呉弾薬整備補給所におけるミサイル落下事故の再調査結果について

平成18年 8月9日

1 概要

(1) 平成16年8月4日(水)呉弾薬整備補給所(以下、呉弾補所と言う。)の構内で、護衛艦「おおなみ」の年次検査に伴う弾薬の陸揚げ作業において、90式艦対艦誘導弾(以下、SSMと言う。)を入れたコンテナをフォークリフトで運搬中、電柱に接触し落下させSSMを損壊させた。

(2) 平成16年11月2日(火)、所長は調査報告書を呉地方総監に提出した。

(3) 平成18年5月25日(木)、呉地方総監部にマスコミ関係者から調査報告書の内容について、虚偽の報告があったのではないかとの問い合わせがあった。呉地方総監部で事実確認の結果、当時の報告書に事実が十分に記載されていないことが判明した。

(4) 平成18年5月26日(金)、呉地方総監部は、呉総監部幕僚長を調査委員長とする一般事故調査(再調査)委員会を設置し、再調査を開始した。

2 再調査結果等

(1)事故発生時の状況

 平成16年8月4日(水)呉弾補所補給科に所属するX3曹(以下、事故者と言う。)は、フォークリフトのフォークを専用差し込み口に入れず不適切な状態で走行し路肩の窪地に気を取られ、電柱との目測を誤りコンテナの右端を電柱に接触させ、コンテナを落下させた。その際、資材係長は、必要な見張り員などを適切な位置に配置していなかった。

(2)燃料漏れへの対応

 作業員から落下の報告を受けた資材係長は、コンテナの外観検査を実施しSSM本体は異常ないものと判断し火薬庫に格納したが、その後火薬庫内の作業員からコンテナの内部から異音発生が報告された。補給科長は、異音を自身で確認後、コンテナを落下させたこと及びコンテナ内部への燃料漏洩の恐れがあることを所長に報告した。しかしながら、呉弾補所は元々SSMの整備は業務としていなかったため、SSMの取り扱いに関する手順書が整備されておらず、必要な教育等を行っていなかった。そのため横須賀弾薬整備補給所(以下、横弾補所と言う。)に取り扱いについて確認したところ、落下したSSMの燃料ガスが火薬庫内に漏れる恐れがあるため、風通しの良い場所へ移動させるよう指示を受け、漏洩音の確認から約1時間後に火薬庫外の空き地へ移動させた。その後、燃料を抜き取るよう指示を受け、燃料抜き取り作業を実施した。

(3)一部事実の未報告等

 補給科長は、所長に「フォークを差し込み口に入れずに下からすくっていた」事実を報告し、事故速報を起案したが、所長は、事故者の過失によるSSMの弁償責任の可能性があること及び事故者の落ち込んだ表情から不測の事態も予測されたため、当人の精神的負担軽減に配慮したことに併せ、事故の原因は電柱への接触が主因で、フォークリフトのフォークを差し込み口に未挿入であったことは、事故の直接的な原因にはならないと判断したため、海幕長等に対してその事実を報告しなかった。
  補給科長は、フォークリフトのフォークを差し込み口に未挿入であったことは報告しないという所長の判断を踏まえ、関係者に口止めを指示した。
  その後、着任した新所長は、フォークを差し込み口に入れずに運搬した不適切な運搬については、既に前任者によって基本的な事故調査が終了しており、自らも特に重要ではないと認識し、事故調査報告書案を了承した。

(4)周辺自治体への公表・連絡の未実施

本事案においては、「火薬類の取扱いに関する訓令」に定める「火薬類が危険状態となり、近隣に危害を及ぼすような恐れが生じたとき」には該当しないと判断して、関係機関及び周辺自治体には通報せず、公表もしていなかった。

(5)手続きの遅延の状況

 物品損傷報告等に係る事務処理において、所長は、平成16年11月22日、海幕長に「上申書」を提出し、海幕長は平成17年5月27日に物品損傷報告を防衛庁長官あて提出しようとしたが内局部局会計監査室に損傷金額等の記載内容の不備を指摘されたため、提出できなかった。その後平成17年11月15日、補給科長は、海幕補給管理班担当者から再検討等を依頼されていた。しかしながら、補給科長は、これを所長に報告することもなく放置した。
  損傷したSSMは、横弾補所、補給本部等において修理内容等の検討が終了していなかったことから、横弾補所による特例検査(平成16年9月実施)を終了した状態で横弾補所に保管されていた。

3 事故の原因等

(1)SSM落下事故

ア 主因

事故者のフォークリフト取り扱い不適切

イ 副因

(ア)作業管理態勢の不適切
(イ)所長及び補給科長の指導・監督不十分
(ウ)作業実施の不適切
(エ)教育訓練及び練度把握不十分

(2)事故処理上の問題点

(ア)燃料漏れへの対応
燃料漏れ発生時の処置要領等の未整備
(イ)一部事実の未報告等
指揮・監督者としての誤判断等
(ウ)周辺自治体等への公表・連絡の未実施
周辺自治体の安全と安心の確保に対する低意識
(エ)物品損傷報告の遅延
物品管理担当部門における業務管理意識の欠如

4 再発防止策

(1)SSM落下事故

ア フォークリフト運転における確実な取り扱い要領の徹底 
イ 作業管理態勢の確立
ウ 指導・監督の強化
エ 指揮系統に基づく適切な作業の実施
オ 教育訓練の徹底と確実な練度評価

(2)燃料漏洩後の措置

ア 関係する取扱説明書及び燃料漏洩発生時の処置要領の作成、配布
イ 弾火薬類を取り扱う専門部隊としての意識改革及び不測の事態を含む各種事案対処能力の向上・徹底

(3)一部事実の未報告等

 各指揮官に対し、諸事案発生時に事実関係を正確に報告する等の指導・監督の徹底

(4)周辺自治体等への通報及び公表

 弾火薬類に係る事故発生後速やかに、事故の概要、想定される地元に対する影響等を一報すると共に、その後判明した事実及び状況を周辺自治体等に連絡するための体制整備 

(5)物品損傷報告の遅延

 事故処理に係わる担当者等は、内部部局、海幕、補給本部等との連携を密にし、速やかな報告を実施

(6)弁償責任の有無

 会計検査院は、今後防衛庁からの物品損傷報告を受け、弁償責任の有無について検定する予定。

4 関係者の懲戒処分

(1)処分年月日

平成18年8月9日(水)

(2)処分の概要

ア 元呉弾薬整備補給所長 1等海佐(54歳)を職務上の注意義務違反及び指揮監督上の義務違反で「減給1月1/30」
イ 元呉弾薬整備補給所長 1等海佐(49歳)を職務上の注意義務違反で「訓戒」
ウ 呉弾薬整備補給所補給科長 1等海尉(46歳)を職務上の注意義務違反及び指揮監督上の義務違反で「減給2月1/6」
エ 事故者 2等海曹(33歳)を武器の損壊等で「戒告」


PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Reader(無料)が必要です。Adobe Reader は、Adobeのサイト(別ウィンドウ)からダウンロードしてください。

別ウィンドウで Adobe Reader のダウンロードページへ


ページの先頭へ戻る