自衛隊へ入隊・入校される皆さん、誠におめでとうございます。
さて皆さん、数多くある職業の中から自衛隊を選んだきっかけは何でしょうか。「私が国を守るしかない。」という志を持っている人、給料が安定しているからと考える人もいれば、中には、自分探しをするため、親元を離れて集団生活をしてみたいと思い立って選んだという人もいるかと思います。
私が自衛隊に入隊したのは、第一志望の大学に落ちてしまい、その時既に合格していた防衛大学校に入校するしか選択肢がなかったこと、また、防大に入校すれば身体を鍛えることができ、今まで両親に甘えて一人では何もできなかった自分が、社会人として自立できると考えたのがきっかけです。
一方、入隊動機がどうあれ、自衛隊の使命すなわち「わが国の平和と独立を守り、国の安全を保つ。」これが変わることはありません。皆さんには、まもなく創立七十周年を迎える自衛隊の歴史と伝統、そして地域国民のご理解と信頼関係を引き継ぐ国の「防人(さきもり)」となってもらわなければなりませんし、そのための教育訓練をこれから皆さんは受けます。
「疾風に勁草(けいそう)を知る。」という諺があります。
「激しく強い風が吹いてこそ、風雪に耐える強い草が見分けられる」との意味で、「困難に直面した時にこそ真の価値が試されること」の例えであります。
日本は今、厳しい安全保障環境下にあると言わざるを得ません。ロシアによるウクライナ侵攻を国連は止めることができません。中国は台湾に対する武力侵攻を否定してはいませんし、北朝鮮は弾道ミサイルの発射を一向に止める気配はありません。
この三国を隣国とする「疾風」の中にある日本において、自衛隊こそ「日本の勁草」として国民が全幅の信頼を寄せられる強く逞しい精強な存在でなくてはなりません。
このような中、これから入隊・入校される皆さんには幾多もの困難に直面すると思います。
しかし困難であるからこそ、仕事をやりきったときの達成感・一体感・充実感も大きく、日々の訓練や行事などを通じて多くの同僚などとかけがえのない「絆」を築くことができます。
私は、今でこそ高良台の「空の防人」として地対空誘導弾ペトリオットをもって、九州の空の守りの一翼を担うべく、約一五〇名の隊員を指揮して防空任務の完遂に努力しておりますが、今の私があるのは、これまで教え導いてくれた諸先輩方、また、支えてくれた同僚、部下、後輩、そして家族のおかげだと思っています。
入隊動機が崇高とは言い難い私でさえ仲間とともに成長することができました。皆さんも必ず一人前の自衛官として、また社会人として成長することができると私は確信していますし、一日も早くそうなれるよう、私たちも全力でサポートしていく所存です。どうか堂々と胸を張って、臆することなく入隊・入校していただければ幸いに存じます。
最後に、本激励会に際し、御多忙中のところ御臨席いただいたご家族の皆様、そして本会を企画運営された自衛隊家族会をはじめとする自衛隊協力諸団体の皆様の御健勝と御発展を祈念し、祝辞とさせていただきます。
誠におめでとうございます。