第2回 防衛調達制度調査検討会 議事概要


日 時:平成10年10月29日(木)14:00~16:00
場 所:防衛庁本館2階第1庁議室
出席者:
(委 員) 川井健、東海幹夫、西口敏宏、堀田力、前田一郎、吉野賢治各委員
(防衛庁) 額賀防衛庁長官、浜田防衛政務次官、秋山事務次官、太田調達実施本部長、 伊藤官房長代理、及川装備局長野津調達実施本部副本部長、松井管理課長
議事概要
 事務局より、「『防衛調達改革本部』について」(資料1)、「調達実施本部設立の経緯」(資料2)及び「調達業務の流れについて」(資料3)に関して説明。その後、質疑応答。

【堀田委員】
後の議論の前提として、内部の監督・検査機関がどうして機能しなかったのか、第三者機関の役割を簡単に教えていただきたい。

【松井管理課長】
例えば、契約第1担当の副本部長は、原価管理、すなわち経費率を作り、電気通信の計算をし、契約もするという意味で、電気通信に関する機能、権限がすべて集中し、誰からもチェックされることがない。このような状況が今回の事件の一つの要因であったと考えられる。

【及川装備局長】
認証官というチェックシステムがあるわけだが、現実には年間で変更も含めると2万件に近い案件があり、認証官1人若しくは数人の部下でチェックするのは、物理的に不可能であるといわざるを得ない。

【堀田委員】
契約の数に比して認証官の数が足りないという指摘があったが、数を増やすことで、第3者委員会を設置する必要がないほど、行き届いたチェック体制ができあがると考えているか。

【及川装備局長】
数が増えれば間違いなくチェック機能を高めることができるが、現実の行政機構として、それが現実的な方策かといれば、不可能に近いのではないか。したがって、それとは異なるチェックのあり方を検討していく必要があると思われる。

【東海委員】
公共工事の発注の場合には、予定価格内であれば、予定価格によって契約を行い、実際原価を問わない。防衛調達においては、当初から予定価格の重みよりもむしろ実際価格が発生した後に原価を確定している事務は何か。

【野津副本部長】
一般的にいえば、戦車や航空機などの武器は一般には製造されていない。新しく作る武器については実際に作ってみなければどれだけ費用がかかるかわからない。船舶の場合、5年間かかることから途中で原価監査を行うこととなる。

【吉野委員】
実際に契約を締結するときに、監査付でない一般確定契約の場合、企業側から提出される資料をどのようにチェックするのか。企業側の今後の計画をベースにして経費率等を算定するのか、過去の実績を根拠に計算するのかどちらなのか。

【野津副本部長】
経費率については、前年度の有価証券報告書等に出ている数値をベースに算定している。実績に基づいて行っている。過去に実績がない場合は、類似の契約なり当該企業が他の契約相手方とどのような契約を行っているのか等を把握することで対応している。

【前田委員】
企業側から提出される見積資料を入手しなければ予定価格を決定することはできないのか。

【野津副本部長】
毎年購入しているものであれば、こちらにもそれなりのデータの蓄積があるのでそれに基づいて計算できるが、新規ものについては、参考になるものを集めて計算している。

(4)  続いて、事務局より「部外有識者による監視制度の導入に係る検討のポイント」(資料4)、「各機関の契約をとりまとめ、マクロ的にチェックするための体制の整備」(資料5)及び「各国の調達機関について」(資料6)を説明。その後、以下のようなコメント等が各委員より出された。

【東海委員】
加工費率に関連して、資料5のP.2によれば、工数という概念で加工費率を算定するということですが、加工費率というものが契約の中で非常に大きな意味を持っているものと考えられる。なぜなら、加工費率は、一般管理費率、利子率、あるいは利益率等を計算する土台となっているわけであり、金額を少し多く見せるという意図が働くとすれば、加工費率を操作したいと考えるのは当然のインセンティブ、別な意味でのインセンティブである。
つまり、製造原価に一般管理費率を掛けるので、その土台である加工費率が大きな問題を持つものと考られる。同様に、利子率を掛けるときには、総原価に利子率を掛けるので加工費率のところが大きな意味を持ち、また、利益率を計算するときには、総原価に利益率を掛け合わせるので、加工費率が大きな意味を持つものと考えられる。
そして、その加工費率を算定する際に、直接作業時間、つまり人間の作業している時間をベースにしている。この度のマクロチェックあるいは有識者の監視制度の項目の中に、経費率の設定やら工数の設定まで監視するとあるが、今後も、防衛庁は、受注先である一般企業が人間の作業時間をベースにした生産システムに沿っているという前提で、この原価計算の仕組みを考えていくのか。
現在の生産システムの実態を考えたときに、こういった製造原価の分類の仕方というものは、もう約15年ぐらい前に終わっている。米国においても、CAS(cost acounting standard)というものがあり、それに基づいて防衛調達品の原価の算定の基礎が作られていると聞いている。現実の生産システムをみれば、次第に工場の中に人がいなくなってきており、製造原価の分類の中の直接労務費というのは本当に微々たるものとなっている。したがって、加工費を計算する際に、価格付けの最大の根拠として、これまで通り、直接作業時間方式若しくは工数方式を採用するのがよいのかどうか疑問があり、この際検討の対象にすべきであると考える。

【及川装備局長】
第1回で検討6項目をお願いした中に、まさに予定価格訓令が今のやり方でよいのかというのがあり、是非御議論していただきたいと思っておりまして、貴重な意見であるので是非参考にさせていただきたい。

【西口委員】
只今の東海委員の話に全く賛成であり、民間の電機、自動車の下請けあるいはアウトソーシング価格の中で、労務費に当たるものは非常に少なく、例えば、自動車部品のうち、ワイヤーハーネスという電子線はどうしても機械化ができず、レイバー・コストが30~40%であるが、自動車部品一般については、およそ5%から10%程度である。また、電機製品一般でも、PCBボードのアッセンブリー等の手作業の部分を除いては、こういった労務費を主体とした計算というのは現状からあまりにも乖離している。
それから、組織面で一つ気づいたことは、先ほど装備局長からも御指摘ありましたように、1人の認証官で1年間に取り扱う件数は1万件であって、変更等も含めると計2万件であり、これは天文学的な数字である。米国では、国防兵站庁(DLA)には5万人、国防契約監査庁(DCAA)には4,400名うち公認会計士が1,000名以上含まれている。これは膨大な数です。調本だけで1,100名、各自衛隊がどれくらいいるかわからないが、日本の防衛費の7倍である以上に開きが出ている。国防費が日本と同じくらいの英国でも、英国防省調達本部だけで5,000名がいる。そうすると、おそらく監査あるいは先ほどの認証だけをとっても、件数あるいは金額に対して、天文学的数字で1人の人間に任されていないだろうし、権限も1人の人間に集中していないだろう。このような数字は重要である。
ただし、一つ言えるのは、ただ単に人間が多ければ良いのかというとそうではない。例えば民間の自動車の場合、12年前私が調べたところ、米国のゼネラル・モーターズの生産量はトヨタの2倍近くであった(GM:600万台、トヨタ:360万台)にもかかわらず、トヨタの調達関係の人員はGMの約20分の1(GM:6,000人、トヨタ:330名)であった。それにもかかわらず、品質や生産性等あらゆる競争力の指標は、トヨタの方が圧倒的に優れていた。したがって、単なる人数あわせだけで比較することはできず、逆に言うと、確かに一人で1万件というのは、非常に大きな数字であるが、米国防省や英国を綿密に調べて、そしてトヨタなどのベストプラクティスの良いところを取り入れれば、非常に少ない人数でも米国防省を凌駕するようなコントロール機能を組織にビルト・インすることは可能である。これは理論的にも可能であり、試行錯誤していけば優れた調達実施システムができるであろう。

【堀田委員】
前提問題と監視制度に関する意見の両方を申し上げる。
まず、前提として、結局、今回の事件を契機に何を反省するかというとなるべく少ない費用で有効に防衛するということであるが、そういう観点で考えると非常に難しい防衛問題に当たらざるを得ない。例えば、安い経費でということだけを考えると、なるべく競争入札ということになるが、それに対しては、防衛全体の観点から、外国からの調達は、安定供給という面で、国産の方が望ましいという考えもあろうし、こういうことになると当然に費用は高くなってくる。そこでどのように踏み切るかということは、極めて高度な防衛政策の問題である。国内調達にするにしても、民生規格をどの程度採用するのか、これもまた防衛政策の一番基本的なところにあるわけで、防衛上の秘密を非常に強調すれば、費用は高くならざるを得ない。それをどのくらいのところで選択するのかということは、本検討会では決めることはできず、国民全体で決めてもらわなくてはならない問題である。今までのやり方というのは、第一次、第二次世界大戦で周りが皆敵であったという状態の中で考えられたという背景が色濃く残っていると思うが、冷戦が崩壊した新しい事態の中で、改めて考えて直していかなくてはならない。それが、競争入札か随意契約かという問題にも関わってくるし、民生規格の問題にも関わってくる。そういった基本的問題については、国会でも決められる程度に、少なくとも情報を提供するという作業が必要ではないか。防衛のあり方、調達のあり方、それにかかる費用、競争入札にした場合にどれだけ安くなるのか、しかしどういった問題が生じるのかといった、そういう具体的な問題を全部洗い出して、もう一度、今の新しい事態の中で、問いなおすという作業が前提として必要なのではないかと考える。
しかしながら、このようなことを前提としたとしても、随意契約を皆無にすることはおそらく出来ないであろうから、その場合にどのようなチェック機能を働かすかという問題がどうしても残るので、その対応策の一つとして、部外有識者による監視制度を設置するという発想が出てくることは理解できる。しかし、第3者委員会を作ったとしても、それが実際、契約の全てを操作することなど出来ないし、米国並の人数を第3者委員会につけるなどということは、行政制度としては考えられないということなので、別の切り口からの検査、調査を考えなくてはならない。第3者委員会が自ら検査、調査するということは大変難しい。そうなると、第3者委員会が何をやるかと言えば、一つは、内での検査、監査、調査のやり方について、それが良いのかどうかということを常に調べることである。二つ目は、検査、調査するシステムをチェックすることであり、例えば、人員をどのくらいの体制にするのか、それは認証官で良いのか、他の者で良いのか、外国の制度をどのように取り入れるのか等といったシステムについての検査、調査である。さらに、この第3者委員会はそういった調査をするにしても、独立性がなくてはならない。委員会自体の独立性を保証するためには、相応の措置が必要であり、例えば、審議会等の法的措置が必要であろう。もう一つは委員会を補助する者の独立性である。検査のやり方、システムをチェックするということになると、何名かで実施できるわけがないので、事務当局を呼んで聞くことになるが、事務当局は自分で話したくないことは話さないであろうから、結局、情報が上がって来ず、いかに委員会が独立していても判断できない。そこでいかに独立した有能な補助者を活用できるかといった問題が残る。例えば、秘密保持の問題はあるだろうが、民間に委託するなど、そういうことも考慮した上で、こういった点を考えるのが重要であると思う。

【西口委員】
先ほどの堀田先生の話に私は全面的に賛成である。現象面だけで問題解決を図ろうとしても、必ず同じようなことが起き、源流方式で根本に立ち返らないと何度でも同じことが生じてしまう。少なくとも、仮に今の調本をほとんど変えずに、部外有識者による監視制度を設置した場合、99.9%の確率で同じような問題がいくらでも生じかねない。この部外者による監視制度とは、問題が起こった後に、調本以外で監視し、締め付けを強くするという発想に基づいているので、根本には立ち返っていない。
米国は日本の調達額の7倍でしかないが、DCAAだけでも1,000名以上のプロパーの公認会計士を抱えており、それ以上にDLAに5万人がいて、その他に陸、海、空、海兵隊に専任の調達要員がいる。さらにもう一つ、競争による契約が、契約件数で37%、調達額で57%を占めている。これに対して日本の随契に当たるものが、調達件数で3.6%、調達額で約30%しかない。したがって、米国と同じように、第3者的な監視制度を導入して同じようなことを起こさないようにしようとしても構造的に無理がある。どんな優秀な人間でも無理である。なぜなら、大本の原因に立ち返っていないからである。
大本の原因にもいろいろあるが、テクニカルなものとしては、工数の計算自体が労務費を主体とするやり方が挙げられる。これは30、40年前の電機部品のアッセンブリーの手作業のものであり、現在では、実態とかけ離れた計算方法である。先程、東海委員から指摘のあったCASなどの実態にあったテクニックがあるはずである。
もう一つは、先程トヨタとGMの話をしたが、12年前にGMが600万台を生産するのに調達要員が6,000人必要だったのに対し、なぜ、トヨタが360万台を生産するのに330人で済んだか、また、なぜ、品質、生産性、コスト等の面で、トヨタの方が圧倒的に優れていたかと言えば、コストを下げる努力、品質を高める努力、生産性を高める努力を、サプライヤーを取り込んで製品を企画するという最初の段階で実施しているからである。要するに、コストの削減、作りやすい部品の製造(manufacturability)等といった問題を、製品を企画する最初の段階で解決している。トヨタでは、諸々の問題が4年間の開発の中で、10年前までは、開発の最後の1年で、二次下請を含めて問題を解決しており、解決済みのものを新製品としていた。したがって、商品化される段階では、問題が解決されているので、不良品は発生しない。ジョブ・ワンと呼ばれる新製品販売開始までに4年間かかり、開発1年目では、問題は2割しか解決されていなく、最後の1年までに8割が解決されているというのが、10年前までのトヨタの姿であった。しかしながら、現在では、フロント・ローディングによって、3年前の時点ですでに8割が解決されており、理論的には1年半で開発できるようになっており、2年前で商品として販売できる。トヨタでは、源流方式を可能にするため、品質管理、生産管理、設計、サプライヤーのノウハウを横断機能的プロジェクトチームに組み込んで対応している。このように、何か斬新な発想がない限り、このような改革は実現されない。
第3者による監視制度の導入については、内部でできなかったら外部に丸投げしてしまおうとする考えがあるようだが、これには非常に多くの人員が必要となり、多大な無駄が生じる。カストマーである防衛庁がサプライヤーが悪いことをしたから懲罰するのではなく、サプライヤーと一緒になって安くて良いものは開発できないかという発想が必要である。
英国では、1980年代半ば以降大改革を行い、競争原理の導入を進め、弾薬で50%、トナーで30%のコストダウンがなされ、年間約1億ポンドのコスト削減を実現した。競争による契約も、近年31%から81%に増加し、一方、コスト・プラス・コントラクト(定義に問題があるが)は現在1%になっている。日本と同じような規模の調達を行っている英国では、5,000名でこのような競争的な調達業務を実施しており、調達制度のリフォームが既になされている。現状では、90%が英国企業からの調達であり、このことは英国企業に国際競争力があることを意味しているらしい。
必ずしも、米国、英国のやり方が正しいとは限らないが、外部に頼る前に、防衛庁内部で早急に大きな改革をすることが必要である。そしてそのノウハウは、一歩外に出れば、日本の場合、自動車、電機会社等、すぐそばにある。防衛庁の調達制度は非常に効率のいい、国民のコンセンサスを得られるやり方で改善できるのではないかと考えている。

【秋山事務次官】
技本では、2年前から取得改革委員会の議論の中で、武器の開発のコストダウンには開発段階が重要となるとしている。取得改革委員会での一つの成果は、開発段階でコスト意識を持つということであり、トヨタとはレベルが違うかもしれないが、現在でも技本の方で実際に開発するときには民間企業と協議している。

【前田委員】
FSXの時には、完成段階では、予定価格よりもかなり価格が上がったんではないか。

【秋山事務次官】
FSX,F-2の場合は、ケーススタディとしては複雑であり、日米共同開発なので別の要素がいろいろとあり、あまり良い例ではないと思うが、いずれにせよ、一般的に、開発段階でコスト意識を持つということは重要なことであると思う。

【前田委員】
例えば、仮に地雷探知機を個人が発明したときには、防衛庁はどのように対応するのか。

【及川装備局長】
装備品として有効になるわけだから、個人であれ会社であれ、我々としてはその実用化に向けて予算手当をし、調達の手続に入るわけである。

【前田委員】
既存の防衛産業があることによって、新規参入は非常に困難ではないのか。

【及川装備局長】
特に通信の分野などは次々と相当数の企業が参入してきたのが、ここ10年の歴史ではなかったかと思う。

【堀田委員】
改革本部に検討していただきたい点を2点申し上げたい。一つは、内部のチェック機能をきちんと働かせるための体制作りとして、内部の不十分なチェックのため不祥事が起きた場合には、それを看過していた役人は責任をとるという処分があるべきで、その反対に、きちんとやっている者には昇進の道を開くといった内部チェック機能についての特別な人事制度を設ける必要がある。
もう一つは、有効な防衛のために節約した分だけ防衛庁が組織としても良くなるような仕組みを考えていくべきではないかと考える。

【東海委員】
部外有識者による監視制度について一言、申し上げたい。西口委員が指摘されたようにこの問題の本質をそらそうとする意図があって、このような制度を設けようとするのであれば、私もそのとおりだと思うが、内部的な改革をやることを前提とした上で、部外有識者による監視制度は、必要なファクターの一つであると思う。防衛問題全体の透明性を高めていく、アカンタビリティをしっかり確保していくといったことに対して、内部的にクロウズすることを許してきたということがなかったか反省する必要があると考える。また、いろいろな国の行動に対する外部の評価を考えることは当然のことであり、このような仕組みを検討することは、ひとつの道であると考えている。しかしながら、資料にある外部の人間による評価についての具体的な業務をみると、ここまで詳細なことを外部の者に委託するのは困難なことであり、むしろ、制度的な評価、システム的な評価をしてもらう仕組みを検討することがよいのではないかと思う。

【及川装備局長】
資料にあるのは、考えられる業務を網羅したものであるので、これを全て外部に任せるというわけではない。

【川井座長】
監視制度の導入に関しては、内部体制の改革を前提として、内容的には監視のあり方を当検討会で議論を進める必要がある。
マクロ的チェックについては、事務局の方で今日のまとめをしていただき、次回にとりまとめをしたいと思う。
それでは、次回までに、今までの議論を踏まえ、事務局の方でたたき台を作成してもらい、これを基に議論をしていきたいと考えております。
今、申し上げたことについて何かご意見等ありますでしょうか。また、最後に何か一言ありましたらお願いします。

【西口委員】
PunishmentからIncentiveへの大まかな方向付けを検討する必要があり、これがなされない限り再び同じ問題が必ず起こると言える。

(5)  事務局より、11月1日から同月5日までの川井座長、西口委員及び吉野委員による米国の防衛調達制度の調査について説明。
その後、次回の日程調整の結果、次回は11月10日(火)の予定。

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