第1回 防衛調達制度調査検討会 議事概要


日 時:平成10年9月24日(木)14:00~16:30
場 所:防衛庁本館2階第1庁議室
出席者:
(委 員) 川井健、西口敏宏、前田一郎、吉野賢治各委員
(東海委員及び堀田委員は欠席)
(防衛庁) 額賀防衛庁長官(途中入室)、太田調達実施本部長、及川装備局長(途中退室)、松井管理課長
議事概要
 挨拶(及川装備局長)
 委員紹介、座長の互選
 開催趣旨及び本検討会の公開について(松井管理課長)
 検討会の検討課題等(資料5から資料8に基づき、松井管理課長が説明)
 自由討議

【額賀防衛庁長官】
お忙しいところ、お集まり頂いてありがとうございます。実は1時から本会議があり、2+2、日米首脳会談についての質疑がございましたものですから、大変遅れまして恐縮でございます。今日は、防衛調達制度の調査委員会の先生方においでいただきまして、ご検討いただいており、心からお礼申し上げる次第でございます。
私は小渕政権発足とともに、防衛庁長官に拝命されました。そして今日で55日目でございます。まず、防衛庁長官になりまして、かねてから懸案事項でありましたのが、装備品による調達の制度でございます。世間に表面化しましてから、1年近くになりますが、まだ、内部調査の結果も出ていませんし、また東京地検の強制捜査がどうなるのかどうかということもありました。そういう中で私はなんとしても防衛庁の内部で自助能力を発揮していく意味でも、きちんと調査をして再びこういうことが起こらないようにしなければならないということを考えまして、即座に秋山次官にこの調達制度調査委員会を設けていろいろと経緯を調べて問題点を洗いざらいにして、そして対策をうち立てるということが必要であるという話をしました。こうした経緯で、本日の第1回目の会合になったのだと思っております。
私はもう一つ、背景にはやはり自衛隊の再就職の問題があると思っております。この問題についても、調査委員会を設けまして、これも将来的に透明性をもってルール化するにはどうしたらよいかということを検討をしていただくということで、同じように調査委員会を近々立ち上げさせていただきたいと考えております。なぜならば、今、防衛省・自衛隊の行政の在り方が問われているというふうに認識をしておりまして、これについて深く先生方に率直に議論していただき、そして、将来の日本の安全保障、日本の防衛庁の在り方、自衛隊の在り方等々も考えながら、すばらしい智恵を絞っていただきたいという思いがするわけでございます。
調達実施本部というものは、昭和29年の防衛庁発足当時にできあがったものであります。44年間同じような組織、システムでやってきておりますけれども、44年経ってやはり問題があったことが調べ出されたわけですから、思い切って膿を出して、そして今後2度と起こらないためにはどうしたらよいか、防衛産業の在り方、それから調達の仕組み、チェック・アンド・バランス、様々な観点から先生方のご議論を頂いて国民の信頼を取り戻さなければならないというふうに思っております。そのためには、これまでの歴史的な経緯、それから海外では調達制度はどうなっているのか、そういうことも考えながら、そして、また日本の仕組みというものがあるかと思いますけれども、総合的に考えた上で、是非、先生方にすばらしい考え方をお示し頂ければありがたいと思っております。防衛庁の安全保障の在り方について、我々は国民の皆様から信頼をされ、希望の持てる仕組みを作っていかなければならないというふうに思っております。どうぞ、先生方の双肩には中興の改革という問題意識を持って取り組んでいただきたい。私も先頭切って、この問題に取り組みまして国民の信頼を回復するための制度改革、防衛庁改革に取り組んでいきたく、先生達の情熱の込めたご議論を期待いたしまして、御挨拶に変えさせていただきます。

【川井座長】
ただいま、大臣からの御発言もありましたように、率直に意見交換をしまして、今後の在り方につきまして、透明性及び公平性を確保する努力をしたいと思います。
とりあえず、ただいまの説明のうち、資料の5、資料の6、資料の7というのはこれまでの経過、あるいは事実関係でありますので、資料5、6、7につきまして、御質問がありましたら、お出しいただいた上で、資料8の検討課題について時間のゆるす限り、意見交換をしたいと思います。
まずは、資料5、6、7につきまして御質問等ありましたら、お出しいただければと思います。

【吉野委員】
「特別調査を実施した」とのことですが、どういう経緯で、どのような形で、調査対象を選ばれてどなたがどのように調査をなさったのかを教えてください。

【松井管理課長】
これまでの我々の調査では、以下のように聞いております。日本工機の案件が会計検査院から指摘がありまして、それを受けて調達実施本部のほうでチェックをしたということです。
その後、東洋通信機の場合は、調達実施本部の、今回逮捕されました上野元副本部長が、その年の契約を見まして、つまり日本工機事案であったのでチェックしてみると、どうもこれはおかしい、ということで調べに入ったということです。
それから藤倉航装はやはり会計検査院からの指摘を受けて、ニコー電子は調達実施本部の調査によって判明しました。
それ以降、1つの対策といたしまして、今年の2月からで、制度調査というのを行っています。これは、同種の案件が他にないかチェックするということで、防衛庁と一般確定契約を結んでいる約300社の企業を順番に調査しています。この調査は、あくまでも強制力はなく、したがって、相手の了解を得て、かつ、外部にもその企業に調査に入っているということは言わない、という約束で実施しております。その調査の過程で、今年の2月末位に、日本航空電子工業という第5番目の会社が見つかりまして、現在、どの程度の過払額になるか調査中であります。

【前田委員】
これは、NECの出資(した会社)ですか。

【松井管理課長】
東洋通信機は39%、ニコー電子は100%、日本航空電子も50%でいずれもNECの子会社です。

【川井座長】
ほかに資料5、6、7につきまして御質問等はありませんか。

【西口委員】
契約額が2兆円で、契約件数が1万件の業務を防衛庁では何名で担当されているのですか。

【太田調達実施本部長】
調達実施本部のほうからお答えいたしますと、件数としておよそ1万件の調達が1年間にあります。これに当たっている職員は、調達実施本部で千名強でございまして、職員の構成はシビリアンの他に品質の監督・検査等にあたりますユニフォームの自衛官もおります。ほぼ半々、シビリアンのほうが少し多いといった構成で、六本木の調達実施本部と全国5ケ所に支部があり、支部では、主に監督・検査等の業務を実施しております。
契約そのものの業務は、中央の本部の方で行っております。

【吉野委員】
合計約1万件の契約の中で直接、外国から輸入しているものはどれくらいのウェイトを占めているのですか。

【宮下調達補給室先任】
FMSと一般輸入を含めまして中央調達で1,032億円ございます。
件数は細かいものもあり、不明でございます。金額で1,032億円、1兆3,200億円のうち1,032億円で比率は7.8%でございます。

【太田調達実施本部長】
FMSというのはForeign Military Sales、これは米国政府を通じて輸入するものであり、一般輸入とは商社を通じて輸入するものであります。

【宮下調達補給室先任】
ちなみに両者に分けますと、FMSが339億円、一般輸入が694億円です。
これは、平成9年度の中央調達のみの数字でございます。

【松井管理課長】
アメリカの武器輸出管理法があり、高度な装備品については、国防省のルートを通じましてFMSで調達します。これはある意味でアメリカの軍が持つものと同じ性能の装備品を持つということです。そして少しグレードが落ちるものは、商社が一般輸入しております。

【川井座長】
過去に遡って調査する場合に会社関係の資料の保存期間の5年の根拠はあるのでしょうか。

【松井管理課長】
税法等で確か5年になっております。

【吉野委員】
我々の場合は、通年毎年監査しますから、書類の保存期間はあまり問題になりません。確か税法上の帳簿書類は7年間と5年間保存だったと思います。この場合は税法上の5年ということに従ったのではないかと思います。

【川井座長】
次に資料8が事務局で審議されました検討課題でございます。これ以外にも検討課題があろうかと思いますが、本日のところ自由討議ということで、自由に御発言いただければと思います。

【吉野委員】
最近、金融の分野でも、管理システム、リスク管理などについて、日本の制度は甘いといっ議論がなされ、結局は、欧米の基準を参考にしたらどうかと言われております。私はもともとアメリカ基準の監査をずっとやってましたものですが、日本の管理制度は基本的には性善説という前提でその枠組みができていることが多いと感じます。
例えば、以前、企業の財務書類を監査した時には、自分が正しく処理したものをなぜ第三者が監査するのか、信用しないのかという感覚を持った人が多かったのですが、最近、ようやく第三者がチェックして初めて信頼性が得られるという考え方に変わりつつあります。
やはり、日本以外の国では性悪説と言いますか、内部監査その他チェックする体制があってはじめて組織が適正に運営されるといった前提に立って、多くの組織がつくられています。
ですから、私はそういう意味では、米国の防衛産業と調達する側の関係は、日本以上に金額も大きいことですし、また、米国は、性悪説が前提といいますか、何らかの形で牽制をする、そのような枠組みに基づいている国ですから、米国における調達制度がどのように透明性、公正性を確保しているのかを調査するのがよいのではないかと思います。
最近の経営管理の改善手法として、よくベンチマークシステムが採られています。これは手本を選んで、それと自らを比較してどのように直していくか検討する。そのような形の手法で、昭和29年以降の日本の現行制度とアメリカの調達制度とがどのような点で、監督、管理に関して違うのか検討して、透明性、公正性だけでなく経済性を含めて、日本にとって意味のあるものを取り入れるという方法が有効だと思います。
最近は、いろいろな分野の制度の改善について、一般的な皆さんは、制度の担当の方々が考えられた改善案は、なかなか信用されないですね。アメリカの基準ではどうだとか、ワ-ルドスタンダードではどうだとか、そういうことが必ず言われますね。
ですから、この際、米国の制度を調査し、そこにあるチェックポイントを明確にし、我が国の制度化することがひとつの解決への方法だと思います。

【川井座長】
日本の今までのやり方の本質的な処理の仕方について、性善説かどうかという御指摘もありましたが、外国、特にアメリカの調達制度と比較してみてはどうかという御指摘がありましたけれども、この点、事務局のほうでは何か外国、特にアメリカの調達制度についての検討資料をお持ちなんでしょうか。

【松井管理課長】
ある程度はありますけれども、今、新たに問題意識を持って調べてみる必要があるかもしれません。その点は、別途調査をしたいと思います。

【川井座長】
やはり、できるだけ広く、公正的に検討するためには、外部との比較というものが重要となってくると思いますので、現在のところ、分かっている範囲で結構ですので、事務局から資料を出して頂くこととし、今後、調べてもらうということにしたいと思います。

【額賀防衛庁長官】
事務局の方で、アメリカには駐在武官もいますし、在米日本大使館に頼んでデータを取り寄せてもらってください。あるいは、専門家が行って勉強してきたらよい。

【太田調達実施本部長】
調本の職員もワシントンにおりますので、それを動員してやります。

【川井座長】
知りたい点を整理して明確にしてから、調査する必要があります。そういう方向で対応したいと思います。

【前田委員】
アメリカを調査するのは良いことと思います。
ここに検討課題として出てない全く違う観点から言わせてもらいますと、防衛庁自身で努力してもらいたいのは、調本の人事管理の問題だと思います。
どのように制度を整備しても、今度の問題は属人的なもので、逮捕された上野さんを中心とする調本のベテランは、それがゆえに企業との癒着が生じてしまいます。人事は、一方で専門性を要求されるわけですから、いきおい同じポジションに長いこといる、というようなきらいも否めないわけです。それは一方で企業との癒着を生む源泉になる。この点で、調本の人事管理を考え直す必要があるのではないかと思います。現状は内局とは相当違うのかどうか。ベテランが長い間、居座る率が多いとすれば問題であると思います。これだけ癒着、癒着と言われてるわけですから、その点をどう考えるかが必要なのではないでしょうか。

【太田調達実施本部長】
一般的に申しますと、ソースは通常の公務員を採用するのと同じで、ユニフォームとシビリアンと説明しますと、シビリアンは防衛庁の試験を受けて入ってきます。そこで、調本の職員として出身母体が決まります。何年かのサイクルで、例えば、技術研究本部だとか、内局だとかに異動します。ただ、出身母体は調本ですから、いずれ戻ってきて、最終的には調本で退職していく場合が多いということが言えます。
ユニフォームの場合、調本に派遣される者は、もともと所属する陸海空自衛隊から派遣されてきます。調本に派遣される場合は、品質の管理、受領の検査が主体の任務でございまして、支部に配属されております。また、本部にも管理部門がありますので、本部にもおります。ただ、1つのポストにずっといるわけではなく、自衛隊との間で異動します。その時に専門性が要求されますので、自衛隊の補給処等との間で異動するということが多く、専門性が要求されるためベテランでなくてはならないと言えます。
しかしながら、契約業務をずっと担当してますと癒着が起きる温床になりやすいということもいえますので、その点も工夫しなくてはならないと思います。

【前田委員】
先程、大臣が、天下りについては別の機会で検討されると言われていましたが、公務員制度そのものを国全体で考えなければ意味がなく、防衛庁だけで検討しても限界があると思います。これだけ長寿社会になっているのに公務員は旧態依然とした定年制があり、上が早く辞めれば下も早く辞めなければならない。ことに自衛隊は早く辞めるということであり、国全体で考えないといけないのではないか。退職金が安い、再就職先もあまり良いところがない、ことに防衛庁は後発の官庁という弱みもあります。このため、力を持っている人が頼られるということが生じてしまう。これは非常に大きな問題だと思います。

【額賀防衛庁長官】
これは前田先生のおっしゃるとおりです。公務員制度の在り方というのを内閣で検討しています。防衛庁職員の場合は、特別に若い時に辞めさせられていく場合が多いわけですから、そのような問題意識を持って、ボールを投げる意味で、問題提起をしたいと思います。

【川井座長】
確かに、人事的な問題が大きく影響していると思いますので、これも今度の検討課題にしたいと思います。

【西口委員】
私は、経営学者としてアウトソーシングを専門として、特に自動車、電機に関する国際規格の市場調査をやってきたわけですが、今回初めて、ここまで詳しく資料等見させていただき、驚くことが幾つかありました。
日本の自動車は世界に冠たるものですので、ベストプラクティスの範型がほとんど日本の自動車に集中している。これは調達方式もそうだし、製造方式もそうだし、労務管理もそうです。これを長年研究してきた者の目から見ますと、トヨタさんがよく言う哲学の中に源流方式というのがありまして、物事は問題が起きた場合に、その現象面だけで手当するのではなく、なぜ、なぜ、なぜを繰り返してその源流、おおもとの根本的な原因を見つけ出して、それを解決するやり方です。同じ同業者の中でも、パフォーマンスが非常に悪いところというのは、現象面だけを手当てして、その場しのぎでは収まるんですが、もともとの根本原因が絶たれていないため、必ず同じ問題が2度、3度、4度と起こって、ますます混乱します。問題が起こった場合は、徹底的に原因を追求して根本的なところから見直す必要があります。現象面だけであれば、1日で終わるところ、半年かかるかも10年かかるかもしれませんが、それをやる過程で源流の元々のところを解決すれば、原理的には2度と起こらないわけです。
防衛庁は、サプライヤーからモノを供給してもらって、金を払ってモノを買うカスタマーです。その場合に、今私共の手元に配られた資料には、企業側提出資料に基づき、信義則うんぬんとありますが、これは要するに、カスタマーが1社でサプライヤーが1社であって、カスタマー側にチェックする能力が存在しないと認めていることであり、将来もそれをチェックしようとする感じすら見られない。
ここでは、問題が起こってしまったら、後でどうするか、ということだけ一生懸命考えている。企業側が多く資料を持っており、それをチェックする体制をより強化しようとしているというように、問題が起こってしまったあとどうするか、現象が既に発生してしまったらどうするか、そこだけを集中して考えられているようです。これでは、官庁であろうが、民間であろうが、あらゆる組織でコストだけかかって実益が少ない最悪なケースに近い。一番正しい源流方式は、まず、問題自体が起こらないようにするにはどうするかを考えることです。そのためには、組織的、制度的に、質的にも、量的にも少なくとも今よりは遙かに意味のある形でカスタマーである防衛庁側に提出されてきた資料あるいは現物を分析して読みとって、その時点で不備を指摘できるような能力が最低限備わってなければならない。これが殆どない。それが前提となっていて、これを将来変えようともしないで、問題が起こったあと、罰則的にどうするか、そういう規制でもって締め上げようとする。これでは誰も勝つ者がいない。お互いに余計な時間ばかりかかり、コストが高くなって複雑性のみが高まってします。
こうした現象は、機能する市場がある、特に日本の自動車とか電機というところではあまり見られません。例えば、市場価格より安いものをサプライヤーとカスタマーが共同開発します。まず、サプライヤーとカスタマーが最も根本的な時点から、設計図ができる前から、コンセプトの段階からコスト、リードタイムを半減して、しかも2倍の効果をあげるにはどうしたらよいか、そこから考えている。実際4,5年かかりますけれども、新型車を出す、それも市場投入の数年前に2次下請けまでも含んでパイロットランをやって、物として流しても心配ない、というところまでやっている。したがって、業界用語でジョグ・ワンと言っていますけど、新車の発表後は、問題が起こりようがないわけです。
ところが、欧米の場合はそういうことを長年やっておりませんでした。特に、アメリカの場合は、ビック3しかありませんでしたから、非常に肥大化して、一応入札はやってましたけれども、サプライヤーとカスタマーが共同開発することがなくて、問題が行ったら、そのサプライヤーだけを懲らしめようとなる。バーゲニング・パワーを利用するために、ひとつの部品に対して入札制度で4社も5社も雇って、最も安い値をつけたところを機械的に雇って、1年だけ契約して長年やってきたわけです。これでは、サプライヤーの側からすると、インセンティブはありません。そこで最も粗悪のものに入札の時点で最も安い価格を名目上つけて、それで商売を取って、あとで値段をつり上げるという慣習が横行していました。こうして30年たってみると、日本車に比較して欠陥の巣窟のような悪い物ができる。こういった制度上のまずさに10数年前アメリカのカーメーカーが気が付きました。これではいけないということで、状況は違いますが非常に危機意識がありました。1986年から89年にかけて私は、MITにいまして、5年間で5億円という膨大な国際自動車産業研究プロジェクトで、MITが中心になり、産官学共同でベンチマーキング、世界のベストプラクティスとは何か、これを規定してそれを数値化して、例えば何%まではどういう要素によって説明できるかどうかを研究しました。あらゆるものをAdjustした結果、やはり日本の平均点のほうがアメリカよりも40%程度高い。
その原因は何かというと、トヨタの生産方式に代表されるような、我々が作った用語ですが、Lean productionというコンセプトを打ち出して、1990年に「The Machine that Changed the World」というベストセラーになりました本を出しました。特に欧米の自動車業界はこれで復活したといってもいい本です。ここで言ってるのは、トヨタ生産方式の暗黙的な解釈ではなく、いろんなものを形式知化してAdjustした結果であり、棒グラフにして、やはり40%日本のモノがいい。その内実はこうだ、だからこうしなさい、という処方箋まで出てきて、これを実行したところ、10年経つか経たないうちに、ビッグ3は日本を凌駕したとまでは言えませんが、品質においても生産性においても殆ど匹敵するぐらいになりました。
ということは、私共、この業界で長年いろんな国に行っていろんな調査をしてきましたけども、その経験から言えることは、問題が起こった場合に、表面的な現象面だけで問題をアドバイスするのなら、必ずまた起こるということです。1+1=2になる確率以上に確実に起こります。
今回のこのような事態が起こった場合、根元まで立ち戻って、そしてこれは私の専門領域を越えますが、個人が長い間、オフィスにいても個人に政治で言えば三権が集中しないような制度的な工夫をする。調達においても防衛庁の方で、向こうから出てきた原資料を読めるような力を涵養する。そしてすぐにできないのなら、アウトソーシングの時代ですから、民間のコンサルティング会社とか、トヨタ生産方式の身についた人を一時的に雇って、アドバイザー的にやってもらう。そういうことを含めてやることが必要じゃないか。そういった一連の制度を変えることによって、同じ人達が同じ席に座っていても、実質的な効果は見違えるほど出てくるのではないかと思います。
それと吉野先生の御意見に全く賛成なんですが、アメリカは10年前に危機意識を持って、日本の、特にトヨタをはじめとするサプライのベストプラクティスを徹底的に研究しました。まず自動車から始めて、1990年代に入ってMITがリーンエアクラフトイニシチアチブというプロジェクトを進めているのですが、これはペンタゴンとMITを中心として、ほとんどのアメリカの防衛企業が加入し、特にアメリカの防衛産業を守って効率よく生き延びるために何をしたらよいかということで今も続行中であります。このようにベストプラクティスとは何かということを見つけて、形式知化して、数値に落とし込む形で分析するというやり方が非常に効率よく実際に役立つと思います。アメリカはこの10年来、特にペンタゴン関係の調達、製造、開発に関して、リーンになって効率が良くなっています。それまではひどすぎたせいか、2倍、3倍どころか、在庫量とかリードタイムに関しては、10倍、20倍効率がよくなっているのが多くあります。調達方針もおそらく変わっているはずです。これらの点をこの機会に徹底的に分析されて、場合によっては、私も一緒に参加してもよいのですが、ベストプラクティスを学び、改善していくことが一番の近道だと思います。

【川井座長】
防衛庁側のチェック能力について、私も先程から考えておりましたのは、本来は契約は自由、随意契約も自由ということですけど、対等なチェック能力があってはじめて、適正な契約が行われるものです。片方にチェック能力がないとどうしても不公正な契約になると思うのですが、現状における防衛庁のチェック能力は、概略どのようなものか教えていただきたい。

【太田調達実施本部長】
チェック能力という点から、組織の特徴的なことは、調本には本部長の下に副本部長が6人おり、1人が総務担当、その他の5人の副本部長がそれぞれ、契約原価計算第1担当、第2担当というように分かれておりまして、下の2つは調達管理の分野を担当しております。調達管理第1担当、第2担当は今の御質問に直接関連しませんので除外させていただきたいと思います。これはモノを工場で作ってもらう場合に品質管理、受領の検査がございます。仕様書通り、注文通りの品物ができたかどうか検査する業務、これを担当するのが調達管理第1担当、第2担当であります。それから契約原価計算第1担当、第2担当、第3担当とあります。そのもとに課がございます。例えば、電気通信の関係を担当している契約1課は、最終的に契約を締結するのですが、この契約の経費率等の一般的な基準を原価管理課で作りまして、具体的な電気通信については、原価計算第1課で予定価格の算定を行うわけです。同じ電気通信でも3つの課が直接関係しているの分かります。3つの課がそれぞれの機能に従って、それぞれ仕事をしているわけでして、1つの課、例えば契約1課が原価計算、経費率、全部を実施するのが最も能率的であるとも言えますが、そうではなくて、チェック・アンド・バランスのために3つに分けております。そうした形で契約原価計算担当副本部長のところで最終的にチェックされるという形になっております。
端的に申し上げれば契約第1課、それから原価管理課、原価計算第1課、この3つの課が1つの契約に携わっているということが言えるわけです。これは第1担当の副本部長がまとめております。時間的には、1つの課が全部やったほうが能率的だと言えるんですが、今の組織は、チェック・アンド・バランスを、課を分けているということで担保しているということが言えます。
ただ、チェック能力について、一般論として申し上げれば、先程言いましたように防衛庁の試験を受けて採用されて、調本の中で初歩的な勉強をして、ある程度実務を担当した後、研修に出したり、場合によっては、先程の例でいいますと、トヨタの管理システムを学ぼうということで、これは去年でしたが、研修に出しました。実は先生と同じことを私も勉強しました。そういう形で、部外の会社にも出したり、それから公認会計士の事務所に行って勉強してもらうことも必要かなと考えております。
いずれにしても、職員の能力の養成については、時代のニーズに応じられるよう考えていかなければならないと思います。
他方、調達管理について申し上げます。契約に至るまでにいろいろなものを検討して、契約に至り、このような性能のものを作ってくださいということになり、会社はそのニーズに見合うものを製造します。その途中で監査というものを行います。契約通りのものをつくっているかどうか、それから先程、契約の説明のところで原価監査付の契約というものがあるということを申し上げましたが、これは初めて物を作ってもらう場合には、どれくらいのコスト、工数がかかるか分かりませんので、途中でこれらを監査するというものです。

【西口委員】
契約前の監査は?

【太田調達実施本部長】
契約前の監査というのは、具体的に思い浮かばないのですが、例えば、ある飛行機をメーカーに作っていただくということになると、メーカーがどういう体制で作っているか、どこでどれだけの人数が携わっているか、従来から作っている場合が多いので、その場合は過去の例を参考にしながら、原価計算4課と原価管理課の2つの課が調査し、予定価格を算定します。契約4課はそれを参考にしながら、最終的に契約を結ぶということです。
契約に至る前のチェックということになりますと原価計算4課、原価管理課が過去の資料とか、現在どういう形で製造されているかという会社の内容をチェックすることが挙げられます。

【筒井調達実施本部契約管理課長】
補足しますと、出てきたものを個々にチェックするというのは、制約とか、能力的に限界もありますので、制度調査というのを実施しております。制度調査というのは、出てきたデータに間違いないか、システムに欠陥はないか、そういうことを併せて行うようにしております。制度調査自体は最近から始まったものですので、チェックができているかどうかについては、個々に出てきた見積もりを見るというのが1点と、見積もりの出し方自体に構造的な問題というかそういうものがないかどうかということで、後者の方を制度調査と呼んでおりますけれども、そういう2点で処置しております。あと、本部長からも説明がありましたように、地方の支部に原価監査する要員がおりますので、そのような者が工場の中でチェックする体制にはなっています。
ただ、今回のようなことがございまして、これが完全かどうかといった問題もあります。制度調査は原価監査を行うものについては実施していたんですが、一般確定契約のものについては今まで実施してこなかったということがありますので、去年2月に公表しました再発防止策の一環として、一般確定契約についても、新たに制度調査の対象とするという、より徹底した形で実施する態勢をとっております。これも、さらに充実していく必要は当然あると思いますので、今後もより努力していくべきものと考えております。

【太田調達実施本部長】
組織的な仕組みはそのとおりなんですが、必ずしも充分でないということでプロジェクトチームを作りまして、最近、制度調査を重点的にやり出したというところでございます。プロジェクトチームは原価管理課の中に置いております。

【吉野委員】
制度調査というのは、実際に原価を計算するのに、最初にもらった見積書がございますね、その見積書と、実際に物を作った時の実績、それを比較することを制度調査というんですか。

【太田調達実施本部長】
ちょっと観点が違いまして、ある物をこれから作ってもらうということで契約をします。その時に、モノを実際に作る典型的な価格の算定は、直接材料費はいくら、工数はいくら、レートはいくらという形で積み上げていきます。その時に、基になるデータに過ちがないか、水増しがないかということで、会社の原価計算システムについて携わっている人員の作業伝票等そういうものを見せてもらうということでございます。

【吉野委員】
つまり、契約を結ぶ過程からいいますと、こういう品物を買いたい、それについては、実際に製作するのにどれくらいの原価がかかるのか、見積書をもらう。その見積書をチェックして、それが妥当であれば契約するということですか。今の話では、見積書を受け取る段階で、注文するものが完成する前に、見積書の数値を会社の原価とチェックするわけですね。

【貝澤調達実施本部調整課課長補佐】
今回の問題は、会社の経理処理上は出来上がった原価でちゃんと計上されているんですが、防衛庁に提出する見積の資料に疑義があったわけで、そのようなことが起こらないようにチェックするための調査です。

【額賀防衛庁長官】
先程から言っているように、企業側資料を見抜く人材を育成するか、とりあえず、民間のコンサルタントを頼むとかいろいろあるでしょうが、今度逮捕されたのは、前の本部長と副本部長なんです。その下にある契約第1課、原価計算第1課とか原価管理課がチェックしているといっても、このようなものは有効ではなかったということが明らかでなったわけです。これはプレイヤーとアンパイアが一緒じゃないか、と第三者から言われかねない。ちょっと属人的なところもあるでしょうけど、仕組みとしてもっと良いものがあるのではないかを考える必要がある。
私が最初に言ったのは、調達本部をぶち壊すくらいの気持ちで取り組んでくれということです。問題の発想としては、いろいろ勉強した結果、やっぱりこういう仕組みがいいというのなら、それでいい。
もうひとつは、西口先生のご指摘で興味を持ったのは、民間産業の自由化されているところは、世界の企業と生きるか死ぬかの戦いをやっているわけです。アメリカでも防衛費を大幅に削ってるわけですから、その中で防衛産業を育成して防衛産業基盤を守りながら勝ち抜いていくかということを、それをどうやって日本の中に当てはめていくかという視点から見る必要があると思います。
それから、「航空機製造事業方」とか「武器等製造法」等の法律があります。昭和20年代とか30年代とか、まだ日本の技術とか産業基盤が出来ていない時の法律と日本の産業がある程度レベルアップしている今の状態とを相対的に比較して、もう少しうまくコストダウンを図ることができないかとか、1社しか調達できないというのではなくてもう少しうまい方法はないのかなどを考えてもらいたい。結果として、できなければできないで、やむを得ないかもしれないが、防衛産業は安定したものを存続させることが大前提となる。大前提ではあるけれど、防衛調達予算が減少傾向にあることを踏まえ、緊張感を持って防衛産業のあり方を考えることが必要だと思います。

【川井座長】
どうもありがとうございました。予定していました時間も過ぎてしまいまして、熱心に御討議いただき、貴重な御意見ありがとうございました。先程、西口先生から御指摘いただきましたチェック機能というのは、実質的なチェック機能であると思いますので、この点が欠けているということがあると思うんですね。体制は一応あるとしましても、実質的な能力の点で。西口先生も参加して下さるという発言もございましたので、知恵をお借りしまして、アメリカの、特に防衛のチェック機能などについて調査をしていくということで、西口先生もよろしくお願いします。
それでは、事務局から今後のスケジュールについて説明いただきたいと思います。

【松井管理課長】
その前に、堀田委員は海外出張で今日御欠席ですが、対応策を書面で頂いておりますので披露させて頂きます。

 調達は競争入札によるものを大原則とする。
 そのため、一般の製品で代替できるものの範囲を大幅に拡げるとともに、入札できる業者を海外に拡げる。
 どうしても随契にしなければならないものについては、第三者委員会を設け、契約ごとに、その審査・承認を得る。なお、審査は防衛秘密に関わるか否かについても及ぶ。
 随契によるものについても、可能な限り、契約に関わる事項を公表する。
 公表できないものについては、第三者委員会の契約の当否を審査する。
 第三者委員会は、形式的にも実質的にも政府から独立するものとし、同じように独立した専門家の補助を受ける。

 それから対応策の前提となる事項について、

 関連企業への天下りを禁止する。
 防衛機密を徹底的に洗い直し、これを隠れ蓑にしないための仕組みをつくる。これを書面で頂いております。
 次回の日程
 次回については、10月29日で調整
(了)

ページの先頭へ戻る