日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定

昭和二十九年五月一日
条約第六号

 日本国政府及びアメリカ合衆国政府は、
 国際連合憲章の体制内において、同憲章の目的及び原則を信奉する諸国がその目的及び原則を支持して個別的及び集団的自衛のための効果ある方策を推進する能力を高めるべき自発的措置によって、国際の平和及び安全保障を育成することを希望千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約に述べられている日本国が主権国として国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有するとの確信を再確認し、
 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約前文において、日本国が攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和及び安全保障を増進すること以外に用いられるべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを、アメリカ合衆国が期待して、平和及び安全保障のために暫定措置として若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持するとある趣旨を想起し、日本国のための防衛援助計画の策定に当っては経済の安定が日本国の防衛能力の発展のために欠くことができない要素であり、また、日本国の寄与がその経済の一般的な条件及び能力の許す範囲においてのみ行うことができることを承認し、
 アメリカ合衆国政府が、前記の目的とするところを達成するためアメリカ合衆国による防衛援助の供与を規定する改正後の千九百四十九年の相互防衛援助法及び改正後の千九百五十一年の相互安全保障法を制定したことによりこれらの原則を支持したことを考慮し、
 その援助の供与を規律する条件を定めることを希望して、
 次のとおり協定した。

第一条

  1. 各政府は、経済の安定が国際の平和及び安全保障に欠くことができないという原則と矛盾しない限り、他方の政府に対し、及びこの協定の両署名政府が各場合に合意するその他の政府に対し、援助を供与する政府が承認することがある装備、資材、役務その他の援助を、両署名政府の間で行うべき細目取極に従って、使用に供するものとする。いずれか一方の政府が承認することがあるいかなる援助の供与及び使用も、国際連合憲章と矛盾するものであってはならない。
    アメリカ合衆国政府がこの協定に従って使用に供する援助は、千九百四十九年の相互防衛援助法、千九百五十一年の相互安全保障法、この二法律を修正し又は補足する法律及びこれらの法律に基く歳出予算法の当該援助に関する規定並びに当該援助の条件及び終了に関する規定に従って供与するものとする。
  2. 各政府は、この協定に従って受ける援助を両政府が満足するような方法で平和及び安全保障を促進するため効果的に使用するものとし、いずれの一方の政府も、他方の政府の事前の同意を得ないでその援助を他の目的のため転用してはならない。
  3. 各政府は、相互間で合意する条件及び手続に従い、他方の政府に対し、この協定に基いて供与される装備又は資材(有償で供与される装備及び資材を除く。)で使用に供される当初の用途のために必要でなくなったものの返還を申し出るものとする。
  4. 各政府は、共通の安全保障のため、この協定に従って受ける装備、資材又は役務の所有権又は占有権を、これらの援助を供与する政府の事前の同意を得ないで、自国政府の職員若しくは委託を受けた者以外の者又は他の政府に移転しないことを約束する。

第二条

 日本国政府は、相互援助の原則に従い、アメリカ合衆国が自国の資源において不足し、又は不足する虞がある結果必要とする原材料又は半加工品で日本国内で入手することができるものを、合意される期間、数量及び条件に従って、生産し、及びアメリカ合衆国政府に譲渡することを容易にすることに同意する。その譲渡に関する取極に当っては、日本国政府が決定する国内使用及び商業輸出の必要量について十分な考慮を払わなければならない。

第三条

  1. 各政府は、この協定に従って他方の政府が供与する秘密の物件、役務又は情報についてその秘密の漏せつ又はその危険を防止するため、両政府の間で合意する秘密保持の措置を執るものとする。
  2. 各政府は、この協定に基く活動について公衆に周知させるため、秘密保持と矛盾しない適当な措置を執るものとする。

第四条

 両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、防衛のための工業所有権及び技術上の知識の交換の方法及び条件を規定する適当な取極であって、その交換を促進するとともに、私人の利益を保護し及び秘密の保持を図るものを作成するものとする。

第五条

 両政府は、アメリカ合衆国政府が実施する援助計画に割り当てられ、又は同計画から生ずるすべての資金について、差押その他の法律上の執行の手続を執ることが援助計画の目的の達成を妨げる虞がある旨をアメリカ合衆国政府から日本国政府に通告したときは、日本国政府が、いずれの人、法人その他の団体、その機関又は政府もその手続を行うことができないように、その資金を積み立て、他の資金から分離し、又はその資金に対する権原を確保するための手続を設ける目的で協議するものとする。

第六条

  1. 日本国政府は、次のものを許与するものとする。
    • この協定又はアメリカ合衆国政府と他の被援助国との間の同種の協定に基いて日本国の領域に輸入され又はそこから輸出される資材、需品又は装備に対してその輸入又は輸出の際に課せられる関税及び内国税の免除(別段の合意がある場合を除く。)
    • 附属書Eに掲げる日本の租税が、この協定又はアメリカ合衆国政府と他の被援助国との間の同種の協定に基く資材、需品、装備及び役務の調達のための日本国におけるアメリカ合衆国政府の支出金又は同政府が融資する支出金に影響するときは、その租税の免除又はその払いもどし
  2. 関税の免除並びに附属書Eに掲げる日本の租税の免除及び払いもどしは、相互防衛のための資材、需品、装備及び役務に対するアメリカ合衆国政府の支出金又は同政府が融資する支出金で、1に定めるもの以外のものについても行われるものとする。これらの支出金は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に適合して支出されもの及び改正後の千九百五十一年の相互安全保障法又はその後同法を補足し、修正し、若しくはこれに代るべき法律に基くアメリカ合衆国政府の対外援助計画に適合して支出されるものを含む。

第七条

  1. 日本国政府は、アメリカ合衆国政府の職員で、この協定に基いて供与される装備、資材、及び役務に関するアメリカ合衆国政府の責務を日本国の領域において遂行し、且つ、この協定に基いてアメリカ合衆国政府が供与する援助の進ちよく状況を観察する便宜を与えられるものを接受することに同意する。その職員(臨時に任用される職員を含む。)でァメリカ合衆国の国民であるものは、日本国政府に対する関係においては、アメリカ合衆国大使館の一部とみなされて大使館の長の指揮及び監督の下に行動するものとし、アメリカ合衆国大使館に属する相当級の他の職員と同一の特権及び免除を与えられる。
  2. 日本国政府は、この協定の実施に関連するアメリカ合衆国政府の行政事務費及びこれに関連がある経費として、アメリカ合衆国政府に随時円資金を提供するものとする。

第八条

 日本国政府は、国際の理解及び善意の増進並びに世界平和の維持に協同すること、国際緊張の原因を除去するため相互間で合意することがある措置を執ること並びに自国政府が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約に基いて負っている軍事的義務を履行することの決意を再確認するとともに、自国の政治及び経済の安定と矛盾しない範囲でその人力、資源、施設及び一般的経済条件の許す限り自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、且つ、アメリカ合衆国政府が提供するすべての援助の効果的な利用を確保するための適当な措置を執るものとする。

第九条

  1. この協定のいかなる規定も、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約又は同条約に基いて締結された取極をなんら改変するものと解してはならない。
  2. この協定は、各政府がそれぞれ自国の憲法上の規定に従って実施するものとする。

第十条

  1. 両政府は、いずれか一方の政府の要請があったときは、この協定の適用又はこの協定に従って行われる活動若しくは措置に関するいかなる事項についても協議するものとする。
  2. この協定の条項は、いつでも、いずれか一方の政府の要請があったときは再検討することができ、また両政府間の合意により改正することができる。

第十一条

  1. この協定は、アメリカ合衆国政府が日本国政府から、日本国がこの協定を批准した旨の書面による通告を受領した日に効力を生ずる。
  2. この協定は、いずれか一方の政府が他の政府からこの協定を終了させる意思の書面による通告を受領した日の後一年を経過するまで、引き続き効力を有する。但し、第一条2、3及び4の規定並びに第三条1及び第四条に基いて締結される取極は、両政府が別段の合意をしない限り、なお引き続き効力を有する。
  3. この協定の附属書は、この協定の不可分の一部とする。
  4. この協定は、国際連合事務局に登録するものとする。