日米防衛相会談後共同記者会見

日時
令和5年6月1日(木)10:58~11:29
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
日米防衛相会談後共同記者会見

1 発表事項

浜田防衛大臣

 まず始めに、オースティン長官及び会談の実現に尽力された皆さまに感謝を申し上げます。1月の「2+2」及び日米防衛相会談から時を置かずして、オースティン長官と対面で意見交換を行うことができたことを嬉しく思います。大変充実した、有意義な会談でした。
 本日の会談では、昨日の北朝鮮による発射の他、ロシアによるウクライナ侵略、中国をめぐる諸課題など、日米同盟を取り巻く安全保障情勢について議論しました。その上で、力による一方的な現状変更を許容しないこと、そのために、これまで以上に日米が緊密に連携していくことを確認しました。さらに、厳しくかつ複雑な安全保障環境を踏まえ、日米のみならず、韓国や豪州との協力を深化させることの重要性を確認しました。
 次に、1月の日米「2+2」において確認した日米同盟の抑止力・対処力の強化に向けた取組について議論し、反撃能力の効果的な運用を含めた、同盟の役割・任務・能力に係る議論が進展していることを歓迎しました。
 さらに、私から、核を含めた拡大抑止について、それが信頼でき、強靭なものであり続けるため、率直に議論を行っていくことが重要である旨を述べ、オースティン長官から同意が示されました。
 また、海上自衛隊鹿屋航空基地に一時展開している米軍無人機MQ-9及びBIACが、同盟のISR能力の強化に大きな役割を果たしていることを確認しました。
 防衛装備・技術協力に関しては、無人機に関する協力、極超音速技術に対抗するための将来のインターセプターの共同開発の可能性に関する議論を前進させ、協力を深めていくことを確認しました。
 本日は、1月の会談での成果を着実に実行するための具体的な取組について、率直な議論を行うことができました。本会談の成果を踏まえ、引き続き、オースティン長官とともに、日米同盟の強化に向けて取り組んでまいります。

オースティン長官

 皆さま、おはようございます。
 まず、浜田大臣、本日はお招きいただきありがとうございます。日米同盟における歴史的なモメンタムを維持する時期に、東京に戻ってくることができたのは何よりも嬉しいことです。
 また、今回の訪問において、地域の平和と安定を強化し、同盟関係を支持するために肩を並べて取り組んでいる米軍及び自衛隊の部隊を訪問する機会があったことを嬉しく思い、感謝しています。平和を維持し、侵略を抑止し、危機に対応するため、米軍と自衛隊はかつてないほど協力して運用及び訓練を実施しています。
 現在は同盟にとって非常に重要な時期です。我々は、中国によるルールに基づく国際秩序を弱体化させる試み及びその威圧的な振る舞いを大変懸念しています。
 また、ロシアは残酷でいわれのない、無用な戦争をウクライナに対して続けています。日本のウクライナに対する支援、及び力による現状変更の試みに反対する日本のリーダーシップに感謝します。
 北朝鮮の危険かつ不安定化を招く核・ミサイルプログラムは地域の平和と安定に対する脅威であり、国際法に対する違反です。昨日の、宇宙への打ち上げとして行われたものも含め、北朝鮮の継続的な挑発に対し、我々は同盟国である日本及び韓国と連携しています。米国は自国の安全保障、及び同盟国の防衛を実現するためにあらゆる措置を講じます。
 このような共通課題に直面する中、この場を借りて、米国の日本に対する揺るぎないコミットメントを改めて確認します。これには、米国の従来戦力及び核の能力を合わせたあらゆる軍事力による拡大抑止が含まれます。我々は共に、同盟が引き続きインド太平洋地域及び世界の平和と繁栄の礎であることを確保します。
 防衛予算の増額及び反撃能力の取得を含む、新たな日本の安全保障政策を強く支持します。また、我々が1月に発表した、在日米軍の態勢の見直しについて、より柔軟性、機動性、強靭性のある部隊を展開するという歴史的決定について、大変誇りに思っています。その中には、海兵隊の中で最も先進的なものとなる米海兵隊沿岸連隊の編成を含みます。
 また、訓練及び演習を通して我々の相互運用性を向上させます。新たな二国間メカニズムを通じた情報共有を強化します。極超音速兵器への対応、進化した戦闘機とチーミングできる自律的システム、先進防空システムなどの先端技術の分野に共に取り組みます。また、両国の防衛サプライチェーン間での交流を深め、防衛産業基盤に関する重要なつながりを構築しているところです。
 また、韓国、オーストラリア、インド、フィリピン等の同じ志を持った同盟国・パートナー国と連携して行っている重要な取組に大変勇気づけられています。シンガポールでの会合においても、多国間安全保障協力を深めていきたいと考えています。
 日米関係はこれまで著しい進展を遂げてきました。このモメンタムを維持し、今後もさらに同盟関係は強まっていくと確信しています。
 浜田大臣、繰り返しになりますが、改めて本日はお招きいただき感謝いたします。また、誇り高き民主主義国家における同盟関係に対する貴官のコミットメント及び友情に感謝します。

2 質疑応答

Q:両大臣から会見の冒頭で御言及ありましたように、北朝鮮は昨日国連安保理決議違反となる弾道ミサイルの発射を強行しました。本日のオースティン国防長官との会談では、北朝鮮によるミサイル発射を含め、日本周辺の安全保障情勢についてどのような議論を行ったのでしょうか。具体的に教えてください。

A:(浜田防衛大臣)会談では、昨日の発射を含め、北朝鮮の核・ミサイル問題について、日米双方の認識を共有しました。その上で、北朝鮮の挑発行動に対して一致して迅速に行動できるよう、日米、日米韓で更に緊密に連携していくことを確認しました。また、中国をめぐる諸課題への対応に当たっては、引き続き日米で緊密に連携していくことで一致しました。同時に、中国との率直な対話の重要性を確認しました。
 さらに、台湾海峡の平和と安定の重要性を改めて確認し、両岸問題の平和的解決を促すことで一致しました。

Q:オースティン長官に2問、浜田大臣に1問質問いたします。まず、長官に対して御意見を伺いますが、日本は今後複数のロケットシステムを退役させていくことになりますが、例えば、日本政府がウクライナに対してそれらの殺傷性のある武器を支援する可能性についてどうお考えでしょうか。2問目ですが、シャングリラ会合において中国国防部長と会合することを打診しましたが、中国はそれを拒否しました。そのような公式のチャンネルがない中、どのように誤解や事故が発生するリスクを低減することができるでしょうか。
 そして最後に浜田大臣、なぜ、現在トマホークを含めた反撃能力が必要になったのでしょうか。そして、日本は米国の支援なしに、中国に対してそのような反撃能力を行使することが可能でしょうか。

A:(オースティン長官)1点目、日本が政策を変更した場合にウクライナにとってどのような利益があるかという点ですが、まず、この場を借りて、浜田大臣を始め、日本に対して感謝いたします。日本は今まで、人道支援やその他の分野で、ウクライナに対して多大な支援を提供してきました。
 また、大臣を始め、日本政府の代表は、全てのUDCG、ウクライナ防衛コンタクトグループの毎月の定例会議に参加されていますが、それを高く評価します。その会合に大臣や日本側が参加することは、日本の、または日本のリーダーシップとは何かという強いシグナルを世界に発信することになります。
 質問に戻りますが、ウクライナは色々な支援を必要としているわけですが、日本の政策変更は日本のリーダーシップが決定すべきことです。もちろん、ウクライナがいかなる支援、いかなる追加の支援を得られるとすれば歓迎しますが、詳細については浜田大臣にお任せしたいと思います。
 次に、中国国防部長とのシンガポールでの会合における会談が拒否されたということですが、残念なことだと思っています。ただ、我々は引き続き、いつも通りこの地域における活動を継続していきます。つまり、共通の価値観、共通の目標を持つ同志国と連携して、自由で開かれたインド太平洋の維持・実現を推進していきます。これまでも何度か述べたことがあると思いますが、大きな能力を持つ国々がお互いに話し合うことができることは、危機管理のため、また不必要に状況がコントロールできなくなる状況を避けるために極めて重要だと思います。
 また、中国の活動を見ると、特に公海及び公海上空などで、例えば米国及び同盟国の航空機をインターセプトするなど挑発的な行動がありますが、それは大きな懸念であり、中国がその行動を変えることを望みます。ただ、行動に変化が見られない中、何かのきっかけで、急激に状況がコントロールできなくなる可能性を懸念しています。
 私たちは、中国のリーダーシップと話し合う(engage)どのようなきっかけも歓迎するわけですが、繰り返しますが、私の考えは、防衛当局の代表同士が定期的に話し合うこと、開かれた対話のチャンネルを持つことが極めて重要であるということです。

A:(浜田防衛大臣)今、御指摘のあった点、いわゆるトマホークをなぜ今、というお話がありましたが、我々の安全保障環境を今見たところによれば、その情勢分析をしたときに、ミサイルの機能というのが大変複雑的に進化をしているわけです。それを打ち落とすだけの能力を我々が今持ち合わせていないということであって、これに対して、最低限抑止力としてのトマホークを考えてきたわけであります。
 これは防衛3文書の中でも記述をしておりますけれども、この最低限の反撃能力というのは、これからあらゆる事態に備えた中で、反撃能力を持つという決断をしたわけであります。その意味で、それをどのように使っていくかというよりは、我々としては、我が国に対して攻撃を仕掛けることで、逆に大きな被害を受けてしまう、それを抑止するというか、やめさせるという存在だと認識しているところであります。

以上