平成17年度決算検査報告の概要等

平成18年11月13日

 平成17年度決算検査に係る会計検査院の決算報告について、会計検査院の指摘に基づき改善の処置を講じた事項等、防衛庁・防衛施設庁関係で以下の内容が報告された。

会計検査院の報告内容

防衛庁関係

1.「任期制自衛官に係る退職手当制度について(防衛庁長官あて)」

(意見表示事項)

(1)任期制自衛官に係る退職手当制度等の概要

 防衛庁では、防衛庁の職員の給与等に関する法律第28条の規定に基づき、2年又は3年を任用期間として任用される自衛官(任期制自衛官)に対して、任期満了時に退職手当を支給している。
 この退職手当の額は、退職時の俸給日額(俸給月額の30分の1に相当する額)に各任期ごとに定められた支給日数(最初の任用期間が2年である者にあっては100日、引き続き1回2年を任用期間として任用された者にあっては200日等)を乗じて得た額である。そして、これは国家公務員退職手当法に基づく退職手当と同様に勤続に対する報償としての性格を基本的には有するものの、短期任用という極めて特殊な任期制自衛官の任用形態を考慮して任期満了時に所定の額を一律に支給するものとなっている。

(2)会計検査院の検査結果

(検査の対象)

 任期制自衛官(17年度末現在39,150人)の過半数を占める陸上自衛隊の任期制自衛官(同26,659人)に対して支給した退職手当、16年度10,534人分、98億5947万余円、17年度10,724人分、106億8906万余円、計21,258人分、205億4853万余円を対象として検査した。

(検査の結果)

 検査したところ、任用期間中に育児休業や心身の故障による休養休職により職務に従事していない期間が1月以上あった者は、126人(退職手当支給額計1億4909万余円)となっていた。そして、これらの者の任用期間3,360月のうち職務に従事していない期間の月数は706月、一人当たりでは任用期間26.6月のうち職務に従事していない期間が5.6月となっていた。
 そして、職務に従事していない期間のあった者に対しても、所定の額の退職手当が減額されることなく支給されていた。
 しかし、このことは、任用期間の全期間にわたり職務に従事した任期制自衛官との間に不均衡を生じさせており、勤続に対する報償という任期制自衛官の退職手当の基本的性格に照らし、適切とは認められない。
 そして、育児休業等により現実に職務を執ることを要しない期間が1月以上あったときは、その月数の2分の1に相当する月数を退職手当の算定の基礎となる勤続期間から除算するなどして退職手当の額を算定することとしている国家公務員退職手当法に準じて、職務に従事していない期間のある任期制自衛官の退職手当を計算すると、前記の退職手当の額は、16年度約860万円、17年度約740万円、計約1610万円減少することになる。

(3)会計検査院が表示する改善の意見

 防衛庁では、自衛隊の精強性を維持するため、今後も引き続き多数の任期制自衛官を任用することが見込まれるとともに、次世代育成支援対策推進法の施行に伴い男性職員の育児休業取得促進に取り組んでおり、今後、男性自衛官の育児休業取得も予想される。
 ついては、上記の事態にかんがみ、防衛庁において、任期制自衛官に係る退職手当制度において、職務に従事しない期間を退職手当の算定上考慮するよう適切な処置を講ずる要があると認められる。

2.「海上自衛隊の艦艇が利用しているインマルサットサービスについて、通話等料金の割引を受けることにより、その節減を図るよう改善させたもの」

(処置済事項)

(1)インマルサットサービスの概要

 海上自衛隊では、訓練やインド洋での協力支援活動等のため、国外に護衛艦等の艦艇を派遣して おり、各艦艇と海上幕僚監部及び海上自衛隊の各部隊等との間において、高速データ通信を中心に、電話、ファックス等の通信手段を確保するなどのため、インマルサット静止衛星を使用した通信サービス(以下「インマルサットサービス」という。)を利用している。
 インマルサットサービスは、各国の電気通信事業者が各利用者に提供するもので、日本国内では、KDDI株式会社が、衛星と通信を行う地上設備の運営及び各種インマルサットサービスの提供を行っている。そして、利用者は、船舶にアンテナ、電話機等の機器を設置し、KDDIとの間でインマルサットサービス使用契約を締結することになっている。
 海上幕僚監部では、各地方総監部に対しインマルサットサービスの運用、契約に関する指示を行っており、これに基づき 各地方総監部では、インマルサットサービス使用契約を締結し、その利用に応じた通信料等を毎月支払っている。
 また、KDDIは、平成16年2月から船舶に係るインマルサットサービス使用契約を対象として割引サービスを開始している。この割引サービスは、使用契約者が申込みを行い定額料(月額5,250円)を支払えば、高速データ通信等を除く電話、ファックス等の料金(以下「通話等料金」という。)が月額10万円以上である場合、その額に応じて段階的に割引を受けることができるとするものである。そして、同一使用契約者が複数の船舶に係るインマルサットサービス使用契約を締結している場合は、使用契約者ごとに定額料を支払えば、各船舶の通話等料金を合算して割引を受けることができることとなっている。

(2)会計検査院の検査の結果

  検査したところ、横須賀地方総監部ほか3地方総監部(以下「4地方総監部」という。)では、割引サービスの適用を受けることが可能であるものについて、これを受けていなかった。
 すなわち、4地方総監部における通話等料金の月ごとの合算額を算出したところ、16、17各年度の6~12箇月分の通話等料金について割引サービスを受けることができる額に達しており、割引サービスの申込みを行えば、多くの月で割引を受けることができたと認められた。
 4地方総監部において、16年4月から割引サービスの適用を受けていたとすると、16、17両年度の定額料が50万余円増加するものの、通話等料金の支払額8049万余円は6516万余円となり、差し引き1482万余円節減できたと認められた。

(3)海上幕僚監部が講じた改善の処置

 会計検査院の指摘に基づき、海上幕僚監部では、18年6月に各地方総監部に対して、割引サービスの適用を受けることで通話等料金の節減を図ることが可能となる場合は、割引サービスの申込みを行うよう事務連絡を発した。これに基づき、4地方総監部では、同月に割引サービスの申込みを行い、同月の利用に係る通話等料金から割引サービスの適用を受ける処置を講じた。

3.「部隊輸送の経費に使用することとして購入した旅行券の購入状況及び使途について、予算統制上生じていた不適切な事態を改善させたもの」

(処置済事項)

(1)部隊輸送に係る経理等の概要

 海上自衛隊では、出動、訓練、演習等の目的で部隊及び隊員を輸送する場合の経理処理について、処理要領を定め、その任務及び行動の本質上、輸送、宿泊及び給食等はすべて現物をもって処理するのが適当と認められる場合には、部隊輸送として取り扱い、国家公務員等の旅費に関する法律に基づく旅費を支給しないこととしている。
 そして、輸送手段については、極力自衛隊の輸送機関等を利用することとしているが、鉄道その他有料交通機関を利用する場合には、資金前渡官吏が購入した旅行券により、当該輸送に必要な航空券、乗船券、高速バス券等を調達し利用することなどとしている。

(2)会計検査院の検査の結果

ア 旅行券の購入状況について

 横須賀地方総監部ほか7箇所では、平成13年度から17年度までの間に旅行券を購入しており、各年度ごとの旅行券の購入額、使用額及び翌年度への繰越額(これらの額はすべて券面額。以下同じ。)は、次表のとおりとなっていた。

(単位:千円)

旅行券の購入状況
年度 購入箇所 購入額 使用額 翌年度への繰越額
22 160,801 108,278
13 1 2,000 2,000
14 3 20,000 8,365 13,634
15 5 33,521 26,116 21,038
16 5 54,492 29,038 46,492
17 8 50,788 44,757 52,522

 これらの購入時期、購入額についてみると、購入額1億6080万余円(支出額1億5974万余円)のうち、各年度末の3月に購入した額が購入額全体の約70%に当たる1億1536万余円となっていた。そして、箇所別・年度別の当該年度の購入額に対する3月の購入割合が50%以上となっているものが延べ22箇所のうち19箇所あった。また、翌年度への繰越しについてみると、箇所別・年度別に当該年度の使用可能額(前年度からの繰越額に当該年度の購入額を加えた額)のうち翌年度に繰り越している割合が50%以上となっているものが22箇所のうち16箇所あった。
 しかし、旅行券は、必要な都度、必要な額だけを購入することが可能な物品であり、当該年度内に使用できないような多額の旅行券を年度末に購入する必要性は認められない。また、旅行券をそのまま航空券等として使用することはできず、旅行券により航空券等を調達して初めて最終的な目的を達成するものであるから、多額の旅行券を購入して、翌年度に繰り越して使用することは、当該年度の予算を実質的に翌年度以降の経費として使用することになり、財政法で定める会計年度独立の原則の趣旨を逸脱するものであると認められた。
 また、横須賀地方総監部ほか1箇所では、処理要領で旅行券購入の経費に充てることとしている(目)運搬費以外の予算科目から2632万円を支出して旅行券を購入していた。そして、これらの旅行券は複数の予算科目の予算を併せて購入されたことから、支出した予算科目を個々の旅行券ごとに特定できない状況となっており、各予算科目が定める目的ごとに区分して使用することは困難となっていた。

イ 旅行券の使途について

 移動の目的及び行程を指示した命令書等の資料により検査したところ、国家公務員等の旅費に関する法律に基づく旅費を支給すべき、会計監査、物品管理検査などの一般的な業務出張の移動等に旅行券を使用しており、その額について確認できた範囲内では、横須賀地方総監部ほか1箇所で、37件809万余円となっていた。
 しかし、これらの一般的な業務出張は、(目)運搬費の内容に該当せず、旅費の類の予算科目から支出すべきと認められ、予算科目の区別による予算統制の趣旨に照らして不適切であると認められた。

(3)海上幕僚監部が講じた改善の処置

 会計検査院の指摘に基づき、海上幕僚監部では、18年9月に各地方総監部等の会計担当者に対する会議を開催するとともに同年10月に各地方総監部等に通知を発し、予算執行に当たって財政法等の法令を遵守するとともに、今後は旅行券の購入を行わないことなどを周知徹底する処置を講じた。

4.「陸上、海上及び航空各自衛隊が使用する食器の調達に当たり、仕様を統一し一括して調達することにより、調達額の節減を図るよう改善させたもの」

(処置済事項)

(1)食器の調達の概要

 防衛庁では、陸上、海上及び航空各自衛隊が駐屯地、基地等で使用する合成樹脂製の食器を毎年度多数調達している。
 食器の調達に当たっては、各自衛隊は、品名、数量、納期等を記載した調達要求書に寸法、材質、性能等を定めた仕様書等を添付し、これを契約本部(平成18年7月31日以降は装備本部)に送付して調達要求することとされている。そして、契約本部では、各自衛隊から送付された調達要求書等に基づき、それぞれの調達要求ごとに食器の品目別に契約を行って食器を調達している。

(2)会計検査院の検査の結果

 16、17両年度に契約本部が調達した食器のうち、同一年度に複数の自衛隊の要求により調達した飯わん、汁わん、菜皿、洋皿、小鉢、小皿及び湯呑の7品目の食器の調達に係る38件の契約(陸上自衛隊365,810個、海上自衛隊48,750個、航空自衛隊110,207個、契約金額計1億3144万余円)を対象として検査したところ、食器の品目ごとの調達数量は、陸上自衛隊が海上自衛隊及び航空自衛隊の約2~8倍と大幅に異なっていた。そして、これらの食器の調達単価は、海上自衛隊及び航空自衛隊が陸上自衛隊の約3~5倍と大幅な開差が生じていた。
 一方、食器の使用状況等についてみると、各自衛隊の駐屯地、基地等の隊員食堂において同様の条件の下で使用されており、また、食器の寸法、材質、性能等も各自衛隊間でほぼ同様のものであり、 各自衛隊の食器の仕様を統一して共通の食器を使用することも十分可能であると認められた。
 そして、前記7品目の食器について、各自衛隊の仕様を統一し、品目ごとに一括して陸上自衛隊の単価により調達したとすると、前記の契約金額を5881万余円節減できたと認められた。

(3)防衛庁が講じた改善の処置

 会計検査院の指摘に基づき、防衛庁では、18年7月に各自衛隊が統一的に使用し得る食器の仕様書を作成するとともに、品目ごとに各自衛隊の要求数量を合わせて一本化し、契約本部が一括して調達することとする処置を講じた。

5.「職員の不正行為」

(不当事項)

1件 不当金額(支出) 224万円

(前年度 4件 880万円)

 海上自衛隊阪神基地隊本部において、経理科経理係の自衛官が、平成16年9月から17年3月までの間に、分任資金前渡官吏の会計機関印等を無断で使用して小切手を作成し、これを現金化するなどして、前渡資金計2,246,527円を領得していた。
[本件損害額については、17年5月末までに全額が同人から返納されている。]

防衛施設庁関係

1.「現場技術業務に係る予算執行が会計法令等に違背し、誤った歳出科目から支出」

(不当事項)

8件 不当金額(支出) 9966万円

(1)現場技術業務に係る予算執行の概要

 防衛施設庁の各防衛施設局では、管内に所在する自衛隊の基地等、在日米軍基地等において、格納庫、隊舎、庁舎等の建設工事を毎年度多数実施している。そして、各防衛施設局では、これらの建設工事の適正かつ円滑な実施等を確保するため、一つの契約で複数の建設工事を対象とする現場技術業務を、財団法人防衛施設技術協会に委託している。
 国の予算の執行に当たっては、財政法、会計法等(会計法令等)に基づき行うこととされている。そして、歳出予算については、その目的に従って項に区分し、各項の経費の金額については、当該各項に定める目的のほかに使用することができないなどとされており、上記の工事を実施するために必要な経費に係る歳出科目については、工事の目的に従って、次のア、イ、ウ等に区分されている。

  • ア 各自衛隊等に係る土木建築等の請負工事 (組織)防衛本庁(項)施設整備費
  • イ 在日米軍のための提供施設等の整備工事 (組織)防衛施設庁(項)施設運営等関連諸費
  • ウ 在日米軍のための提供施設を移転して当該提供施設の返還を受けるため必要となる施設整備工事 (組織)防衛施設庁(項)提供施設移設整備費

 そして、現場技術業務を実施するために必要な経費は、その対象工事を実施するために必要な経費に該当することから、現場技術業務に係る予算執行においても、その対象工事に対応した歳出科目から支出しなければならないこととなっている。

(2)会計検査院の検査の結果

 検査したところ、仙台、福岡、那覇各防衛施設局では、次表の8契約の現場技術業務に係る委託費を(組織)防衛施設庁の(項)施設運営等関連諸費又は(項)提供施設移設整備費の歳出科目から支出することとして、予算を執行するため支出負担行為、支出決定等の各種手続を行っていた。しかし、これらの契約は、対象工事の中に前記アの各自衛隊等に係る土木建築等の請負工事が含まれているなどしていることから、各対象工事に対応した歳出科目から現場技術業務に係る委託費を支出すべきであると認められた。
 したがって、上記の現場技術業務に係る予算執行は会計法令等に違背しており、計99,668,681円は誤った歳出科目から支出されていて、不当と認められる。

検査の結果一覧
防衛施設局名 契約名 契約金額 支出年度 支出すべき歳出科目 誤って支出した歳出科目 誤って支出した金額
  324,450       99,668
仙台防衛施設局 三沢米軍(15)現場技術業務委託契約 39,900 16 (組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
6,903
仙台防衛施設局 三沢米軍(16)建設工事技術業務委託契約 39,795 17 (組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
7,868
福岡防衛施設局 佐世保地区(15)建設工事技術業務(その2)委託契約  6,300 16 (組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
3,526
福岡防衛施設局 佐世保地区(15)建設工事技術業務委託契約  93,450 16、
17
(組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
24,593
那覇防衛施設局 沖縄地区(15)技術業務委託契約 42,630 16 (組織)防衛施設庁
 (項)提供施設移
    設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
3,854
那覇防衛施設局 沖縄地区(15)建設工事技術業務委託契約 15,120 16 (組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
  (項)施設運営等
    関連諸費
  (項)提供施設移
    設整備費


41

3,583
那覇防衛施設局 沖縄地区(16)技術業務委託契約 70,455 17 (組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
(組織)防衛施設庁
 (項)提供施設移
    設整備費
 40,140
那覇防衛施設局 沖縄地区(16)建設工事技術業務委託契約 16,800 17 (組織)防衛本庁
 (項)施設整備費
(組織)防衛施設庁
 (項)施設運営等
    関連諸費
(組織)防衛施設庁
 (項)提供施設移
    設整備費
9,155

2.「防衛施設庁における建設工事及び委託業務に係る入札・契約の実施状況について」

(特定検査状況)

(1)会計検査院の検査の背景

 防衛施設庁の地方支分部局である東京防衛施設局が平成16年度に発注した3件の建設工事において、当時の防衛施設庁技術審議官ほか2名が、公正な価格を害する目的で、特定の建設共同企業体に落札させるための談合(いわゆる官製談合)を行ったとして、東京地方検察庁は、18年2月、競売入札妨害(談合)の容疑により、東京地方裁判所に起訴した。また、東京地方検察庁は、同年3月、広島防衛施設局が15年度に発注した5件及び福岡防衛施設局が15年度に発注した2件、計7件の建設工事においても同様に、官製談合を行ったとして、上記の3名を東京地方裁判所に起訴した。
 そして、東京地方検察庁は、上記10件の建設工事と東京防衛施設局が15年度に発注した1件の建設工事を落札した請負業者11社の営業担当者等について、東京簡易裁判所に略式命令請求を行い、同裁判所は罰金50万円の略式命令を行った。
 防衛施設庁では、18年1月中旬以降、建設工事の発注をすべて停止していたが、同年3月に、談合の疑いのある業者並びに防衛施設庁建設部の関与により就職した防衛庁及び防衛施設庁の退職者が14年度以降に在籍した業者計181社(以下、単に「181社」という。)を入札・契約手続から排除するなどの措置を執り、手続を再開している。

(2)会計検査院の検査の状況

 16年度又は17年度に契約期間がかかる契約金額5000万円以上の建設工事2,728件、計6125億余円(当初契約金額)、契約金額1000万円以上などの委託業務891件、計225億余円(当初契約金額)を対象に検査したところ、次のような状況が見受けられた。

ア 建設工事について
(ア)入札・契約の状況

 検査の対象とした2,728件の建設工事のうち随意契約(150件)を除く2,578件の入札・契約方式別ごとの平均落札率は、18年3月に防衛施設庁が措置を執る前は95%程度で推移してきたが、18年3月では86.4%と約10ポイント程度低下している。この平均落札率の低下の背景には、181社を入札から排除することにより、これまで建設工事の受注実績のある業者の入札参加を制限する一方、18年3月の入札においては、一般競争入札の入札参加資格について、土木及び建築一式工事の場合、総合審査数値を1,200点以上から1,000点以上に緩和するなど従来の入札とは異なる条件の下で実施されたことの影響があったものと思料される。また、今回の官製談合は、工事件名ごとに受注予定業者を記載したいわゆる割振表により建設工事の割振りが組織的・構造的に行われていたものとされている。そして、受注予定業者への建設工事の割振りは所定の工事概算額以上の工事を対象としており、土木・建築工事の場合は通常5億円以上の工事などを対象としていた。そこで、今回検査の対象とした2,728件の建設工事から随意契約によるもの及び18年3月の入札を除く2,262件の建設工事について、割振表の対象となった可能性があるとされた所定の金額以上の建設工事(645件、2653億余円)における平均落札率(96.0%)と所定の金額未満の建設工事(1,617件、2149億余円)における平均落札率(95.3%)を比較したり、181社が単独又は建設共同企業体として請け負った建設工事(757件、2883億余円)の平均落札率(96.9%)と、181社以外の業者が請け負った建設工事(1,505件、1919億余円)における平均落札率(94.8%)を比較したりしたところ、いずれも後者が若干低くなっているものの双方とも95%程度となっていた。
 次に、18年3月に防衛施設庁が措置を執った前後における複数回入札を実施した場合の落札に至るまで1位不動のものの割合は、98.7%(1,111件中1,097件)から92.8%(42件中39件)と若干減少しており、また、全体の件数のうち複数回入札が行われたものの割合は、49.1%(2,262件中1,111件)から13.2%(316件中42件)と大幅に減少している。

(イ)工事費内訳明細書

 工事費内訳明細書は、入札参加業者の不誠実な行為の有無及び真摯な見積りを行っているかの確認を目的として、入札時に入札参加業者から提出を求めるなどしており、16年度以降は提出の範囲を一般競争入札のほか、競争性を高めた公募型指名競争入札、工事概算額が2億円以上の指名競争入札に拡大している。
 防衛施設局等に保管している工事費内訳明細書を比較するなどしたところ、18年3月契約を含む一部工事において、複数の業者の工事費内訳明細書に名称、単位等に共通の誤字があったり、共通仮設費、現場管理費等の率が複数の業者でほぼ同率であったりするなどの不自然な規則性が見受けられた。このため、防衛施設局等において、保管しているすべての工事費内訳明細書(16年度契約件数264件、17年度同227件)について、誤字脱字等の類似を中心に再点検を行った結果、131件の入札において誤字、脱字等の類似が見受けられた。

(ウ)設備工事等における予定価格の積算

 防衛施設局等では、電気、機械及び通信の設備工事等のうち、発電装置、無停電電源装置、昇降機設備、クレーン設備等の特別な機器類を設置等する工事(30件92億余円)については、専門工事業者から総額の見積りを徴し、この見積価格を参考にして積算している。
 これらの見積りを徴する際の手続及び積算についてみると、防衛施設局等では、入札に当たって当該工事の施工可能な業者を指名した後にその指名業者からのみ見積りを徴し、各業者と価格交渉を行った結果の最低価格を積算価格とするなどしていた。このように指名通知後に指名業者からのみ見積りを徴して予定価格を積算しているのは、特に16年6月から17年12月までの間は、指名業者名を指名後速やかに公表していたことから業者間で互いに情報交換が容易であり、当該工事の積算価格を推定し得ることになることから、適切とは認められない。
 防衛施設庁では、18年3月発注分から、見積りは原則として応募又は指名業者の決定がなされる前に、登録業者の中から当該機器を製作しているメーカー又は官民を含め当該機器の納入実績のあるメーカー、これらのメーカーと特約店契約を締結している業者に広く見積りを依頼するなどの措置を講じており、本院においても新たな見積り方法が効果的に機能しているか検証していく必要がある。

(エ)追加工事に係る違約金

 防衛施設局等では、15年6月11日以降に入札手続を開始する建設工事(追加工事を含む。)から、競売入札妨害等の刑が確定するなどした場合に請負代金額の10分の1を支払う違約金に関する特約条項を請負契約締結時に付することとしている。
 今回の起訴事実の対象となった11件の建設工事には、予算上の都合から施設の一部工事を追加工事として随意契約により同一業者に発注しているものが3件ある。これらの工事は、予算が不足するために契約に含められなかった内容について、その後、他の工事に予算の余剰が生じた場合などに、その金額分を充当して、設計変更として当初契約に追加するのと差がないものであるのに、設計変更の場合には当初契約の特約条項により設計変更した部分を含めて違約金が算定され請求できるのに対し、追加工事の場合には前工事とは別の契約であるため、前工事において競売入札妨害等の刑が確定するなどしても違約金を請求できない。
 しかし、前記3件の追加工事は、いずれも前工事と一貫した施工が要求されることから随意契約として同一業者に発注していること、追加工事の工事費の積算は前工事を含めて一体工事として積算していること、落札率は1社のみの見積り合わせによった結果、前工事よりも高率であることなどをかんがみると、前工事に競売入札妨害等による国の損害が生じた場合には、同様に追加工事にも国の損害が生じていると思料される。

イ 委託業務について

 防衛施設庁の本庁等では、財団法人防衛施設技術協会(以下「技術協会」という。)は、防衛施設等の建設に関する各種技術分野の専門知識、技術力及び各種データに関する広範な知識を有し、さらに、公平中立な立場で調査・研究を行い得る唯一の公益法人であるとの理由から、随意契約により110件、29億余円の契約を締結している。

(ア)再委託

 上記110件の業務のうち、技術協会から建設コンサルタント等に対して再委託されているものが41件あり、これらはすべて契約書に違反して本庁等に無断で再委託されており、本庁等が技術協会と業務委託契約を締結した際の特記仕様書と技術協会が民間会社と業務の再委託契約を締結した際の特記仕様書とを比較したところ、両者はほぼ同一内容であった。また、技術協会では、建設コンサルタント等から本庁等との契約前に見積書を徴し、本庁等との契約と同日付で再委託契約を締結していたり、協会独自で各種調査を行うための機器や解析プログラムを所持していないことから当初から建設コンサルタント等に再委託することを予定したりしている事態が見受けられた。これらの事態をかんがみると、本庁等において、技術協会は専門知識、技術力等を有する唯一の公益法人であるとの理由により随意契約を締結しているのは合理性を欠いている。

(イ)現場技術業務の委託費の積算及び予算執行

 技術協会に委託している現場技術業務のうち対象工事に関する支援業務(51件、20億余円)の委託内容は、建設工事が的確かつ円滑に実施されるための総合調整業務で、技術協会の技術者が基本的には現場に常駐することとしている。
 本件委託業務費の積算は、防衛施設庁では、技術者の職階の基準を設けておらず人員についても特段定めていないため、業務に必要な技術者の職階及び人員を技術協会の見積りにより決定していた。このような事態は、技術協会の技術者数等の事情に左右されかねないことから、必要な技術者の職階及び人員は防衛施設局等において自ら適切に判断すべきである。
 また、仙台防衛施設局ほか2防衛施設局において、現場技術業務の委託費の一部を会計法令等に違背して誤った歳出科目から支出しているものが、8件、9966万余円見受けられた。

(3)会計検査院の所見

 防衛施設庁においては、今回の官製談合事件によって失った国民の信頼を回復するため、国が被った損害の回復に努めるとともに、18年6月に公表された「防衛施設庁入札談合等再発防止に係る抜本的対策に関する検討会」の報告書にまとめられた新たな入札手続等を確実に実施していくほか、以下のような対応を図っていくことが必要と考えられる。
 建設工事については、(ア)一般競争入札方式等の適用拡大を図るとともに、総合評価方式の実施に当たっては目的に沿った効果が得られるよう実施方法等にも十分に配慮して適用していくこと、(イ)工事費内訳明細書について、公正な入札を執行できるかどうか疑義があるなどの事態を発見できる場合があることから、防衛施設局等の事務負担も考慮した上でより効果的な活用方法を検討すること、(ウ)追加工事における違約金について、随意契約の理由にもかんがみながら、前工事において競売入札妨害等の刑が確定するなどした場合には、違約金を請求することができるような方策も検討すること。
 委託業務については、(ア)技術協会は自主解散が予定されており、技術協会に随意契約で委託していた現場技術業務は今後競争契約となることから、委託方法、積算方法等を検討すること、(イ)再委託について、今回の検査でも契約書に違反して無断で再委託している事態が多数見受けられたことから、このような事態の防止などについて検討すること。
 会計検査院としては、今後とも上記のことが確実に実施され、新たな入札・契約手続の効果が十分発現しているか、実施状況等を把握し検査していくこととする。

その他

 各府省等共通事項として「各府省等におけるコンピュータシステムに関する会計検査の結果について」(国会からの検査要請事項)も報告される。

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