防衛大綱Q&A
Q1 新防衛大綱では、前大綱にあった「限定的かつ小規模な侵略」には独力で対処する能力を保有するという考え方をとっていないのは何故ですか。
 また、これにより防衛力の規模や質があいまいなものになるのではないでしようか。
A1
(1)
 前大綱においては、いわゆる「限定小規模侵略原則独力対処」という考え方を採用していましたが、これに対しては、
 限定小規模侵略の蓋然性が特に高いというような誤解を招く向きがあったこと、
 限定小規模侵略までの事態とそれ以外の事態で日米協力を含め、防衛力の運用の在り方が大きく異なるような誤解を与えかねないこと、
 「日米防衛協力のための指針」が作成されるなど日米防衛協力が進展していることやあり得る事態の多様性等からみても必ずしも適当でないと考えられること、
という問題点がありました。こうした点に加え、更に、冷戦の終結により東西間の軍事的対峙の構造が消滅し、国際情勢が不透明・不確実な要素をはらむ一方、国際関係の安定化のための一層の努力が進められている中で、防衛力の役割として、より安定した安全保障環境の構築に向け、適時適切にその役割を担うべく我が国としても積極的な取組が求められていること等も考慮した結果、限定小規模侵略原則独力対処という我が国に対する侵略のみに焦点を当てたような表現は、新防衛大綱にふさわしくないと判断したものです。
 ただし、実際的な意味では、基盤的防衛力構想を墓本的に踏襲するので、防衛能力の評価の前提や手法等に関しては、従来の考え方と大きく異なるものではありません。
(2) また、基盤的防衛力構想に基づく防衛力は、防衛上必要な各種の機能を備え後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた体制を有することを主眼とし、我が国の置かれている戦略環境、地理的特性等を踏まえて導き出されたものです。
 新防衛大綱でも、このような保有する防衛力を導き出す考え方自体はこれまでと同様です。したがって、限定小規模侵略原則独力対処といった表現をとらないからといって、防衛力の規模や質があいまいなものになるとは考えていません。
Q2 新防衛大綱とわが国の防衛政策基本方針とはどのような関係になっているのですか。
A2
(1)
 新防衛大綱は、国防の基本政策として、国防の目的とこの目的達成の方針を明らかにした「国防の基本方針」に基づいているものであり、防衛力の整備、維持及び運用に関する基本的方針であり、自衛隊の管理、運営の重要な準拠の一つとなるものです。
(2) また、その他の基本方針との関係については、新防衛大綱においても引き続き堅持していくことを、「Ⅲ 我が国の安全保障と防衛の基本方針」において明記してしています。
Q3 我が国周辺諸国の具体的な軍事情勢について、当面、どのように見ているのですか。
A3
(1)
 朝鮮半島
 朝鮮半島においては、韓国、北朝鮮合わせて150万人を超える地上軍が非武装地帯を挟んで対峙しており、冷戦終結後も依然として軍事的緊張が続いています。
 また、北朝鮮の核兵器開発疑惑や弾道ミサイルの長射程化のための研究開発の動きは、我が国周辺のみならず、国際社会全体に不安定をもたらす要因として、強く懸念されます。
 他方、北朝鮮の核兵器開発疑惑の解決に向けた米朝間の「枠組み合意」などに見られるように、朝鮮半島情勢の安定化の動きも見られます。
 いずれにせよ、朝鮮半島の平和と安定は、我が国を含む東アジア全城の平和と安定にとって重要であり、今後とも十分注目していく必要があると考えています。
(2) 極東ロシア軍(図1参照)
 極東ロシア軍は、近年量的な縮小傾向を示しており、また、厳しい財政事情などにより活動は全般的に低調になっています。
 他方、極東ロシア軍は、依然として大規模な戦力が蓄積された状態にあり、欧州方面からの新型装備の移転などにより、ペースは緩やかになったものの近代化も続いています。
 更に、ロシア軍の動向は、ロシア国内の不安定かつ流動的な政治・経済情勢とあいまって不透明であり、極東ロシア軍の今後の動向も不確実なものとなっています。
 このような極東ロシア軍の存在は、依然として我が国周辺地域の安全に対する不安定要因となっていると認識しています。
(3) 中国の軍事力(図2参照)
 中国は、国防力について「量から質」への転換を図っており、近年国防費を大幅に増額するとともに、核戦力や海・空軍力の近代化を進めています。
 しかしながら、中国は経済建設を当面の最重要課題としていること、インフレ基調、財政赤字という困難に直面していることなどから、国防力の近代化は漸進的に進むとみられます。
 また、中国は、近年、南沙群島等を含め、海洋における活動範囲を拡大する動きを見せています。
 中国のこのような動きが、中長期的にアジアの軍事バランスにどのような影響を与えるか、十分注目していく必要があると考えています。
Q4 新防衛大綱では、日米安保体制は「我が国周辺地域における平和と安定を確保」するとありますが、これは日米安保条約にある「極東」の区域どどのような関係にあるのですか。
A4 新防衛大綱は、前述のように日米安全保障体制の重要性を再確認し、我が国の安全確保にとって必要不可欠なものであり、また、我が国周辺地域における平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境を構築するためにも、引き続き重要な役割を果していくとの認識を示しています。これは、日米安全保障体制に基づく米軍の存在と米国の関与が我が国周辺地域の安定要因となっていること、また、日米安全保障体制を基調とする日米両国間の安全保障、政治、経済など各般の分野における幅広く緊密な協力関係が我が国周辺地城の平和と安定に貢献していることを示したもので、ここでいう「我が国周辺地域における平和と安定を確保し」との表現は、日米安全保障条約にいう「極東」の範囲の解釈に関する従来の政府統一見解を変更するようなものではありません。
Q5 旅団とはどのようなものですか。師団との違いはどのような点なのですか
A5 旅団とは、一般的には、普通科、特科、機甲科等の戦闘部隊、戦闘支援部隊及び後方支援部隊といった各種の部隊が組み合わされた部隊であって、地域的・期間的に独立し、一正面の作戦を遂行する能力を保有することでは師団と同様ですが、師団に比べて規模が小さく能力が限定されたものとなっているものです。(師団の規模=約6,000~9,000人、旅団の規模=約3,000~4,000人)
Q6 即応予備自衛官とはどのようなものですか。従来の予備自衛官との違いはどのようなものですか
A6 従来の予備自衛官は第一線の部隊が移動した後の駐屯地の警備や後方支援部門の比較的軽易な任務が主体でしたが、即応予備自衛官については、第一線の部隊に充当できるだけの練度、即応性を有したものとすることを考えています。このため訓練日数の増加、これに伴う環境の整備等、必要な施策について検討を行っています。(部隊の編成の考え方等については防衛大綱解説を参照)
Q7 新防衛大綱は、コンパクト化を前面に出していますが、コンパクト化することで、「我が国の防衛」「大規模災害等各種の事態への対応」、「より安定した安全保障環境の構築への貢献」といった防衛力の役割を十分果たせなくなるのではないでしょうか。
A7 新防衛大綱では、現行の防衛力の規模及び機能について見直しを行い、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を一層進めることとしていますが、他方、国内外の情勢の変化に加え、大規模な災害等各種の事態への対応、国際平和協力業務等より安定した安全保障環境の構築への貢献といった分野への防衛力の役割に対する期待の高まりを踏まえ、必要な機能の充実と防衛力の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備することとしており、コンパクト化を行ったとしても、新防衛大綱に掲げられている防衛力の役割を十分に果たすことはできると考えています。
Q8 前大綱にあったいわゆる「エクスパンド条項」を、新防衛大綱はどうして引き継がなかったのですか。
A8 前大綱においては、「情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものとする」といったいわゆるエクスパンド条項がありました。
 これは、一定の諸情勢の下にいわば平時における警戒態勢を主体として均衡のとれた防衛力を整備することとしたことによるものであり、そのため防衛力の具体的な内容としては、量的には必ずしも十分でなくとも、良質の基幹要員を保有しておくなど、質的には必要とされる水準を維持していて、いつでもより強固な態勢に移行するための中核となり得る力を備えたものを目標としていました。
 新防衛大綱においては、
(1) 情勢に重要な変化が生じた場合に防衛の態勢を急速に拡大するということは、現実的に難しく、むしろこのような場合には、新たな防衛力の態勢を検討するため、防衛力の在り方自体の見直しが必要とされること、
(2) すでに前大綱別表で示された防衛力の水準が概ね達成されたことにより、前大綱策定時とは異なり、量的にも質的にも基盤的な防衛力の基礎が概成していること、
を踏まえ、新たな態勢への移行の必要性について規定されていた前大綱の趣旨は取り入れつつ、移行については、防衛力の在り方の見直しを行う一つのケースとして整理することとしました。

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