戦略国際問題研究所(CSIS)における岩屋防衛大臣講演

平成31年1月17日

日本の防衛戦略(仮訳)

(英語版/English)

岩屋防衛大臣スピーチ
岩屋防衛大臣スピーチ

【全 般】

 皆様おはようございます。ハムレ所長、グリーン副所長、アーミテージ元国務副長官、ご紹介頂きどうもありがとうございます。ご列席の皆様、お集まり頂き感謝申し上げます。今回、ここCSISで、日本の防衛大臣としてスピーチをする機会を頂けましたことを、心より光栄に思っております。

 先ほどCSISの入口をくぐった際、2015年5月に一議員として、この同じ建物で日米防衛協力に関するパネルディスカッションに登壇した時のことを懐かしく思い出しました。日米ガイドラインが改定された直後であり、また、平和安全法制等の整備に向けて白熱した議論が行われていた時期でした。また、安倍総理が米議会で演説を行い、日米同盟を「希望の同盟」と謳ったタイミングでもありました。

 あれから約3年8ヶ月。日米同盟はかつてないほどに強固なものとなっています。新日米ガイドラインと平和安全法制の下、日米防衛協力が一層深化し、日米同盟の抑止力・対処力は大きく向上しました。

 例えば、北朝鮮情勢が非常に緊迫する中、2017年11月、日本海において、自衛隊の護衛艦「いせ」等が、史上初めて米空母3隻「ロナルド・レーガン」、「セオドア・ルーズベルト」、「ニミッツ」と共に訓練を行い、日米の強い意思と能力を示しました。このことは、自衛隊と米軍の緊密な協力関係があって初めて可能となるものです。日米同盟は、インド太平洋地域、さらには国際社会の平和と安定及び繁栄に大きな役割を果たしています。

 同盟を強固にする上で基礎となるのは、双方の国防に対する主体的な努力と、両国の目指す方向性の一致だと考えます。トランプ政権は、発足後速やかに国家安全保障戦略(NSS)、そして国家防衛戦略(NDS)を策定し、自らの戦略を明らかにしました。そこで示された米軍の能力強化や同盟重視の方針は、同盟国である我が国にとって非常に心強いものでありました。

 日本も、昨年12月18日、新たな防衛計画の大綱を策定するとともに、今後5年間の防衛力整備の水準となる中期防衛力整備計画を策定したところです。新たな大綱も我が国の防衛力を大幅に強化すると共に、ガイドラインの下、日米同盟をさらに一層強化することを基本方針としています。ご存知の通り日米同盟は厳しい国際情勢に直面していますが、日米両国の方向性はこれまで以上に一致したものとなっていると考えています。

 本日は、この新たな大綱・中期防を踏まえ、我が国が防衛体制をどのように強化しようとしているのか、そして、今後の日米同盟をどのように強化しようとしているのか、お話ししたいと思います。

【新たな大綱・中期防の概要】(総論)

 2013年12月、日本版のNSCが設置されました。防衛大臣である私も、この会議の構成員となっています。そして、新たな大綱の策定に当たっては、NSCにおいて、安倍総理を始めとする我々閣僚レベルによる集中的な議論が行われました。この議論の成果である大綱は、まさに我が国の政治的意思を体現した安全保障の方向性を定める戦略文書となっています。

 我が国を取り巻く安全保障環境は極めて速いスピードで厳しさと不確実性を増しています。特に、国家間のパワーバランスの変化、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の利用の急速な拡大は、国家の安全保障の在り方を根本から変えようとしています。このことが、今回我が国として新しく大綱を策定した大きな理由となっています。我が国としては、新たな大綱の下で、防衛の体制を抜本的に強化し、自ら果たしうる役割の拡大を図ると共に、従来とは抜本的に異なる速度で防衛力の強化を図ることを考えています。

 新たな大綱においては、我が国の防衛に関する3つの基本方針を示しました。

  1. (1) 第一に、我が国の防衛体制を強化することです。独立国として自らの安全の主体的・自主的な確保に努めるのは当然のことですが、このことは、日米同盟の一層の強化にも繋がると考えています。
  2. (2) 第二に、日米同盟について一層の強化を図ります。ガイドラインの下での同盟の抑止力・対処力の強化を加速させてまいります。
  3. (3) 第三に、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、日米同盟を基軸として、普遍的価値や安全保障上の利益を共有する関係国との協力を戦略的に推進することとしています。

我が国自身の防衛体制を強化するに当たっては、実効的な防衛力を実現するためのコンセプトとして、新たに「多次元統合防衛力」を打ち出しました。

この「多次元統合防衛力」のカギとなるのが、「クロス・ドメイン(領域横断)作戦」です。「クロス・ドメイン作戦」は、質・量ともに我々を上回る脅威を抑止・対処していく上でのカギとなるものであり、個別領域の能力が劣勢である場合にも克服することが可能になると考えています。

この実現に向けて、我が国は、

  1. ① 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域における能力の獲得・強化に優先的に取り組み、
  2. ② 従来の領域における能力についても、航空優勢・海上優勢の獲得、そして、スタンド・オフ火力、総合ミサイル防空能力などの能力強化を図ることとし、
  3. ③ 「新たな領域」と「従来の領域」、全ての領域の能力を有機的に融合させ、その相乗効果により、全体としての能力を増幅させることを狙いとしています。

 この「クロス・ドメイン作戦」と共に新大綱の重要なポイントとなるのが「日米同盟の一層の強化」です。かつてないほど強固になっている日米同盟を、より一層強化し、日米両国の力を結集すれば、あらゆる脅威を抑止することが出来、また、あらゆる事態に対処することが可能となります。そのための協力の方向性については、後ほど詳しくお話します。

【経 費】

 我が国の防衛体制を、従来とは抜本的に異なる速度で、大幅に強化し、自ら果たしうる役割の拡大を図る、これは単なる言葉だけの目標ではありません。新大綱で示した強い決意を裏付けるべく、今後5年間の防衛力整備のベースとなる新中期防に定められた経費により、我が国を取り巻く安全保障環境に対応し得る防衛力の強化に必要な取組を行ってまいります。

 新中期防には金額に関わる幾つかの数字が出てきますが、その中でも特にご注目頂きたいのは、今後5年間の防衛力整備の水準であり、2453億米ドル程度を目途としています。これは前回の中期防の水準と比べ、約250億米ドル25.0Bドル、約11%の大幅増となっており、「過去最大」です。

 これにより、大綱で示された能力強化を実現するのに必要な取組ができるものと考えており、このことは、国防に対する日本の強い決意を示すものです。

【防衛体制の強化の具体的取組】

 次に、「多次元統合防衛力」の実現に向けた具体的な取組について申し上げます。まず、(宇宙・サイバー・電磁波といった)「新たな領域」における能力を獲得・強化することが何よりも重要となります。

 宇宙領域については、自衛隊は宇宙空間の状況を常時継続的に監視すると共に、相手方の指揮統制・情報通信を妨げる能力を作り上げてまいります。その上で、平時から有事までのあらゆる段階において、宇宙利用の優位を確保するため、2022年度までに「宇宙領域専門部隊」を新編します。次に、サイバー領域については、有事において相手方によるサイバー空間の利用を妨げる能力等、サイバー防衛能力を抜本的に強化する観点から、2023年度までに、防衛大臣直轄の部隊である「サイバー防衛部隊」を新編します。また、サイバー分野に従事する要員数も大幅に増員する予定です。

 「従来の領域」における能力の強化についても、航空機、艦艇、ミサイル等による我が国への攻撃に実効的に対応するため、優先順位を付けて行います。

 具体的には、我々は、太平洋側を含む我が国周辺海空域において、海上優勢・航空優勢を獲得・維持するため、艦艇・航空機の能力強化を行います。例えば、戦闘機については、既に決定していた42機に追加して、105機のF-35を取得し、合計147機とすることにしました。これが実現すると、我が国は米国の同盟国で最大のF-35保有国となります。なお、新たな取得数のうち、42機については、STOVL機を替え得ることとされています。このSTOVL機の運用を可能にするため「いずも」型護衛艦の改修も行う計画です。「いずも」型護衛艦からのSTOVL機の運用が可能になれば、臨時に離発着できる「飛行場」が増加することとなり、運用の柔軟性は更に向上します。特に、硫黄島にしか飛行場のない太平洋側の防空態勢の強化においては大きな効果を発揮するものと考えています。

 また、我が国への侵攻を試みる艦艇や上陸部隊等に対して、脅威圏外からの反撃を可能にするため、スタンド・オフ防衛能力を強化します。具体的には、JASSM、LRASMなどの導入を着実に進めると共に、島嶼防衛用高速滑空弾等の研究開発を進めます。

 さらに、弾道ミサイル、巡航ミサイル、航空機等の多様化など、複雑化する空からの脅威に対処するため、総合ミサイル防空能力を強化します。このため、イージス・アショアやE-2D、最新鋭のイージス艦の早期導入と配備に向けて取り組む考えです。こうした取組を通じて、常時継続的に我が国全土を防護するため、我が国のミサイル防衛・防空のための陸・海・空自衛隊の総力を結集し、一元的な指揮統制の下であらゆる脅威に対処する体制を構築することを目指します。

 最後に、将来戦闘機についても触れておきたいと思います。2030年代後半からF-2の退役が見込まれていることから、将来戦闘機に関する「必要な研究を推進すると共に、国際協力を視野に、我が国主導の開発に早期に着手する」こととしました。将来戦闘機の開発にあたっては、①将来の航空優勢に必要な能力、②「次世代技術」も適用できる拡張性、③改修の自由度、④国内企業の関与、そして言うまでもなく⑤開発・取得のコスト、という5つの視点を重視しつつ、米国との相互運用性についても考慮しながら、取組を進めて参ります。

【今後の日米防衛協力の方向性】

 さて、ここからは、もう一つのカギである「日米同盟の一層の強化」に向けた今後の日米防衛協力について、お話ししたいと思います。

 まずは、クロス・ドメイン作戦を含めた日米の共同対処能力を向上させるため、「新たな領域」での協力が重要となります。このうち、宇宙領域については、昨年10月、米空軍宇宙コマンドが主催するシュリーバー演習に我が国として初めて参加するなど、同コマンドとの協力が深化しています。昨年12月に、トランプ大統領が11番目の統合軍として「スペース・コマンド」の創設を指示したと承知していますが、自衛隊に新設される「宇宙領域専門部隊」と米スペース・コマンドとの間の緊密な連携を確保することが、日米同盟のクロス・ドメイン作戦における能力向上のカギとなると考えています。

 また、サイバー領域についても、米国の支援も得ながら、着実な能力強化を図り、米サイバー・コマンドとの一層の協力深化を進めたいと思います。

 次に、日米の運用協力も引き続き強化していきます。例えば、弾道ミサイル防衛に関しては、情報共有、イージス艦やXバンドレーダーといった米国アセットの我が国への配備等、日米両国は既に緊密に連携しています。そこに我が国がイージス・アショアという新しい米国製のアセットを導入することにより、我が国の弾道ミサイル防衛能力が飛躍的に高まることになります。北朝鮮の核・ミサイル能力は、引き続き我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威であることから、日米の協力を一層強固なものにしていく必要があります。

 また、ガイドラインや平和安全法制の整備により、これまで実施できなかった、自衛隊による活動が開始されています。例えば、自衛隊による米軍部隊のアセット防護は、日米が互いに助け合うことを可能としました。これにより、日米同盟はその絆をさらに強くしています。また、ISR活動等に従事する米海軍に対する給油支援といったような支援を実施しています。これらの自衛隊による活動は米軍のオペレーションの効率性・柔軟性を高めるものであり、今後も引き続き、運用面における協力を深化させていく考えです。

 また、日米双方が追求する「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンに基づく協力も重要です。新たな大綱においては、望ましい安全保障環境の創出を重視しています。このために、このビジョンを踏まえ、日米同盟を基軸として、豪州・インド・東南アジア諸国といった普遍的価値や安全保障上の利益を共有する国々と緊密に連携して、安全保障協力を戦略的に推進します。我が国は、一昨年以降、日米印の三カ国共同訓練「マラバール」を毎年実施しています。また、一昨年から「いずも」型護衛艦が長期展開を実施しております。昨年は「かが」が8月から約2ヶ月間、南シナ海からインド洋にかけての長期展開を行い、日米で共同訓練を実施したほか、スリランカにおいて能力構築支援における協力も行いました。

 また、同年9月の日米首脳会談において公表した、「自由で開かれたインド太平洋の維持・促進に向けた日米協力の例」では、日米が相互補完的な方法で、フィリピンや他の東南アジア諸国において海洋安全保障の能力構築支援を実施することなどを挙げております。日米同盟にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、インド太平洋地域において日米両国のプレゼンスを高めることが非常に重要であり、日米が連携して取組を強化していきたいと考えています。

 さらに、日米の防衛装備・技術協力に触れたいと思います。日米共同研究・開発については、SM3ブロックⅡAに続く共同開発案件を開拓したいと考えています。また、新たな領域に関する技術や、AI等のゲーム・チェンジャーとなり得る最先端技術については、米国との技術交流等を通じて水準の向上に努める他、民生技術も積極的に活用したいと考えています。

 また、計画された米国製装備品を今後円滑に導入する取組も重要です。価格の低減や納期の遵守は極めて重要な問題であり、FMSプロセスの合理化の取組が益々重要になっています。イージス・システムやF-35等、高性能な米国製装備品はFMSにより調達しており、その額は近年大幅な増加傾向にあります。来年度予算案におけるFMS関連経費は、本年度予算と比較して約70%増の約64億米ドルで過去最大となっています。この中には、単年度毎の取得と比較して、大幅な価格低減が見込まれるE―2D・9機の一括調達も含まれています。5年を超える一括調達はFMS調達では初めてのことであり、縮減額も大きいことから、米側の協力を得て是非実現したいと考えています。

 最後に、在日米軍の円滑かつ効率的な駐留を安定的に支えるための取組についても触れたいと思います。在日米軍は同盟の中核的役割を担っています。このため、在日米軍再編を着実に進め、米軍の抑止力を維持しつつ、地元の負担を軽減していく考えです。普天間飛行場の代替施設建設については、昨年12月14日、辺野古で埋め立て作業を開始しました。22年越しの問題を今度こそ解決するとの強い決意の下、普天間飛行場の早期返還に向け、代替施設の建設を着実に進めていく考えです。

【結語】

 私は、孟子の教えにあります「至誠通天」という言葉を座右の銘としております。この言葉は、「誠の心を尽くして行動すれば、いつか必ず天に通じ認められる」、「誠の心を尽くして行動すれば、それに心を動かされない者はいない」という意味で、明治維新を成し遂げた志士たちをはじめ、これまで多くの日本人を魅了し、そして動かしてきました。「至誠通天」は、言わば「サムライ・スピリッツ」を体現したような言葉です。

 今回、日本は、新たな大綱・中期防を策定することにより、今後の進むべき道を明らかにしました。日米両国の同盟強化に向けた方向性は一致しており、またとない好機が到来していると考えるべきです。今後、私以下、防衛省・自衛隊が一丸となって、まさに「至誠通天」の思いで、あらゆる努力を尽くし、本日皆様にお示しした、我が国自身の防衛体制の強化と日米同盟の一層の強化を実現していきたいと考えています。このことが、日本のみならず、同盟国であり最も大切な友人である米国、そして延いてはインド太平洋地域、さらには世界全体の、安定と繁栄の実現に繋がっていく、と強く信じています。

 ハムレ所長、グリーン副所長をはじめとするCSISの皆様のより一層のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。ご清聴どうもありがとうございました。