まる部分が一つあるものの,計器飛行方式の能力に関する所要を満たすこととなる。
● I字型配置は,運用上のリスクが高まり,他の飛行場へのダイバート(目的地変更)につながる可能性がある部分が一つあるものの,一般的に計器飛行方式の能力に関する所要を満たすこととなる。

騒音による影響及び地元コミュニティへの影響

 I字型配置は,北東方向から及び同方向への計器による進入及び離陸において,陸地をより多く上空飛行することとなる。

環境面の考慮

● 日本政府による環境影響評価準備書における手法を用いれば,以下のとおり見積もられる。

○ I字案は,V字案よりも,約40ヘクタール少ない海域を埋め立てることとなり,約210万立方メートル少ない土砂を必要とすることとなる。
○ I字案では,海草類への影響を約11.1ヘクタール少なくすることが可能となる。
○ I字案では,サンゴ類への影響を約1.4ヘクタール少なくすることが可能となる。

● ExSGは,現行の環境影響評価手続のデータに基づき,代替の施設の案のジュゴンに対して与え得る影響を考慮し,日本政府及び米国政府が,検証と確認の過程の一環として右を継続する意向であることに留意した。日本政府及び米国政府は,既に検討されている環境保全措置に基づき,将来実施予定の幾つかの軽減措置について引き続き注視するとともに,必要に応じて更なる議論を行うことが決められた。
● I字案では,キャンプ・シュワブの東側の現存の海岸は残るが,動植物の生息環境への影響は今後評価する必要がある。

工期

● ExSGは,どちらの計画についても実際の建設の開始日を確定することはできなかった。これは,次回SCCまでに完了する検証及び確認の過程において確認することが求められる課題である。
● I字案は,新たな設計及び環境影響評価の修正を要することから,建設開始までに既存のV字案よりも約15か月長くかかる。
● 主として埋立海域面積の見積もりがより小さいことから,I字案において推定される工期はV字案よりも約半年間短い。
● したがって,V字案の完了時期の見積もりは,I字案よりも約9か月早い。

費用

● 更なる検討が必要であるが,日本政府は,見積もられる埋立量がより少なくなるとの想定から,I字案の建設費はV字案よりも約3%小さくなると見積もった。

 


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