はじめに

 我が国の防衛生産・技術基盤は、戦前、大型艦艇や戦闘機等の分野を中心に世界的に最先端の水準に達していたが、戦後の昭和20~27年、国内における武器及び航空機の生産が禁止され、また、その間、米ソや欧州諸国においてこれらの技術が発展したことから、特に航空機や通信電子機器等の分野を中心に諸外国に大きな遅れをとった。また、それまで我が国が防衛技術基盤の中心に位置づけていた陸海軍工廠は、戦後廃止され、全て民間企業に売却された。
 その後、昭和27年には現在の防衛庁技術研究本部(以下、技本という。)が保安庁技術研究所として発足し、民間企業の技術力も活用した防衛技術の育成が始まり、また、同年に我が国において再び武器及び航空機の生産が可能になると、航空機製造事業法及び武器等製造法が制定され、特に航空機分野においては技術の向上が図られてきている。
 このような中で、我が国は、当初、米国からの装備品の無償供与やライセンス国産を行うことにより米国技術の導入に努めなければならなかったが、昭和33年、第1次防衛力整備計画が開始され、三自衛隊の骨幹防衛力の整備が本格化すると、防衛産業・技術基盤発展の基礎が築かれた。その後、数次にわたる防衛力整備計画により防衛力整備に進展が図られるとともに、我が国の国力が工業力、科学技術力の面で主要先進国の一角を占めるほど大きく成長したことを背景に、防衛産業・技術基盤が維持・育成された結果、現在までに、航空機の一部、戦闘車両、火砲の一部、艦艇の船体、誘導武器の一部、通信電子機器などの分野で、国内研究開発品の装備化が相当程度行われるようになってきている。

一方、我が国防衛産業・技術基盤を巡る環境は、
 平成7年に「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(以下、新防衛大綱という。)が策定されたことに伴い、量的な削減や質的な向上などが求められていること
 IT(情報技術)を中心とした技術革新の進展が産業・技術シーズ(防衛ニーズに応え得る産業・技術面の潜在能力)に与える影響やRMA(Revolution in Military Affairs:軍事における革命)(注1)が防衛ニーズに与える影響により、防衛産業・技術基盤に構造変化が引き起こされる可能性があること
 厳しい財政事情を踏まえ、ライフサイクルコストの抑制を図るとともに、資源の一層の効率的・効果的な配分が求められていること
 日米間の相互運用性確保の重要性が一層高まっており、防衛分野における日米共同研究開発の推進が求められていること

などの変化が生じていることから、これに適切に対応するため、防衛産業・技術基盤の現状を分析するとともに、その維持・育成に資するための方策に関し議論を深めることが必要となってきており、特に、防衛ニーズと産業・技術シーズの双方をバランス良く調和させることが重要となってきている。

(注1) RMA:軍事力の目的達成効率を飛躍的に向上させるため、ITを中核とした先端技術を軍事分野に適用することによって生起した軍事上の革命的変化。  

 このような観点から、本研究会においては、省庁の垣根を越え、防衛庁装備局長及び通商産業省機械情報産業局長の初めての合同研究会として本年8月から11月まで4回にわたり精力的に議論を重ね、ここに意見を取りまとめたところである。
 今後、本報告書を踏まえ、21世紀における健全な防衛産業・技術基盤の構築に向けて、関係省庁においては広範な施策に積極的に取り組むとともに、関係業界においても更なる精力的な対応を要望する。また、本報告書により、防衛産業・技術基盤の維持・育成に関する国民の関心・理解が一層深まることを期待する。

平成12年11月
防衛産業・技術基盤研究会座長
唐津 一

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