令和6年 木原防衛大臣 年頭の辞

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令和6年 木原防衛大臣 年頭の辞

はじめに

防衛大臣の木原稔です。令和6年の年頭に当たり、全国の隊員諸君に対し、今の私の率直な想いをお伝えしたいと思います。

まず、今月1日に発生した令和6年能登半島地震で亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災者の皆様とそのご家族に心からお見舞いを申し上げます。

私自身も8年前に熊本地震を経験しましたが、発災後速やかに現場に駆けつけ、懸命に捜索活動や生活支援に取り組む隊員諸君の姿は、被災者にとって希望の光です。

今この瞬間も、被災者のために懸命に任務に当たっている隊員諸君のことを、防衛大臣として大変誇りに思います。厳しい環境ですが、引き続き、任務に全力を尽くすことを期待しています。

安全保障環境

さて、昨年9月に防衛大臣に着任して以来、毎日様々な報告や説明を受けてきましたが、現在の防衛省・自衛隊が置かれている状況は、私が防衛大臣政務官を務めていた10年前とは全く違う、大変厳しい状況になっていると感じます。

我が国周辺の状況を見ても、中国は軍事力を急速に増強するとともに、尖閣諸島を含む東シナ海や太平洋等での活動を活発化させています。北朝鮮は核・ミサイル開発を進展させ、弾道ミサイル等の発射を強行しています。

また、ロシアはウクライナ侵略を継続させる中で、北方領土を含む極東地域での活発な軍事活動を継続させており、更には中国と共同での航空機や艦艇の活動も確認されています。

このような厳しい安全保障環境の中で、国民の命と暮らしを守り抜くため、日々それぞれの持ち場で懸命に任務に当たってくれている全ての隊員に対し、改めて心からの敬意と感謝を表したいと思います。

防衛省・自衛隊70周年

今年、防衛省・自衛隊は創設70年を迎えます。発足時、我が国は敗戦後の独立回復からまだ2年、世界は冷戦の真っただ中にありました。

今日、我が国は世界有数の経済大国となりましたが、世界に目を向ければ、ポスト冷戦時代は終わったとも言われ、グローバル化が進展する中で、国際社会は対立と協力の様相が複雑に絡み合う時代となっています。

このように世界が歴史の転換点を迎える中で、防衛省・自衛隊も変わらなければならないと感じています。

そのためには何が必要か。本年は、防衛力の抜本的強化に向けた取組を更に加速させていく1年としなければなりません。

スタンド・オフ・ミサイルの整備やイージス・システム搭載艦の建造といった新たな装備品の導入、装備品の可動数向上や弾薬・誘導弾の十分な確保、全国の駐屯地や基地の強靱化など、力による一方的な現状変更を抑止し、あらゆる事態に対処できる体制を整備します。

同時に、同盟国・同志国との連携も強化していかなければなりません。日米同盟は我が国の安全保障政策の基軸であり、引き続き、その抑止力・対処力の強化に取り組んでいきます。

また、昨年は、陸上自衛隊においては、米国との共同指揮所演習ヤマサクラに豪州が初めて参加、海上自衛隊においては、日米豪比での初めての共同訓練を南シナ海で実施、航空自衛隊においては、日米韓での初めての共同訓練を実施したり、インド、フランス、イタリアの戦闘機が我が国に初めて飛来し、共同訓練を実施したりするなど、同志国との連携が目に見える形で大きく進んだ1年でした。この流れをしっかりと続け、本年も多くの国々との連携を強化していきたいと考えています。

人的基盤の強化

大臣着任以来、各部隊を視察していますが、その度に、防衛省・自衛隊は人の組織であり、防衛力の中核は自衛隊員であると強く感じます。

隊員諸君が働きやすい環境を作ること、そして、これからの国防を担う優秀な人材を確保することは、防衛大臣である私の使命です。

そのために、例えば、厳しい任務につく隊員諸君への手当の拡充、艦艇乗組員が長期間の行動時にも家族と連絡を取れるための艦艇の通信環境の改善や、女性活躍のための各種施策、更には駐屯地等の施設内を活用した臨時の託児スペースを試行します。

また、厳しい募集環境の中でも優秀な人材をしっかりと確保していくため、募集能力の強化や民間人材を含む幅広い層からの人材確保も進めていきます。

そして、このような人の組織である自衛隊の根幹を揺るがすハラスメントは決してあってはならないものであり、起こってしまったハラスメント事案に対しては、厳正に対処してまいります。

特に今月は、防衛省・自衛隊におけるハラスメント防止月間ですので、ハラスメントを一切許容しない環境の構築に向け、共に全力で真摯に取り組んでいきましょう。

結びに

先ほど、防衛省・自衛隊も変わらなければならないと申し上げましたが、変わらないもの、変わってはいけないものもあると思っています。

「真に国民の自衛隊」たれ。これは、木村篤太郎(とくたろう)初代防衛庁長官が、諸君の先輩に託した思いです。

この70年間、防衛省・自衛隊は、国民の命と暮らしを守り抜く最後の砦として、陸に海に空に、24時間365日休むことなく任務に励んできました。この年末年始も、家族と離れ、被災地での活動を含め様々な任務に励んでいた隊員も多くいたと思います。

今や国民の9割が自衛隊を支持しているとも言われていますが、それは諸君と諸君の先輩の日々のたゆまぬ働きがあってのものです。

現在、自衛隊の活動範囲は日本全国のみならず、ソマリア沖・アデン湾、ジブチ、南スーダン、シナイ半島など、世界各国に広がっており、果たすべき役割もこれまでになく増大しています。

「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる。」

この服務の宣誓を胸に、厳しい現場で働く隊員こそが自衛隊の、そして日本国の宝です。

私は、いかなる時も隊員と共にあります。

本年も、防衛省・自衛隊に対する国民の高い期待と信頼に一層応えられるよう、一丸となって取り組んでいきましょう。

令和6年1月11日
防衛大臣 木原 稔