第一回ワクチン等に係る検討会議事概要

 

日時: 平成14年2月18日(月) 14:00~16:10
場所: 防衛庁庁舎A棟11階 第一庁議室
出席者:
委員: 倉田 毅(国立感染症研究所 副所長)
志方俊之(帝京大学法学部 教授)
四ノ宮成祥(防衛医科大学校 微生物学講座 助教授)
白濱龍興(自衛隊中央病院 院長)
仲村英一(財団法人 日本医療保険事務協会 理事長)
堀内 清(千葉県血清研究所 副所長)
ゲストスピーカー:
橋爪 壮(財団法人 日本ポリオ研究所 理事長)
防衛庁: 田中防衛参事官
外山衛生官
陸上幕僚監部古家衛生部長
海上幕僚監部渡邉首席衛生官
航空幕僚監部赤松首席衛生官
議事概要
(1)  冒頭、田中防衛参事官が挨拶した後、本検討会の委員及びゲストスピーカーが紹介され、委員の互選により倉田委員が座長に、仲村委員が副座長に選出された。
(2)  本検討会運営開催要項について、委員の構成、検討事項、守秘に関する事項などが説明された。
(3)  「ワクチン等に係る検討会の公開について(案)」が了承された。
(4)  事務局から配付資料および参考資料が説明された。
(5)  ゲストスピーカーから痘瘡ワクチンの開発の背景等について、委員から痘瘡ワクチンの製造方法、安全性、接種手技などについて、説明があり、その後、防衛庁が取得する痘瘡ワクチンの安全性及び接種について討議が行われた。
(6)  次回の予定は、3月15日を目途とし、事務局で調整することとなった。
討議の概要
(1) 痘瘡ワクチンの開発の背景等
 痘苗というのは、牛の皮膚にウイルスを塗りつけ、5日ほど後に発痘してきたものを引っ掻いて採取したものを乳剤にして作ったものである。
 東京オリンピックの前々年に、もし天然痘が入ってきたらどうするかということで、厚生省から無菌痘苗(乾燥痘苗)ができないかという依頼があった。
 無菌痘苗の開発となれば、組織培養しかないと考え、開発に着手した。
 ウサギ腎臓細胞でLister株を増やすのが一番相性がよいということがわかったので、Lister株で継代することとした。
 弱毒株を作ろうという目的で、高温非増殖性のts (temperature sensitive )株を継代することとした。
 LC16株採取時点で皮膚増殖の弱い株のものが適切ということとなり、そのマーカーとしてポックサイズを使い、LC16m0株より更に3代継代したもののうち、ポックサイズの小さいLC16m8株を選択した。
 作り方は、ウサギ腎臓細胞をトリプシン消化し、ローラボトルに2~3×105mlの濃度で流し込み、37℃で3~4日培養する。次いでタネウイルス液(107~107.5PFU/ml)を接種して30℃で2~3日培養する。CPE(細胞変性効果)が現れた時期に瓶から細胞を回収し、遠心分離する。沈渣細胞に超音波をかけ、細胞を壊して、ウイルスを遊離させる。再度遠心分離し、上清をウイルス原液として採取する。この方法では、ウサギ一頭が牛一頭に相当するくらい収集率は良い。
 LC16株の神経毒性をCV1株、NYBH株、池田株、Lister株、EM63株(ロシアで使用)などと比較したが、DIS株(ワクチンとして使えない弱毒株)と同程度の毒力しか示さず、LC16は極めて神経毒力が弱いことがわかった。因みに、CV1株は、末梢での増殖が悪く弱毒株として米国で用いられていたが、脳内への侵襲性が強く、神経毒性は高いという結果が出ている。
 LC16m8株ワクチンの試験接種成績については、約50,000例で問題となる副作用はみられなかった。また、詳細な臨床的観察を実施できたのは10,578例であった。
 池田株、エクアドル株、Lister株、CV-1株、LC16m0株、LC16m8株について痘苗株別反応を比較した臨床成績において、LC16M8株(接種10,578例)の発熱率は低く(7.7%)、その他の副反応も少なかった。善感率も95.1%を示し、Lister株と殆ど同じであった。
 LC16m8株の原株であるLister株においては、19例のうち一過性の脳波異常を認めたのが26.3%(5例)であったが、LC16m8株では56例のうち一例もなかったという結果から、中枢神経系への障害は極めて少ないと言える。
(2) 製造の概要、安全性、接種手技等
 正式名は、「乾燥細胞培養痘瘡ワクチン」であり、チバワクチンあるいは橋爪ワクチンと言われているのは俗称である。
 薬事法で定める添付文書における記載事項では、被接種者の上腕皮膚を伸展させて、二叉針で接種する。初種痘の場合は5回圧刺し、既接種者は10回圧刺することとしている。
 ワクチンの基となる株が-80℃に保存されていたので、ウイルスに何らかの変異があることは否定できず、所内(千葉県血清研究所)の職員に数十名ほどに接種を実施したところ、種痘研究班のデータとほぼ一致した。
 無菌培養したウサギ(1週間~10日齢)の腎臓細胞浮遊液を作成し、カルチャーローラーボトルに2~3×105/ml入れ数日間培養する。その中に、調整したワーキングシードウイルスを105.5個(PFU)接種し、炭酸ガスを加えたボトルを回転させながら、更に数日間培養する。細胞破壊により大凡109個のウイルスが回収できる。国家検定では、potencyが107.7個以上必要となっているが、所内では乾燥凍結品にする前に、108.6個あるように基準をセットしている。
 凍結乾燥品は、一度開栓するとすぐに効力がなくなってしまうので、注意すること。開栓前であって-20℃くらいで保存したもののpotencyは、数十年という単位で維持されるものと思われる。
 接種は、溶解した液に二叉針をつけ、皮膚に圧刺する。その際に、接種1~3分後、硬く絞った酒精綿で乾燥していないワクチン液を拭き取ること。
 接種後1~2週間の間に、ついたかどうかを医師が判定(発赤や水疱があったことを確認)する必要がある。
 既接種者は、皮膚症状だけで、善感しているかどうか判断できないので、皮膚症状から判断するのはあくまでも初種痘者に限る。
(3) 自由討議
 相当規模のアウトブレイクがあれば、保健所や警察だけでは対処しきれなく、国家全体での対応が必要となるだろう。その場合、国家全体の対応の中で自衛隊の対応としてどのようにすべきなのかはっきりさせておく必要はある。
 大規模なアウトブレイクが起こった場合には、実際に患者のそばまで行く自衛隊員や地域を隔離する隊員など、いろいろな段階があると思うが、それに携わる人全てにワクチンを接種しておくべきなのかを決めておく必要がある。
 接種の対象者が何名くらいいるか、ストックがどの程度いるのか、どういう場合に接種しはじめるのかなどをあらかじめ決めておかないと現場は困る。
 副反応の可能性は、初種痘以外では極希である。初種痘とそれ以外の者をきちんと把握しておくことが必要である。初種痘の者は、局所皮膚反応が起こるが、2週間程度で終わる。その間の訓練などは、控えておくべきかもしれない。追加免疫の場合は、かゆみ程度で終わるので、あまり安静にする必要はないと考える。
 接種にあたっては、注意事項をまとめたビデオのようなものが、今後必要ではないのか。
 職員に接種する際にはインフォームドコンセントが必要。
 自衛隊の衛生活動として考えられるのは、ある一定規模を超えたときの患者の搬送であり、それに携わる隊員からもし感染者が発生したら自衛隊病院に収容するということになるのではないか。
 ワクチン接種を考える上で、何らかのアウトブレイク時のシミュレーションが必要。
 昨年のJournal of Virologyにワクシニアウイルスの遺伝子操作で病原性を変えたという記事に対して、ワクチン接種しておけば、ある程粒子数が増えない限り、組み込んだウイルスの増殖も抑えられるのではないか。
 警察や保健所などが手に負えなくなり自衛隊に依頼があった場合など、天然痘発生のシミュレーションをしておくべきではないか。
以上

 

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