海上自衛隊補給艦から米補給艦への給油量取り違え事案について(中間報告)

平成19年10月29日

1 事案発覚の経緯

 平成19年9月20日、民間団体から平成15年2月25日における海上自衛隊(以下「海自」という。)補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」等への給油量に関しての指摘がなされたことを踏まえ、防衛省内で事実関係の確認を行ったところ、当時、現地から送付されてきた給油量に関するデータを海上幕僚監部(以下「海幕」という。)において集計する作業を行った際に、担当者が米補給艦「ペコス」への給油量を、同じ日に給油した他艦艇(米駆逐艦「ポール・ハミルトン」)への給油量と取り違えて数字を入力していたことが判明した。

2 事案の概要

本事案は、4年以上前に生起したものであり、当事者の記憶に不確かな部分があるなどの事情があるものの、現在までに把握した事実関係は概ね次のとおりである。(組織名及び役職は当時のもの。)

(1)給油量の入力ミスについて

ア 平成15年2月26日未明、インド洋方面派遣部隊・派遣海上支援部隊指揮官から海上幕僚長等に宛てて、平成15年2月25日に、海自補給艦「ときわ」が米補給艦「ペコス」に「3,000KL」を、他艦艇(米駆逐艦「ポール・ハミルトン」)に「812KL」を給油した旨が記載された「行動報告」(電報)[資料1]がなされ、海幕防衛部運用課(以下「海幕運用課」という。)及び海幕装備部需品課(以下「海幕需品課」という。)がこの電報を受領した。
また、海自補給艦「ときわ」艦長から海上幕僚長等に宛てて、当該給油に関わる受領証の写しが添付された「提供実施(報告)」(電子メール)[資料2]も送信されており、海幕運用課及び海幕需品課がこの電子メールを受領した。

イ 「行動報告」(電報)[資料1]に基づき、海幕運用課オペレーション・ルームでは、毎日、当直が海幕防衛部長に対する報告資料として「テロ対策特別措置法に基づく対応措置としての協力支援活動等実施記録」[資料3]を作成している。
また、「提供実施(報告)」(電子メール)[資料2]に基づき、海幕需品課では、課内の業務用資料として、燃料の譲与実績を累計した資料(「艦艇用燃料譲与実績」)[資料4]を、パソコンソフトを用いて作成している。

ウ これらの資料には、平成15年2月25日における海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」への給油量は正しく記入されていることが確認された。

エ 一方、海幕運用課オペレーション・ルームでは、「テロ対策特別措置法に基づく対応措置としての協力支援活動等実施記録」[資料3]のほかに、「行動報告」(電報)[資料1]に基づき、オペレーション・ルーム内の業務用基礎資料として、パソコンソフトを用いて給油量の集計表(「テロ特措法に係る協力支援活動実績(補給・輸送実績)」。以下「集計表」という。)[資料5]を作成しており、この集計表[資料5]は必要に応じて更新し保存されている。

オ しかしながら、平成15年2月25日の給油量が記載された集計表[資料5]には、米補給艦「ペコス」に「812KL」、米駆逐艦「ポール・ハミルトン」に「3,000KL」と取り違えて入力されていることが確認された。
集計表[資料5]に給油量を取り違えて入力したのは、平成15年2月26日頃(正確な入力日時は記録されていない。)の海幕運用課オペレーション・ルームの勤務員であった幹部自衛官7名(A2等海佐、B3等海佐、C1等海尉、D1等海尉、E1等海尉、F1等海尉及びG2等海尉)のうちのいずれかであると推定される。しかし、当該勤務員から聴取したが、入力者を特定することはできなかった。

(2)マシュー・G・モフィット司令官の発言を受けた対応について

ア 平成15年5月6日の報道[資料6]によれば、米空母「キティーホーク」を含む米海軍第5空母群のマシュー・G・モフィット司令官は、米海軍横須賀基地での記者会見において「我々は海上自衛隊から米軍の補給艦を経由して間接的に計約80万ガロンの燃料補給を受けた。日本政府の協力に感謝する。」と述べたとされている。

イ 平成15年5月8日、海幕防衛部防衛課長H1等海佐(以下「海幕防衛課長」という。)は、モフィット司令官の発言に係る報道に対応するため、対外応答要領(特定されていない。)を海幕防衛課員(特定されていない。)に作成させた。
海幕防衛課長が当該対外応答要領の作成を命じた海幕防衛課員が特定されていないため、対外応答要領を作成する際、誰がどの資料を用いて米補給艦「ペコス」への給油量を約20万ガロンと認識したのかは明らかではないが、当時の海幕防衛課のファイルには、メモ書きのある集計表[資料7]が綴じ込まれていた状況から判断すれば、海幕防衛課内において、メモ書きのある集計表[資料7]に記載された、海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」への給油量を誤って示す「812KL」というデータを使って、当該対外応答要領に海自から米補給艦への給油量は約20万ガロンであると誤って記載したものと推定される。

ウ 海幕防衛課長は、平成15年5月8日の午後、海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」への給油量は約20万ガロンであるという内容を、統合幕僚会議議長の記者会見前に同議長に対し説明した。

エ 平成15年5月8日、14時30分頃、統合幕僚会議議長は、記者会見[資料8]において、記者からの質問に答え、「(前略)2月25日にキティーホークが米国の補給艦から80万ガロンを受給しています。そのことの前になりますが、同日に海上自衛隊から同補給艦(注:米補給艦「ペコス」)に約20万ガロンの補給を実施しています。(中略)キティーホークが海上自衛隊から受けた油をイラク作戦で使用されたことはなかったと、ご理解いただきたいと思います。」と給油量を誤って説明した。

オ 平成15年5月8日、17時頃、海幕防衛課長は、統合幕僚会議議長の記者会見を受けて、防衛庁内において記者ブリーフィング[資料9]を実施し、「海上自衛隊の補給艦が同日(注:平成15年2月25日)米補給艦に20万ガロンの給油を行ったことは、既に統幕議長が述べたとおりです。」と説明した。

(注)資料5の文書と資料7の文書は同じ集計表の同一頁である。資料5の文書の右肩に「9/12」とあるのは、この表が「全部で12頁ある表の9頁」であることを意味している。一方、資料7の文書は、右肩に「9/11」とあり、これは「全部で11頁ある表の9頁」を示している。両資料で総頁数が異なるのは、資料7がプリントアウトされ、他資料とともに綴られた時点(平成15年5月8日頃)では、総頁数が11頁であったが、その後データが追加され、最終的にはこの資料は、総頁数12頁の資料となったためである。なお、この集計表は、平成15年5月22日現在の形でコンピューター内に保管されており、資料5は、この保管されている表を平成19年10月の時点でプリントアウトしたため、総頁数が12頁となっているものである。

(3)給油量の誤りを認識したことについて

ア 平成15年5月9日、海幕需品課燃料班長J2等海佐は、新聞報道[資料10]で、海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」へ補給された燃料が約20万ガロンとされていたため、その内容に誤りがあることに気付き、同日、海幕防衛課(人物は特定できない。)に、その旨を指摘した。

イ その指摘を受けて、海幕防衛課長は、海幕防衛課員ら(海幕防衛課防衛班先任K1等海佐等数名の者がいたと考えられるが特定されていない。)と検討した結果、既に統合幕僚会議議長が平成15年5月8日の記者会見で海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」への給油量は約20万ガロンである旨を述べていること、日本側からの確認に対する平成15年5月7日付けのリチャード・A・クリステンセン 在京米国大使館公使から守屋武昌 防衛庁防衛局長宛の書簡[資料11]で「海自から米海軍に提供される燃料が、これまでも、今後もテロ特措法の趣旨と目的に反して使用されることはない。」旨の回答を得ていたこと、米空母「キティーホーク」への間接給油問題が沈静化しつつあったため、米補給艦「ペコス」への給油量が例え80万ガロンであっても米空母「キティーホーク」が不朽の自由作戦従事中に当該燃料を完全に消費することは確実であり、米海軍が目的外の使用をすることはできないだろうと判断したこと、給油量が間違っていた件は、本質的な誤りではなく、この時期に事務的な数字の誤りの訂正のみをするまでのことはないという結論に至ったこと、さらに、燃料に関する報告について海幕防衛課は直接関与することとなっておらず、海幕防衛部内では海幕運用課系統で、海幕装備部内では海幕需品課系統で報告されることとなっていたため、訂正はそれらの系統で行われるべきものと認識していたことから、上司への報告や内局への報告を行わず、当該誤りに係る訂正の措置をとらなかった。

ウ 統合幕僚会議議長、海上幕僚長、海上幕僚副長、海幕防衛部長及び海幕装備部長は、本件給油量の誤りを認識していなかった。

(4)内部部局における給油量に関する国会答弁資料等の作成について

ア 防衛局防衛政策課は、平成15年5月8日の統合幕僚会議議長の記者会見で同議長が述べた給油量の数値を基にして、以後の防衛庁としての対外応答要領[資料12]を作成した。
問1については、長官官房文書課、運用局運用企画課、運用局運用課及び海幕防衛課と、問2については、長官官房文書課、運用局運用企画課、運用局運用課及び管理局装備企画課と調整が行われた。

イ 他方、内部部局関係課(管理局装備企画課及び管理局艦船武器課需品室)の担当者は、本件海自補給艦「ときわ」から米補給艦「ペコス」への給油量に関する正しい数値が記載された資料を海幕から受領していたが、平成15年5月8日の統合幕僚会議議長の記者会見で述べられた数値が誤りであることを認識することはなかった。

ウ 具体的には、管理局装備企画課の担当者は、平成15年3月11日に、海幕装備部装備課から正しい給油量を記載した海上幕僚長から防衛庁長官宛ての「テロ対策特別措置法に基づく物品の提供実施について(報告)(海幕装備第1371号。15.3.10)」[資料13]を受領し、物品管理上の記録としてファイルに保管した。当該文書は、管理局装備企画課における対外応答要領の担当者により参照されることはなかったとみられる。
また、管理局艦船武器課需品室の担当者は、予算執行管理の観点から月毎の給油量や所要経費を集計した資料[資料14]を作成するため、海幕需品課から、正しい給油実施日や正しい給油量等が記載された予算関連資料を受領していたとみられる。しかしながら、当該担当者は個別の艦艇への給油量の一々に着目して当該資料を取り扱うことはなく、また、当該資料が管理局艦船武器課需品室における対外応答要領の担当者により参照されることはなかったとみられる。

エ 平成15年5月8日の統合幕僚会議議長の記者会見を受けて、防衛庁としての対外応答要領[資料12]問1の作成に当たっては、管理局装備企画課及び管理局艦船武器課需品室には合議がなされていなかった。
また、管理局艦船武器課需品室においては、平成15年5月16日の衆議院安全保障委員会での今川正美議員からの「海自が補給を行った20万ガロンの燃料の種類は艦船用か航空機用か。」との質問に対する答弁資料[資料15]の作成にあたり、運用局運用課から合議を受けていたが、艦船用燃料の航空機燃料への転用の可能性に着目して当該合議に対応したこともあり、「20万ガロン」という数値の誤りについて認識することはなかった。
以上のことから、管理局装備企画課及び管理局艦船武器課需品室においては、その後、民間団体に指摘されるまで、本件給油量の誤りを認識するには至らなかった。

オ 防衛事務次官、防衛局長、運用局長及び関係する幹部は、本件給油量の誤りを認識していなかった。

カ 以上に述べた事情により、福田内閣官房長官が平成15年5月9日の記者会見[資料16]において、石破防衛庁長官が平成15年5月15日の参議院外交防衛委員会[資料17]において、平成15年5月8日に作成された防衛庁としての対外応答要領の答弁ラインに沿って、海自補給艦(「ときわ」)から米補給艦(「ペコス」)への給油量は誤った数字である「約20万ガロン」である旨の説明をすることとなった。

3 事案の問題点

 本事案の発端は、事務的な数字の入力ミスであるが、その後、海幕防衛課長らは、重大な情報の取り違えに気付いたにもかかわらず、上司や内部部局への適切な報告や訂正の措置をとらなかったもので、これは防衛省・自衛隊の事務処理のあり方に対する信頼を損ねるとともに、文民統制に係る極めて重大な問題である。
本件事務処理上の問題点については、次のとおりと考える。

(1)各担当者は、業務上の誤りを認識した場合には、上司や関係部局に報告し、その誤りを訂正するための措置を執るべきであるところ、本件について海幕防衛課長らは誤りを認識したにもかかわらず、上司や内部部局への報告や誤りの訂正を一切行わなかった。

(2)内部部局及び各幕僚監部における国会答弁資料を含む対外応答要領の作成においては、各担当者がその根拠資料等について自ら精査し、さらに、関係者が改めて点検すること等の確認作業の仕組みが確立されておらず、その結果、国会答弁資料の作成に当たり、誤りの数字が確認されないまま用いられた。

4 再発防止策

このような問題点を踏まえ、今後、かかる誤りを二度と繰り返すことがないように、次のとおり再発防止策を講じる。

(1)国会答弁資料をはじめとする重要な業務用資料の作成に関しては、関係部局複数の者による確実な点検を実施するため、内部部局及び各幕僚監部における関係部局が必ず相互に確認し合う仕組みを確立する。

(2)業務上の問題点を認識した場合には、必ず上司へ報告する。

(3)平成19年10月22日付けで設置された防衛大臣を委員長とする「文民統制の徹底を図るための抜本的対策検討委員会」において、文民統制の徹底を図るため、中長期的観点から、組織改革をも含む抜本的改革案を検討し、本年度末までにこれをとりまとめ、所要の措置を講じる。

5 今後の予定

今後も引き続き必要な調査を行うとともに、早急に厳正な処分を行い、公表する予定である。

 

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