第二回ワクチン等に係る検討会議事概要

 

日時: 平成14年3月15日(金) 14:00~16:00
場所: 防衛庁庁舎A棟13階 第二庁議室
出席者:
委員: 倉田 毅(国立感染症研究所 副所長)
志方俊之(帝京大学法学部 教授)
四ノ宮成祥(防衛医科大学校 微生物学講座 助教授)
白濱龍興(自衛隊中央病院 院長)
仲村英一(財団法人 日本医療保険事務協会 理事長)
堀内 清(千葉県血清研究所 副所長)
ゲストスピーカー:
蟻田 功(財団法人国際保健医療交流センター理事長)
徳永章二(九州大学大学院医学研究院 予防医学 講師)
橋爪 壮(財団法人 日本ポリオ研究所 理事長)
防衛庁: 田中防衛参事官
外山衛生官
陸上幕僚監部古家衛生部長
海上幕僚監部渡邉首席衛生官
航空幕僚監部赤松首席衛生官
議事概要
(1)  最初に、かつてWHOの天然痘根絶の活動に携わった蟻田ゲストスピーカーより、天然痘の典型臨床例、予防接種にあたっての注意すべき点、発生時の封じ込めの基本的考え方などについて説明があった。
(2)  天然痘テロ発生時の数学的モデルについて、徳永ゲストスピーカーより、シミュレーションの基本的考え方などについて説明があった。
(3)  事前に座長が他の委員と調整した「痘瘡ワクチンについて(案)」について、事務局から朗読があった。
(4)  次回の予定は、4月26日とし、詳細は事務局で調整することとなった。
討議の概要
(1) 発生時の封じ込めの基本的考え方などについて
 天然痘の発疹は、躯幹に少なく、顔に多い。
 発症から七日目の状況の患者が医療機関を受診すれば、日本ではまず、もし天然痘を疑わなければ極めて異常な皮膚疾患であるというレポートが出されると思われる。九日目になると膿疱は乾きはじめる。三週間後には、痂皮が脱落して白い斑点に変化する。このような患者が受診した場合には、三週間前に天然痘に罹患したのではないかと考えられる。また、三ヶ月後になれば、色素が沈着して、黒くなってくる。このような患者が受診すれば、天然痘の流行が3~6ヶ月前にあったという根拠となり得るわけで、天然痘のサーベイランスは意外に困難ではない。
 水痘との簡単な見分け方としては、水痘は発疹の分布が違い、水疱から痂皮に至るまでの発痘の各種段階のものが混在するので、これらのことを知っていれば、典型例ではまず間違うことはない。しかし、判別しにくい例もあるので、注意は必要である。
 天然痘が根絶されたポイントとしては、病原体保有状態は3ヶ月で終わるということ、ワクチンが防御に著効するということ、根絶への戦略がよかったこと、ワクチン接種の既往は皮膚のワクチン接種痕を見ればわかること、WHOのリーダーシップがよかったこと、国際社会のコミットメントが非常によかったということがあげられる。
 ワクチンのpotency(力価)というのが非常に大切である。根絶プログラムにおいてワクチンがあってもしっかりpotencyを確かめなければならない。
 1972年以前は、mass vaccination(特定地域別接種方式)を目的としてやっていたが、なかなか患者数が減らず、サーベイランスをやり始めたら危険地域がわかり減ってきた。
 mass vaccinationは気休めであり、急速に患者を特定し、その周辺にvaccinationすること(ring vaccination(輪状接種方式))が効果的である。
 二叉針についても、WHOは相当な研究をした。特に、圧刺回数や針の耐久性について、力を入れた。圧刺回数は、医師がやった場合とそれ以外の者がやった場合では、善感率が異なり、総合的に見ると5回では効果が少ないし、30回では時間がかかりすぎるということで、極めて多数の者への接種をしなければならない状況では15回がベストということとした。初種痘も再種痘も区別する手間を考慮しどちらも15回とした。これは運用上も効果があるものであった。二叉針を使うと従来法に比し、4倍くらい接種人数が可能であった。即ちワクチンを節約できる。
 患者をどうやって探すかというのが難しい。WHOの根絶計画では、発疹が発生している患者のサンプル写真を患者発生地域で現地の人に見せて、active searchを始めた。インドもmass vaccinationで根絶するということであったが、なかなか減らず、毎月のうち一週間はactive searchをやらせたら、あっという間に激減した。
 検体の同定については、電子顕微鏡でウイルス粒子を見つければ簡単である。検体さえあれば1時間で完了する。なお、virus isolationは2~3日かかる。電子顕微鏡で1時間、PCR等のDNA分析法では6時間といわれている。
 クウェートの病院での院内天然痘感染について、endemic freeの地域で天然痘が発生するとなかなか診断がつかなく、拡がることがある。患者は具合が悪くなれば病院に来るので、医師が、麻疹とか水痘とかStevens-Johnson症候群だとかいっていると患者が増えてしまう。日本においても、病院での感染者の取り扱いが重要である。
 サーベイランス機能が確立されていれば、検体採取後3日以内に同定は可能であり、自衛隊の場合はもっとコミュニケーションがよいので電子顕微鏡の検査などでもっと短くなるはずだ。
 ワクチンの優先順位であるが、接触者、関係医療機関の職員、救急関係の職員等であり、自衛隊の場合はもっと簡単に考えられるはず。
(2) シミュレーションの基本的考え方などについて
 流行から終息までのシミュレーションを数学的モデルを用いて解析を行った。
 何人かが発症した時点でテロが発生したことが判明し、その後、追跡・隔離が行われるが、追跡・隔離から逃れる者により次の感染者を生み出すと仮定される。
 追跡成功割合と隔離までの日数との関係を見ると、追跡成功率が悪くても隔離までの日数が短ければ終息し、追跡成功率が良ければ隔離までの日数が長くても終息する。
 シミュレーションは、気温や湿度などを考慮し、夏季と上気道感染を起こしやすい冬季をそれぞれやっておく必要がある。
 患者数と終息までの時間の関係で、例えば患者数が10倍になっても、終息までの時間は、3~4割増えるだけである。一番大事なのは、接触者を追跡成功できる率がどれくらい高いかである。追跡成功率が40%低くなれば、終息に必要な日数はシミュレーション上では倍以上になる。
 mass vaccinationは、労多くして、効果少ないと考えられる。
(3) 自由討議
 二叉針の使用について、ワクチンの添付文書では、圧刺回数は初種痘5回、それ以外は10回であり、WHOが推奨する15回ではなく、薬事法のとおりにやってもらうことでお願いしたい。
 いや、米軍も15回でやっている。自衛隊員には、15回は問題ないと考えている。要は15回であれば緊急の場合、短い訓練で誰(保健関係者)がやっても、よく接種できるということだ。WHOは全世界数億人以上の接種、10年間の経験である。
 日本では、医師以外がやることは、いかなる予防接種でも禁じられていることから、例えば東京で想像を超えるような感染者が発生しない限り医師が接種することになるだろう。まして、防衛庁・自衛隊ならきちんとした態勢が整っているので、医師が行うことになるはずだ。
 症状の特殊性から日本の医師なら、どのくらいの人がどのくらいの確率で診断できるのか。
 前駆症状だけでは、まずわからない。水疱ができてもわからないだろう。これらをAcceptable Riskとして認識しておくべき。
 自衛隊では、天然痘は、過去の症例の写真を中心に、診断にぶれがないよう教育が必要ではないか。
 早く終息させる方法は二つあって、一つは、テロとは認識していなくても早く診断をつけること、もう一つは、テロがわかった後素早い反応が取れるかどうかということ。
○ 自衛隊の場合、自衛隊の医師が天然痘についてある程度の知識があれば、普通の天然痘の症状4日目以降であれば、臨床症状で診断は可能。だから、あまり心配しなくても良い。
 薬疹やStevens-Johnson症候群などの重篤な皮膚疾患が天然痘と区別つかないことがあるので、あらかじめ念頭においておく必要がある。
 LC16m8は比較的安全なワクチンであるので、防衛庁・自衛隊では、もう接種をはじめられてはどうか。その場合、ただやるだけでなく、WHO(世界保健機関)などと共同研究などの実施も考慮していく必要があるのではないのか。
以上

 

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