防衛大臣記者会見

日時
令和4年12月6日(火)11:05~11:21
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
浜田防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 なし

2 質疑応答

Q:反撃能力について2点伺います。1点目は、自民・公明両党は、先週12月2日のワーキングチームで反撃能力の保有を合意しました。大臣の受け止めをお願いします。またですね、実際の運用の際には、相手の攻撃の着手をどう見るかについて、難しさも指摘されていますが、政府として、先制攻撃とならないことをどう担保していくお考えかお聞かせください。

A:2日の与党ワーキングチームにおいて、反撃能力の保有について自民・公明両党の間で合意されたと承知をしており、与党における活発な議論に感謝を申し上げたいと思います。その上で、政府としては、いわゆる反撃能力について、与党における御議論を踏まえつつ、年末までに結論を出したいと考えているところであります。着手についてでありますが、我が国が自衛権を行使できるのは、武力攻撃が発生した時点であり、いわゆる先制攻撃を行うことは許されないとの考えに変更はございません。その上で、一般論として申し上げれば、政府は従来から、我が国に対する武力攻撃が発生した場合とは、他国が我が国に対して武力攻撃に着手したときであると解してきていますが、どの時点で武力攻撃の着手があったと見るべきかについては、その時点の国際情勢、相手方の明示された意図、攻撃の手段、態様等によるものであり、個別具体的な状況に即して判断すべきものであります。

Q:防衛費に関してお伺いいたします。昨日の総理指示で、次期中期防5年間の総額について、43兆円とするよう指示がありました。これまでの中期防の額から比べると1.5倍以上の規模になりますけれども、改めてですね、どうしてこれだけ増やす必要があるのかという背景事情や、具体的にどういったものに使いたいかという内訳についてお考えをお願いします。

A:防衛費の規模等については、昨日、総理から私と財務大臣に対して、調整中の次期5年間の中期防の規模については、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、与党とも協議しつつ、積み上げで約43兆円とすること、令和9年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び5年から9年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出・歳入両面の具体的な措置について、年末に一体的に決定すべく、調整を進めることとの御指示をいただいたところであります。総理から御指示いただいた中期防の規模は、防衛力の抜本的強化が達成でき、防衛省・自衛隊として、役割をしっかり果たすことができる水準と考えております。防衛省としては、今後、総理の指示に沿って調整を進めてまいりたいと考えておるところであります。

Q:関連して、これまでも総理の指示もそうですけれども、あくまで積み上げで総額が決まるということをおっしゃっていて、事実上、総額が43兆円ということはある程度積み上げもできているのかなと思うんですけれども、その具体的な中身についてどういったことを今、考えているのか、お考えをお願いします。

A:我が国の平和と安全を最終的に担保するのは自衛隊だと考えておりますが、この観点から、我が国が直面する厳しい現実に向き合って、将来にわたり我が国を守り抜くため、防衛力の抜本的強化を実現すべく、整備すべき装備品等の自衛隊の能力の在り方について検討を進めております。具体的には、スタンド・オフ防衛能力、そして総合ミサイル防空能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制・情報関連機能、機動展開能力、持続性・強靱性といった分野を中心に強化するとともに、防衛生産・技術基盤、人的基盤等の要素を重視して、必要な内容をしっかりと積み上げてきたところであります。いずれにせよ、防衛省としては、積み上げを行ってきた防衛力の内容と、防衛費の規模等に係る総理の御指示を踏まえ、今後、内容・規模の詳細について、年末までに最終的な調整を行っていきたいというふうに考えております。

Q:関連で次期中期のこの総額についてなんですけれども、今朝のですね、鈴木財務大臣の会見の中で、43兆円を上限として総理から指示があったという御発言がありました。今もですね、昨日の官邸の財務大臣の発言でもですね、上限という言及はなかったと思いますが、大臣の御認識はいかがでしょうか。

A:いずれにしても、約43兆円ということを申し上げておりますし、その中でまだこれから議論をしなければならない、与党との調整等もありますから、その意味では私が昨日申し上げたのは、約43兆円ということだったので、総理からの指示でその中で、今後まだ議論する余地があって、年末までに調整するということだと私は思っております。

Q:反撃能力に戻るんですけれども、反撃能力の保有を検討する理由についてお伺いします。大臣は国会答弁で「抑止力を高め、ミサイルなどによる攻撃の可能性を一層低下させるために何が必要かという観点で、検討している」と答弁されておりますが、なぜ相手国が攻撃を思いとどまる抑止につながると考えるのか理由を教えてください。懲罰的抑止とか拒否的抑止という概念もありますが、防衛省は日本が持つ反撃能力に関する抑止力をどのように位置づけているのか教えてください。

A:ミサイルなどの技術がですね、急速なスピードで変化・進化するなど、我が国を取り巻く安全保障環境は急速に厳しさを増しております。こうした中にあって、政府としては、迎撃能力を向上させるだけで本当に国民の命と平和な暮らしを守り抜くことができるのかという問題意識の下、抑止力を強化するため、いわゆる反撃能力も含め、あらゆる選択肢について検討してきておりますが、現在検討中であり、お尋ねの点についてお答えできる段階ではないというふうに考えております。その上で、今般政府において検討している抑止力とは、例えば日本にミサイルを撃ち込もうとしている相手に、それはやめた方がいいと考えさせる能力を意味しているものですが、懲罰的抑止や拒否的抑止のいずれかといった観点から分類することは困難であります。

Q:関連なんですけれども、防衛次官だった島田和久内閣官房参与は抑止力に関して、「米国だけでなく、日本からも反撃を受けるとなれば、相手の戦略計算を複雑にして抑止力向上に効果がある」というふうに述べてらっしゃいますが、この考え方に賛同しますか。

A:その方の御意見は、御意見としてあるのかもしれませんけれども、我々とすれば、今この反撃能力についての考え方は、今申し上げたとおりであります。

Q:先般から報道されている陸上自衛隊15旅団の増強について調整状況を教えてください。

A:南西地域の防衛体制の強化については、年末の新たな国家安全保障戦略の策定に向けて現在検討を進めているところでありますが、その内容については、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。地元では部隊配備について、様々な御意見があることは承知をしておりますが、南西地域への部隊配備は、力による現状変更を許容しないとの我が国の意思を示し、島嶼部への攻撃に対する抑止力・対処力を高め、国民の安全・安心につながるものであり、また、部隊配備によって、大規模災害や国民保護における対応の迅速化につながるものと考えております。部隊配備に当たっては、地元の皆様からの御理解・御協力を頂けるよう丁寧な説明に努めてまいりたいと考えておるところであります。

Q:関連で昨日ですね、沖縄県の玉城デニー知事がですね、先ほどの15旅団の増強に関してですね、自衛隊を防衛力という名目で強化するのであれば、その分、米軍の負担の比重を軽くするべきだとの御認識を述べられました。この沖縄の基地負担を軽減への配慮も求めているかと思うんですけれども、この考え方について大臣の見解を教えてください。

A:我が国を取り巻く安全保障環境は一層深刻化しており、この認識は日米間でも共有されております。このような中で、安全保障上、極めて重要な位置にある沖縄に米軍が駐留することは、日米同盟の抑止力を構成する重要な要素であります。我が国の平和と安全を確保する上で必要だと考えます。同時に、沖縄には大きな基地負担を負っていただいており、負担軽減を図ることは政府の大きな責任であると考えております。防衛省としては、引き続き、日米間で合意されている嘉手納以南の土地の返還や米海兵隊のグアム移転などについて、可能な限り早い実現に全力で取り組んでいく考えであります。

Q:反撃能力について、ちょっと細かい点を伺います。日本が侵攻を受けるその武力攻撃事態だけではなくて、同盟国などがですね、武力攻撃を受けて集団的自衛権の行使を可能となる存立事態危機に関しても、除外しない方向で検討されているとの話がありますけれども、大臣がおっしゃっている、あらゆる選択肢を排除しないで検討されている、そのあらゆる選択肢を排除しない中にこの話が入っているんでしょうか。

A:我々の今、考えておるという話でありますけれども、一般論として申し上げれば、以前から誘導弾等の基地を叩くなどの、他国領域における武力行動で、自衛権の発動の三要件に該当するものがあれば憲法上の理論としては、そのような行動をとることは許されないわけではないとしてきております。このような考え方は、限定的な集団的自衛権の行使も含め、現行の三要件の下で行われる武力の行使にも、そのまま当てはまるものと考えております。現在、国民の命や暮らしを守るために、十分な備えができているのか、あらゆる選択肢を排除せず、現実的に検討を行っているところであり、検討の結果も含めて、具体的にお答えできる段階にありませんけれども、引き続き、憲法及び国際法の範囲内で検討を進めてまいるというところであります。

Q:航空自衛隊の戦闘機が本日、フィリピンに到着してですね、部隊間交流の式典が開かれると承知をしております。派遣は、米国、オーストラリアに次ぐ3か国目でして、日フィリピン間の防衛協力、地域の平和と安全に資する象徴的な事例になるのかなと思いますが、この意義について、大臣の御所感をお聞かせいただければと思います。

A:航空自衛隊は、先月末から、フィリピン空軍との部隊間交流を実施しており、その一環として、本日から3日間、F-15戦闘機2機が、フィリピンのクラーク空軍基地に訪問をいたします。自衛隊は、これまでも、艦艇や輸送機によるフィリピンへの訪問を行ってまいりましたが、戦闘機の訪問は今回が初めてであります。本訪問により、自衛隊とフィリピン軍との間の協力が一層強化され、我が国の安全保障に資するのみならず、日・フィリピンの両国が国際社会の平和・安全に、より積極的に寄与することにもつながると考えております。

Q:安全保障3文書について。安全保障3文書に、米国が推進する統合防空ミサイル防衛(IAMD)の構築を明記する方向で検討が進んでいると報じられています。自民党と公明党は反撃能力、つまり敵基地攻撃能力の保有に合意しました。自衛隊が反撃能力を持ち、米軍と一体となってIAMDの構築を進めることは、米軍の指揮系統下に自衛隊が組み込まれ、米軍の指示次第では、自衛隊が敵ミサイル基地を一方的に攻撃するケースも出てくることも考えられます。その場合は、日本が敵の報復対象に入るということでしょうか。これは日本の主権の放棄ではないのでしょうか。大臣のお考えを御教示ください。

A:反撃能力の保有を念頭に年末に策定される新たな国家安全保障戦略等に統合防空ミサイル防衛の構築を明記する検討に入ったとの報道があることは承知しておりますが、いわゆる反撃能力については現在検討中であり、現時点で具体的な内容等をお答えできる段階にはございません。いずれにせよ、政府としては、国民の暮らしを守るために十分な備えができているのか、いわゆる反撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せずに、現実的に検討し、与党間の協議にあらゆる議論も踏まえながら、年末までに結論を出してまいります。

以上