第3回 防衛調達制度調査検討会 議事概要


日 時:平成10年11月10日(火)11:00~13:30
場 所:防衛庁本館2階第1庁議室
出席者:
(委 員) 川井座長、西口、東海、吉野各委員
(堀田委員及び前田委員は欠席)
(防衛庁) 額賀防衛庁長官、浜田政務次官、秋山事務次官、伊藤官房長代理、及川装備局長、松井管理課長、太田調達実施本部長、野津副本部長(第一部担当)
議事概要
1.  冒頭、座長の開催の挨拶に引き続き、事務局(松井管理課長)から「米国の防衛調達制度について(概要報告)」(資料1)に基づき、米国防衛調達制度の調査結果が報告された。その後、調査に参加した川井座長、西口委員及び吉野委員からも以下のような発言等があった。
【川井座長】
米国においては、1980年代の調達をめぐるスキャンダルを受け、調達制度の改革が行われてきた。米国の防衛調達制度の特色を挙げれば以下の7件である。
 まず、内部的監査の充実が挙げられ、日本と異なり監査システムが多様である。契約締結を担当する機関とは独立して契約の会計・監査を担当する組織がある。
 また、不正防止法が存在している。これらの対象は国防省に限られない。また80年代のスキャンダルを受けた立法ではないが、各種の立法に罰則や損害賠償に関する規定により不正行為の防止が図られている。
 契約における競争原理が強化されており、随意契約の比率が減少している。
 相手方企業における倫理規程が設定されている。これは企業側に強制するわけにはいかないが、日本にとっても有益なものになるのではないか。
 民間企業への接近ということで、国防省の職員を民間企業に常駐させている。これは契約の締結・監査のために設けられた制度である。また、会計処理もなるべく民間企業ものを同じものにしようとする努力をしている。
 契約締結の権限は、陸・海・空の3軍などの下部に委ねられているが、これは契約を締結しやすくするという合理化のためのものである。
 契約担当官等の教育については、契約担当官等の教育のためのコースを設けたカレッジがあり、また職員を大学へ派遣して教育を行っている。
総括して言えば、米国における契約締結権限と監査権限の機能的分離・独立が日本にとって参考になるのではないかと考える。

【西口委員】

 今回の過払い事案は日本特有のものではなく、米国においても同様の不祥事があり、そのための改善策が執られてきている。今回の事案は、カストマーである防衛庁とサプライヤーである企業との間の情報の非対称性が存在し、かつ、防衛庁側の監査能力の著しい欠如が原因である。このようなことを認識せず、現状面だけを見て組織をいじったりしても根本的な解決には至らず、同様な事案は繰り返される。
 防衛調達においてベストプラクティスは存在せず、ベター・オア・ワース・プラクティスがあるのみ。米国防省の調達制度はチェック偏重型であり、膨大な人的資源が投入されている。
「米国防省が作成する政策の半分以上は法律となってしまうが、これは柔軟性を排除してしまうのでお勧めできない」と国防省側からの指摘があった。
防衛庁の調達機構の生産性は決して悪くない。防衛庁の調達活動は米国防省に比べ約2.7倍効率が良いと言え、防衛庁の調達機構は非常にスリムである。しかしながら、契約内容に対する監査能力・機能・要員が決定的に欠如している。
 防衛庁は、行政改革のため、人員を減らしつつ調達制度改革を実施しなければならないが、工夫次第では、効果の高いやり方はいくらでもある。
 経営学者からみた私なりの対策としては、以下のとおり。
 防衛庁はトヨタの「源流方式」を導入すべきである。すなわち、仕事の流れの川下ではなく、川上で問題を発見し、その場で問題を解決し、「不良品」を後工程に回さない仕組みや制度を採用すべきである。具体的には、「源流」により近い段階でのコスト管理・監査を促進するため、DCAAやDLAにおけるDCMCのような独立組織を既存の組織から分離独立させ、監査及び技術評価能力の飛躍的な向上と独立性を確保する。
 競争を導入していく際には、単に頭数だけをそろえる競争ではなく、実効のある競争を模索しなければならない。単純にBiddingすればいいわけではない。
 また、民間の自動車産業においては、常識になっている「フロント・ローディング」方式を採用すべきである。これは、諸々の技術的問題解決や製造コスト削減努力の多くを真の「源流」である設計・開発段階において考案し、前倒し的に実現していくというものである。技術的問題解決等は、競争状態があるときに最も効果的に考案される。米国防省においても、新機種開発の際に、機能横断チームによるフロント・ローディング方式が、個別の開発プロジェクト・ベースで採用され、一定の成果を挙げつつある。防衛庁にとっての模範は、国防省にも一部あるが、むしろフロント・ローディングでは先端を行くトヨタやクライスラーにあると考えられる。
 また、防衛庁スタッフ全員の意識改革が必要である。日本の官僚機構は、何もしないこと、ないしは問題を先送りすることで問題解決を図ってきたように見えるが、今回の不祥事による大きな淘汰圧がある今こそ、国民のコンセンサスの下で、より良い方向に変えていく絶好の機会である。
 いかにして不正を見つけ、契約企業を厳罰に処するという事後処理的な、リアクティブな川下問題処理型の発想ではなく、問題発生予防型のプロアクティブなメカニズムをいかに川上に取り込むかが肝要である。そのためには、契約企業のインセンティブをいかに駆り立てるかを考察すべきである。
 また、契約企業側の倫理意識を高める上で、DIIのような企業側の自主的倫理プログラムは低コストであり、すぐに実行に移すことができるであろうし、また米国における以上に日本でその効果が高いと予想される。
 忘れがちであることだが、防衛庁が供給するサービスの究極のカストマーは国民であることが大原則であり、防衛庁は、そのサービスによってその究極的なカストマーに満足を与えるための一機関に過ぎない。
 改善策を練り実行するに当たっての基本的な心構えとしては、すぐやる、言い訳をしない、60%でもいいから今すぐ始める、の3点が挙げられる。
 経済原則、効率性の観点だけから見れば、武器輸出3原則等の規制を緩和ないし撤廃すれば、競争状況によって、放っておいてもより良い製品がより安くより早く作られるとともに、一部の業者は市場から撤退を余儀なくされる。市場競争における自立的制約こそが、効率の良い防衛調達のためには最も手が掛からず効率的であることを米国防省も認めている。
 結論として、米国の防衛調達制度は大量の人的・組織的資源を投与して、サプライヤー=カストマー間の情報の非対称性から起り得る弊害を、リアクティブに減ずるという目的だけは、非効率ながらも達成している。防衛庁の調達制度は、こうした機能すら欠いており、早急に組織改革を行う必要がある。さらに、民間のベストプラクティスに鑑み、プロアクティブな対処によって先取予防的な措置を講ずる必要があると考える。究極的には、国民の便益を利するために、取引パートナー同士の共生的・共創的関係を培っていくことが要請されると考える。

【吉野委員】
今回は、米国防省の調達制度がどうなっているのか、供給側である企業に対してどういったものを要求するのかについて調査してきたわけですが、もう一つ、注目すべき点としては、米国防省と企業の取引に参加できなかった者、または一般の国民が、取引に対して不服を申請できる場が設けられていることである。したがって、全体としては、政府の調達に関しては、以上の3つの観点から、それぞれに見合う対応が必要であり、日本についても同様である。
事務局等からの米国の防衛調達制度の報告を受け、東海委員より質問がされ、以下のようなやりとりがあった。

【東海委員】
監査官、技術専門家が企業に常駐しているという点は非常に興味があるが、具体的にはどういった方法で実施されているのか。日本で言えば、三菱重工や川崎重工に席を設けて一緒に仕事をしているという形態をとるのか、それとも単に監視だけをしているという形態をとるのか。
また、DCAAの監査官が250社の契約企業に常駐しているとのことであるが、契約企業とはどういうことか。

【松井管理課長】
企業の職員としてではなく、あくまでもDCAA、DCMCの職員として監視をしている。大きいところでは300人のチームを組んで常駐している。つまり、DCMCの事務所を企業内に設置しているというイメージである。防衛調達は何年間契約になるので、ロッキード・マーチンとかボーイングなどのように大きなメーカーは固定化されるので、このようなところには常駐することになる。

【東海委員】
資料1に「経費弁済契約」とはあるが、ある種の契約についてはこれを採用しようと考えているのか。

【松井管理課長】
どのようなものを経費弁済契約にしているかは、今回の調査では十分分からないが、日本では、非常に大きなプロジェクトで契約時にコストがよく分からないものとか、修理契約みたいにいくらかかるかやってみなければ分からないものが対象になっており、米国においても同種のものが対象になっていると考えられます。

2. 事務局から第3回防衛調達改革本部会議の概要を資料2「防衛調達改革本部第3回会議資料」に基づき、説明。
3. 引き続き、事務局から検討課題に関する基本的方向に関する事務局案として資料3「防衛調達制度の改革について」を説明した後、これらについて自由討議がなされた。各委員より以下のようなコメントあり(発言順)。
 企業側の資料を監査することと企業の実際の原価を適正に見積もることとの間には、相関関係が存在する。正確に事実を原価に反映する形で見積を出させれば、企業側は監査を受けることに大きな抵抗はないのではないか。その場合競争企業に対する守秘義務など条件整備が必要だと思われる。【吉野委員】
 民間のベストプラクティスを学ぶため、システマチックに若手の職員を数多く民間企業での研修やセミナーに参加させるべき。【西口委員】
 予定価格算定訓令の見直しについては、企業は多種多様(航空機、船舶、電機、ソフト、メンテナンス等)であり、それぞれの企業に合った仕組みがそれぞれあることから、特定の手法を一つだけ定め、それに従い硬直的に原価計算を行い、企業に押しつけるのは適切ではない。この点は、大きな課題の一つとしてとりあげるべきである。【東海委員】
 内部監査を徹底すべき。米国には外部の監査機関はなく、内部監査を重視しており、かつ、これを契約担当から独立させている。外部の部外有識者に個別の契約を監査させることには無理がある。監査のためのチェックぐらいが適当であろう。【川井座長】
 財務に関する業務については内部監査が機能しないと不祥事が起こりやすいことは過去の歴史が物語っている。まずは内部監査を十分に機能させることが重要である。その上で外部監査については考慮すべきである。外部監査と内部監査の連動を考慮すべき。【東海委員】
 契約条項に倫理規程を置くことを検討する必要がある。【川井座長】
 情報の公開の問題(米国でも原価内訳は公開されていない)についてさらに検討する必要がある。【川井座長】
 民事上の賠償として米国で適用されている3倍返しは日本では適用できない(判例あり)。ただし、契約問題として、違約金額がどれだけ確保できるか、公序良俗に反しない程度で、追求することは可能ではないか。【川井座長】
 供給ソースの多様化の追求については、スペックダウンをして競争契約をしやすくするという方法が一般的ではあるが、米国では更に装備品のそれぞれの段階(開発、調達等)に分けて追求していることを参考にすべきである。段階に分割すれば、供給ソースの多様化を追求しやすくなるのではないか。【吉野委員】
 わが国における公共工事は従来からゼネコンに発注し、工事全体の統括する機能はゼネコンに期待しているが、他方、欧州では工事を細分化し、それぞれを専門工事業者に発注しているため、公共機関内に工事全体を統括する機能がある。欧州の場合を参考にし、防衛庁内に全体を統括(Project Management)できる者(一つの案件をコスト的にも、技術的にも全体を統括できる者)を育成し、受注企業を細分化できれば、随意契約を減少させる道が開かれるのではないか。【東海委員】
 企業側の経理システム、原価計算システムに対するシステム監査については、どのような仕組みを構築するかの問題はあるが、制度化すべき。これは、現在、実施している原価監査まで至らない手法であることから、企業側は歓迎するものと考えられる。【東海委員】
 DCAAでは、3年に1度、企業側のシステム監査を実施している。これを受ければ、個別契約の際のチェック件数を大幅に減少させている。日本も参考にすべきではないか。【吉野委員】
 契約を締結する際に、企業側と対等な立場であるために、防衛庁側の契約能力を高めなければならないなければならない。そのためにも職員に対する教育制度を充実させるべき。【川井座長】
 マクロ的にチェックする対象となる工数については、従来、調達実施本部が使用してきた工数では意味がなく、産業形態は旧来とは全く異なっていることから、現実の生産工程での係数を採用すべきである。【東海委員】
 最小限の内部監査は必要不可欠である。そのケーパビリティーの涵養なくして、第3者による監査機構に頼っても意味がない。【西口委員】
 DCAA、DCMCのように契約企業に技術官を常駐させ、企業側をチェックする体制を整えるべき。(現在、調達実施本部が実施している常駐制度がどうなっているのかの質問あり。)【西口委員】
 官側に当該装備品の源流(製品開発)から下流(納入)まで、機能横断プロジェクト・チームを率いて一貫して責任を持ち掌握するHeavy Weight Managerが必要である。【西口委員】
以上、各委員から出されたコメントを踏まえ、資料3を事務局の方で修正し、第4回会合に提出することとなった。
4. 次回の日程は11月24日(火)16:00~
(了)

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