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UNOCHA渡部正樹氏による基調講演
【演 題】「自然災害時の国際救援活動と民軍調整 ~防衛省/自衛隊への提言~」      
【講演者】 渡部 正樹(わたべ まさき)氏 (OCHA神戸事務所長)

イントロダクション

  国連人道問題調整事務所(OCHA)と日本の関係機関との双務的パートナーシップが急速に深化している。 特に自然災害時の民軍調整を円滑に進めるため、防衛省・自衛隊との平時からの関係構築は、OCHAにとっても最優先課題の1つ。

ぜひ知ってい頂きたいこと
 OCHAの使命は、国際的な人道支援アクター間の活動を調整し、被災国政府と被災コミュニティをサポートすること。 そして、「人道支援のための民軍調整」(Humanitarian Civil-Military Coordination/UN-CMCoord)は、OCHAに与えられた重要な役割の1つ。

 外国軍アセット(foreign military assets)を文民による人道支援活動のために効果的に活用することは、現場の支援で「スピード」と「ボリューム」を実現する上で重要な鍵となる。 その基本アプローチは、民軍間での競合を回避し、一貫性を確保し、もしそれが適切であれば民軍双方の共通目的を追求すること。 他方、軍事アセットが活用される場合であっても、支援活動自体の「文民性(civilian nature)」の担保は不可欠である。

  防衛省・自衛隊でも、「人道支援のための民軍調整」という用語の使用をお願いしたい。 「民軍連携」を使用した場合、対象地域の安定化(stabilization)を目的とする軍事オペレーションとの区別が困難となること等がその理由。

 また民と軍の関係は、現地の文脈により「協力」から「共存」まで変化すべきものであり、その意味で「調整」の方がより中立的なニュアンスがある。 同時に、民軍双方が調整する「責任を共有している」(shared responsibility)という意味でも、オプショナルと取られかねない「連携」よりも「調整」の方がふさわしい。

 なお、民軍調整については、オスロガイドラインがあるが、アジア太平洋地域では、日本を含め被災国の軍事組織が、first responderとしての大きな役割を担うことが多く見られる。 そのため、オスロガイドラインを補完する「APC-MADROガイドライン」では、「他に代替可能な文民オプションがなく、軍事アセットの活用が重大な人道ニーズを満たす上で唯一の手段(unique in capability and availability)であると判断されればこれを用いても構わない」という基本原則を引き継ぎつつ、軍事組織が被災者への直接的支援活動に関与する可能性にも言及。

 民軍調整を円滑に行うため、現場では「民軍双方の役割・責任の明確化」「被害状況・ニーズ・支援の優先順位等の認識共有」「具体的な民軍調整メカニズムについての合意」「積極的な情報共有」「ロジスティック等の支援要請での競合回避」などで民軍双方の努力が不可欠。

 このような取り組みのためには、マルチでの軍軍、あるいは民軍の調整枠組みが極めて重要。 最近のフィリピンやネパールの災害では、軍軍調整に「MNCC(Multi-National Coordination Centre)」、民軍調整に「HuMOCC(Humanitarian-Military Operation Coordination Centre)」を導入。 これら調整メカニズムを、自衛隊の演習想定等に組み込むことが重要。

 また防衛省・自衛隊の関係者には、国連災害評価調整チーム(UN Disaster Assessment and Coordination team; UNDAC)、現地活動調整センター(On-Site Operation Coordination Centre; OSOCC)、クラスターシステムといった民側の調整メカニズムについても、基本的機能を理解してほしい。

 2015年12月、「人道支援のための民軍調整アジア太平洋地域協議グループ」(RCG)の第1回会合がバンコクで開催され、重点5か国(ミャンマー、インドネシア、フィリピン、ネパール、バングラデシュ)での大規模災害を想定した民軍双方による備えの強化や、ASEAN、ADMMやARF等の地域的枠組みとのリンケージ確保などについて議論が行われた。 RCGプロセスに対して、日本から継続的貢献と一貫性のある関与をお願いしたい。

お願いしたいこと(計5点)

 「人道支援のための民軍調整」に関する実務者ワーキンググループの立上げ  民軍双方が対等の立場で参加し、情報共有や意見交換を図る場を定期的に設定し、できるだけ包摂的(inclusive)な形で議論を進めることが必要。また、民軍調整のより円滑かつ効果的な実現のため、議論は具体的かつオペレーショナルな内容に絞るべき。重点5か国への対応計画や、想定される民軍調整機能等に災害前から日本側としてどの様なインプットして具体的に備えておくのか。また、ロジスティックスや情報管理といった民軍調整上の重点課題についても議論を深め、RCG等での政策論議に貢献していくことも急務。 
 より現実的かつ有益な、派遣予定部隊等に対する演習・訓練の実施  前述のワーキンググループとできるだけ連動させ、議論の成果を演習・訓練で試すことが効果的。このため、シナリオ作成等の準備作業にはじめから文民組織が関与し、民軍調整メカニズム、クラスターやOSOCC等の機能も組み込むことで、より現実に即した状況を再現でき、文民アクターとしても得るものがある相互学習の機会となるのではないか。
 防衛省・自衛隊として、より戦略的な、民軍調整に関する取り組みの企画・実施  今や、「お互いを知ろう」という段階から次のステップへ進む段階に来ており、様々な部署が、相互調整も必ずしも十分でないまま、毎年似通った、しかも基本的な内容の議論を繰り返しているようではもったいない。セミナーやワークショップから期待される成果やその活用について、より精査が必要ではないか。既にグローバルもしくは地域レベルで進められている民軍調整の取り組みに対し、日本として政策や運用面でどのように貢献するかという観点から、個別のイニシアチブの見直し・整理を行って、より戦略的に企画・実施して欲しい。
 防衛省・自衛隊内における、「人道支援のための民軍調整」に関する基本的考え方の普及  民軍調整に関する知識・知見を、防衛省・自衛隊内でシステマチックに継承・発展させていくメカニズムを組織的に整備することが必要。OCHAでは、民軍調整に関する研修(UN-CMCoord Course(基礎研修コース)、SHARED Course(アジア地域のPKOセンターを対象とした研修指導者養成のための研修(TOT))を実施している。また、オンラインプログラム(Community of Practice、e-Learning等)も運営しており、これらに積極的かつ継続的に参加していただきたい。また、「APC-MADROガイドライン」等の和訳を製作してもらえれば、知識等の普及に資するものと考える。
 防衛省・自衛隊として、民軍調整の拠点となる組織機能の確立  米国や豪州では、派遣時の実働部隊に加え、HADR(人道支援災害救援)分野での研修・研究・政策的関与・パートナーシップ・アウトリーチ等を統括する拠点が存在し、これらが、OCHAにとっても重要なパートナーとなっている。日本としても民軍調整に関する政策、組織、制度、運用、訓練、教訓、研修、人材育成、研究、セミナー開催等の機能を統括し、全体として整合性のある戦略や計画作りをリードし、その結果について責任を負う組織機能を確立して、その重心位置をしっかりと定めて欲しい。

最後に
 現在世界は、災害・紛争等のため第二次世界大戦後最悪の人道危機に直面している。こうした課題を乗り越えるため「21世紀型」の国際人道支援を実現すべく、2016年5月には、イスタンブールで史上初の「世界人道サミット」が開催される(OCHAが事務局)。

 日本政府は「積極的平和主義」のもと、人道支援と災害救援をより一層重視するものと理解。「人道支援のための民軍調整」という考え方を、国際社会の中でOCHAと一緒に推進してほしい。そのためにも、「人道支援のための民軍調整」を、防衛省・自衛隊の中で改めてきちっと位置付けし、日本の取り組みの言わば「グランドデザイン」を示していただきたい。

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