防衛大綱解説
 防衛大綱の前提となる我が国の防衛政策の基本事項
   安全保障と防衛努力の重要性
   我が国は、第2次世界大戦後の廃墟から立ち上がり、世界第2位の経済力を有する経済大国となりました。このような繁栄や発展は、国民一人ひとりの英知や努力のたまものであることはいうまでもありません。ただ、この背景には戦後半世紀、外国からの侵略をうけることもなく、国の安全が保たれてきたという事実があることを忘れてはいけません。
 今日、国際社会においては、国連の活動を始めとして、より安定した国際秩序の確立を目指した様々な努力が続けられているものの、安定的な安全保障環境の確立には至っていないのが現実です。こうしたことも踏まえ、各国は各々が置かれた戦略環境に即し、自国の安全確保に努めています。
 我が国としてもこのような国際社会の現状に照らし、国の安全を確保するための努力を怠ってはなりません。我が国の安全を確保するための手段としては、国際政治の安定を確保するための外交努力、内政の安定による安全保障基盤の確立、みずからの防衛努力及び日米安全保障体制の堅持がありますが、その中で、外国からの実力をもってする侵略を排除する意思と能力を示すことにより、侵略を未然に防止し、また実際に排除することができるのは、防衛力のみです。この意味で防衛力の持つ機能は他のいかなる手段や力によっても代替できないもので、防衛力は国の安全保障を最終的に担保するものなのです。
 我が国としては、自ら適切な規模の防衛力の整備を進めるとともに、米国との安全保障体制を堅持することにより、我が国の安全を確保していくとの方針に基づいて、継続的な努力を行ってきました。このような我が国の安全の確保のための努力は、我が国のみならず、アジアひいては世界の平和と安定に貢献することとなるのです。
 我が国の防衛政策の基本方針
(1) 「国防の基本方針」
   我が国の防衛政策は昭和32年5月に国防会議及び閣議で決定された「国防の基本方針」にその基礎を置いています。この国防の基本方針は国防の目的について、「直接及び間接の侵略を未然に防止し、万一侵略が行われるときはこれを排除し、もって民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守ることにある。」とし、それを達成するための手段として、まず、国際協調など平和への推進民生安定などによる安全保障基盤の確立を、次いで効率的な防衛力の整備日米安全保障体制を基調とすることを基本方針として掲げています。
(2) その他の防衛の基本方針
 国防の基本方針を受けて、これまで、我が国は、日本国憲法の下、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安全保障体制を堅持するとともに、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備してきました。
 前大綱(「昭和52年度以降に係る防衛計画の大網」)
 我が国は、昭和33年度以降、3年又は5年を対象とする防衛力整備計画を4次にわたって策定し、防衛力の整備を行ってきましたが、これらの計画には、ややもすると装備の取得計画でしかないとの批判が生じ、その前提となる我が国の防衛力の在り方や具体的な整備目標の明示を求める声が生じていました。このような声に応えるべく、第4次防衛力整備計画が昭和51年度をもって終了することに伴って、昭和51年10月前大綱(「昭和52年度以降に係る防衛計画の大綱」)を国防会議及び閣議において決定しました。
 前大綱は、当時、防衛力整備に当たって直面していた経済財政上の制約、隊員確保上の制約、施設取得上の制約という点をも考慮した上で、我が国が平時から保有すべき防衛力の水準を明らかにし、我が国の防衛力を整備、維持及び運用するための指針を示したものでした。
 それ以降、この前大綱の考え方に基づき、現在に至るまで防衛力の整備が行われてきました。この前大綱の概要について説明すると次の通りです。
(1) 前大綱の国際情勢の認識
 前大綱の策定にあたって、国際情勢認識については、
 核相互抑止を含む軍事均衡や各般の国際関係安定化の努力により、東西間の全面的軍事衝突又はこれを引き起こすおそれのある大規模な武力紛争が生起する可能性は少ない。
 我が国周辺においては、限定的な武力紛争が生起することは否定できないが、米・ソ・中という大国間の均衡的関係及び日米安全保障体制の存在が国際関係の安定維持及び我が国に対する本格的侵攻の防止に大きな役割を果たし続けるものと考えられる。
との認識に立っていました。
(2) 防衛の構想
 前大綱は、このような国際情勢認識の下に、「防衛の構想」を示しています。我が国の防衛は、我が国自ら適切な規模の防衛力を保有し、日米安全保障体制と相まって、いかなる態様の侵略にも対応し得る防衛体制を構成することにより、侵略を未然に防止することが基本であると定めていました。
 また、万一、侵略事態が発生した場合には、侵略を早期に排除することなどを定めていました。
(3) 基盤的防衛力の構想
 前大綱は(1)の国際情勢認識及び国内諸情勢が当分の間大きく変化しないという前提に立って、基盤的防衛力構想を取り入れました。
 基盤的防衛力構想とは、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域における不安定要因とならないように、独立国として必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという考え方です。
 この基盤的防衛力構想を採用したことが、前大綱のポイントとなっています。
 また、この構想に基づき我が国が平時から保有すべき防衛力の水準については、以下の考え方に基づいていました。
 防衛上必要な各種の機能を備え、後方支援体制を含めてその組織及び配備において均衡のとれた態勢を保有するものであること。
 平時において十分な警戒態勢をとり得るものであること。
 限定的かつ小規模な侵略までの事態に有効に対処し得るものであること。
 情勢に重要な変化が生じ、新たな防衛力の態勢が必要とされるに至ったときには、円滑にこれに移行し得るよう配意された基盤的なものであること。
(4) 各自衛隊の体制
 前大綱は以上のような考え方に基づいて、保有すべき防衛力の具体的規模については、「陸上、海上及び航空自衛隊の体制」及び別表において、各自衛隊の基幹部隊や主要装備などの枠組みを明示しています。
(別表)前大綱における各自衛隊の編成・装備等
陸上自衛隊 自衛官定数 18万人
基幹部隊 平時地域配備する部隊 12個師団
2個混成団
機動運用部隊 1個機甲師団
1個特科団
1個空挺団
1個教導団
1個ヘリコプター団
低空域防空用地対空誘導弾部隊 8個高射特科群
主要装備 戦車
主要特科装備
約1,200両
約1,000門/両
海上自衛隊 基幹部隊 護衛艦部隊(機動運用)
護衛艦部隊(地方隊)
潜水艦部隊
掃海部隊
陸上対潜機部隊
4個護衛隊群
10個隊
6個隊
2個掃海隊群
16個隊
主要装備 護衛艦
潜水艦
作戦用航空機
約60隻
16隻
約220隻
航空自衛隊 基幹部隊 航空警戒管制部隊
要撃戦闘機部隊
支援戦闘機部隊
航空偵察部隊
航空輸送部隊
警戒飛行部隊
高空域防空用地対空誘導弾部隊
28個警戒群
10個飛行隊
3個飛行隊
1個飛行隊
3個飛行隊
1個飛行隊
6個高射群
主要装備 作戦航空機 約430機

(注)この表は、この大綱策定において現有し、又は取得を予定している装備体系を前提とするものです。

 新防衛大網
 新防衛大網策定の経緯及び趣旨
(1) 我が国の防衛力を取り巻く環境の変化
 我が国は、前大綱に示された基本的な考え方の下、効率的で節度ある防衛力の整備に努めてきましたが、前大綱策定後約20年が経過し、我が国の防衛力を取り巻く環境も以下のように変化しました。(資料1参照)
 冷戦の終結等に見られるように国際情勢が大きく変化したこと
 自衛隊の主たる任務である我が国の防衛に加え、大規模な災害等各種の事態への対応、国際平和協力業務の実施等より安定した安全保障環境の構築への貢献という分野においても、自衛隊の役割に対する期待が高まってきていること(資料2参照)
 このような、国際情勢の変化や自衛隊の役割に対する期待の高まり、そして更に、近年における科学技術の進歩、若年人口の減少傾向、格段に厳しさを増している経済財政事情等を踏まえ、前大綱を見直しました。(資料3参照)
(資料1)わが国の防衛力の整備とそれをめぐる環境の変化
主な事象
昭和51年



平成元年

平成2年

平成3年




平成4年



平成5年


平成6年


平成7年
「前大綱」策定
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ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談(マルタ会談)

中期防衛力整備計画(平成3~7年度)策定

湾岸危機、ペルシャ湾に海上自衛隊の掃海艇等派遣、
雲仙普賢岳噴火に際し災害救助活動(~平成7年)、

ソ連邦解体

国際平和協力法、国際緊急援助法改正案成立、
カンボジアPKO(~平成5年)、
中期防衛力整備計画(平成3~7年度)修正

モザンビークPKO(~平成7年)、
北海道南西沖地震への災害救援活動

第1回ASEAN地域フォーラム開催、

ルワンダ難民救援活動

阪神・淡路大震災への災害救援活動、

地下鉄サリン事件への災害救援活動
(資料2)今後の自衛隊の役割に関する世論調査(平成7年7月総理府実施)
Q:自衛隊の存在する目的は何か(複数回答)
災害派遣 国の安全確保 国内の治安維持 国際貢献 民生協力
66.0% 57.2% 33.8% 17.3% 8.9%
(2) 新防衛大綱策定の経過
 平成2年に策定された中期防衛力整備計画(平成3年度~7年度)では、「将来における人的資源の制約の増大等に的確に対応するため、自衛官定数を含む防衛力の在り方について検討を行い、本計画期間中に結論を得る。」との文言が盛り込まれました。その後のソ連の崩壊により、東西冷戦が名実ともに終結したことなどを受けて、平成4年に上記中期防が修正された際には、上記の文言については、国際情勢の変化をも考慮して防衛力の在り方について引き続き精力的に検討を行うこととされました。
 この検討の対象は、自衛隊の組織・編成・配置などを含む防衛力全般であり、この検討の結果によっては、前大綱の見直しにつながるものと考えられていました。
防衛庁内の検討
 防衛庁では、これを受けて事務的な検討作業に入るとともに、平成5年6月には、広く国民各層の意見に耳を傾けることが重要との観点から、防衛局長の下に「新時代の防衛を語る会」を発足させ、6回の会合を開催し、幅広い観点から議論がなされたところです。
 また、平成6年2月には、防衛庁長官の下に庁内体制を整えて検討を進め、もって政府としての検討に資するために、長官を議長とする「防衛力の在り方検討全議」を発足させ、20回以上に及ぶ議論を行ってきました。
防衛問題懇談会
 前に述べた我が国の防衛力をめぐる環境の変化の中で、今後の我が国の防衛力の在り方について前広に検討に着手し、新たな防衛計画の大綱の骨子について有識者から意見を聴取することを目的として、平成6年2月、細川総理(当時)の下に「防衛問題懇談会」が設けられました。
 同懇談会は、20回にわたる熱心な議論を経て、同年8月、報告「日本の安全保障と防衛力のあり方21世紀へ向けての展望」を村山総理(当時)に提出しました。
 本報告は、我が国のこれまでのどちらかと言えば受動的な安全保障上の役割から脱すべきとの観点から、「能動的・建設的な安全保障政策」を追求すべきとしました。また、国際情勢等の変化に対応した新しい防衛力についての基本的考え方として、前大綱の基盤的防衛力の概念を生かしつつ、新たな戦略環境に適応させるのに必要な修正を加えることが適切であるとして、その上でこのような考え方に立った防衛力の改革・改編が、今後10年程度を目途に、順を追って、実施されることを期待するとしました。
安全保障会議における検討
 政府全体として、今後の防衛力の在り方についての検討を開始する安全保障会議が平成7年6月に開催されました。それ以降、関係省庁等において各種の検討を行うとともに、同会議を都合10回開催し、今後の防衛力の在り方について幅広い観点から総合的に審議を行った上、平成7年11月28日に新防衛大綱(「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」)を安全保障会議及び閣議において決定しました。(資料4参照)
(資料4)新防衛大綱に関する安全保障会議の開催状況
開催日 主な審議内容 ( )は説明省庁
7.6.9 国際情勢(外務省)
国際軍事情勢(防衛庁)
7.8.22 国際情勢補足(外務省)
国際軍事情勢補足、「防衛計画の大綱」の考え方(防衛庁)
7.8.29 財政的節約(大蔵省)
人的資源、軍事科学技術の動向、今後の防衛庁のあり方の基本的方向と平成8年度防衛関係費概算要求(防衛庁)
7.9.8 日米安保体制(外務省、防衛庁)
7.9.29 安定的な安全保障環境の構築(外務省)
今後の防衛力の役割(防衛庁)
7.10.18 防衛産業(防衛庁、通産省)
今後の防衛力のあり方の基本的考え方、防衛計画の計算方式(防衛庁)
7.10.27 自衛隊の将来体制と同体制への移行要領、今後の防衛力のあり方についての考え方(防衛庁)
7.11.7 新「大綱」案文(安保室)
7.11.24 案文修正(安保室)
7.11.28 新「大綱」についての答申案の決定
 新防衛大綱の基本的考え方
 前大綱は、我が国への侵略を未然に防止することを基本とし、侵略が生起した場合、これに有効に対処することに重点が置かれていましたが、新防衛大綱ではこうした考え方を引き継ぐことは当然として、さらに、国内外の変化や国際社会において我が国が置かれている立場を考慮し、大規模な災害等各種の事態への対応やより安定した安全保障環境の構築に向けて、防衛力を積極的に活用することを目指しています。
(1) 我が国の防衛力の在り方を示す
 基盤的防衛力構想を基本的に踏襲
   前大綱は以下の国際情勢を前提として基盤的防衛力構想採用しました。
 東西冷戦下ではあるが、国際関係の安定化努力が継続していること
 日米安全保障体制の存在が我が国の安全と周辺地域の平和と安定に大きな役割を果たし続けること
今回、新防衛大綱を策定するに当たり、以上の点に関しては、
 今後の国際情勢のすう勢として、不透明・不確実な要素をはらみながらも、国際関係の安定化を図るための各般の努力が継続されていく
 日米安全保障体制が我が国の安全及び周辺地域の平和と安定にとって引き続き重要な役割を果たし続ける
と考えました。
 このことから、新防衛大綱でも、基盤的防衛力構想を基本的に踏襲していくこととしたものです。(資料5参照)
 保有すべき防衛力の具体的内容については見直す
 新防衛大綱では、保有すべき防衛力の具体的内容について、前に述べた我が国の防衛力をめぐる環境の変化に対応するために、現行の防衛力の規模及び機能について見直しを行い、その合理化・効率化・コンパクト化を一層すすめるとともに、必要な機能の質的な向上を図ることにより、多様な事態に対して有効に対応し得る防衛力を整備し、同時に事態の推移にも円滑に対応できるよう適切な弾力性を確保し得るものとすることが適当であるとしています。
(2) 日米安全保障体制の重要性を再確認
 日米間においては、前大綱策定後の昭和53年に「日米防衛協力のための指針」が作成され、以後、様々な分野における両国の協力関係が進展してきました。
 冷戦終結後の今日の国際社会では、国際情勢の変化、それに伴う国際的な課題の変化、そしてその解決に向けた国際社会の積極的な取組を背景として、日米安全保障体制が地域の平和と安定及びより安定した安全保障環境の構築という面で果たす役割について再認識されるようになってきています。
 このような認識の下、新防衛大綱ではこれまでの日米防衛協力の成果を再確認しつつ、将来に向けての日米安全保障体制の意義及びその信頼性の向上を図りこれを有効に機能させていくための具体的な取組の重要性について、整理して述べているところに特徴があります。このための施策の具体的な内容については後ほど解説します。
 なお、米国も平成7年2月に発表した「東アジア太平洋戦略報告(EASR)」の中で、アジア・大平洋地域における約10万人の兵力の維持を再確認すると同時に、日米関係については、「最も重要な二国間関係であり、アジアにおける米国の安全保障政策の要である」などとして、日米安全保障体制を重視する立場を極めて明確に打ち出しているところです。
(3) 今後の我が国の防衛力が果たすべき役割を打ち出す
 新防衛大綱では、今後、我が国の防衛力が果たすべき役割として、自衛隊の主たる任務である「我が国の防衛」に加え、「大規模災害等各種の事態への対応」及び「より安定した安全保障環境の構築への貢献」を主要な柱として掲げており、ここに新しい防衛力の構想を示しています。(資料6参照)これは、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件を契機として大規模災害等各種の事態における自衛隊の活動について期待が高まっていること、また、近年、自衛隊による国際平和協力業務の実施が相次ぎ、その実績が高く評価されること等を反映したものです。
 新防衛大網の内容
(1) 新防衛大綱の国際情勢認識
 新防衛大綱では国際情勢について、
 全般情勢
 東西間の軍事的対峙の構造は消滅したものの、宗教上の対立や民族問題に根ざす対立が顕在化するなど依然として国際情勢は不透明・不確実な要素をはらむ一方、国際関係の一層の安定化を図るための各般の努力が継続されていく
 我が国周辺地城の情勢
 極東ロシアの軍事力の量的削減等の変化は見られるものの、依然として大規模な軍事力が存在し、多数の国が軍事力の近代化を行っており、また、朝鮮半島における緊張が継続するなど、依然として不透明・不確実な要素が残されていますが、同時に、二国間対話の拡大や地域的安全保障への取組等地域の安定を図ろうとする様々な動きが見られるとともに、日米安全保障体制の存在が我が国の安全及び地域の平和と安定を図る上で引き続き重要な役割を果たしていく
との認識に立っています(資料7参照)。
(資料7)国際情勢の特色
  全般 わが国周辺地域






世界的な規模の武力紛争の生起の可能性の低下

国際情勢は依然として不透明・不確実な要素を内包

宗教や民族問題等に根ざす対立の顕在化(地域紛争)

各種の領土問題の存続

大量破壊兵器等の拡散等新たな危機の増大

極東ロシアの軍事力の量的削減と軍事態勢の変化

不透明・不確実な要素の残存

核戦力を含む大規模な軍事力の存在

朝鮮半島における緊張の継続

(地域紛争、領土問題、大量破壊兵器の拡散等)








国際安定化を図るための努力の継続

米ロ間・欧州での軍備管理・軍縮の進展

他国間及び二国間対話の拡大

地域的な安全保障の枠組みの活用

国連の役割の充実へ向けた努力

地域の安定を図ろうとする努力

二国間対話の拡大

地域的な安全保障への取組み等

(ASEAN地域フォーラムなど)







大規模侵略対応型兵力については再編・合理化

地域紛争等多様な事態への対応能力の確保

経済発展等を背景に軍事力の拡充ないし近代化




引き続き世界の平和と安定に大きな役割 日米安保体制は引き続き重要

わが国の安全と国際社会の安定に不可欠

米国の関与と米軍の前方展開を確保する基盤

(2) 日米安全保障体制
 新防衛大綱は、前にも述べたとおり、日米安全保障体制の重要性を再確認し、我が国の安全確保にとって必要不可欠なものであり、また、我が国周辺の地域における平和と安定を確保し、より安定した安全保障環境を構築するためにも引き続き重要な役割を果たしていくとの認識を示しています。
 そして、日米安全保障体制の信頼性の向上を図り、これを有効に機能させていくために、新防衛大綱では以下のとおり、各種施策に努める必要があるとしています。
 さらに、新防衛大綱においては、このような日米安全保障体制を基調とする日米両国の安全保障、政治、経済等各般の分野における幅広く緊密な協力関係は、地域的な多国間の安全保障に関する対話・協力の推進や国連の諸活動への協力等、国際社会の平和と安定へのわが国の積極的な取組に資するものとしています(資料8参照)。
(3) 防衛力の役割
 新防衛大綱では、前に述べたように、今後、我が国の防衛力が果たすべき役割として、自衛隊の主たる任務である「我が国の防衛」に加え、「大規模災害等各種の事態への対応上「より安定した安全保障環境の構築への貢献」を主要な柱として掲げています。
 我が国の防衛
 新防衛大綱では、周辺諸国の軍備に配意しつつ、我が国の地理的特性に応じ防衛上必要な機能を備えた適切な規模の防衛力を保有するとともに、これを最も効果的に運用し得る態勢を築き、我が国の防衛意思を明示することにより、日米安全保障体制と相まって、我が国に対する侵略の未然防止に努めることとしています。
 また、核兵器の脅威に対しては、世界で唯一の被爆国として、核兵器のない世界を目指した現実的かつ着実な核軍縮の国際的努力の中で積極的な役割を果たすとしつつ、核兵器を保有する国が存在し、またその拡散といった新たな危険をはらんでいる現実を考慮し、核兵器の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するものとしています。
 間接侵略事態又は侵略につながるおそれのある軍事力をもってする不法行為が発生した場合には、これに即応して行動し、早期に事態を収拾することとしています。
 直接侵略事態が発生した場合には、これに即応して行動しつつ、米国との適切な協力の下、防衛力の総合的・有機的な運用を図ることによって、極力早期にこれを排除することとしています。
 大規模災害等各種の事態への対応
 新防衛大綱では、まず、大規模な自然災害、テロリズムにより引き起こされた特殊な災害その他の人命又は財産の保護を必要とする各種の事態に際して、関係機関から自衛隊による対応が要請された場合などに、関係機関との緊密な協力の下、適時適切に災害救援等の所要の行動を実施することとし、もって民生の安定に寄与するとしています。
 災害への対応は第一義的には消防や警察の役割ですが、社会の高度化等が進む中で災害のもたらす影響はより大きいものになっています。先の阪神・淡路大震災のように大規模な自然災害や地下鉄サリン事件のような有毒ガスによるテロリズムによる特殊な災害には、消防、警察だけでは十分に対応できないことが強く認識されるようになりました。このような災害に対して、国の関係機関や地方公共団体との緊密な協力の下、自衛隊が災害救援を効果的に行うことが一層重要となっています。
 次に、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合には、憲法及び関係法令に従い、必要に応じ国連の活動を適切に支持しつつ、日米安全保障体制の円滑かつ効果的な運用を図ること等により適切に対応するとしています。
 我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態として、特定の事態を念頭においているわけではありませんが、例えば、我が国に大量の難民が押し寄せたり、在外邦人の緊急避難のために我が国への輸送が必要になる場合、遺棄機雷が我が国周辺海域に浮遊している場合等がこれに当たると考えられます。また、それに加えて国連が経済制裁を決議した場合には、必要に応じ又は状況により、日米安保条約に基づく施設・区域の提供や自衛隊法に基づく災害派遣や邦人輸送の実施など、政府として適切な措置をとることなどが考えられます。
 より安定した安全保障環境の構築への貢献
 新防衛大綱では、第一に、国際平和協力業務の実施を通じ、国際平和のための努力に寄与するとともに、国際緊急援助活動の実施を通じ、国際協力の推進に寄与するとしています。地域紛争などが顕在化している現在の国際環境においては、国際貢献を行っていくことは我が国の国際的責務であり、この努力は国際社会の平和と安定に寄与し、ひいては我が国の安全保障にも資することになります。
 第二に、安全保障対話・防衛交流を引き続き推進し、我が国の周辺諸国を含む関係諸国との間の信頼関係の増進を図るとしています。
 これは、各国がその保有する軍事力及び国防政策の透明性を高め、相互の信頼関係を深めることによう、無用な軍備増強や不測の事態における危機の拡大を抑えていくことが重要であるとの観点から、様々なレベルで国際情勢や双方の国防政策について意見交換を行うなど交流を深めていくということです。
 第三に、大量破壊兵器やミサイル等の拡散の防止、地雷等通常兵器に関する規制や管理等のために国連、国際機関等が行う軍備管理・軍縮分野における諸活動に協力するとしています。
 冷戦終結後の国際社会における大量破壊兵器等の拡散や通常兵器の流出等という新たな危険の増大に対して、その防止に向けて国連、国際機関等が行う活動に、自衛隊の協力が期待されています。これを促進させるために、平成7年10月に、「国際機関等に派遣される防衛庁の職員の処遇等に関する法律」が成立するなど、態勢整備が進められているところです。
(4) 陸・海・空自衛隊の体制
 新防衛大綱は、陸・海・空自衛隊の体制・規模については、以上のような考え方の下、国際情勢の変化等を踏まえ、任務の見直し、態勢の緩和等の観点から、各種の要素を総合的に勘案し、現在の防衛力を見直して、以下のように述べています。
 陸上自衛隊の体制
 第一に、我が国の領域のどの方面においても、侵略の当初から組織的な防衛行動を迅速かつ効果的に実施し得るよう、我が国の地理的特性等に従って均衡をとって配置された師団及び旅団を有することとしています。具体的には、前大綱において12個師団、2個混成団だった平時地域配備する部隊については、4個師団及び2個混成団を旅団(原則として定数約3,000~4,000人)に改編し、8個師団、6個旅団の体制とすることとしています(資料9参照)。
 第二に、主として機動的に運用する各種の部隊を少なくとも1個戦術単位有することとしています。具体的には、引き続き、機甲師団、ヘリコプター団、空挺団を各1個単位有することとしています。
 第三に、師団等及び重要地域の防空に当たり得る地対空誘導弾部隊を有することとし、8個高射特科群を維持することとしています。
 第四に、高い練度を維持し、侵略等の事態に迅速に対処し得るよう、部隊等の編成は、常備自衛官をもって充てることを原則とし、一部の部隊については第一線の部隊に充当し得る練度と即応性を有する即応予備自衛官を主体として充てることとしています(資料10参照)。
 これに伴い、編成定数を18万人から16万人とし、うち常備自衛官定員を14万5千人、即応予備自衛官員数を1万5千人としています。
 このほか、陸上防衛力の枠組みをよりわかりやすく示すため、戦車及び主要特科装備を新たに別表に記載することとしています。戦車は約900両で現在の定数から2割程度の減、主要特科装備は約900門/両で1割程度の減となっています(資料11参照)。
(資料11)陸上自衛隊の体制の見直し
区分 新防衛大綱 前大綱




編成定数
 常備自衛官定員
 即応予備自衛官定員
16万人
14万5千人
1万5千人
18万人



平時地域配備する部隊 8個師団
6個旅団
12個師団
2個混成団
機動運用部隊 1個機甲師団
1個空挺団
1個ヘリコプター団
1個機甲師団
1個空挺団
1個ヘリコプター団
地対空誘導弾 8個高射特化群 8個高射特化群



戦車
主要特化装備
約900両
約900門/両
約1,200両
約1,000門/両
 海上自衛隊の体制
 第一に、海上における侵略等の事態に対応し得るよう機動的に運用する艦艇部隊として、常時少なくとも1個護衛隊群を即応の態勢で維持し得る1個護衛艦隊を有することとしています。具体的には、前大綱と同様、4個護衛隊群を保有することとしています(資料12参照)。
 第二に、沿岸海域の警戒及び防備を目的とする艦艇部隊として、所定の海域ごとに少なくとも1個護衛隊を有することとしています。具体的には、現在5つに区分した海域の警戒、防備に当たる5個の地方隊があり、その下に2個護衛隊ずつ、合計10個護衛隊を保有していますが、新防衛大綱では、5つの海域と津軽、対馬両海峡にそれぞれ1個護衛隊を配備し得るよう7個護衛隊を保有することとしています(資料13参照)。
 第三に、必要とする場合に、主要な港湾、海峡等の警戒、防備及び掃海を実施し得るよう、潜水艦部隊、回転翼哨戒機部隊及び掃海部隊を有することとしています。具体的には、潜水艦部隊については、6個隊を維持し、陸上回転翼哨戒機部隊については、教育体制の効率化といった観点から6個隊のうち1個隊を教育専門の部隊とし、掃海部隊については、2個掃海隊群を1個掃海隊群に集約化することとしています。
 第四に、周辺海域の監視哨戒等の任務に当たり得る固定翼哨戒機部隊を有することとしており、具体的には、前大綱における10個隊100機を8個隊80機にすることとしています(資料14参照)。
 これに伴い、主要装備については、護衛艦は約60隻を約50隻に、潜水艦は引き続き16隻、作戦用航空機は約220機を約170機にすることとしています(資料15参照)。
(資料15)海上自衛隊の体制の見直し
区分 新防衛大綱 前大綱







護衛艦部隊(機動運用)
護衛艦部隊(地方隊)
潜水艦部隊
掃海部隊
陸上哨戒機部隊
4個護衛艦群
7個隊
6個隊
1個掃海隊群
13個隊
4個護衛艦群
10個隊
6個隊
2個掃海隊群
16個隊



護衛艦
潜水艦
作戦用航空機
約50隻
16隻
約170機
約60隻
16隻
約220機
 航空自衛隊の体制
 第一に、我が国周辺のほぼ全空域を常時継続的に警戒監視するとともに、必要とする場合に警戒管制の任務に当たり得る航空警戒管制部隊を有することとしています。具体的には、前大綱で28個警戒群であったところを、任務の軽減等を図り、20個警戒群については、定員を縮小した警戒隊に改編し、8個警戒群及び20個警戒隊の体制とすることとしています(資料16参照)。また、警戒監視等を行うための1個飛行隊を引き続き有することとしています。
 第二に、領空侵犯及び航空侵攻に対して即時適切な措置を講じ得る態勢を常時継続的に維持し得るよう、戦闘機部隊及び地対空誘導弾部隊を有することとしています。具体的には、要撃戦闘機部隊については、態勢を一部緩和し現在の10個飛行隊を9個飛行隊にすることとしています(資料17参照)。また、地対空誘導弾部隊については、6個高射群を維持することとしています。
 第三に、必要とする場合に、着上陸侵攻阻止及び対地支援の任務を実施し得る部隊を有することとしており、具体的には支援戦闘機部隊を引き続き3個飛行隊有することとしています。
 第四に、必要とする場合に、航空偵察、航空輸送等の効果的な作戦支援を実施し得る部隊を有することとしています。具体的には、前大綱と同様、航空偵察部隊1個飛行隊、航空輸送部隊3個飛行隊を有することとしています。
 これに伴い、主要装備について、作戦用航空機は約430機を約400機に、そのうち戦闘機は約350機を約300機にすることとしています(資料18参照)。
(資料18)航空自衛隊の体制の見直し
区分 新防衛大綱 前大綱







航空警戒管制部隊


要撃戦闘機部隊
支援戦闘機部隊
航空偵察部隊
航空輸送部隊
警戒飛行部隊
高空域防空用地対空誘導弾部隊
8個警戒群
20個警戒隊
1個飛行隊
9個飛行隊
3個飛行隊
1個飛行隊
3個飛行隊

6個高射群
28個警戒群

1個飛行隊
10個飛行隊
3個飛行隊
1個飛行隊
3個飛行隊
1個飛行隊
6個高射群



作戦用航空機

 うち戦闘機
約400機

約300機
約430機

約350機
 体制移行の進め方
 以上述べた新しい体制は、現在の体制から大きく変わるので、ある程度の期間をかけて、計画的かつ段階的にこの新たな体制に移行していきたいと考えています。具体的な移行計画については、中期防衛力整備計画等において決定していくことになります。
(5) 各種の態勢
 各種の態勢については、統合幕僚会議の機能の充実等による各自衛隊の統合的かつ有機的な運用、関係各機関との有機的協力関係の推進に特に配意しつつ、侵略事態等に対応する態勢等各種の態勢をとることとしています。
 侵略事態等に対応する態勢
ア 日米安全保障体制の信頼性の維持向上に努めるとともに、直接侵略事態が発生した場合、各種の防衛機能を有機的に組み合わせることにより、その態様に即応して行動し、有効な能力を発揮し得ることとしています。なお、前大綱における直接侵略事態に対処する態勢にみられた限定的小規模侵略原則独力対処の表現は、前に述べたような理由から使用していません。
イ 間接侵略及び軍事力をもってする不法行為が発生した場合には、これに即応して行動し、適切な措置を講じ得ることとしています。
ウ 領空侵犯等に対しても、即時適切な措置を講じ得ることとしています。
 災害救援等の態勢
 災害救援等の態勢については、国内のどの地域においても、大規模な災害等人命又は財産の保護を必要とする各種の事態に対して、適時適切に災害救援等の行動を実施し得ることとしています。
 国際平和協力業務等の実施の態勢
 国際平和協力業務等の実施の態勢については、国際社会の平和と安定の維持に資するため、国際平和協力業務及び国際緊急援助活動を適時適切に実施し得ることとしています。これはより安定した安全保障環境の構築に貢献していくため、新防衛大綱において新たに保持すべき態勢として加えられたものです。
 警戒、情報及び指揮通信の態勢
 警戒、情報及び指揮通信の態勢については、常時継続的に警戒監視を行うとともに、多様な情報収集手段の保有と能力の高い情報専門家の確保を通じ、戦略情報を含む高度の情報収集・分析等を実施し得ることとしています。また、高度の指揮通信機能を保持し、防衛力の有機的な運用を迅速・適切になし得ることとしています。
 情勢の変化を早期に察知し、それに適切に対応する上で、警戒、情報及び指揮通信の態勢を保持することは非常に重要です。具体的な施策としては、情報本部の新設などが挙げられます。
 後方支援の態勢
 後方支援の態勢については、各種の事態への対処行動等を効果的に実施するため、輸送、救難、補給、保守整備、衛生等の各後方支援分野において必要な機能を発揮し得ることとしています。
 人事・教育訓練の態勢
 人事・教育訓練の態勢については、適正な人的構成の下に、厳正な規律を保持し、各自衛隊・各機関相互間及び他省庁・民間等との交流の推進等を通じ、高い士気及び能力並びに広い視野を備えた隊員を有し、組織全体の能力を発揮し得るとともに、国際平和協力業務等の円滑な実施にも配意しつつ、隊員の募集、処遇、人材育成・教育訓練等を適切に実施し得ることとしています。特に、他機関・民間等との交流を推進すること等を通じ、隊員に高い士気・能力のみならず広い視野を備えさせるべきこととしたのは、自衛隊の果たすべき役割が一層拡がり、対応すべき事態も多様化していることから、これまで以上にかかる措置に積極的に取り組む必要性が高まっていることを反映したものです。
(6) 防衛力の弾力性の確保
 防衛力の弾力性の確保については、防衛力の規模及び機能についての見直しの中で、養成及び取得に長期間を要する要員及び装備を、教育訓練部門等において保持したり、即応性の高い予備自衛官を確保することにより、事態の推移に円滑に対応できるように適切な弾力性を確保することとしています。
(7) 留意事項
 留意事項については、経済財政事情等を勘案しつつ、中長期的な見通しの下に経費配分を適切に行うこと、防衛施設の効率的な維持と円滑な統廃合のための所要の態勢の整備に配意すること、効率的な調達補給態勢の整備に配意すること、技術研究開発の態勢の充実に努めることなどがあげられています。
 また、将来情勢に重要な変化が生じ、防衛力の在り方の見直しが必要になると予想される場合には、その時の情勢に照らして、新たに検討するものとしています。

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