第三回ワクチン等に係る検討会議事概要

 

日時: 平成14年4月26日(金) 10:00~12:00
場所: 防衛庁庁舎A棟13階 第二庁議室
出席者:
委員: 倉田 毅(国立感染症研究所 副所長)
志方俊之(帝京大学法学部 教授)
四ノ宮成祥(防衛医科大学校 微生物学講座 助教授)
白濱龍興(自衛隊中央病院 院長)
仲村英一(財団法人 結核予防会 理事長)
堀内 清(前千葉県血清研究所 副所長)
ゲストスピーカー:
牧野 壯一(帯広畜産大学獣医学部獣医科家畜微生物学 助教授)
防衛庁: 田中防衛参事官
外山衛生官
陸上幕僚監部古家衛生部長
航空幕僚監部赤松首席衛生官
議事概要
(1)  痘瘡ワクチン接種についてのとりまとめについて、変更点等について朗読後、各委員から最終的な確認質問があり、その後、中間的報告として了承された。
(2)  牧野氏より炭疽ワクチンを中心に炭疽菌について説明があった後、炭疽ワクチンに関する意見交換が行われた。
討議の概要
(1) 「痘瘡ワクチンの接種について(案)」の最終意見とりまとめ
 インドやパキスタンで接種の経験では、精度の悪い冷蔵庫しかなく、一度開栓してしまったバイアルを、手に持って歩き回り接種を行っていたこともある。このような条件下では、当然ワクチンの力価は落ちるし、パラメディカルや学生などが実施しているという背景があって、圧刺回数が多く設定されていると考えている。日本の平時の場合を想定すれば、WHO(世界保健機関)が推奨する15回ではなく、添付文書どおり圧刺回数は初種痘の場合は5回、再種痘の場合は10回で十分である。
 多圧法が行われていた頃の添付文書では、細い単針を用いて初接種で5~10回((注)二叉針で5回分以内に相当)、再接種で15~20回((注)二叉針で5~8回に相当)とされている。
 添付文書では、力価試験後5℃で保存し、2年間が有効期間となっているが、-20℃で保存したとき、8年間は、僅かな力価の低下しかないことがわかっている。米国でも5年間は問題ないとしている。
(2) 炭疽ワクチンについて
 炭疽は、中央アジア、中近東、東南アジア、アフリカ等に好発している。特に中近東北部は炭疽ベルトと言われているほど、好発している。
 毒素は、浮腫因子、防御抗原、致死因子の3種が存在し、防御抗原(Protective Antigen、以下「PA」という。)が存在しないと浮腫または致死を生じない。
 PAが重要なのは、それが細胞レセプターに結合し、プロテアーゼにより一部が切断を受け、七量体形成後に致死または浮腫の因子が付着して細胞内に取り込まれ効果を発揮することとなる。
 感染のステップは、芽胞が体内に入り、マクロファージに貪食され、マクロファージ内で発芽して、血流中に拡がる。この時点までくらいが、抗生物質が効くようである。これを過ぎると敗血症になり、ショック、死亡につながっていく。
 ワクチンについては、米国で1970年にFDA(米国食品医薬品局)のライセンスを得て生産が始まっている。現在は、バイオポート社が生産を行っているが、これらは、皮膚炭疽についてのみ適応があるものである。これらが肺炭疽が中心の生物テロに有効であるかどうかということが、議論になっているようである。
 次世代のワクチンについては、20年前より研究が行われているが、現存するワクチンより効果があるものは未だに発明されていない。
 生菌が一番よく効くと言われているが、副作用も大きいので、PAを無害な菌に発現させる方法が出てきて、枯草菌やTY21(チフスの生ワクチン株)に炭疽菌のPAを入れて試されている。しかし、その後、同様な手法による研究は進んでいない状況である。
 米国では、FDAがライセンスを与えたワクチンの安全性について議論がされており、破傷風のワクチンよりも局所反応が少なく安全性は高いという者もいれば、そうではないという者もいる。いずれにしても米国の炭疽ワクチン(AVA)は、接種部位の局所反応を含むadverse reaction(副反応)が40~70%くらい発生している。
 炭疽菌による感染症で死亡率は95%といわれているが、それが本当なのかということも議論になっている。米国の事例でも発症した人の70~80%は死亡しているが、暴露された人の数を含めたらそれほど高くないだろう。また、ソビエトでの事故では、死亡率は確かに高かったが、暴露された人を含めたらもっと下がる。1万個菌体を吸入して罹らない人もいれば、僅か数個で発症する人もいるようである。
 FDAは皮下注で認可しているが、CDC(米国疾病管理センター)かUSAMRIID(米陸軍感染症研究所)の研究者は、皮下注ではなく、筋注にすれば局所反応は少なくなるとも言っている。
 米軍(陸軍、空軍、海軍、海兵隊、沿岸警備隊)では過去に約205万回接種したとの報告がある。
 FDAが認可したものは皮膚炭疽に効果があるが、生物兵器への効果は不明であり、そのような状況の中、軍であるということからインフォームドコンセントなしに接種していることが議論となっている。
 暴露されても発症しない者がいるようであるが、毒素とか莢膜を産生するまでに、免疫獲得に関して新たなファクターがあるか否かについては、動物の実験でもよくわかっておらず、抵抗力の問題と推察される。
 自衛隊の隊員は、リスクの高いところに行くことがあるので、炭疽ワクチンを接種しても問題はないと考える。局所反応等報告はされているものの、若い人には問題ないと思う。ただし、一般市民には、ちょっと副作用が強すぎると考えられる。
 化血研((財)化学及血清療法研究所)で作っている動物用ワクチンも、英国のヒト用ワクチンも、どちらも34F2という株を使っており、基本的には同じものである。また、米国のBioPort社のワクチンは、株は違うが、本質的には由来は同じなので、一緒と考えて良いと思う。
 BioPort社のものを輸入すると一人$100くらいと聞いている。
 FDAで認可したものは、皮膚炭疽用ということであり、肺炭疽には効くかどうかはっきりしないということであるが、これについては、皮膚炭疽は再現実験が可能である一方、肺炭疽はソビエトでの猿を用いたデータしかなく、有効かどうかわからない。
 次世代のワクチンの見通しや実現性については、現在は動物実験のレベルであり、今後、米国等の製薬メーカーなどがヒトを対象とした試験を行うことになるだろう。早ければ、一年以内にも実現されるかもしれない。
以上

 

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