防衛大臣記者会見

日時
令和3年8月20日(金)11:29~11:57
場所
防衛省A棟11階第1省議室
備考
岸防衛大臣閣議後会見

1 発表事項

 まず、コロナです。8月10日(火)の定例会見以降、632名の隊員が新たに感染していることが確認されました。累計で3,271名ということになります。それから、本日の閣議において、一般会計予備費の一部の使用が決定されました。防衛省では、4月27日の総理指示によりまして、自衛隊病院が果たすべき本来の任務の一つとして、5月24日から3ヵ月間を目途として自衛隊病院等による大規模接種センターの運営をしておりました。8月24日以降、9月25日頃まで継続することといたしております。こうした前例のない事業を行う中で、大規模接種センターの設置・運営の継続などに伴って運営経費が増加したことなどから、自衛隊病院等による医療費等の不足を補うために、予備費93億円を使用することといたしました。具体的な内訳としては、大規模接種センターの運営に係る委託業務などにより生じた、医療費の不足を補うための経費として85億円、大規模接種センターの会場の借上げなどにより生じた、庁費、被服費の不足を補うための経費が8億円となっております。7月27日に海上自衛隊から既に発表があったとおりですけど、本日から11月25日(木)にかけて、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に資するべく、令和3年度インド太平洋方面派遣を実施いたします。護衛艦「かが」を始めとする部隊は順次出港をいたしまして、今後、インド太平洋地域の各国や同地域に艦艇を派遣している欧州主要国の海軍等との共同訓練など、各国との共同訓練を複数回実施する予定にしております。また、今回、IPDとしては初めて太平洋島嶼国地域を訪問し、パラオ共和国や仏領ニューカレドニアに寄港する予定であります。防衛省・自衛隊としては、今回のIPDを通じ、海上自衛隊の戦術技量の向上、各国海軍等との連携の強化を図るだけでなく、民主主義や法の支配といった基本的価値と戦略的利益を共有する国々が、「自由で開かれたインド太平洋」の維持・強化に向けて協働している姿を示したいと思います。また、太平洋島嶼国地域を訪問することで、この地域の安定と繁栄に深くコミットしていくという、わが国の意思を示したいと考えております。今後、防衛省や海上自衛隊のホームページ、ツイッターなどで、IPD参加部隊の訓練や寄港の様子を随時発信していければと考えております。令和3年8月の大雨に係る災害派遣活動について。防衛省・自衛隊としては8月の大雨に関し、長崎県及び佐賀県において災害派遣活動を実施をいたしました。13日未明に長崎県雲仙市内で発生した土砂崩れに対し、長崎県知事からの要請を受けまして、14日から昨日までの間、陸自及び航空自衛隊の隊員延べ約300名、重機や救助犬などを投入し、行方不明者の捜索救助活動を実施をいたしました。さらに、14日午前に佐賀県の六角川で発生した氾濫よる武雄市及び大町町の浸水被害に対し、佐賀県知事からの災害派遣要請を受けて、14日から18日までの間、陸上自衛隊、海上自衛隊の隊員延べ約1,240名、ボート等を投入し、177名の孤立住民を救助いたしました。防衛省・自衛隊は、国民の安心・安全のため、今後予想される台風などの自然災害により被害が発生した場合には関係省庁、自治体と緊密に連携し、人命救助を第一義として全力を挙げて対応してまいりたいと考えます。以上です。

2 質疑応答

Q:イージス・アショアの代わりであるイージス・システム搭載艦の建設費についてですが、来年度予算の計上を見送るというような報道が一部ありますが、現在の検討状況と事実関係を含めてお聞かせいただけますでしょうか。

A:まず、令和4年度概算要求については、現在検討中であります。その内容についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと考えますが、イージス・システム搭載艦については、今運用等の詳細を検討しているところでございます。可能な限り早く運用開始に至れるよう、鋭意検討を進めてまいりたいと考えています。

Q:アフガニスタン情勢についてなんですけれども、一部報道でですね、アメリカが民間人の国外退避などを進めている中で、日本政府への自衛隊の協力の要請があるという報道があるんですけれども、防衛省・自衛隊として、今どのような調整をやっていらっしゃるか教えていただけますでしょうか。

A:今般の事案に際して、自衛隊機による邦人の退避を含め、あらゆる可能性について検討をいたしましたものの、現地における治安情勢が急激に悪化する中で、実際に現地に出入りしている関係国の軍用機により退避をすることが最も迅速な手段であることを踏まえて、大使館員については、友好国の軍用機により退避することが最善との判断に至りました。また、外務省によれば、現時点で確認されている在留邦人は、国際機関や組織に所属する方々等、少人数であります。外務省において、個々の特別の事情により、現地に在留されているすべての邦人の方と連絡を取り、帰国支援を含め、必要な支援を行うものと承知をしております。いずれにせよ、政府としては、引き続き現地の情勢を注視しながら、邦人の安全確保等を最優先にして対応すべきと考えているところであります。

Q:関連して、アメリカから民間人の退避の協力を要請されたという報道があるんですけれども、現時点では、なにかそういった要請がきているとかですね、検討されていることはあるんでしょうか。

A:特にそういうことは聞いておりません。

Q:米軍普天間飛行場所属のオスプレイが飛行中にパネルなどを落下する事案が発生し、沖縄県は飛行停止などを求めています。普天間所属機を巡ってはですね、6月にうるま市の津堅島で不時着したり、渡名喜島沖でコンテナを落下させたり、あるいは宮崎県串間市で不時着するなどですね、問題が相次いでいますが、飛行停止など従来より踏み込んだ対応をするお考えはあるのか、教えてください。

A:まず事案ですけれども、12日午後9時半頃、第1海兵航空団所属のMV-22オスプレイの部品の一部が遺失をした、こういう連絡がありました。これで速やかに関係自治体に情報提供を行ったところであります。本件に関しては、これまでに被害等は確認されておりませんが、こうした事案の発生は、地域の皆様に不安を与える、あってはならないものであると考えております。防衛省としては、米側に対し、迅速な情報提供を求めるとともに、航空機の安全管理の徹底及び実効性のある再発防止等について申し入れを行いました。また、この事案を受けて、米側からは、本件事案の発生を真剣に捉えている、原因究明のために徹底的に調査を行う、全ての同型機の安全点検を実施した、そういうことの説明を受けております。防衛省としても、米側により適切な措置が取られたものと認識しております。飛行停止を求める考えはございません。いずれにしても、累次の機会に、米側に対して軍用機の運用における安全確保に万全を期すよう厳に求めてまいりたいと考えております。

Q:今回の案件では、事案の発生から1日、約1日たってからの報告というものがあった、日本側に連絡があったということも問題視されています。報告の改善に向けて具体的な方策を検討するお考えはありますでしょうか。

A:まず、連絡が遅かったということ。それから、18日に情報提供の訂正がなされたと聞いております。そうしたこと全てにおいて、時間がかかったことについて、引き続き厳正な対応を求めるということであります。情報の隠ぺいがあったとは考えておりませんけれども、正確な情報を迅速に行うということは当然必要なことだと考えておりますので、事態を重く受け止めております。しっかりした対応を求めてまいりたいと考えております。

Q:先日の大臣の靖国参拝の件でお伺いしたいのですが、8月13日に大臣、靖国神社を参拝されました。その後、中国国防省の報道官が、強烈な不満と断固した反対を表明をする談話を発表されたり、韓国外務省も在韓日本大使館の総括公使を呼んで厳重に抗議されたということです。こうした中韓の反発ありましたけれども、こういった点を踏まえて受け止めをお願いします。

A:あのときも申しましたけれども、どの国においても、国のために命を落とされた方々に尊崇の念を示すということは当然のことだと考えております。

Q:冒頭で発言がありました予備費の支出に関してお伺いしたいのですが、前回6月に56億円の支出が決定されておりまして、その時にすでに当初契約していた、契約を見込んでいた民間の企業との額とかも入っていて、今回1ヵ月延長したとはいえ、数字の上で結構な額になっているかなと思うのですが、主にどういった点がこれだけの経費が増えた要因になったということでしょうか。

A:今回の予備費においては、自衛隊病院等による医療費等の不足を補うために必要な経費としての93億円でございます。前回の予備費よりも37億増加をしているというところであります。このように増加した主な要因としては、大規模接種センターを運営する中で、ワクチン接種を受ける方々への各種の支援、それからプレハブやエアコンの設置等、センターの運営に関する委託業務等について新たな所要が発生したというところによるものでございます。大規模接種センターという、前例のない事業を円滑に実施していくために、センターを利用する高齢者を含む多くの接種者の皆様のニーズや要望に応えていくということ、こういうことも踏まえて新たな所要にも柔軟かつ臨機に対応して、これに伴う財源も確保していかなければいけない、こういう必要性がでてきております。大規模接種センターの運営に関して、委託業務等について新たな所要が発生したことを受けて、事業内容や金額を十分に精査した上で、真に必要なものに対して使用するものであります。センターの運営に万全を期すとの観点から必要不可欠の措置をとったものであるいうことであります。

Q:新型コロナの関連で、感染者数が増加しまして、入院できずに自宅療養されている方とかが増えていますけれども、自衛隊として、自衛隊病院などで今、コロナの対応っていうのをどのようにされていて、今後はそういう支援を拡充するような余地というのはあるのかどうかお願いします。

A:防衛省・自衛隊としては、これまでも新型コロナウイルス感染拡大防止のための措置を様々とってきております。例えば、離島における急患輸送等、自治体職員に対する教育、そのほか、民間病院への看護官の派遣等といったものを行って、自衛隊病院においても、感染者の受け入れを行っているというところであります。それから、センターにおいては、大阪と東京で合わせて1万5千人に対するワクチン接種を進めているところであります。いずれにしましても、今後、各都道府県の知事から自衛隊に対して医療支援などの災派の要請があった場合には、要請元の自治体ともしっかりと相談して、また全国の医療情報を幅広く集めている厚労省などの関係省庁とも調整をした上で、適切に対応していきたいと考えております。

Q:アフガンに戻るんですけれども、アフガンの在留邦人に対する対応っていうのはそうだと思うんですけれども、現地の大使館とかで働いていらっしゃったアフガニスタン人の方とか含めて、現地の方を退避させるために自衛隊機を派遣するなどの協力というのはできるのかという検討をされているのかという点についてお願いします。

A:そういった職員の方も多数おられると思いますが、そうした件については外務省にお問い合わせをいただければと思います。

Q:靖国について伺います。先ほど大臣は、国のために命を落とした人を追悼するのは当然だと、どこの国にもあるとおっしゃいましたが、それにはA級戦犯は含まれますか。

A:参拝をするにあたって、A級戦犯のために参拝をするということではございません。もともと靖国神社に皆さん、命を落とされた方は靖国神社でまつられている、そういう総体的なことから、私も参拝をしているのであって、これは個別の問題ではないと考えています。

Q:大臣の参拝の対象に、合祀されているA級戦犯者は含まれませんか。

A:理屈上は含まれると思います。それは、靖国神社の問題として含んでいるというふうに考えております。

Q:A級戦犯合祀後、昭和天皇以来の歴代天皇は靖国神社に参拝していませんが、それについて大臣の考えを教えてください。

A:天皇陛下のお考えについて私が物事を述べることは差し控えたいと思います。

Q:岸信介元総理はA級戦犯容疑者でしたが、大臣は東京裁判についてどういうふうに考えていらっしゃいますか。

A:容疑者ではございましたけれども、A級戦犯には裁判であたってないわけでございます。

Q:東京裁判について、大臣はどういうふうに考えていらっしゃいますか。

A:歴史的な事実であると考えております。

Q:大臣は自分のことを歴史修正主義者だと思っていますか。

A:思っておりません。

Q:冒頭質問もあったのですが、イージス・システム搭載艦についてなんですけれども、今後の予算計上とか建造などの状況次第では、配備が10年遅れになる可能性というのも見方が一部出ているんですけれども、陸上イージスの場合、システム改修に2千億円、10年というコストと期間がかかるということで、見通しを踏まえて、断念されたところと思うんですけれども、結局期間が変わらず、コストばっかり余計にかかるという事態も想定されると思うんですけれども、この点については、大臣はどのようにお考えでしょうか。

A:まず、イージス・アショアの場合ですね、2019年度から5年間でシステム本体を製造し、その後、試験や設置等の作業を出来るだけ早く行うということで、米国との調整をおこなっていたところです。このため、2023年に運用開始を予定していたということではございません。その上で、イージス・システム搭載艦について、現在詳細について米政府や日米の民間事業者を交えて、鋭意検討を進めているところであります。具体的なスケジュールをお答えできる段階にはございませんけれども、いずれにしても、可能な限り早く運用開始に至れるように、今後検討を進めてまいりたいと考えております。

Q:関連して、ライフサイクルコストをお示しいただける目途というところはいかがでしょうか。

A:コストを今の段階では、いずれにいたしましても詳細の検討を行っているところですので、コストについてお示しできる段階ではございませんが、今後、わが国の防衛にとってしっかり貢献するものになるように、厳しい財政事情も踏まえて精査を進めてまいって、その上でコスト等についてお示しできればと考えております。

Q:先日、発表されました「はじめての防衛白書」についてお伺いいたします。夏休み期間中での公開となりましたが、児童・生徒などを含め、閲覧数の反響など、どのように分析されているのかというのと、今回の白書の中身について、韓国政府が、竹島の表記について抗議を示したという報道もありますが、事実関係と受け止めをお願いいたします。

A:この「はじめての防衛白書」につきましては、わが国の将来を担う若年層が、安全保障情勢や国の防衛について興味を持ち、理解を深めるきっかけを増やすということを目的としています。小学校高学年から中学生を主たる対象として、16日にホームページ上で公開をいたしました。ホームページに多くのアクセスをいただいております。通常ですと一日に約5千回程度なのですけれども、例えば8月16日は3万回以上、17日は4万回以上のアクセスがあったというふうになっております。そういう意味で、高い関心を持っていただいていると、こういうふうに考えております。一人でも多くの皆様に御覧をいただいて、防衛省・自衛隊に対する御理解を深めていただけることを願っておるところであります。韓国からの抗議に対しては、わが方からは、竹島は歴史的事実に照らしても、かつ、国際法上も明らかにわが国の固有の領土であります。ですから、韓国側の抗議については受け入れられない旨を反論したというふうに承知をしております。いずれにいたしましても、竹島問題については、引き続き、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くとの決意の下で、冷静、毅然と対応して参りたいと考えております。

Q:先ほど質問のありました靖国参拝の関連なんですが、いわゆるA級戦犯が合祀された後も、特に大臣の参拝へのお考えは変わらないというような受け止めではあるんですが、そのあたりの大臣のお考えをより細かくお伺いしたいんですが。

A:戦争で命を落とされた皆様の御遺族の方々にとっては、その前も、後も、今も、思いは変わらないと思います。そういう意味でそこにしっかりとお応えしていく、我々が適切に対応していくということは必要なことだと考えております。

Q:A級戦犯の中には、いわゆる戦闘行為や、それに伴う空襲などで亡くなっていない当時の高官が多数含まれていますが、このことについて靖国の趣旨と矛盾するという指摘もありますが、このことについては大臣どのように考えておられますか。

A:靖国神社がお考えのもとに判断をされたんだと思います。また、先の大戦以前から、戊辰戦争からですね、犠牲者はまつられていると私も思っております。靖国神社自体には、わが国の戦没者のみならず、海外の方もまつられているというふうに承知をしております。

Q:靖国について伺います。戦争のために命を捧げた人、命を失った人を追悼するという意味であれば、原爆で亡くなった方とか空襲で亡くなった国民も当然いると思うのですが、なぜその人たちは追悼せずに、A級戦犯を含む靖国神社にまつられている人々だけを追悼するのですか。

A:戦没者追悼式が15日に行われています。政府主催のですね。私も常にその追悼式には参列しているところであります。

以上