海幕三等海佐開示請求者リスト事案等に係る調査報告書

 

 

 

 

 

 

 

平成14年6月11日

防衛庁


目次

全般
海幕三等海佐開示請求者リスト事案に係る調査結果
(1) A三等海佐の経歴等
(2) 開示請求者リストの作成経緯
(3) 開示請求者リストの内容
(4) 開示請求者リストに記載した個人情報の入手方法
(5) 開示請求者リストの配布状況
(6) 受領者側における開示請求者リストの取扱い
(7) 上司の対応
(8) 評価
内局、陸幕及び空幕リスト事案に係る調査結果
(1) 各情報公開室作成資料のホームページへの掲示等
(2) 資料に記載した個人に関する情報の入手方法
(3) 情報公開室員に対する教育状況等
(4) 評価
(5) 空幕情報公開室個人情報リスト配布事案
事案発生後の対応の経緯
(1) 海幕三等海佐開示請求者リスト事案への対応
(2) ホームページへの掲示の中断及び「進行管理表」からのイニシャル等の削除
(3) 陸幕・空幕リストの判明の経緯
(4) 内局リストの判明の経緯
(5) 内局・陸幕・空幕リストの大臣報告、記者会見
(6) 評価
再発防止策
まとめ

 


 

全般
 平成14年5月28日、防衛庁が情報公開法に基づく請求者100人以上の身元を独自に調べてリストにまとめ、幹部らの間で閲覧している旨の新聞報道がなされた。防衛庁において事実関係を調査した結果、本年3月まで海幕情報公開室に勤務していたA三等海佐が、開示請求者の個人情報を記載したリストを作成していたことが判明した。
 仮に、防衛庁において、情報公開業務に関し得られた個人情報を同業務以外の目的に流用するとか、開示請求者の思想・信条に関わる事項を調査するようなことがあれば、情報公開法の趣旨にもとり、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律(以下「行政機関電算処理個人情報保護法」という。)との関係で問題となるのみならず、防衛庁に対する国民の信頼を失墜させかねない由々しき問題である。このため、5月28日、防衛庁長官から本事案について予断を持つことなく徹底的な調査を行うよう指示がなされ、同日中に、海幕においては海上幕僚副長を長とする調査チームを設置して調査を開始するとともに、防衛庁副長官の下、長官官房及び人事教育局を中心に内局、陸幕及び空幕においても服務担当部局等による調査を開始した。同調査においては、事実関係の徹底究明を主眼とし、開示請求者リストの作成目的及び作成方法、同リストの配布先及び配布先における利用・保管状況等に関する詳細な調査を実施した。
 その後、本事案のほかに、内局、陸幕及び空幕の情報公開室において作成した情報公開業務の処理状況の管理のための資料にも、開示請求者の職業、会社名等が記載されていて、これらの資料が庁内のLAN(ローカル・エリア・ネットワーク)のホームページ上に掲示されており、行政機関電算処理個人情報保護法上の関係で問題であると判断したため、6月3日、防衛庁はこの旨を公表した。
 それまでの情報公開関係業務の調査については長官官房が中心となっていたが、今回、長官官房そのものが調査の対象となったことから、防衛参事官に内局、各機関等における情報公開関係調査、並びに内局における事実関係及び服務関係の調査を行わせることにした。また、人事教育局長に全般の取りまとめを行わせることにした。
 この報告書は、これまでの調査で明らかになった内容を報告するため取りまとめたものである。
海幕三等海佐開示請求者リスト事案に係る調査結果
(1) A三等海佐の経歴等
 A三等海佐は、昭和52年3月に防衛大学校(第21期)を卒業し、海上自衛隊に入隊した。平成12年8月1日に海幕情報公開室開設のための準備室員としての勤務を命ぜられ、開示請求を求められた場合に行政文書の開示・不開示を審査するための基準を作成することを主に担当した。平成13年4月1日に海幕情報公開室の室員となり、開示請求に基づく情報公開に関する業務に従事し、平成14年3月に現職である海上自衛隊岩国調査分遣隊長に転出した。
(2) 開示請求者リストの作成経緯
まる1  平成13年4月の情報公開法施行後、海幕情報公開室では業務進行管理のため、行政文書開示請求書に基づき、開示請求状況等を記載した「進行管理表」を作成していた。当時同室に勤務していたA三等海佐は、行政文書開示請求書に法律上は記載する必要のない請求者の所属や職業が記載されている場合があることに気付き、今後開示請求状況の分析を行う上で活用できるかもしれないと考え、「進行管理表」にこれらの情報を追加した資料(以下、「開示請求者リスト」という。)を同三等海佐限りの資料として「進行管理表」とは別に作成することとした。
まる2  その後、A三等海佐は、他幕等の情報公開室の担当者との調整等において、海上自衛隊に対し開示請求を行っている者と同一の者が陸上及び航空自衛隊に対しても開示請求を行う場合があることがわかったため、防衛庁全体に対する開示請求のデータを把握することにより、海上自衛隊に対する開示請求を予想できるのではないかと考え、防衛庁全体に対する開示請求を対象として開示請求者リストを作成することとした。
 防衛庁における開示請求の受付は防衛庁情報公開室において一括して行っており、同室から開示請求に関係する機関に対して行政文書開示請求書の写しを交付しているところ、各機関の情報公開担当者は、同室におもむき、防衛庁に対する行政文書開示請求書を閲覧しあるいは複写することが認められていた。
まる3  さらにその後、A三等海佐は、情報公開業務において開示請求者がどのような行政文書を要求しているのか明確でない事例が多いことを踏まえ、開示請求に対して迅速かつ的確に行政文書の特定を行うためには、開示請求者の背景を知ることが有効ではないかと考え、関連情報の入手に努め、これを開示請求者リストに記載することとした。
まる4  A三等海佐は、平成13年4月から平成14年3月まで、海幕情報公開室において、開示請求者リストの作成及び更新作業を行っていた。同三等海佐は、開示請求者リストに入力する個人情報が情報公開業務を行う上で必要とされる範囲を超えるものであることは自覚しており、行政機関電算処理個人情報保護法第4条の規定に違反することを認識していたが、同リストの更新を続けた。
まる5  A三等海佐が開示請求者リストの作成作業を行っている際、時折、同僚から何をしているのかと尋ねられたことはあったが、「ただのデータの整理」と答えていたため、同僚は同三等海佐が開示請求者リストを作成しているとは知らなかった。
まる6  A三等海佐は、情報公開法に基づく開示請求に対する開示・不開示決定のための決裁に関する上司等への説明の際、説明を円滑に行うために、上司等に対し、参考として、この開示請求者は今回で何回目の請求であり、過去にこのような開示請求を行っている旨の補足説明を口頭で行ったことがあった。また、A三等海佐は、開示請求が行われた行政文書の主管課との調整において、当該主管課の担当者に対し、開示請求者の過去の開示請求回数等を説明したことがあった。しかしながら、A三等海佐が、開示請求者リストの作成について、上司から指示されたり、他の部署から依頼されるようなことはなかった。
(3) 開示請求者リストの内容
まる1  A三等海佐が作成した開示請求者リストには、番号、氏名、職業、郵便番号、住所、電話、記事等の項目が含まれており、これらのうち、職業の項目には、「受験者(○○で失格)の母」、「反戦自衛官」等の記載があり、記事の項目には「元戦史教官」、「不服申立」等の記載がある。
まる2  A三等海佐が作成した開示請求者リストには、氏名や情報公開窓口、請求件数等の特定の項目に着目して並べ替えや分類を行ったものなど、複数の種類がある。
(4) 開示請求者リストに記載した個人情報の入手方法
まる1  A三等海佐が開示請求者リストに入力した情報は、行政文書開示請求書のほかに、インターネット、開示請求者の名刺、海幕以外の情報公開室の担当者や開示請求された行政文書の主管課の担当者とのやりとり、書籍・雑誌及び新聞から得たものであった。
まる2  A三等海佐が他課室の担当者から入手したとする個人情報は、これら担当者との意見交換や雑談の中で同三等海佐が得たものであり、担当者の方にしてみれば、意見交換や雑談の中で聞かれたことに答えることが、開示請求者リスト作成のために協力することになるという認識はなかった。また、これらの情報には、自衛隊法にいう職務上の秘密に該当するものはなかった。
まる3  A三等海佐は開示請求者リストに入力する情報について、海幕調査課及び海上自衛隊中央調査隊に問い合わせたり、協力を得ることはなかった。
(5) 開示請求者リストの配布状況(参考参照
 A三等海佐は、作成した開示請求者リストを、平成13年4月から平成14年3月の間に、防衛庁情報公開室の1名、陸幕情報公開室の2名、陸幕総務課の1名、空幕情報公開室の2名(うち1名は他の室員への経由)、海幕調査課情報保全室の1名、海上自衛隊中央調査隊の1名及び自分の上司であった海幕情報公開室長の計9名に配布した。
内局、陸幕及び空幕情報公開室への配布
 海幕情報公開室に勤務していたA三等海佐は、業務上の調整等を行うために他の情報公開室によく出入りしていて各情報公開室の担当者と顔見知りであり、自分と同様の業務を行っている他の情報公開室の担当者も開示請求者リストを保有していた方が便利なのではないかと考えたこと、及び同三等海佐は他の情報公開室の担当者とのやりとりの中で得た情報も同リスト作成上の参考としたため、これら担当者への感謝の気持ちもあったことから、次のとおり開示請求者リストを配布した。
(ア) 防衛庁情報公開室への配布
 平成13年11月、A三等海佐は、防衛庁情報公開室において、開示請求者リストのハードコピー及び同リストを記録したフロッピー・ディスク(以下「FD」という。)1枚を同室B係長に手渡した。
(イ) 陸幕情報公開室への配布
まる1  平成13年11月、A三等海佐は、陸幕情報公開室において、開示請求者リストのハードコピー及び同リストを記録したFD1枚を同室C二等陸佐に手渡そうとした。しかし、陸幕情報公開室長からそのようなものを持ってこないようにと注意されたため、このときはC二等陸佐には手渡さなかったが、やはり同リストがあった方がC二等陸佐も便利であろうと考え、後刻、C二等陸佐にFD1枚を手渡した。また、この際、A三等海佐は、同リストを作成する上でやりとりのあった陸幕総務課D二等陸佐にも同リストを渡すよう、C二等陸佐に依頼し、C二等陸佐はこれを電子メールに添付してD二等陸佐に送付した。
まる2  平成14年3月、A三等海佐は、陸幕情報公開室において、開示請求者リスト(前回からデータを更新したもの)を記録したFD1枚を陸幕情報公開室C二等陸佐に手渡し、同リストのハードコピーをC二等陸佐の後任者となる同室E二等陸佐に手渡した。開示請求者リストの配布後、A三等海佐は、再び陸幕情報公開室長から、開示請求者の個人情報に関するリストがあるのであれば、そのようなものは破棄すべき旨の注意を受けた。C二等陸佐は、A三等海佐からの依頼はなかったものの、前回に倣い開示請求者リストを添付した電子メールをD二等陸佐宛てに送付した。
(ウ) 空幕情報公開室への配布
まる1  平成13年11月、A三等海佐は、空幕情報公開室において、開示請求者リストを記録したFD1枚を同室F二等空佐に手渡した。
まる2  平成14年3月、A三等海佐は、空幕情報公開室において、開示請求者リスト(前回からデータを更新したもの)を記録したFD1枚を同室F二等空佐に手渡そうとしたが、同二等空佐が出張中で不在であったため、同室G二等空佐にそれを手渡し、F二等空佐に渡すよう依頼した。
海幕調査課情報保全室及び海上自衛隊中央調査隊への配布
 A三等海佐は、自分が以前海幕調査課で勤務した経験があることから、開示請求者リストを同課及び海上自衛隊中央調査隊の担当者に活用してもらえるのではないかと考え、次のとおり、海幕調査課情報保全室員1名に5回、海上自衛隊中央調査隊員1名に2回、それぞれ同リストを配布した。
 なお、これらの者とA三等海佐とは顔見知りであったこと、及び同三等海佐には調査関係部署への仲間意識があったことも、開示請求者リストを配布した理由である。
(ア) 海幕調査課情報保全室への配布
 A三等海佐は、次のとおり、海幕調査課情報保全室において同室H二等海佐に開示請求者リストを手渡した。
まる1 平成13年4月、ハードコピー
まる2 平成13年11月、FD1枚(前回からデータを更新したもの)
まる3 平成13年12月、FD1枚(前回からデータを更新したもの)
まる4 平成14年2月、FD1枚(前回からデータを更新したもの)
まる5 平成14年3月、光磁気ディスク(以下「MO」という。)1枚(前回からデータを更新したもの)
(イ) 海上自衛隊中央調査隊への配布
まる1  平成13年12月、A三等海佐は、海上自衛隊中央調査隊において、同隊I三等海尉に開示請求者リストを記録したFD1枚を手渡した。
まる2  平成14年1月、同人にFD1枚(前回からデータを更新したもの)を手渡した。
海幕情報公開室長への配布
 平成14年2月、海幕情報公開室からの転出の内示を受けたA三等海佐は、自分が作成した開示請求者リストの処置について同室長に相談し、同室長が同リストを受け取ることとなった。このため、平成14年3月、A三等海佐は、開示請求者リストを記録したFD1枚を海幕情報公開室長に手渡し、自分の手元には同リストのデータを残さなかった。
(6) 受領者側における開示請求者リストの取扱い
 A三等海佐から開示請求者リストを受領した9名が再配布等した結果、合計14名が同リストの受領、閲覧又は保管に関わることとなった。
防衛庁情報公開室における開示請求者リストの取扱い
  平成13年11月に開示請求者リストのハードコピー及び同リストを記録したFD1枚を受領した防衛庁情報公開室B係長は、受領したFDから自分が使用するパソコン(以下「PC」という。)のハードディスクに開示請求者リストのデータを移した。同係長は、同リストが未完成のものであったことから、その後、ハードコピーを破棄し、自分が使用するPCのハードディスクから同リストの電子データを消去した。B係長は、開示請求者リストを自分の業務で使用したり、同リストを加工することはなかった。また、同係長は、開示請求者リストを他者に配布したり、閲覧させたりすることはなかった。
陸幕情報公開室における開示請求者リストの取扱い
 平成13年11月にFDを受領した陸幕情報公開室C二等陸佐は、同室においては資料の類は共用のMOに保存しておくことが通例であったことから、FDの開示請求者リストを同室の共用MOに記録した。また、C二等陸佐は、平成14年3月にFDを受領した際にも、同様に開示請求者リストを共用MOに記録した。A三等海佐から受領した2枚のFDについては、C二等陸佐が自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管していたが、平成14年3月に陸幕情報公開室から転出する際に、データを消去した。なお、C二等陸佐は、共用MOの開示請求者リストについては、特段消去の必要性を感じなかったため消去しなかったが、同室の他の室員は、共用MOに同リストが記録されていることを知らなかった。C二等陸佐は、開示請求者リストをD二等陸佐以外の者に配布したり閲覧させたりすることはなく、また、同リストを自分の業務で使用することもなかった。
 平成13年11月にC二等陸佐から開示請求者リストの送付を受けた陸幕総務課D二等陸佐は、同リストを見て自分の業務には関係のないものであると考えたため、同リストを削除した。また、D二等陸佐は、平成14年3月に開示請求者リストの送付を受けた際にも、同様の理由により同リストを削除した。D二等陸佐は、開示請求者リストを自分の業務で使用したり、同リストを加工することはなかった。また、D二等陸佐は、開示請求者リストを他者に配布したり、閲覧させたりすることはなかった。
 平成14年3月に開示請求者リストのハードコピーを受領したE二等陸佐は、その後の陸幕情報公開室長のA三等海佐に対する注意の場に居合わせていたため、長期間保有すべき資料ではないと考え、同年4月にハードコピーを破棄した。
空幕情報公開室における開示請求者リストの取扱い
 平成13年11月及び平成14年3月にFDを受領した空幕情報公開室F二等空佐は、開示請求者リストは業務上必要ないものと考えたが、返却するまでもないと思い、FD2枚を自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管していた。F二等空佐は、開示請求者リストを自分の業務で使用したり、同リストを加工することはなかった。また、F二等空佐は、開示請求者リストを他者に配布したり、閲覧させたりすることはなかった。
 平成14年3月にA三等海佐からFDをF二等空佐に渡すように依頼されたG二等空佐は、FDを自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管し、F二等空佐が出張から帰ってきた後、FDの内容を知らないままF二等空佐にFDを渡した。G二等空佐は、開示請求者リストをF二等空佐以外の者に配布したり、閲覧させたりすることはなかった。
海幕調査課情報保全室における開示請求者リストの取扱い
 平成13年4月から平成14年3月までの間、5回にわたり開示請求者リストを受領した海幕調査課情報保全室H二等海佐は、受領したハードコピー、FD3枚及びMO1枚を全て自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管していた。H二等海佐は、開示請求者リストの内容を確認した程度であり、同リストを自分の業務で使用したり、同リストを加工することはなかった。また、H二等海佐は、開示請求者リストを他者に配布したり、閲覧させたりすることはなかった。
海上自衛隊中央調査隊における開示請求者リストの取扱い
 平成13年12月にFDを受領した海上自衛隊中央調査隊I三等海尉は、同隊のプリンターで開示請求者リストを出力し、1部コピーを取った上、本紙については同隊隊長を含む3名に閲覧させた後、同隊資料科長に手渡し、FD及びコピーについては自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管した。本紙を受領した資料科長は、これを資料科員であるJ三等海曹に命じて書庫に格納させた。また、I三等海尉は平成14年1月にFDを受領した際、内容が前回とあまり変わっていないことを確認の上、FDを自分の机の鍵のかかる引き出しの中に保管した。I三等海尉は、開示請求者リストを自分の業務で使用したり、同リストを加工することはなかった。また、I三等海尉は、開示請求者リストを前記の3名以外の者に閲覧させたり、資料科長以外の者に配布したりすることはなかった。
海幕情報公開室における開示請求者リストの取扱い
 平成14年3月にFDを受領した海幕情報公開室長は、FDから自分が使用するPCに開示請求者リストを移した。
 同年5月、海幕情報公開室長は、記者の取材を受けた防衛庁情報公開室長より照会のあった資料が開示請求者リストに類似していることを確認後、当該リストを打ち出し、内局に提示するとともに、PC内の開示請求者リストをFDに移して、自分の机の中に保管し、PC内のデータを消去した。
(7) 上司の対応
まる1 海幕情報公開室長
 平成13年7月、海幕情報公開室長から何か特別な作業を実施しているのかと質問されたA三等海佐は、個人情報の収集を行っている旨回答した。
 同室長は、必要以上の個人情報の収集は、行政機関電算処理個人情報保護法に違反するおそれがあることは認識していたが、開示請求者の要求に適切に対応するためには、個人データは必要であると考え、また、A三等海佐は保全の専門家であり、適切に処置するであろうとの期待から特段の指示をしなかった。
 平成14年2月、同室長はA三等海佐から初めてPC画面上で同リストの説明を受け、同三等海佐が転出した後の開示請求者リストの処置について相談を受けた際、同データを扱う適当な者がいないことから、自分が同リストを受け取る旨回答した。同年3月、A三等海佐より開示請求者リストが記録されたFDを受領した。この時、同三等海佐から内局、陸幕及び空幕の各情報公開室等及び海幕調査課、海上自衛隊中央調査隊に開示請求者リストを配布していることを知った。こうした個人情報を配布したことは極めて不適切であるが、相手も関連業務及び保全業務に関わる者であることから保全には十分注意するであろうと思い、あえて回収せよとの指示はしなかった。
 なお、同室長は、開示請求者リストの存在について、上司である海幕総務課長には報告していない。
まる2 防衛庁情報公開室長
 A三等海佐から開示請求者リストを受領した防衛庁情報公開室B係長がこのことを同室長に報告しなかったため、同室長は室員が同リストを受領しているとは知らなかった。
まる3 陸幕情報公開室長
 陸幕情報公開室長は、同室によく出入りしていたA三等海佐とのやりとりの中で、同三等海佐が開示請求者の個人情報に係る資料を作成しているのではないかとの疑いを抱き、同三等海佐に対しては、そのような資料を作成すべきではない旨注意していた。陸幕情報公開室C二等陸佐及びE二等陸佐がA三等海佐から開示請求者リストを受領したことを同室長に報告しなかったため、同室長は室員が同リストを受領しているとは知らなかった。
まる4 陸幕総務課長
 陸幕情報公開室C二等陸佐から開示請求者リストを受領した陸幕総務課D二等陸佐がこのことを同課長に報告しなかったため、同課長は課員が同リストを受領しているとは知らなかった。
まる5 空幕情報公開室長
 A三等海佐から開示請求者リストを受領した空幕情報公開室のF二等空佐及びG二等空佐がこのことを同室長に報告しなかったため、同室長は室員が同リストを受領しているとは知らなかった。
まる6 海幕調査課情報保全室長
 A三等海佐から開示請求者リストを受領した海幕調査課情報保全室H二等海佐がこのことを同室長に報告しなかったため、同室長は室員が同リストを受領しているとは知らなかった。
まる7 海上自衛隊中央調査隊長
 A三等海佐から開示請求者リストを受領した海上自衛隊中央調査隊I三等海尉は、これを隊長を含む同隊隊員に閲覧させたが、隊長から特段の指示は受けなかった。
(8) 評価
まる1 開示請求者リストの作成
 A三等海佐が作成した開示請求者リストは、請求者の氏名等により個人が識別できる情報を含みかつコンピュータの記憶媒体に記録されたものであるため、行政機関電算処理個人情報保護法上の「個人情報ファイル」に該当する。開示請求者リストには、「受験者(○○で失格)の母」、「反戦自衛官」といった、開示請求状況の把握、行政文書の特定、開示・不開示の決定等の情報公開業務とは何らの関係を持たない個人に関する記載内容があるが、このことは、個人情報ファイルに記録される情報は当該個人ファイルの保有目的の達成に必要な限度を超えてはならない旨定めた行政機関電算処理個人情報保護法第4条第2項に違反する。
 また、このようなリストを作成することは、誰もが広く利用できるという情報公開法の趣旨にもとるのみならず、防衛庁への信頼を損なう極めて遺憾な行為である。A三等海佐は、開示請求状況の分析や円滑な開示請求への対応を目的として開示請求者リストの作成及び更新を行っていたとしているが、自らの行為が法に抵触することを認識した上でかかるリストを作成している点において、遵法精神に欠けていたと言わざるを得ない。
まる2 開示請求者リストの配布
 A三等海佐が開示請求者リストを情報公開室以外に配布したことは、個人情報の電算処理等を行う行政機関の職員はその業務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせてはならない旨定めた行政機関電算処理個人情報保護法第12条に違反する。
  また、このようなリストを情報公開室以外に配布することは、防衛庁が情報公開業務において得た開示請求者の個人情報を情報公開業務以外の目的に利用しているとの疑いを国民に与え、防衛庁に対する国民の信頼を損ないかねない極めて遺憾な行為であった。
まる3 上司の対応
 A三等海佐の上司である海幕情報公開室長は、平成13年7月に同三等海佐が開示請求者の個人情報を収集していることに気が付き、法に抵触するおそれがあることを認識していたにも関わらず、同三等海佐に対してこれを是正するための特段の指示をしなかった。また、平成14年2月に同三等海佐から開示請求者リストの処置について相談を受けた際にも、同リストの破棄を指示せず、その後これを自ら保管した。同室長は、開示請求者の個人情報を取り扱う部署の責任者として、A三等海佐が個人情報を収集していることを察知した段階で、直ちに必要な指導を行うべきであったと考えられる。また、情報公開業務に必要な範囲を超える開示請求者の個人情報を含む開示請求者リストを自ら保管することとしたのは、不適切な行為であったと言わざるを得ない。
まる4 開示請求者リストの受領者の対応
 A三等海佐から開示請求者リストを受領したのは、海幕以外の情報公開室、陸幕総務課、海幕調査課及び海上自衛隊中央調査隊の担当者であった。このうち、情報公開室の担当者については、開示請求者の個人情報に接する立場にありながら、個人情報の取り扱いについての認識が低かったため、A三等海佐に対して同リストには情報公開業務のために必要な範囲を超えるものが含まれており、行政機関電算処理個人情報保護法に違反するおそれがある旨指摘した者はなかった(ただし、陸幕情報公開室長は、開示請求者の個人開示請求者リストのようなものは破棄すべき旨A三等海佐に注意を行った。)。また、各情報公開室の担当者は、いずれもA三等海佐から開示請求者リストを受領したことを上司に報告していないが、このことも、個人情報の取り扱いに関する認識不足によるものであり、行政機関電算処理個人情報保護法に抵触するものではないが、いずれにせよ対応は不適切であったと考えられる。
 なお、開示請求者リストのうち、海上自衛隊中央調査隊員が平成13年12月に受領したものについては、隊長を含む3名に閲覧された後、同隊の書庫に保管されたが、同隊として業務上使用されなかったことが確認されている。また、他の受領者についても、その所属部署において開示請求者リストを業務上使用しなかったことが確認されている。
まる5 開示請求者リストの性格
 A三等海佐が開示請求者リストを作成したのは、同三等海佐の発意によるものであり、上司の指示や他の部署からの依頼に基づくものではなかった。また、同リストの作成作業は、専らA三等海佐によって行われたものであり、同三等海佐以外の者が、同リストの作成のために使用されることを認識しつつ開示請求者の個人情報を同三等海佐に提供したとか、同リストの作成作業に協力したというような事実は確認されなかった。しかしながら、A三等海佐の上司の対応は極めて不適切であった。
 また、A三等海佐が入手した個人情報の中には、プライバシーとして特に保護を必要とされるものも含まれており、これをA三等海佐に告げたことは不注意である。
内局、陸幕及び空幕リスト事案に係る調査結果
(1) 各情報公開室作成資料のホームページへの掲示等
まる1 防衛庁情報公開室
 長官官房文書課情報公開準備室(当時。平成13年4月1日以降は情報公開室)は、平成13年2~3月にかけて、情報公開制度の施行に向けて、対応要領等のシミュレーションを実施した。その過程で、多数の開示請求が予想されたことから、処理業務の進行管理のための一覧表の必要性が感じられ、準備室長と室員が相談しつつ「進行管理表」のフォーマット(請求番号、開示・不開示決定期限、請求件名、庁内の照会先等、細部手続の日付等を記載)を作成するとともに、処理の前例を知らしめることで類似の請求に対する各課の判断の食い違いを減らし業務を効率化するため、「進行管理表」を庁OAシステム全庁ホームページに掲載し、4月2日から始まった情報公開業務の進行管理に用いるようになった。
 当初「進行管理表」には開示請求者個人に関する情報は記載されていなかったが、
(ア)  大量の開示請求に対する対応を期限内に行うため、個別の請求案件につき情報公開室員(以下「室員」という。)の間で効率的に文書を特定する必要性が認識されたこと
(イ)  他課室より「進行管理表」では同一種類の文書請求の区別がつきにくくい旨の意見が担当レベルで伝えられたこと
(ウ)  マスコミやオンブズマンについては、請求が大量になることも予想されたため、特にきちんと日程管理する必要があると考えたこと
から、防衛庁情報公開室長は、同年4月中旬に、「進行管理表」の請求件名の欄中に、個人名を入れることには抵抗があったため請求者のイニシャルを入れるとともに、団体(マスコミ、オンブズマン等)については、これとの並びで略号を付することを指示した。
 この時点では略号の意味が一部の室員にしか分からなかったが、その後、他課室からイニシャル等の意味がわからないとの意見があったため、数日後に略号の意味を示した脚注が付記されるようになった。ただし、脚注に意味が記されている略号は8種のみであり、請求者がこの8種以外のマスコミ、団体の場合、担当者が自分の判断で適当な略号を記入した。その後、請求件数が落ち着いてきた平成13年夏頃から、略号の記載は必ずしも厳密に行われなくなり、特に担当係員が交代した14年4月からは、イニシャル等の記入は行われなくなった。
 「進行管理表」は、平成13年4月から庁OAシステムの全庁ホームページ上で掲示(閲覧可能端末約6,500台)され、当初はその都度手動により更新されていたが、同年6月頃から1日2回の自動更新の取扱いとされた。更新は担当者限りで行われ、上司によるチェックや決裁は行われていない。「進行管理表」のホームページへの掲示については、文書課長以上には報告されなかった。
まる2 陸幕情報公開室
「業務処理状況一覧表」
 「業務処理状況一覧表」は、平成13年3月に情報公開業務の開始に備え、同業務の進行管理のために陸幕情報公開グループ長(当時。平成14年3月27日以降は陸幕情報公開室長)の了解を得て作成された。「業務処理状況一覧表」には、整理番号、請求番号、決定期限、開示請求概要、行政文書件名、内局担当課、陸幕担当課・関係課、部隊等、補正、文書特定、意見検討、上申、摘要、処理状況等の項目が含まれており、これらのうち、摘要の項目には、「オンブズマン」、「市民団体」、「○○新聞」、「元空自」、「個人」などを記載しているが、個人名は記載していない。「業務処理状況一覧表」の作成については、平成13年3月に陸幕総務課長まで報告された。
 「業務処理状況一覧表」は、平成13年4月2日から陸幕LANのホームページ上に掲示(閲覧可能端末約1,000台)され、平日は毎日更新が行われているが、更新は担当者限りで行われ、上司によるチェックや決裁は行われていない。「業務処理状況一覧表」は、陸幕情報公開グループ長の了解を得て、平成13年4月からは方面隊、長官直轄部隊等の情報公開担当者約140名に対しても電子メールによる送付が行われている。電子メールの送付先には調査関係部署も含まれているが、これは他部隊に対するのと同様の一般的な情報提供の一環として行われており、また、「情報公開概要報告」の作成に関して同部署と情報公開室との間で情報の授受は行われていない。「業務処理状況一覧表」のホームページ上への掲示及び電子メールによる送付については、平成13年3月に陸幕総務課長まで報告された。
「情報公開概要報告」
 「情報公開概要報告」は、平成13年7月に開示請求状況及び開示請求処理状況に係る陸幕及び各部隊に対する情報の提供を目的として、陸幕情報公開グループ長の了解を得て作成された。「情報公開概要報告」の中には、「請求者別請求件数」、「請求者別請求件数比率」、「種類別請求件数」、「種類別請求件数比率」、「開示処理結果」、「種類別処理状況」及び「開示処理結果比率」のグラフがあり、これらのうち、「請求者別請求件数比率」のグラフの区分として、「報道機関」、「研究機関」、「業者」、「オンブズマン」、「市民団体」及び「個人」が記載されているが、個人名は記載されていない。「情報公開概要報告」の作成については、平成13年7月に陸幕監理部長まで報告された。
 「情報公開概要報告」は、開示請求状況及び開示請求処理状況の周知のため、陸幕情報公開グループ長の了解を得て、平成13年7月下旬から陸幕LANのホームページ上に掲示され、四半期毎に更新されているが、更新は担当者限りで行われ、上司によるチェックや決裁は行われていない。「情報公開概要報告」は、陸幕情報公開グループ長の了解を得て、平成13年7月からは方面隊、長官直轄部隊等の情報公開担当者約140名に対しても電子メールによる送付が行われている。電子メールの送付先には調査関係部署も含まれているが、これは他部隊に対するのと同様の一般的な情報提供の一環として行われており、また、「情報公開概要報告」の作成に関して同部署と情報公開室との間で情報の授受は行われていない。「情報公開概要報告」のホームページ上への掲示及び電子メールによる送付については、平成13年7月に陸幕総務課長まで報告された。
 なお、「情報公開概要報告」の作成には、「開示請求受状況一覧表」(開示請求状況について把握するため、陸幕情報公開グループ担当者が担当者限りの資料として平成13年7月に作成したものであり、開示請求者の区分として、新聞社名、法人名、個人名(姓)等が記載されている。)のデータが使用されており、ホームページ上に掲示又は電子メールで送付された「情報公開概要報告」のグラフをダブルクリックすると、個人に関する情報を含む「開示請求受状況一覧表」が閲覧可能であることが、平成14年5月30日に中央システム管理隊の通知により判明したが、陸幕情報公開室ではそれまでこれに気付いていなかった。
 「情報公開トピックス」、「開示・不開示の参考事例」、「開示・不開示情報について」及び「開示・不開示情報の具体例」
 「情報公開トピックス」は、平成13年4月から陸幕情報公開グループ担当者が作成を開始した日毎の開示請求状況に関する資料であり、同年4月から陸幕LANのホームページ上への掲示が開始された。「開示・不開示の参考事例」、「開示・不開示情報について」及び「開示・不開示情報の具体例」は、平成13年11月に陸幕情報公開グループ担当者が教育用資料として作成したものであり、同月から陸幕LANのホームページ上への掲示が開始された。「情報公開トピックス」、「開示・不開示の参考事例」、「開示・不開示情報について」及び「開示・不開示情報の具体例」のいずれにも、開示請求者個人に関する情報は記載されていない。
まる3 海幕情報公開室
 平成13年4月の情報公開業務の開始に備え、同業務の進行管理のために海幕情報公開室長の指示により「進行管理表」が作成された。「進行管理表」には、番号、受付日、開示期限、担当、開示請求の概要、氏名、住所、電話番号等の項目が記載されている。
 「進行管理表」は、平成13年4月から海幕情報公開室内の共用端末のハードディスクに記録され、LANで結ばれた同室内の端末から同資料を閲覧することは可能であるが、同室以外の端末から同資料を閲覧することはできない。
まる4 空幕情報公開室
「進行管理表」
 平成13年4月の情報公開業務の開始に備え、同業務の進行管理のために空幕情報公開室長の指示により作成された。「進行管理表」には、番号、請求内容、決定期限、残日数、主管課、開示担当課、受付日、事務指定日、請求者名、請求者区分、文書確認日等の項目が含まれており、これらのうち、「請求者区分」の項目には、「ラジオ・テレビ」、「新聞社」、「オンブズマン」、「その他法人」、「元自衛官」、「現自衛官」及び「その他個人」を記載している。「進行管理表」の作成については、平成13年2月に空幕情報公開準備プロジェクトチーム長まで報告された。
 「進行管理表」には、開示請求者の氏名と「請求者区分」を含むもの、「請求者区分」のみ含むもの、開示請求者の氏名も「請求者区分」も含まないもの、の3種類がある。このうち、「請求者区分」のみ含むものと開示請求者の氏名も「請求者区分」も含まないものについては、平成13年5月末から、空幕情報公開室長の指示により空幕LANのホームページ上に掲示(閲覧可能端末約1,000台)されている。平日は毎日更新が行われているが、更新に当たっては空幕情報公開室長の了解を得ている。また、開示請求者の氏名及び「請求者区分」を含むものについては、平成13年5月末から、空幕情報公開室長の指示により空幕LANの空幕情報公開室内端末からしかアクセスできない掲示板上に掲示されている。「進行管理表」のホームページ上への掲示については、平成13年5月に空幕監理部長まで報告された。
「開示請求件数」
 平成13年5月に空幕情報公開室長の指示により件数の管理を目的として作成された資料であり、請求者区分別の「開示請求件数」と防衛庁の情報公開窓口別の「開示請求件数」の2種類がある。このうち、請求者区分別の「開示請求件数」については、「マスコミ」、「市民オンブズマン」、「その他業者」、「外国人」、「現職自衛官」、「元自衛官」及び「一般個人(不明含む)」の欄が設けられている。
 「開示請求件数」は、空幕情報公開室長の指示により平成13年5月末から空幕LANのホームページ上に掲示され、必要に応じ更新が行われているが、更新に当たっては空幕情報公開室長の了解を得て行われている。「開示請求件数」のホームページ上への掲示については、平成13年5月末に空幕監理部長まで報告された。
(2) 資料に記載した個人に関する情報の入手方法
まる1 防衛庁情報公開室
 「進行管理表」(平成14年5月27日現在)に記載された1,315件のうち、イニシャル及び略号を付したものは950件である。このうち行政文書開示請求書に基づき記入したものは849件であり、残りの101件については、窓口における開示請求者とのやりとり、開示請求者の名刺、補正等の際に室員が開示請求者から聞いた内容又は既知の情報などをもとに記載したものであり、室員が請求者本人に対し、行政文書開示請求書に記載されたもの以外の個人に関する情報に係る質問をしたことはなかった。
まる2 陸幕情報公開室
(ア) 「業務処理状況一覧表」
 「業務処理状況一覧表」(平成14年5月30日現在)に記載された摘要欄536件のうち、記載のないものは38件である。これ以外の498件のうち、行政文書開示請求書に基づき記載したものは357件であり、残りの141件については、以前の行政文書開示請求書、開示請求者の名刺、書籍又は既知の情報などをもとに記載したものである。
(イ) 「開示請求受状況一覧表」(「情報公開概要報告」の元データ)
 「開示請求受状況一覧表」(平成14年5月30日現在)に記載された新聞社名、法人名、個人名(姓)等57項目のうち、行政文書開示請求書に基づき記載したものは36項目であり、残りの21項目については、以前の行政文書開示請求書、開示請求者の名刺、書籍又は既知の情報などをもとに記載したものである。
まる3 海幕情報公開室
 「進行管理表」に記載された開示請求者の氏名、住所及び電話番号は、すべて行政文書開示請求書に基づき記載したものである。
まる4 空幕情報公開室
(ア) 「進行管理表」
 「進行管理表」(平成14年5月28日現在)に記載された開示請求者の氏名はすべて行政文書開示請求書に基づき記載したものである。また、「進行管理表」に記載された「請求者区分」142件のうち、行政文書開示請求書に基づき記載したものは136件であり、残りの6件については、情報公開窓口における開示請求者とのやりとりをもとに記載したものである。
(イ) 「開示請求件数」
 「開示請求件数」(平成14年5月28日現在)の請求者区分別の「開示請求件数」の「マスコミ」、「市民オンブズマン」等の分類については、総計1,214件のうち1,094件は行政文書開示請求書に基づき記載したものであり、残りの120件については、以前の行政文書開示請求書や情報公開窓口における開示請求者とのやりとりなどをもとに記載したものである。
(3) 情報公開室員に対する教育状況等
まる1 防衛庁情報公開室
 室員に対しては着任者教育を実施しておらず、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)により業務上必要な事項について指導を行っている。室員に対する行政機関電算処理個人情報保護法に関する教育は実施しておらず、室員5名中、同法の詳細について知っていたのは部員1名であった。
まる2 陸幕情報公開室
 室員に対しては着任時に情報公開業務の概要や関係規則等について教育を行うとともに、OJTを通じて情報公開業務の実務に関する教育・指導を実施している。室員に対する行政機関電算処理個人情報保護法に関する教育は実施しておらず、室員9名中、同法の詳細について知っていたのは2名(いずれも2等陸佐)であった。
まる3 海幕情報公開室
 室員に対しては着任時に情報公開業務の概要や関係規則等について教育を行っている。情報公開業務の実務に関する教育・指導はOJTを通じて実施している。行政機関電算処理個人情報保護法に関しては、ミーティング等の際に教育を実施しているが、室員9名中、同法の詳細について知っていたのは6名(室長、2等海佐3名、3等海佐1名及び専門官1名)であった。
まる4 空幕情報公開室
 室員に対しては着任時に情報公開業務の基本事項等について指導は実施しているが、業務上必要な事項については主として日常の勤務を通じて指導している。室員に対する行政機関電算処理個人情報保護法に関する教育は実施しておらず、室員10名中、同法の詳細について知っていたのは事務官1名であった。
(4) 評価
まる1 各情報公開室作成資料のホームページ等への掲示等
防衛庁情報公開室作成資料
 「進行管理表」に記載されたイニシャル及び略号について、行政機関電算処理個人情報保護法との関係を見れば、イニシャル等自体は、それだけでは特定の個人を識別できる「個人情報」には該当せず、他の情報と容易に照合して当該個人を識別できないことから、「進行管理表」は同法の規定が適用される「個人情報ファイル」には該当しない。
陸幕情報公開室作成資料
(ア)  「業務処理状況一覧表」の摘要欄にある「オンブズマン」、「市民団体」、「個人」等の記載は、それだけでは特定の個人を識別できる個人情報には該当せず、他の情報と容易に照合して当該個人を識別できないことから、「業務処理状況一覧表」は行政機関電算処理個人情報保護法の規定が適用される「個人情報ファイル」には該当しない。
(イ)  「情報公開概要報告」は、「個人情報」を含まないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定は適用されない。
  また、「情報公開概要報告」の元データである「開示請求受状況一覧表」は、グラフ作成のために作成された担当者限りの一過性の作業用基礎データであるため、同法の規定が適用される「個人情報ファイル」には該当しない。
(ウ)  「情報公開トピックス」、「開示・不開示の参考事例」、「開示・不開示情報について」及び「開示・不開示情報の具体例」は、いずれも「個人情報」を含まないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定は適用されない。
海幕情報公開室作成資料
  「進行管理表」は、情報公開業務の進行管理のため、行政文書開示請求書から得られた情報に基づき作成され、情報公開室内でのみ閲覧可能な形で利用されており、行政機関電算処理個人情報保護法との関係で問題となることはない。
空幕情報公開室作成資料
 「進行管理表」のうち、
 氏名及び「請求者区分」を含まないものは、「個人情報」を含まないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定は適用されない。
 「請求者区分」を含むものは、「ラジオ・テレビ」、「新聞者」、「オンブズマン」等の請求者区分の記載はそれだけでは特定の個人を識別できる個人情報には該当せず、他の情報と容易に照合して当該個人を識別できないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定が適用される「個人情報ファイル」には該当しない。
 氏名及び「請求者区分」を含むものは、情報公開業務の進行管理のため、行政文書開示請求書及び情報公開窓口でのやりとりから得られた情報に基づき作成され、情報公開室内でのみ閲覧可能な形で利用されており、行政機関電算処理個人情報保護法との関係で問題となることはない。
「開示請求件数」は、「個人情報」を含まないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定は適用されない。
 「開示請求件数」は、「個人情報」を含まないことから、行政機関電算処理個人情報保護法の規定は適用されない。
その他
 以上の通りこれらの資料はいずれも行政機関電算処理個人情報保護法に照らして違法ではないが、個人に関する情報の取扱いについては慎重であるべきことは言うまでもない。また、誰もが広く利用することができる情報公開法の趣旨に沿って、疑念を生じないようにすべきである。その点において配慮に欠けた点のあることは反省しなければならないところである。
(5) 空幕情報公開室個人情報リスト配布事案
まる1 事実関係
 平成13年5月、空幕情報公開室の新設に伴い、東京地方調査隊U三尉は調査隊長に同行して同室を訪問し、調査隊長は情報公開室長に、U三尉は空幕情報公開室S三佐に挨拶した。その後U三尉は再び情報公開室を訪れ、S三佐(情報特技を保有)に行政文書開示請求者の請求内容に興味がある旨伝えた。
(注)東京地方調査隊は空幕LANにアクセスできない。
 平成13年5月~7月、S三佐は空幕情報公開室においてU三尉に対し、当初の1~2回は行政文書開示請求書を見せ、その後6回程度自ら作成した個人情報リスト(行政文書開示請求書に記載された「請求内容」のほかに「受付番号」及び「氏名」をリスト化し、印刷した紙。以下同じ。)を渡した。
 平成13年8月にS三佐は転出したが、東京地方調査隊は請求内容に興味があると考え、S三佐は後任のT三佐(情報特技を保有)にU三尉への個人情報リスト手交を申し送った。
 平成13年8月及び14年1月~3月、T三佐は空幕情報公開室においてU三尉に4回程度個人情報リストを渡した。(なお、U三尉はS三佐とT三佐から合わせて15回程度個人情報リストを受領したとしている。)
 S三佐及びT三佐とも空幕情報公開室長(新旧2名)の許可を得ずにU三尉に個人情報リストを手交していた。このため同室長はS三佐及びT三佐の個人情報リスト手交について知らなかった。
 S三佐は空自に対する行政文書開示請求書を見ながら氏名等を入力する方法で、T三佐は全庁ホームページに掲示された防衛庁情報公開室の「進行管理表」(空自分以外も含む)をダウンロードして加工したものに行政文書開示請求書を見ながら氏名を入力する方法で、それぞれ個人情報リストを作成した。
まる2 個人情報リストを渡した理由
 U三尉からS三佐及びT三佐に対する明示的な個人情報リスト手交の依頼はなかったが、情報関係の勤務経験を有するS三佐及びT三佐には、同じ情報関係の仕事に就いているU三尉の便宜を図ってやろうという気持ちがあった。
まる3 調査隊における個人情報リストの取扱い
 U三尉は受領した個人情報リストの「請求内容」を確認の上、バインダーに綴り、自分の机の鍵のかかる引き出しに保管した。受領後1か月程度経過した個人情報リストについては、U三尉がシュレッダーで破棄した。
 平成13年5月~14年4月までの間に、U三尉は調査隊長に対し、個人情報リストの一部の内容について、5~6回程度、他の案件と合わせて口頭で報告を行った。
 U三尉が個人情報リストを自分の業務で使用したり、加工したり、他者に閲覧させたり、再配布することはなかった。
まる4 評価
 S三佐及びT三佐がU三尉に手交した個人情報リストは、「個人情報」の電算処理を行うに当たって知り得た情報に基づいて作成されたものである。このため、情報公開業務において得られた開示請求者の個人情報を含むリストを情報公開室以外に配布することは、個人情報の電算処理等を行う行政機関の職員はその職務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせてはならない旨定めた行政機関電算処理個人情報保護法第12条に違反する。
 また、このような個人情報リストを情報公開室以外に配布することは、防衛庁が情報公開業務において得た開示請求者の個人情報を情報公開業務以外の目的に利用しているとの疑いを国民に与え、防衛庁に対する国民の信頼を損ないかねない極めて遺憾な行為である。
事案発生後の対応の経緯
(1) 海幕三等海佐開示請求者リスト事案への対応
まる1  平成14年5月27日夕刻、防衛庁情報公開室E室長が新聞記者から取材を受けた際に、開示請求の処理状況を記し「反戦自衛官」等の個人に関する情報を記した資料があると言われた。E室長は、文書課長及び官房長に取材があった旨報告したところ、記事の出方次第で直ちに対処できるようにせよとの指示を受け、19~20時頃、各幕の情報公開室長を防衛庁情報公開室作業室に集めて、各幕の保有する資料のうち該当するものの提出を依頼した。その後、21時頃、再度各幕の情報公開室長を集めたところ、海幕の情報公開室長から、海幕三等海佐の転出時に受領した開示請求者リストが提出された(なお、海幕情報公開室長は、新聞記者が提示した資料が当該リストと類似していることを確認後、PC内の当該リストをFDに写して机の中に納めるとともに、PC内の当該リストのファイルを消去している)。E室長は、海幕の提出した開示請求者リストが記者の保持していた資料に類似していたため、該当資料と認定し、海幕に対し作成経緯の調査を依頼した。他方、内局の「進行管理表」をはじめとする他の資料については、記者が所持していた資料における個人に関する情報を含んだものではなかったため、特にその内容について検討しなかった(陸幕及び空幕はこの時点では当該資料を持ち帰っている)。
まる2  28日早朝、毎日新聞で「防衛庁が請求者リスト」と報じられたことを受けて、E室長は、前夜指示した作成経緯についての報告が海幕より未だ届いていないため、「調査中」との応答要領を作成し、官房長に送付した。
 官房長は、大臣に説明の上で大臣会見に臨み、大臣は「調査中」と発言した。会見終了後、官房長は10~11時頃に次官に報告の上で、官房長室にE室長及び各幕の情報公開室長(海幕は総務課長も)を集め、事実関係について早急の調査を依頼した。13時に官房長室で会議を再開したところ、防衛庁情報公開室員が海幕情報公開室長からの聞き取りにより作成した開示請求者リストの配布先一覧表が提出されるとともに、海幕より、当該リストは海幕三等海佐の個人的資料であり、海幕の課長以上には出回っていないとの説明がなされた。また、正確な日時は不明だが、官房長は、内局の「進行管理表」についてもE室長から見せられたが、略号のないものであり、問題とは思わなかった。この時点では、官房長は情報公開関連の資料自体に問題があるとは認識せず、各幕に請求者の個人に関する情報を含む進行管理のための資料が存在することは知らなかった。
まる3  官房長は、次官、長官に報告の上、できる限り早く広報する必要があると考え、17時からの定例会見で、防衛庁情報公開室が海幕情報公開室からの聞き取りにより作成した資料「請求者リストについて」等に基づき、ア.海幕三等海佐が個人の資料として上司の指示によらずに作成、イ.請求者との対話やインターネットを通じて得た情報により作成、ウ.7名に渡されたがいずれも破棄されたり使用されずに保管 等と説明した。また、この席でE室長から、海幕三等海佐の作った資料のリスト番号を見て、人数が「142人」と答えた。会見後、記者クラブからの要求により「請求者リストについて」から氏名等を削除の上、官房長まで了解を得て配布した。
まる4  その後、海幕から、開示請求者リストの中に個人に関する記載のないものが一つ含まれており、人数は「141人」であること、資料を渡された人数は「8名」であると連絡があったことから、30日次官会見で訂正するとともに、「請求者リストについて」を修正して配布した。さらに、同日夕方、同資料で渡された者のうち中央調査隊の者の階級が誤り(2佐ではなく3尉)であると海幕から連絡があったことから、次官まで説明の上、「請求者リストについて」を再度修正し、翌31日官房長ブリーフィングで説明した。
(2) ホームページへの掲示の中断及び「進行管理表」からのイニシャル等の削除
まる1 内局
 5月28日、長官官房情報通信課のH部員は、同日の毎日新聞の報道により、海幕三等海佐開示請求者リスト事案を知ったが、29日に課員から内局作成で個人に関する情報(イニシャル等)を含んだ「進行管理表」(以下「内局リスト」という。)が全庁ホームページに掲示されているとの報告を受けた。そこで、H部員は、同日16時半頃自ら内局リストを確認した上で、情報公開室の担当部員に連絡し、適切に修正するか、他者から見られないよう対処すべきではないかと申し入れるとともに、取り敢えず情報通信課で閲覧できないよう措置する旨言ったところ、同部員から承知した旨回答があった。そこで、H部員は、全庁ホームページの掲載の一時中止を指示し、行政情報化推進プロジェクトチーム(以下「行プロ」という。)の担当事務官は、同日17時頃、ホームページの掲載を中断した。同時に、以前から必要性を感じていたサーバーのメンテナンス作業を実施した。
 同日夕刻、E室長は、H部員からの申し入れを聞き、ア.イニシャル等は4月以降は記入しておらず将来も予定はない、イ.問題はないと思うが色々指摘を受ける前に落としておこうと考え、同室担当事務官に内局リストからイニシャル等を削除するよう指示し、夜中に30分程度でイニシャル等を削除させた。
(注)イニシャル等の削除は、当時掲載されていた平成13年度開示請求分のデータからイニシャル等を抹消し、既存のデータに上書きすることにより行われた。このため、5月27日当時に掲示されていたデータは失われた。しかしながら、担当係員等のもとに、平成13年分の開示請求についてイニシャル等を付したものが保存されており、これを基に、今回調査を行った。
 削除が完了したことを知ったE室長は、30日朝、室員を通じて、H部員に対し、再びアクセスできるよう依頼した。H部員は、10時頃この連絡を受け、データ更新が終了しているか情報公開室に確認させた上で掲載を再開するよう指示したところ、この機に実施されたサーバーのメンテナンス作業のことを聞き、できるだけ早く再開するよう指示した。同課では、夕刻になって同室専門官と連絡がとれ、イニシャル等の削除を確認したが、サーバーのメンテナンスに時間がかかり、ホームページの再開は19時半頃となった。行プロ担当事務官は、上司に再開を連絡するとともに、防衛庁情報公開室員にホームページの確認を依頼した(結局確認の連絡はなかった)。H部員は、19時半頃に同室担当部員から連絡を受け、20時半頃に自らホームページを確認した。
 ホームページへの掲載の中断及びイニシャル等の削除については、各々H部員及びE室長の判断により行われた。なお、H部員は、情報通信課長に対しては、ホームページへの掲載の中断及びイニシャル等の削除について、30日前後に事後報告したが、文書課長及び官房長への報告は、E室長からなされるものと考えていたが、E室長は上司には報告しなかった。
まる2 陸幕
 5月28日8時50分頃、前任者の人事異動(臨時勤務)により前日から「業務処理状況一覧表」(以下「陸幕リスト」という。)の作成及び陸幕LANのホームページ上への掲示を担当したばかりの陸幕情報公開室M事務官は、マスコミの報道状況から、このまま陸幕リストを掲示し続けることで、各課・各班から問合せが殺到するのではとの不安感を覚えた。また、海幕三等海佐開示請求者リスト事案で対応に忙殺される上司からも適切な指導が期待できない状況であった。
 こうした状況の中、M事務官は、同室の先任幹部であるN二佐に陸幕リストをロック(ホームページ上の掲示板にデータ内容を表す項目は掲示されているが、担当者以外はデータの内容を閲覧できない状態)することを意見具申し、N二佐はこの旨同室O室長に報告し、O室長は海幕三等海佐開示請求者リスト事案への対応に忙殺される中これを了承した。ただし、O室長はその際「ロック」の意味を明確に理解していなかった。
 その後、O室長は、報道されたような氏名、住所等の個人情報等が記載されたファイルは陸幕には存在しないことを確認し、総務課長、監理部長に異常のない旨報告した。
 5月30日16時半頃、N二佐は、中央システム管理隊から、陸幕LANのホームページ上に掲示された「情報公開概要報告」のグラフをダブルクリックすると、グラフを作成するための元データである「開示請求受状況一覧表」(個人名(姓)等を含む)が表示されることを知らされ、O室長に報告した。O室長は、当該資料は個人情報の保護の観点から不適当であると判断し、陸幕LANのホームページからの削除を指示した。18時頃、N二佐はホームページ上に掲示されていた資料をMOに保存後、ホームページから削除した。
 5月31日夕方頃、O室長は新聞報道を読み、陸幕リストの摘要欄に記載された内容が法的に問題となる可能性がある旨を知った。21時頃、O室長は陸幕リストは陸幕LANにおいて閲覧可能な状態にあるものと認識していたため、M事務官に陸幕リストの摘要欄の削除を指示した。M事務官は指示に従い、摘要欄を削除の上、ロックを解除した。
なお、M事務官はこの際、摘要欄の削除が証拠隠滅との誤解を受けないよう、削除前の陸幕リストをMOに保存した。
 6月1日夜、O室長は、監理部内のミーティングにおいて、法務課の見解(6月1日深夜に総務省担当者の感触をもとにした内局の見解を踏まえたもの)から陸幕リストに請求番号や著作名が掲載されているだけでも、法的な問題が生じる可能性があるとの認識に至り、ミーティング終了後の6月2日2時頃、陸幕リストの陸幕LANのホームページからの削除を指示した。
まる3 空幕
 5月28日、空幕情報公開室P室長は海幕三等海佐開示請求者リスト事案に関する新聞報道を見て、空幕LANのホームページ上に掲載してある内容で個人情報に該当するかもしれないと考えられる事項があれば、何等かの処置をしなければならないと考え、18時から20時にかけて、部下のQ二佐と対応について協議した。
 その結果、P室長は空幕LANのホームページ上に掲載してある「進行管理表」(以下「空幕リスト」という。)の「請求者区分」が、場合によっては個人情報に該当すると判断される可能性があると考え、これを削除することが適当であると考えた。この際、業務を実施していくためには、空幕リストの掲示は継続する必要があると考え、空幕リストからは「請求者区分」の項目のみを削除することとした。また、後に当該「請求者区分」を掲示しても問題がないと判断された場合に備えて、いつでも再掲示できるよう削除前の時点のデータは保存しておく必要があると考えた。
 20時頃、P室長はQ二佐に対して、空幕リストの「請求者区分」の項目に関する処置として、元の空幕リストはコンピュータに保存してホームページ上から削除し、「請求者区分」を削除した新たな空幕リストを掲示するよう指示した。
 20時頃から20時50分頃にかけて、Q二佐はR事務官とともに空幕リストから「請求者区分」を削除して、再掲示する作業を実施した。20時50分頃同作業を終了し、Q二佐は作業が終了した旨をP室長に報告した。
 この事実について、P室長は6月2日8時頃、E室長に報告した。
(3) 陸幕・空幕リストの判明の経緯
まる1  5月29日、空幕長は、空幕情報公開室P室長に業務処理状況の確認と資料の整理について指示した。
まる2  5月30日、P室長は、個人に関する情報を含んだ空幕リスト等の提出について空幕長に報告するとともに、内局E室長にも報告しようとしたが、E室長は、海幕三等海佐開示請求者リスト事案の件で多忙であったこと、また、空幕リスト等の資料は個人名等が記載されていないことから問題視せず、後にしてほしいと言われたため、同資料を持ち帰った。
まる3  5月31日夕方、シンガポール出張前の大臣から、再点検の指示があったことから、18時半頃、E室長は、市ヶ谷地区における各幕・各機関の情報公開担当者を防衛庁情報公開室の作業室に集め、行政文書開示請求書以外の個人情報が入った資料(多い場合はサンプル)の提出を求め、併せて行政文書開示請求書の保管状況の報告を求めた。
 21時以降、再び各幕・各機関を招集し、結果の報告を受けた。陸幕からは23時頃、陸幕リストを含む資料が提出された。空幕からも、23時半頃、空幕リストを含む資料が提出された。防衛庁情報公開室は翌日の朝にかけて、これらをまとめた。
まる4  6月1日の昼過ぎ、文書課長は、官房長とともに次官に陸幕リストにつき説明した。次官は、15時半頃(現地時間同日14時半頃)、シンガポール出張中の大臣に連絡し、陸幕リストについて報告を行ったところ、大臣から、さらに徹底した調査を行うよう指示があった。その後、次官は陸幕長に連絡した。また、文書課長は、空幕リストについても問題となり得ると認識し、官房長とともに次官に報告し、次官は空幕長に連絡をした。
 また、15時頃以降、官房長は、内局E室長を呼び、全機関の保有する情報公開関係資料及び当該資料の名称、利用目的等を記した概要ペーパーを全て集めるよう指示し、関連資料は内局の情報公開室に集積された。
 文書課長と文書課員との陸幕リスト及び空幕リストに係る議論で、本件の法的問題の重要性が指摘されたことから、19時頃、文書課M部員が文書課長の命を受けて、陸幕リストに係る行政機関電算処理個人情報保護法上の問題を確認するため、電話で意見照会を行ったところ、行政機関電算処理個人情報保護法との関係では、一般論として他の情報と容易に照合できるならば、当該個人を識別でき、問題となり得るとのコメントを得た。
 2日の17時頃(日本時間)、シンガポールにいる大臣から次官に連絡があり、次官は状況に変化のない旨報告しているが、この時点では、空幕リストについては報告しなかった。
まる5  6月2日、海幕三等海佐開示請求者リスト事案及び陸幕・空幕リストへの対応について、16時頃から次官室で会議(次官、官房長、防衛局長、人教局長等)を行うとともに、それを踏まえて、19時頃から、3日に帰国する大臣への報告資料を作成した。
(4) 内局リストの判明の経緯
 6月3日の1時ないし2時頃、陸幕の情報公開室長が、E室長、その後文書課企画室長を訪れ、イニシャルを記載した内局リストのサンプルを示して、陸幕リストが問題であるならば内局も同様ではないかと指摘した。企画室長は、文書課長及び官房長に報告後、3人で次官に報告した。次官から、イニシャルはいつ削除されたのかと問われ、昨年のうちに削除されていたはずと言ったところ、確認するよう言われた。
 そこで、企画室長はE室長を伴って、文書課長及び官房長に説明させたところ、本年5月29日に削除したとの説明を受けた。官房長は直ちに帰宅していた次官に報告するとともに、報告書に内局分を入れるよう指示した。
(5) 内局・陸幕・空幕リストの大臣報告、記者会見
まる1  6月3日の8時10分頃、大臣への報告資料(大臣発言文、リストのサンプル等)について、官房長及び文書課長が次官に説明し、9時に次官以下で大臣及び副長官に説明した。この際、法的に問題となる可能性があるのであれば、早期に公表することが適当であるとの次官の進言により、11時33分から大臣の臨時記者会見が行われた。この会見は、上記資料に基づき、ア.海幕三等海佐開示請求者リスト事案に加えて、内局・陸幕・空幕においても、情報公開業務の処理状況の管理のための資料として、個人情報が含まれるものが作成され、庁内のLANシステムに掲載されていること、イ.本件は行政機関電算処理個人情報保護法との関係で問題となり得るところであり、非常に遺憾、ウ.引き続き徹底した調査を続行し、必要な処分を厳正に行うとともに、十分な再発防止策を講じる所存と発表した。
まる2  以上の状況の下、16時20分から陸幕長、17時35分から空幕長、19時02分から官房長と引き続き臨時記者会見が行われるとともに、20時30分に再度大臣の記者会見が行われ、調査体制の強化を言明した。
(6) 評価
まる1 海幕三等海佐開示請求者リスト事案に関する公表事項の誤り
 5月28日17時から実施した官房長会見において、今般の事案について官房長が説明(E室長等が補足説明)を行ったが、その時の説明内容の誤りは、次のような原因であった。
内容 原因 修正手続
開示請求者の人数
142名→141名
E室長が資料のリスト番号を見て答えたが、個人に関する記載のないものが一つ含まれていた。 海幕から情報公開室に連絡が入り、次官まで了解を取って、30日15時の次官会見で訂正するとともに、配布資料を修正して、19時半に配布した。
資料を渡した先の変更
7名→8名
防衛庁情報公開室が資料を作成する過程で、陸幕情報公開室に2佐が2名いたところを誤って1名と数えた。
資料を渡した者の階級
中央調査隊
2佐→3尉
海幕情報公開室の当初の調査の際、問い合せに答えた者を資料受領者と誤認した。 海幕から情報公開室に訂正が入り、次官まで相談の上、配布資料を再修正し、31日の16時半に官房長ブリーフィングで訂正した。
 当日は、海幕三等海佐開示請求者リスト事案に係る新聞報道を受けて、関係者はみな事実関係の確認や説明資料、応答要領の作成等に追われて一日中極めて多忙であったことからやむを得ない面はあるが、これらの誤りについて、十分な確認をせず不注意であったことは認めざるを得ない。
 また、5月28日公表後、容易に確認できる単純なミスであるにも関わらず、5月30日と31日の2回にわたり訂正を行ったことは、防衛庁の発表の信頼性を損ないかねないものであり、その後の対応という面で問題があったと言わざるを得ない。
 なお、今回の調査では、開示請求者数は142名に、開示請求者リストを受領した者の数は9名と確定した。(再配布先等を含めれば、合計14名が同リストの受領、閲覧又は保管に関わることとなった。)
まる2 内局リストからのイニシャル等の削除
防衛庁情報公開室
 内局リストに記載されたイニシャル等の記載は、元来は情報公開室員の間で大量の請求の特定を効率的に行うことを目的として行われたものであるが、本年4月以降は記入が行われなくなった。
 また、内局リストに記載されていたイニシャル等は、氏名・会社名のイニシャル、マスコミ・オンブズマンの区分のみであり、海幕三等海佐の開示請求者リストのような「反戦自衛官」等の記述をしたものではなかった。このようなことから、E室長は、海幕三等海佐開示請求者リスト事案の発生後も、内局リストを業務管理のため利用していたが、情報通信課H部員からイニシャル等を掲示し続けることへの疑義を指摘されたことを契機として、4月からは記入を行っていないのだからといった安易な気持ちでその削除を指示している。この行為には、証拠を隠そうという意図は認められなかった。
 また、ホームページの停止を申し入れたH部員は、イニシャル等を付した内局リストが、事案発生後もホームページに掲載され第三者がアクセスできる状態を看過することは、システム運用担当者として適切ではないと考えたものであり、証拠を隠そうという意図は認められなかった。
 他方、海幕三等海佐開示請求者リスト事案の報道があった5月28日の直後に、上司に報告することなくかかる措置がとられたことは、証拠隠しを行ったと言われてもやむを得ないものであり、その意味で、このような時期にホームページ上の資料の変更又は閲覧の中断を行ったE室長及びH部員は認識が甘く、不注意であったと言わざるを得ない。
  また、ホームページの停止及びイニシャル等の削除につき、H部員は上司である情報通信課長に対し、事後的にではあるが報告しているが、本件を主管しているE室長は文書課長に対し報告を行っていないことは、本事案に対する認識が甘く、不注意であったと言わざるをえない。
陸幕及び空幕情報公開室
 陸幕情報公開室及び空幕情報公開室においては、ホームページ上の資料を削除又は変更する前に当該資料のデータをバックアップしており、証拠を隠そうという意図は認められなかった。
 他方、海幕三等海佐開示請求者リスト事案の報道があった5月28日の直後に、上司に報告することなくかかる措置に着手したことは、証拠隠しを行ったと言われてもやむを得ないものであり、その意味で、このような時期にホームページ上の資料の変更又は閲覧の中断を承認した陸幕O室長及び空幕P室長は認識が甘く、不注意であったと言わざるを得ない。
  なお、内局及び空幕のホームページの掲示について、6月6日の次官会見で記者の質問に答え、停止、削除、再開の日を公表したが、十分な調査・確認がなされておらず、「隠蔽」との批判を招いたのは遺憾であった。
まる3 陸幕・空幕リストについての大臣報告
 5月31日、大臣からの指示に基づき各幕・各機関において再点検を実施した結果、同日夜までに、陸幕及び空幕から、請求者の個人に関する情報が記録された文書(陸幕リスト等)が防衛庁情報公開室に提出された。
  この結果については、最大3~6時間程度の時間差はあるものの、E室長から、文書課長、官房長、次官へと報告された。しかしながら、大臣への報告については、陸幕リストにつき次官から出張中の大臣に連絡したが、空幕リストについては、帰国するまで大臣には報告されなかった。
 本件は、防衛庁にとって深刻な影響を及ぼす可能性のあった事案であることに鑑みれば、次官は、空幕リストについても報告をするべきであった。
まる4 内局リストの存在の報告
 内局リストにイニシャル等が含まれていることについて、文書課長、官房長及び次官といった幹部が把握したのは、6月3日未明のことであった。それも、陸幕情報公開室長より、内局リストが存在するとの指摘を受けて、初めて明らかになったものである。E室長が5月28日における新聞記事の掲載時に、遅くても6月1日の陸幕・空幕リストの持ち込み以前に、積極的に文書課長等に対し報告をしなかった理由は、海幕三等海佐が作成した開示請求者リストに記載されているような個人に関する情報を含んでいない以上、問題はないと認識していたためであり、それについて報告しなかったことについても、証拠を隠そうという意図は認められなかった。むしろ、E室長が海幕三等海佐開示請求者リスト事案が発生しているにも拘わらず、内局リストにつき、当然調査の対象として、結果の如何にかかわらず、上司に報告すべきものであるとの認識を欠いていたこと自体が問題であると言える。
再発防止策
 情報公開業務における今般の事案の根本には、大半の職員の個人情報保護に対する認識の低さとチェックの甘さがある。また、そもそも情報公開室は開示請求者の個人情報を取り扱う部署であるにも拘わらず、同室勤務者に対する行政機関電算処理個人情報保護法に関する教育研修が十分に行われていないため、同法について理解している情報公開室員が少ないという問題もある。個人情報保護に関する教育研修が十分に行われていれば、海幕三等海佐開示請求者リスト事案の未然防止や、内局、陸幕及び空幕リスト事案における混乱の回避が可能だったのではないかと考えられる。
 そこで、以下の措置を講じ、今般のような事態が二度と起きないようにしていくこととする。
まる1 全職員の意識改革
 情報公開業務の適切な遂行及び情報公開に係る個人情報の保護に関する職員の認識を高めるべく、事務次官通達を発出する。
まる2 個人情報に関する教育研修
個人情報保護の全職員への周知徹底
 各種教育研修の機会を通じ、情報公開法の目的が、情報公開が国民に対する説明責任を全うし公正で民主的な行政の推進に資するものである点及び情報公開業務に際しての個人情報保護の必要性について、周知徹底する。
情報公開担当職員の教育研修の充実
 情報公開業務において最も個人情報に接する機会の多い情報公開担当職員については、特に個人情報保護についての認識を強く持たせる必要があることから、早急に個人情報保護等についての研修体制を確立する。
まる3 個人情報保護のチェック体制の充実
 情報公開業務における個人情報の取扱いが適切になされているか定期的に検査するために、情報公開室から独立した組織(情報公開検査官(仮称))を新設する。なお、それまでの間は、政策評価監査課長に当該事務を行わせる。
まる4 情報公開業務実施手続の改善
 情報公開業務における開示請求者の個人情報保護の観点から、開示請求者の個人情報を厳正に管理し、手続の実施等のために必要な場合を除き原則として伝達しないこと等、情報公開業務実施手続を見直し、「情報公開事務手続の手引」に反映させる。
まとめ
 以上に述べたとおり、海幕三等海佐開示請求者リスト事案について、海幕三等海佐が個人情報を含むリストを作成し配布したことは、行政機関電算処理個人情報保護法に違反するものである。
 また、調査過程において、空幕情報公開室の一部室員及び防衛施設庁施設部に係る行政機関電算処理個人情報保護法の違反という事実が判明したことは誠に遺憾である。
 リストに掲載された方々には、困惑と憤りを覚えられたことと推測され、また、国民の皆様が安心して情報公開請求を行うことについて疑念を与える結果になったことは大変残念である。個人に関する情報を安易に利用することは、行政機関電算処理個人情報保護法の趣旨に照らし、適切とは言えず、防衛庁としても深く反省しているところである。誰にでも広く利用できるという情報公開法の趣旨に合致するよう公正な運営に努めなければならないことは言うまでもない。
 今後は、個人情報保護のためのチェック体制の充実等を通じ、この種の事案の防止に全力を尽くす所存である。これらを通じ、国民が安んじて情報公開請求を行えるよう措置していく考えである。
 更に、6月3日に、内局、陸幕及び空幕の情報公開に関するリストは法的な関係で問題のあるものとして公表したことは、あたかも防衛庁において問題となり得る行為が行われていたかのような印象を国民に与えることとなった。このことは、的確な判断と正確な事実認定を欠いたものであり、防衛庁の業務処理手続において大きな問題があったと言わざるを得ない。今後は、迅速かつ正確な報告を行える態勢を構築する所存である。
 これらの考えの下、可及的速やかに関係者の処分を行う考えであるが、同時に、今回の事案によって国民の信頼を著しく失墜し、個人情報保護行政に多大な影響を与えた責任を組織全体として猛省するとともに、再びかかる事案が起こらないよう今後の行政運営に万全を期していく所存である。

 


(参考)

開示請求者リストの配布状況

部署 受領者 配布形式 期日
情報公開室 内局 B係長 ハードコピー
FD
平成13年11月
陸幕 C二等陸佐 FD 平成13年11月
FD 平成14年3月
E二等陸佐 ハードコピー 平成14年3月
空幕 F二等空佐 FD 平成13年11月
G二等空佐
(F二等空佐に手交)
FD 平成14年3月
陸幕総務課 D二等陸佐
(C二等陸佐より受領)
電子メール 平成13年11月
電子メール 平成14年3月
海幕調査課情報保全室 H二等海佐 ハードコピー 平成13年4月
FD 平成13年11月
FD 平成13年12月
FD 平成14年2月
MO 平成14年3月
海上自衛隊中央調査隊 I三等海尉 FD 平成13年12月
FD 平成14年1月
海幕情報公開室 室長 FD 平成14年3月

 

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