 |
検知及びサーベイランス |
|
生物剤の有無の検査及び汚染地域の特定並びに感染症発生状況の把握が可能であることが必要である。この機能を獲得するために、以下の事項を整備目標とする。 |
|
| ● |
検知器材の整備 |
|
検知器の性能として、携帯性、利便性、迅速性の向上のほか、遠隔操作性及び広域の汚染状況把握と拡大予測に関する機能が必要 |
| ● |
広範囲に亘る検知システムの構築の検討 |
| ● |
各種器材・装備品等の技術研究開発を行う工学・バイオテクノロジー等専門家の育成 |
|
|
(検知) |
|
生物剤の有無を検査し、汚染地域を特定することは、部隊の被害を最小限に抑えるための対抗措置を実施する上で不可欠な機能であり、一連の生物兵器対処行動の端緒をなすことから、その巧拙が以後の行動に大きく影響する。平成14年度に野戦型の検知装置等の運用研究が予定されているが、今後は、特に基地等の施設や展開する部隊等を防護する上で、広範囲にわたる地域を継続的に警戒する能力が必要とされる。このため、これらの機能を有する器材の整備が急がれ、併せて、検知器材の運用研究を進めることが求められる。他方、展開する個々の隊員に検知能力を保持させる上で、携帯型で迅速・簡便な検知装置等の整備を行う必要がある。
さらに長期的な目標として、大気中の生物剤エアロゾルの確認などに関し、長距離対応の検知器の保持や、個々の検知器に遠隔操作性を付与することにより、汚染地域でのより安全かつ広範囲に及ぶ検知活動を可能にすること等についても検討していく必要がある。
我が国の生物兵器対処技術は構築の緒に付いたばかりであり、これらの装備システムに必要な技術を全て国内技術で対応することは難しく、当面は、外国からの技術の導入が必要となるものと考えられる。しかし、これらに関連する技術については貿易管理上の規制対象に該当するものも含まれるため、技術の導入が困難となる恐れもある。そのため、国内におけるこれらの技術を向上させるために、技術研究本部においては平成13年7月に生物武器防護を担当する研究室を編成した。今後この技術を向上させるために、装備品等の技術研究開発を行う工学・バイオテクノロジーの専門家の育成を図る必要がある。 |
|
(サーベイランス) |
|
| ● |
自衛隊員を対象とした健康情報の迅速な把握と分析体制の整備 |
| ● |
事態発生時に適切な対応を助言できる疫学専門家の育成 |
|
|
国内外の感染症発生状況を把握することは、密かな攻撃(Covert attack)への対処に不可欠であり、併せて自衛隊員を対象として健康情報を迅速に把握し分析できる体制を整備していくことも必要である。このため、情報が迅速に把握できるように、「自衛隊における感染症対策に関する訓令」の見直し及び発生動向の把握をネットワーク化したシステムの構築が求められる。
さらに、情報の収集分析の迅速化に資するため、国内外の関係機関との人事交流を発展させることが必要である。事態発生時に適切な対応を助言できる疫学専門家を育成する観点から、平成12年度より、国立感染症研究所において医官の研修を実施しているところである。 |
 |
同定 |
|
生物剤の種類の同定及び病原性等の特徴の把握が可能であることが必要である。この機能を獲得するために、以下の事項を整備目標とする。 |
|
| ● |
微生物に対する検査体制の整備 |
|
遺伝子解析装置の整備及び高度な同定施設の必要性の検討 |
| 緊急に展開できる野外展開用高度検査設備の取得の必要性を検討 |
| ● |
生物剤の取り扱いを熟知した微生物等基礎医学専門家の育成 |
|
国内外の関係機関等との人事交流及び技術協力に向けた枠組みの構築 |
|
|
使用された生物剤の種類を早期に同定しその病原性等の特徴を把握することは、適切な対処を行う上で最も基本的な事項である。このため、遺伝子操作が加えられていない炭疽菌やペスト菌等の同定を迅速に行うため、平成13年度末までに遺伝子解析装置を導入するところである。また、平成19年度に改築後開院予定の新・自衛隊中央病院においてはBSL-3(注)相当の検査施設の設置が望まれ、防衛医科大学校(以下「防衛医大」という。)においても同様の施設の整備が望まれる。しかしながら、天然痘を始めとして極めて感染性の高い生物剤を培養し、その特徴を分析するためには、感染性の高い微生物を封じ込める施設(BSL-4の施設)が必要とされるところである。このような高度な同定施設については、政府全体での調整を基本としつつも、防衛庁・自衛隊としても同種設備等の保有について検討すべきである。また、自衛隊が海外等で活動する事例が増大していることに鑑みれば、所要の同定作業を現地で実施可能な野外展開用高度検査設備(BSL-3相当)の取得の必要性を検討すべきである。なお、人材の育成については、国内外の関係機関等との人事交流、技術協力に向けた枠組みの構築が必要である。 |
|
| (注) |
BSL: Biosafety Level の略。微生物を取り扱う場合の封じ込めレベルを示す取り扱い安全基準のこと。 |
|
 |
防護 |
|
防護マスク等の物理防護が必要であり、このために生物剤に対して有効な防護器材及び重要施設等に生物剤を取り込まないような設備の整備が必要になる。この機能を獲得するために、以下の事項を整備目標とする。 |
|
| ● |
防護器材の能力向上 |
|
機動性が高く、長時間の行動にも耐えうる防護器材の取得 |
| ● |
施設の防護性の向上 |
|
空調設備へのヘパフィルター設置の検討 |
|
|
生物剤を用いた武力攻撃には様々な形態が考えられるが、いずれの場合に対応するためにも、汚染地域での活動を行うために防護マスク等の装備を質・量ともに充実させることが急務である。
防護器材については、NBC防護に共通するものとして既存の装備の活用が考えられる。これらについて、生物剤への有効性を検証しつつ、能力を向上させ、所要の数量を整備していくことが急務である。平成13年度補正予算により、気密防護衣を整備するとともに、平成14年度予算等では、部隊用防護装置、艦艇等におけるNBC防護器材等を整備することとしているところであるが、我が国においてはこれらの防護器材の有効性を適切に検証できる施設の確保が困難であるため、例えば信用に足るデータがあればこれを部隊の使用に適していることを証する資料に援用するなどして、部隊で使用するまでの手続きを迅速化することが望まれる。また、より機動性に優れ長時間の行動が可能な防護器材の取得についての検討も必要である。長期的には、これらの点を踏まえた防護器材の整備が求められることから、防衛庁外の施設を含めた検証施設の利用について検討を行う必要がある。
更に、空調設備へのヘパフィルターの設置の拡充や排出装置の付設等により、重要施設には生物剤を取り込まないような機能を付加することも必要である。 |
 |
予防 |
|
生物剤に対する予防接種を適切に行うことが必要であり、このため予防接種対象者の範囲等の検討が必要になる。この機能を獲得するために、以下の事項を整備目標とする。 |
|
| ● |
生物剤に対する予防接種等の検討 |
|
ワクチンに係る検討会を設置 |
| ● |
生物剤に対する各種ワクチン等の安定的取得方策の追求 |
|
|
生物剤に対する対抗措置として、予防接種及び予防投薬の実施があげられる。天然痘については、平成13年度中に痘瘡ワクチンを所要量確保できる見通しとなったが、医官等のハイリスクグループへの計画的な接種など、なおその投与対象及び投与方法について整理する必要がある。また、炭疽菌、ペスト菌等に対するワクチン等については、国内で使用が認可されていないなど、その実施について検討すべき課題がある。これらの微生物に対するワクチンには一般的な国内需要がないことから、現状のままでは今後とも海外からの入手に依存することになるため、生物剤に対する各種ワクチンの安定的取得方策を追求することが必要である。
以上のことから、衛生担当防衛参事官の私的懇談会として平成14年度に設置することを予定していたワクチンに係る検討会を平成13年度に前倒しして設置するなど、生物剤に対する予防接種等の検討を急ぐこととする。 |
 |
診断・治療 |
|
患者及び感染者に対する診断及び治療を適切に行えることが必要であり、このために治療薬の備蓄及び多数の患者等が発生した場合の対応を明確にする必要がある。この機能を獲得するために、以下の事項を整備目標とする。 |
|
| ● |
生物剤による患者及び感染者に対して適切な治療を行うために、病原体を外に漏らさない構造を有する感染症病室及び検査室の整備 |
|
多様な感染症に対応可能な病室及び緊急に展開できる感染症受け入れ設備を検討 |
| ● |
診断・治療面における自衛隊病院や防衛医大病院等の整備・充実 |
| ● |
治療薬など必要な医薬品の備蓄 |
| ● |
生物剤に対する知識及び診断治療技術を有する医官及び看護官等の育成 |
|
国内外の関係機関等との人事交流及び技術協力に向けた枠組みの構築 |
| ● |
炭疽のみならず天然痘、ボツリヌス及びペストに対する診断・治療指針の策定 |
|
|
適切な診断を行うためには、前述した同定施設が不可欠であり、各自衛隊病院においては、必要に応じてニーズに対応したBSLの検査室を体系的に整備することを検討すべきである。また、治療面では、今後増大すると思われる国連平和維持活動等の国際的活動を視野に入れた場合、コレラや腸チフスに対応する病室のみならず、例えば当面生物兵器として利用される可能性が大きいと思われる天然痘にも対応可能な病室の整備も検討すべきである。今後防衛庁が全体として保有すべき感染症病床や診断・治療面の在り方については、更に検討していくべきである。
なお、今後の部隊の運用ニーズを考慮すれば、野外での展開が可能な感染症患者の隔離ユニットの整備を検討すべきである。他方、これら生物剤関連の診断・治療に関する知見を高めるため、国内外での研修を行うとともに、防衛医大病院においても感染症部門等の診断・治療面における整備・充実の検討が必要である。
各自衛隊病院及び医務室で必要な治療薬等については、平成13年度中に救急医薬品として整備することとしているところである。生物剤に対する知識及び診断治療技術を有する医官及び看護官等衛生職種の人材育成については、平成12年度より生物剤を含めNBC対処関連の衛生技術情報の収集を目的に、米陸軍感染症研究所を中心に関連施設での研修を実施中である。さらに、平成14年度より生物兵器対処能力の向上を図るため、自衛隊病院と感染症専門機関とのネットワークの構築を目的として生物兵器対処セミナーを実施する。さらに、防衛医大の医学科学生に対して生物剤対処に関する基礎的教育も行う必要がある。
そのほか、生物剤の曝露を受けた場合等に対応した診断・治療指針の作成が急がれる。 |
 |
除染 |
|
状況に応じた汚染除去の実施が必要であり、この機能を獲得するために、以下の事項を中長期的な目標とする。 |
|
| ● |
適切な剤の確保及び傷病者除染ユニットの整備 |
| ● |
艦内、機内及び施設内の除染法の確立 |
|
|
生物剤の除染器材については、NBC防護に共通するものとして、既存の装備の活用が考えられるが、生物剤への有効性を検証しつつ、能力向上及び所要の数量の整備が急がれるところである。平成13年度補正予算では、あらゆる生物剤に対して除染効果を有する塩素酸塩系除染剤(さらし粉等)を確保することとしており、さらに、生物剤等に曝露した者を除染するための傷病者除染ユニットを整備することとしている。
なお、重要施設(室内)及び展開時の部隊等(艦内及び機内)の除染方法の開発が急がれるが、さらに有効な除染剤の開発と取得が求められる。更に、生物剤で広い範囲が汚染された場合に汚染領域の拡大を防ぐための手法の開発が必要である。 |