第五回ワクチン等に係る検討会議事概要

 

日時: 平成14年6月7日 16:00~17:40
場所: 防衛庁庁舎A棟12階 衛生担当参事官室
出席者:
委員: 倉田 毅(国立感染症研究所 副所長)
四ノ宮成祥(防衛医科大学校 微生物学講座 助教授)
山田省一(白濱委員代理:自衛隊中央病院 副院長)
堀内 清(前千葉県血清研究所 副所長)
ゲストスピーカー:
高橋元秀(国立感染症研究所 細菌二部 細菌製剤第三室長)
防衛庁: 田中防衛参事官
外山衛生官
陸上幕僚監部古家衛生部長
海上幕僚監部渡邉首席衛生官
航空幕僚監部赤松首席衛生官
議事概要
(1)  ボツリヌス毒素に対する対処について委員及びゲストスピーカーより説明及び事務局からの補足説明があった後、ボツリヌス抗毒素やトキソイドに関する討議が行われた。
(2)  その他の生物剤に対するワクチン等について、討議が行われた。
(3)  DNA(multi-agent)ワクチンについて、委員より説明があり、討議が行われた。
(4)  事務局より、第六回会合の日程説明があった。
討議の概要
(1) ボツリヌス毒素に対する対処について
 日本で発生する菌株から生じる毒素は、A,B,E,F型が多く、100℃10分で失活する。
 食餌性ボツリヌス症、乳児ボツリヌス症、創傷性ボツリヌス症の三つに分類される。
 毒性を発生するメカニズムは、神経筋接合部に作用し、神経筋伝達物質を阻害することにより、筋弛緩が起こるというもの。
 治療法は、対症療法(呼吸管理)と抗毒素を用いた血清療法である。
 抗毒素は、E型単独の抗毒素とA,B,E,F型の多価抗毒素の二種類が存在する。
 抗毒素は、ウマに免疫して抗毒素を採取したもので、作成には2年ほどかかるものである。
 米国ではFDAの認可を受けていないトキソイドをCDCと米軍で、研究者と軍人を対象に30年ほど前から投与が行われている。
 ヒト型免疫グロブリンは、多価ボツリヌストキソイドで免疫した正常人より得られたIgGであり、現在、米国において、治験を行っているところである。
(2) 自由討議(ボツリヌス毒素に対する対処について)
 テロとして、ボツリヌス毒素が水道に使われることは考えられない。塩素濃度0.3ppmの水道水では直ちに毒素が失活することが実験的にわかっている。
 自衛隊でボツリヌス症を予防するため、トキソイドや抗血清を備蓄する必要性については、トキソイドに関してはリスクと費用関係から考える必要があり、また、効果の程度も十分考慮する必要がある。抗毒素については、日本には十分な量がなく、備蓄することは難しい。いずれにしても、費用、被接種者の健康上の利益・不利益などを考慮して、 防衛庁・自衛隊の考えを決めればよいと思う。
 診断用ボツリヌス抗毒素血清による中和試験は、毒素が血中でfreeな状態で存在すれば意味があるが、タイミングを逃すと意味がなくなると思う。
(3) その他の生物剤に対するワクチン等について(自由討議を含む)
 ブルセラについては、入手可能性は低い。コレラについては検疫所で使用しているので入手可能性はある。鼻疽・類鼻疽は、利用可能なワクチンはない。野兎病については、有用性が高まってきており、次のターゲットになる。Q熱については、豪州で認可済みのものがある。ウマ脳炎ウイルスは、利用可能なワクチンはない。出血熱ウイルスについては、エボラ出血熱やラッサ熱等現在利用可能なワクチンがない。治療法については、進行中である。
 リシンとかブドウ球菌性腸毒素Bについては、利用可能なワクチンはない。
 ハンタウイルスについては、生物兵器への対処に関する懇談会の報告書には生物剤としてあげてなかったが、韓国で利用可能なワクチンがあるということである。
 ハンタウイルス、Q熱、野兎病、コレラについては、今後とも注視していくべきである。
(4) DNA(multi-agent)ワクチンについて
 開発や製造が容易で時間も少なくてすむ。また、危険な微生物を取り扱わなくてもその遺伝子を取り扱うだけで開発が出来る可能性がある。
 効果的には、比較的長く持続するものがいくつかあり、細胞性免疫と液性免疫の両方を刺激することによって強力な免疫を惹起できる可能性がある。
 多剤対応(multi-agent)DNAワクチンの開発が可能である。
 若年者や免疫不全者にも利用できる可能性がある。
 外来の遺伝子がヒトに与える影響については、未だ解明されておらず、安全面については未知である。
 弱毒生ワクチンは、場合によっては有毒株に変異する可能性もあるが、DNAワクチンはそういうことはないと考えられている。
 DNAの組み合わせによっては、一つのワクチンで何種類もの病原体をカバーできるようにもなる。よって、病原体毎にワクチンを接種する必要もなくなる。
 バクテリアのDNA自体が脊椎動物のDNAと性質が異なり、バクテリアのDNAを投与することによって、特異的な免疫は誘導できなくても全体的なバックグラウンド的な免疫をあげる働きがあるのではないかと考えられており、これを多剤対応DNAワクチンとして応用できないかと研究が進められている。
 注目されているのはCpG-DNA(短いオリゴヌクレオチド)であり、シトシンとグアニンが並んだ二塩基にプリン塩基やピリミジン塩基がついたものである。この短い特定のDNA配列がアジュバント(免疫系を非特異的に活性化させる物質)的に働き免疫惹起効果が得られるということが言われている。
 最近になって、CpG-DNAにより活性化するのはToll like receptor 9ではないかと言われるようになり、このレセプターを発現する遺伝子をノックアウトした場合には、特定の遺伝子配列に対する免疫反応は落ちることが分かってきている。
 DNA(multi-agent)ワクチンを投与しておけば、例え何か不明な生物剤による攻撃があっても、投与されていない部隊は重症になるが、投与しておいた部隊は軽症で済むというところまで到達する可能性がある。
 あらゆる生物剤についてDNAワクチンがどこまで有効なのかどうか、今後の問題として認識しておく必要があるだろう。
以上

 

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