第1回生物兵器への対処に関する懇談会 議事概要


 日時: 平成12年5月18日(木)1400~1600
 場所: 防衛庁A棟13階第2庁議室
 出席者
○委員: 仲村 英一 (財団法人医療情報システム開発センター理事長) [座長]
倉田 毅 (国立感染症研究所副所長) [副座長]
石井 修一  (東洋紡績株式会社主席技術顧問)
相楽 裕子 (横浜市民病院感染症部長)
志方 俊之 (帝京大学教授)
牧野 壮一 (帯広畜産大学助教授)
三瀬 勝利 (国立医薬品食品衛生研究所副所長)
雪下 國雄 (社団法人日本医師会常任理事)
○防衛庁: 防衛庁長官、総括政務次官、政務次官、事務次官、防衛局長、人事教育局長、衛生参事官等
 議事概要
(1)  冒頭に瓦防衛庁長官が挨拶した後、本懇談会の委員が紹介され、委員の互選により仲村委員が座長に、倉田委員が副座長に選出された。
(2)  「生物兵器への対処に関する懇談会の公開について(案)」が了承された。
(3)  事務局から参考資料が説明され、自由討議が行われた。
(4)  次回の予定は、7月中旬を目途として事務局で調整することとなった。
 自由討議の概要
(1)  生物兵器対処の必要性について
 国が行使する力には、①核兵器のように大戦争になることを抑止する「圧倒的な力」、②国際社会がルール違反をした国に対して制裁をするときなど、自国に被害なく相手をたたく「効率的な力」、③海賊への対応など戦闘までは行かないが軍事力を使わなければならない場合に殺傷力のないものを使用する「抑制された力」の3種類に分けられる。生物兵器は弱者の兵器であり、②③の場合に攻撃された側が使用する。
 これまでは、生物兵器は近代戦に役立たないという感覚があったこと等の理由から、自衛隊では生物兵器についてほとんど対応していない。
 文献によれば、生物兵器は化学兵器以上に厄介で、使われる可能性が十分ある。また、遺伝子工学等で通常とは異なる性格のものが開発されるかもしれない。対応策はまだ緒にもついていないのではないか。
(2)  生物兵器対処への取組について
 化学兵器への対処機能を自衛隊の戦力に組み込むまでには、概念研究や技術開発から教育訓練まで幾つものプロセスが必要であり、20年かかる。
 生物兵器への対処能力を高めるには時間がかかることから、手遅れにならないように今から取り組むべきであり、あわせて技術の進歩にも対応していく必要がある。
 参考資料に示されているような疾患は、現在の日本にはほとんど発生しておらず、一般の臨床医は経験したことはない。
 バイオテロや兵器に対応するためには、研究費などの予算が必要である。米国厚生省も3年前から感染症センターを中心に対応している。
 地方衛生研究所や感染症指定医療機関の能力の向上は、生物兵器対処能力にかかる国のインフラストラクチャーとして見ておく必要がある。
 相手に敵意がある場合の対処は自然発生の病気の場合と異なる。その違いを踏まえ、自衛隊ではどういうものを持ち、どういう技術をもって対処すべきかということを念頭において議論を進めてほしい。
 生物兵器対処にかかる装備、技術など自衛隊の現状をまとめてほしい。
(3)  検知について
 検知の際には、生物剤の雲を感知するだけでなく、生物剤の有無を感知するための器材が必要である。
 感染症新法の届出対象疾患の病原体を、人為的に散布されたかどうかわからない状態で、空気や川の水など自然界から検出するのは非常に難しい。
 病原体を扱ったことのある人すべてを把握することはできず、また、短期間で生物兵器を作ることができるため、事前の対応はかなり難しい。
 炭疽病などでは動物の発生が最初に起きるため、動物の検査体制を整備すれば早い時期に検知ができる。
(4)  同定(検査)、診断について
 生物兵器については1~2週間くらいの潜伏期があるため、現在の感染症医療体系の中で対応することとなる。そのため米国政府も厚生省の感染症センターにバイオテロ対策部門をつくり、地方の検査施設の強化と現場の臨床医の教育、訓練を行っている。優先度の高い病原体について、CDCに検体を持ち込まなくても現場で診断できるように、地方の検査機能を充実している。
 生物兵器が撒かれたら、その場で患者が発生するのではなく、時間をおいて移動先で患者が発生する。日常の感染症サーベイランスシステムのなかに、その疾患を検査し、診断する能力が、東京だけでなく地方地方にあるべきである。このため、地方衛生研究所を中心とした検査機能の充実やこのような疾患にかかる臨床医、保健所への教育が必要である。また、防衛庁、厚生省、警察庁の連携が必要である。
 感染症指定医療機関などを中心に、対象となる疾患について医師の関心を高めて早期発見できるような教育が必要である。
 想定される細菌を扱える特定の感染症指定医療機関の数は十分とは言えず、整備が急がれる。また、現場での一般開業医が日常あまり診療したことのない疾患について、診断できるようにしておかなければならない。
 実験室で病原性の高いものを扱う場合の施設・設備と、患者がいて常時汚染状態で対応する場合の施設・設備とは異なっている。患者への対応については、エアロゾルで感染しない場合には、普通の長靴と手袋とマスクとガウンだけで十分である。
 致死性の高い出血熱の臨床検体についても、診断がつくまでは通常P2の施設で検査する。検出された病原体のレベルがP2より高いときには、以後それに対応させる。
 P3の施設は国内に100か所くらいあるが、P4の検査施設は国内にないため、防衛庁に用意してもらうとありがたい。国内1か所で十分である。
(5)  防護について
 生物剤については本当の恐ろしさがわからない。防護服、防護マスクは生物剤に対しても有効であると考えられるが、評価ができていない。
 戦闘中の装備と、生物兵器が使用されている可能性が高いときの装備との両者を考える必要がある。
(6)  予防、治療について
 米国では、国防省とCDCとの人事交流がある。陸軍の研究所では、迅速診断技術の開発・普及、ワクチン開発、薬剤開発をしている。また、普及については、米国厚生省と国防省とが情報交換をしながら一緒に実施している。
 防護、装備、治療方法等のない生物兵器がある。民間が取り組まない治療薬やワクチンの開発について、国が取り組むという考え方が必要である。
 天然痘については、発症者の周囲に対してワクチンを接種する。米国政府では 4200万人分のワクチンの備蓄を始めている。
 薬剤耐性の炭疽菌を作ることは比較的簡単なので、生物兵器の場合には抗生剤がどの程度効くのかわからない。

ページの先頭へ戻る