岐阜基地司令

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岐阜基地司令の山本です。皆様いかがお過ごしでしょうか。
花が咲き、木々が芽吹く季節となりました。
春を待ちに待った木々が花を咲かせ、蘇り、明るく眩しい光を放つ。この躍動感に私はいつも惹かれます。
花が咲く場所に希望も咲き、新緑の眩しさは、純粋な気持ちと前に進む勇気を思い出させてくれます。
寒さと風雪を過ごし、静かに待てば、生きる者すべてに活き活きとした季節はやってきます。

「待つ。」という言葉で思い出しますが、自衛隊は、「待つ。」即ち「待機する。」ことが非常に多い職場です。
例えば、休日に飛行機が飛ぶと、緊急時に備え沢山の隊員が基地内で待機しますし、警備、消防、当直等、沢山の隊員が夜間でも非常時等に備え基地内で待機してくれています。
また航空自衛隊は24時間警戒監視を絶やさず、弾道ミサイル対処や対領空侵犯措置を行っていますが、これらの任務の大半も、「待つ。」、「待機する。」という状態が続きます。
元航空幕僚長でパイロットの鈴木昭雄氏が「部下はリーダーの背中を見て行動する。」という本の中で、初めて対領空侵犯措置のメンバーについた時のことを書かれています。
対領空侵犯措置の任務に就くと、多くの新人操縦者は、待っている間、失敗をしてはいけないと大変な緊張感に包まれるそうです。
発進後の地上・空中での操作手順を繰り返し確認することで頭が一杯。緊張感から、最初は誰でもトイレに行く回数が増え、トイレに行っている間に発令があるかもと考えると、落ち着いてゆっくりできない悪循環を繰り替えすようです。
失敗談も沢山あるみたいです。発信指令と電話のベルを間違えた。新人が編隊長の飛行機に乗り込んだ。トイレから発進し帰投報告時までチャックを閉め忘れていた。鈴木氏も発進時に戦闘機のキャノピーが閉まりきっていない状態で地上滑走を始め、任務がふいになった経験を書かれています。
一方で経験豊かな先輩パイロットになると、待機中は静かに本を読み、テレビを見て、仲間と話しながら時には沈思黙考と、平常心そのものの態度になるようです。
しかし一度ベルが鳴るとヒョウが獲物に跳びかかるように走り出し、機体に飛び乗り、離陸していく。この静から動への変わりようは、プロフェッショナルによる生きたドラマを見るようで強い感動を覚えます。

先輩と新人の差は何なのか、それはまさに心の持ち方なのではないかと鈴木昭雄氏は書かれています。
待つことに疲れ果て、いざ本番で力を十分に発揮できない、失敗するようでは、なかなか本物だと言えない。
我々にとり、待つこととは次の行動への準備であり、動のためのエネルギーを静かに蓄えることが重要で、空中で色々と操作、対応するのと同じくらい、地上で静かに待ち続けることにも大きな意味があるのです。
事ある時は活き活きと咲き、事なき時はつぼみを膨らませながら静かに待つ。この事がとても大切だと思います。

航空自衛隊、岐阜基地の存在そのものも全く同じだと思います。
日頃から厳しい訓練で実力を静かに蓄え、冷静に出番を待っているのが理想です。
力を誇示しようといたずらに出番を求めるのは本末転倒だと思いますし、危機を未然に防止する抑止力の存在こそが真の姿で、それが平和で良い状態なのだと思います。
岐阜基地の隊員も、国民の皆様の安心と安全のため、静かに着実に力を蓄えてまいりたいと思います。
そして皆様に応援して頂けるような頼もしく、優しい存在であるよう隊員一同一層努力してまいります。
今年度も岐阜基地に対する御理解、御指導をよろしくお願い致します。

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                   令和6年4月2日
航空自衛隊岐阜基地司令 空将補 山本 光伸  






略歴

 平成27年12月 航空幕僚監部装備計画部装備調整官( 市ヶ谷 )
 平成29年12月 航空幕僚監部装備計画部整備・補給課長( 市ヶ谷 )
 平成31年4月  第4補給処長(入間)
 令和3年9月   幹部候補生学校長兼ねて奈良基地司令(奈良)
 令和4年12月  現職